大好評(?)につき、煮干し好きによる、煮干し好きのための“ニボ中毒”救済企画の第3弾。第1回の「すごい煮干ラーメン凪」、第2回の「花道」に続くのは、今年、青森県から東京都内に進出した「長尾中華そば」。東洋水産(マルちゃん)が発売した「長尾中華そば こく煮干し」とお店の味を食べ比べて、その再現度をしつこく検証していきます。
現在の「煮干しラーメンブーム」を語るうえで欠かせないのが、青森県。弘前市を中心とした津軽エリアでは古くから、煮干しダシを使ったラーメンがソウルフードとして親しまれており、「津軽ラーメン(=煮干しラーメン)」と称されるほど。
筆者もかつて青森県を訪れた際、青森県弘前市にある名店「たかはし中華そば店」の味をどうしても確かめたくて、撫牛子(ないじょうし)駅(無人駅!)まで、JR奥羽本線に揺られて食べに行きました。濃厚な煮干しの味に、クラクラやられちゃったおぼえがあります。
これが、津軽ラーメンの代表格「たかはし中華そば店」の煮干しラーメン。濃厚な煮干しに、ノックダウンされたぜ!
今回ご紹介する長尾中華そばも、そんな津軽ラーメンを代表する代表格。同店のメニューは主に、あっさりな「津軽ラーメン」と、鶏豚ベースの白湯スープ+たっぷり煮干しによるWスープの「新・津軽ラーメン」にわかれており、今回食べる「こく煮干し」は、この「新・津軽ラーメン」に含まれます。すごい煮干ラーメン凪ほどの“ニボニボしさ”はなさそうですが、進化形の新・津軽ラーメンというのが、かなり気になるところ。期待に胸を膨らませ、いざ、長尾中華そば 神田店へ。
長尾中華そば 神田店。東京メトロ丸の内線淡路町駅から徒歩3分。小川町駅から113m。営業時間は11:00〜20:30(売切れ次第終了)。定休日は日祝、第1・第3土曜日。2018年12月1日時点「食べログ」より
今回は、新・津軽ラーメンの中から、「こく煮干し」(850円)を注文!
券売機の上には、今回食べ比べするコラボカップ麺が飾ってありますよ!
これが、こく煮干し。具材は、ネギ、バラチャーシュー、メンマ。まさに、シンプル・イズ・ザ・ベスト。全体的なボリュームが少ないのが、やや気になるところ(食いしん坊には、大盛りは必須か?)
煮干しスープは、ミルキーで、どことなく懐かしい味。シンプルそうに見えて、これまでに飲んだことがないような味わい
麺は、国産小麦を使い、かんすいを極力抑え、煮干しの風味を壊さないようにして作ったというこだわりよう。ツルツル、やわらかな食感とつるみ。うどんのような印象です
薄切りバラチャーシューは、かなりジューシー。あっという間に、口の中で溶けてしまうような感覚です
新・津軽ラーメン、すごい。シンプルな見た目ながら、これまでに体験したことがないような、煮干しの風味。見た目以上に、かなりサラサラです。煮干しのエグみなし、苦味なし、ザラザラ感なし。“醤油志向”の強かったすごい煮干ラーメン凪と異なり、ふくよかなWスープを前面に打ち出した、ミルキーな仕上がりとなっています。
特に気に入ったのが、煮干し由来の酸味。たとえるなら、お酢を飲んだ時の「すっぺぇぇ〜」という感覚ではなく、酸味の強いコーヒーを飲んだ時の「キューーー」とした、あの舌が引き締まるような、酸っぱい感じ。伝わりますか? これがいいアクセントになります。総じてやさしい味で、まるで“ご当地料理の鍋”をつついているような感覚です。
いっぽう、麺はやわらかくゆでた、中太ストレート麺。うどんやパスタに似た印象です。つけ麺にも合いそうな麺だなぁと感じて思い出したのが、池袋大勝軒の麺。個人的には、これに近いと思いました。しかし、「硬めのちぢれ麺」とはベクトルが真逆なので、好みが分かれるところかも。
ゴリゴリの煮干し感を「これでもか! どや! どや!」と前面に出さず、Wスープのふくよかさで、食べる人を暖かく包み込む、新・津軽ラーメン。東北発祥のグルメらしい、奥ゆかしさを感じずにはいられません。
お店の味を確かめた後は、同店が監修したカップ麺「長尾中華そば こく煮干し」(278円)を食べて、その再現度を検証していきます。鶏豚ベースの白湯スープ+煮干しというWスープ、やわらかくゆでた中太ストレート麺など、あのやさしい味わいをどこまで、カップ麺で表現しているのでしょうか?
東洋水産の長尾中華そば こく煮干しを食べて、お店の味と比べていきます!
カップ麺の中身は、このような感じ。かやく、後入れの液体スープと粉末スープが入っています
麺は、平打ちの細麺タイプ。お店のように丸みがありませんが、はたして……
かやくを麺の上にのせました。こうしてみると、なかなかオーソドックスなラインアップです
熱湯を注いで5分。まずは、後入れの粉末スープを投入!
続いて、後入れの液体スープを投入!
スープをかき混ぜて、カップ麺が完成! 見た目は、お店とかなり近いのでは?
麺をすするとスープがからみ、煮干しの香りを持ち上げてくれる。何もしなくても、煮干しの香りがただよってきます
最初は平らだった麺も、お湯に戻すと丸みをおびてきた! つるみが似ていて、お店の臨場感を味わえます
チャーシューは……サイズが大きいものの、お店の味には、ほど遠く。汎用タイプのようです
なんでしょう。お店と同様に、煮干しの香りが強いものの、“何か”が足りないようす。実際にスープを飲むと、お店より、煮干しダシが弱く、醤油感がやや強いという印象です。確かに美味しい煮干しスープですが……そう、お店のような「キューーー」とした“酸味”がないのです。インパクトが足らんのです。そのため、ここに、お酢やラー油などを入れると、よいアクセントになるのかと思いました。
具材の再現性は高い。ネギ、チャーシュー、メンマのトリオで、見た目はお店と瓜ふたつ。味については、いずれも汎用タイプなので“普通”ですが、「お店の具材を再現しよう!」という気持ちが強く伝わってくるのはGoodです。ただし、麺も含めて、全体的なボリュームが少なく感じたのは残念。これで278円というのは、コストパフォーマンスのことを考えると……。
今回の再現度は?
<いいところ>煮干しの香りは、お店と同様。麺のつるみや具材もうまく再現。
<気になるところ>煮干しの酸味がなくインパクトに欠ける。コスパがよくないかも
スープの再現度:★★☆☆☆
麺の再現度:★★★★☆
具材の再現度:★★★☆☆
食べごたえの再現度:★★☆☆☆
コスパ:★★☆☆☆
お店の味は“煮干しダシ勝負”という印象だったので、酸味を再現しきれなかったのが、やはり心残り。これを粉末スープで再現するのは、かなり難しいのでしょうか。パワーアップした、次回作にも期待したいところ!
デジタル製品全般からホビーやカップ麺・スナック菓子まで、オールジャンルをカバーする編集部員。大のプロレス好き。読み方は、まつだ・しんり。