欧州テイストの質の高い走りが味わえる

スズキ新型「スイフト」試乗レポート&開発者インタビュー

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2017年1月4日より発売が開始されたスズキの新型「スイフト」。モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏が試乗と開発者のインタビューを通して、その走りをレポートする。

「スイフト」は、スズキの屋台骨を支えるグローバルカー。日常の足としての実用性と、本来の先鋭的なスポーティーさをどう両立させているのか?

スポーティーを売りに大ヒットしたグローバルカー

2017年1月4日にスズキの新型スイフトが発売された。もともとは軽自動車を発展させた小型車としてスタートしたスイフト。しかし、2004年に世界戦略車として生まれ変わってから本格的な快進撃が始まった。スイフトは日本だけでなく、欧州やインド、中国でも売れまくったのだ。2004年からこれまでの累計販売は530万台を突破し、スズキを支える大きな幹に育つ。ちなみに累計販売における日本の比率は10%にすぎない。文字通りのグローバルカーである。

そのスイフトのキャラクターは明快だ。「スポーティー!」。走りのよさを前面に押し出し、日系だけでなく欧州ブランドもひしめきあう、コンパクトカーのグローバル市場という激戦区を生き抜いてきたのだ。しかし、スイフトにも弱点はある。それはラゲッジスペースの広さに代表される実用面だ。また、誰もかれもがスポーティーを好きなわけではない。もっと落ち着いたファミリー向けのコンパクトカーが欲しい人もいる。そこでスズキは、新しいモデルを用意した。それが「バレーノ」である。スイフトと同じセグメントでありながら、室内の広い落ち着いたファミリーカーであるバレーノという存在があるため、スイフトは迷いなくスポーティー路線を歩めることになったのだ。

実用性を高めたファミリーカーの「バレーノ」の存在が、新型スイフトを迷うことなくスポーティー路線に押し進めた

1.2リッターを基本に取りそろえた豊富なバリエーション

その新型スイフトの最大の特徴は、「HEARTECT(ハーテクト)」と名付けられた新世代のプラットフォームを採用したことだ。軽量で剛性の高い新プラットフォームだけでなく、車体全体での軽量化の努力で、先代よりも最大120kgものダイエットに成功した。この数字は驚異的だ。軽さは、動力性能と燃費性能にダイレクトに効く。走りが売りのスイフトには、最高の武器となるだろう。さらに単眼カメラ&レーザーレーダーを使った運転支援システムも用意した。歩行者も検知できる衝突被害軽減自動ブレーキ(AEB)だけでなく、前車を追従するACC機能までも備わる。100万円台のコンパクトカーとしては、非常に充実した内容だ。

新世代プラットフォーム「HEARTECT」を採用することで、先代モデルと比較して最大120kgという軽量化を実現した

単眼カメラとレーザーレーダーを使った運転支援システムも一部のグレードに用意されている

単眼カメラとレーザーレーダーを使った運転支援システムも一部のグレードに用意されている

ラゲッジスペースは容量265L。先代の130Lと比較すればかなり広くなった

ラゲッジスペースは容量265L。先代の130Lと比較すればかなり広くなった

パワートレインにはスズキの最先端技術であるマイルドハイブリッドおよびダウンサイジングターボエンジンを採用している。ラインアップは、最高出力91馬力の1.2リッター直列4気筒エンジン(JC08モード燃費22.6〜24.0km/l)、1.2リッターにマイルドハイブリッドをプラスしたもの(JC08モード燃費25.4〜27.4km/l)、最高出力102馬力の1リッター3気筒ターボ(JC08モード燃費20.0km/l)の3種類。1.2リッターには5MTとCVT、1.2リッター&マイルドハイブリッドにはCVT、1リッターターボには6ATが組みあわされる。1リッターターボはFFのみだが、1.2リッターにはFFと4WDが用意されている。

また、先代でも好評だった走りのセッティングを欧州仕様と同じにした「RS」グレードも設定されている。特に1リッターターボはRSのみで、グレード名は「RSt」となる。今回のスイフトでは、1リッターターボモデルの「RSt」は特別な存在だ。RStには4WDの設定もない。また、ターボも6ATも、RStだけのアイテムとなる。

グレード編成の基本は、素の1.2リッター・エンジンのモデル。その1.2リッターに、マイルドハイブリッド版、RSグレード、5MTにCVT、FFに4WDまでのバリエーションを用意。それに1リッターターボのRStを追加したのが、今回のスイフトのラインアップだ。さすがにスズキの主力モデルだけあって、数多くのグレードが用意されている。

最高出力102馬力の1リッター3気筒ターボ「K10C型ブースタージェット」エンジンは、RStグレード専用

最高出力102馬力の1リッター3気筒ターボ「K10C型ブースタージェット」エンジンは、RStグレード専用

ベースとなる、最高出力91馬力の1.2リッター直列4気筒「K12C型デュアルジェット」エンジン。これに、マイルドハイブリッドを組み合わせたグレードも用意される

RStは、ゴツゴツとしたコンサバなスポーティーさが特徴

スイフトの売りはスポーティーなこと。その狙いはドライバーズシートに納まればすぐにわかる。一面真っ黒なインテリアに大きな二眼メーター。ある意味、古くさいかもしれないが、オーソドックスなスポーツカーのカッコよさを感じて、少しウキウキしてくる。

真っ黒なダッシュボードに並ぶ二眼メーターは、古典的スポーツカーの雰囲気を漂わせている

真っ黒なダッシュボードに並ぶ二眼メーターは、古典的スポーツカーの雰囲気を漂わせている

最初に試乗したのは、最高出力75kW(102馬力)の1リッターターボのRStだ。小排気量ターボとはいえ、最初の1歩目からターボは十分な働きを見せる。グイと力強く発進。アクセル操作に対するレスポンスもなかなかのもの。ターボラグがほとんどないため、排気量の大きなエンジンのようだ。ただし、高回転での伸びはもうひとつ。それでも軽量なボディには十分なパワーであり、スポーティーにキビキビと走る。エンジンサウンドは直噴らしい硬質なもの。しかし、なによりも印象的だったのはハンドリングだ。やや重めでネットリした手応えで、わずかな操作にもクルマが正確に動く。4輪がしっかりと路面をつかんでいるかのような安心感もある。ブレーキのフィールもダイレクトで最高だ。しまった足回りからは路面の細かな凹凸が伝わってくるけれど、コンパクトカーではなかなかできないフラットライドな乗り心地だ。全体にゴツゴツとした硬派な走り味。ドライバーの思うままの走りを実現してくれるという意味で立派なスポーツカー。それがRStであった。

RStのK10C型ブースタージェットエンジンは、レスポンスとパワーにすぐれ大排気量エンジンのような印象だ

RStのK10C型ブースタージェットエンジンは、レスポンスとパワーにすぐれ大排気量エンジンのような印象だ

続いてRSのハイブリッドに乗り換える。最高出力67kW(91馬力)の1.2リッターNAエンジンと最高出力3.1馬力のモーターを組みあわせたマイルドハイブリッドだ。EV走行はできないが、減速エネルギーの回生と最長30秒のモーターアシストを行ってくれる。トランスミッションはCVT。ハンドリングや乗り心地はRStとほとんど変わらない。しかし、パワートレインが圧倒的にスムーズで、アイドリングストップもしてくれる。静粛性もRStよりすぐれている。トルクフルなRStに対して、こちらはスルスルと回転を上げて加速する。パワー感はRStに及ばないが、遅いわけではない。方向性は同じだが、パワートレインの分だけRStよりもマイルドになっていた。

最後に通常の1.2リッター+ハイブリッドを試してみた。足回りは日本専用にチューニングが行われており、乗り出してすぐに路面からの突き上げが上手にいなされていることに感心する。ステアリングの手応えも、より軽い。ただし、フラットライド感は薄い。

EV走行は行えないが、モーターで加速を最長30秒間アシストしてくれるマイルドハイブリッド。名前の通りスムーズでマイルドなドライブフィールだ

グレードでいえば、RStが最もスポーティーな味付けが濃く、RS、通常グレードと行くにしたがってマイルドになる。しかし、基本となるのは、どこまでもドライバーの制御下にある成熟したスポーティーさだ。ボーイッシュではなく大人のスポーティーである。欧州車を目指して誕生したスイフトだが、この新型の走りは、まったく欧州車と肩を並べるまでに磨かれたと言っていいだろう。

最後に個人的な思いでいえば、スイフトのグレードはRSだけで十分だ。日本仕様のやわらかな足回りは悪くはないが、スイフトのキャラクターを薄めてしまう。スイフトはスポーティーに振り切る。そして、マイルド志向の顧客にはバレーノを勧める。それが本来の姿だと思う。しかし、現実にはバレーノの売れ行きはかんばしくない。結果的に、スイフトが、広い顧客を相手にする必要があり、グレードもワイドにせざるを得なくなった。理由も経緯もわかるけれど、バレーノとの補完関係ができなかったことが残念でならない。もっと日本市場に受け入れられる次世代バレーノの登場を期待したい。

1cm単位でクルマをコントロールすることを求められた

続いてスイフトの運動性能を担当した開発者の話を聞くことができた。以下に、インタビュー形式で紹介する。

スズキ 四輪車両性能開発部 運動性能開発課長 石井良武氏

スズキ 四輪車両性能開発部 運動性能開発課長 石井良武氏

鈴木:今回の開発を振り返ったとき、ハイライトになるのは何でしょうか?

石井:まず、イギリスでのチューニングですね。イギリスでないと、どうしてもない路面というのがあるんです。

鈴木:具体的にはどういう路面なんですか?

石井:イギリスの丘陵地帯です。ドイツにも丘陵地帯はありますが、イギリスのほうが、もう少しアップダウンが早い。大きなうねりがあるんです。その大きなうねりの中で、逆相違の入力があったり、アンジュレーション(起伏)があったりと、複合で来る。それがイギリスにしかないんですね。

鈴木:それは昔からですか?

石井:そうです。初代のスイフトは、最初にスズキの拠点のあるドイツでチューニングを行いました。ところが、イギリスに行くと、さっき言ったフラットフィールが、まったく不十分だと言われて、ビックリしたんですよ。

鈴木:ドイツでできあがったと思ったらイギリスでNGが出たと。

RSには、専用のショックアブソーバーや電動パワーステアリングコントローラーなど、ヨーロッパ仕込みのセッティングが採用されている

石井:それで、イギリスに行ってみると、確かに全然想定していなかった道があったんですね。そういうことで、今回の開発は主にイギリスで行いました。そういう大入力もありますし、一般的な欧州の道もあります。いろいろな道が揃っているのがイギリスという認識で。

鈴木:チューニングはイギリスだけですか?

石井:その後にドイツに行ってアウトバーンを走らせました。欧州には、「ゴルフ7」とかフィアット、フォード「フィエスタ」があります。なかでも、特に欧州人はフィエスタが大好きなんですよ。それは、ステアリングの切り始めの応答からのリニアリティ。センターポジションからの曲がりやすさです。100km/hから200km/hまでで、1cm単位で、クルマの動きを簡単にコントロールできるようにしなさいと言われたのが、ものすごく印象深いんですね。

鈴木:1cm単位ですか!

石井:そうです。なんで、そこまで? というと、アウトバーンはよく道路工事をやっているんですね。日本の高速だと道路工事のときは、車線を減らすことで渋滞しちゃうんですけれど、欧州では4車線あったら4車線のまま。ギュッと道幅が狭くなっていて、その代わりに車速を80km/hにしなさいと表示は出ているんです。けれど、みんな120km/hくらい(笑)で、つっこんでいると。実際に狭まった車線で隣のクルマとの距離は、ミラーがくっつきそうな幅しかないですね。なかにはミラー同士がオーバーラップするんじゃないかってくらい狭いことも。そこで、車速を落とせばいんですけれど、欧州の人たちは流れのままに走る。そうすると本当に100km/hオーバーの速度域で、クルマを1cmくらいでコントロールしないと当たっちゃうねという状況が現実としてあったんです。

ああ、本当に日常生活の中で、1cm単位のコントロールが必要なんだと。格好じゃなくてね。そういうことを実感して。確かにそういう風に仕上げようという意識でやったのが印象的でしたね。

鈴木:なりほど! そういえば、ほかのメーカーの方も、すごく似たことを言っていましたね。ドイツのセンターラインのない狭いクネクネした道でも、100km/h以上のスピードですれ違うと。正確にクルマが動かないと怖くて走れないと。

石井:同じですね。それで対向車に乗っている人が、地元のおばあさんだったりして。それが一番ビックリしました(笑)。日本のおばあさんの3倍くらいのスピードで走っているんですからね。

ヨーロッパの道路事情が求める正確なハンドリングが魅力のスイフト。そのスポーティーなキャラクターはさらに進化している

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

製品 価格.com最安価格 備考
スイフト 2017年モデル 0 スポーティーを売りに大ヒットしたグローバルカー
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2017.4.25 更新
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