業界初となるどんぶり型容器とともに、1976年にデビューした「どん兵衛」(正式なブランド名は「日清のどん兵衛」)。発売以来進化し続け、現在もカップうどん・そばの王者の座に君臨しています。「10分どん兵衛」が話題になったことも記憶に新しい中、ありそうでなかったユニークな商品が新発売されました。「日清のどん兵衛 限定プレミアムきつねうどん 史上最もっちもち麺」です。
「日清のどん兵衛 限定プレミアムきつねうどん 史上最もっちもち麺(以下「もっちもち麺」)」。限定プレミアム品ということで、お早めに!
その特徴は、麺の太さともちもち食感。希少な国産もち小麦を使うとともに、独自の3層太ストレート製法によって、今までになく太い、“史上最もっちもち麺”を実現したとのこと。さらにはお湯を入れて待つ調理時間も、8分とかなり挑戦的。
なるほど、これは気になるじゃないですか。ということで、通常の「どん兵衛」と食べ比べてその真価をチェックすることに。また、もちもち食感といえば、お笑い芸人のマキタスポーツさんによる紹介をきっかけに、メーカーの日清食品が反応したうえ公式サイトで紹介されるまでになった「10分どん兵衛」とも比べてみます。
比較には「日清のどん兵衛 きつねうどん 液体つゆ仕上げ(以下「液体つゆ仕上げ」)」を使用。こちらは東日本のつゆの好みの変化に合わせて開発されたニュータイプですが、麺は一般的な「どん兵衛」と同じです
まずはスペックやトッピングなど、味以外の部分から比較。おもしろい点はいくつもあり、たとえば麺量やカロリーは意外にも「もっちもち麺」のほうが控えめなのです。
「液体つゆ仕上げ」は113g(麺74g)で431kcal。対して「もっちもち麺」は82g(麺60g)で346kcal
また、お湯を入れる量にも明確な違いが。「液体つゆ仕上げ」は390ml、「もっちもち麺」は430mlが目安でした。麺が太い分、水分を吸うということでしょう。これはなんとなく納得です。次に、フタを開けて乾麺の状態やつゆ、トッピングを比較してみることに。
「液体つゆ仕上げ」は、ネギが麺の上に直接乗っています。これは、液体つゆのため、ネギをつゆの中に入れられないからでしょう
つゆが粉か液体かといった違いに影響される部分もありますが、やはり麺の太さの違いは一目瞭然。太い分、麺の密度は低い印象で、麺線もよりストレートな気がします。
確かに、「もっちもち麺」(写真右)はかなり太め。食感の違いが気になったところで、いよいよお湯を投入します
同時にできあがるよう、お湯は先に「もっちもち麺」から入れ、3分たった段階で「液体つゆ仕上げ」にも投入。タイマーが0になったタイミングで食べ始める手法で比べました。
まずは「もっちもち麺」から。8分をじっくり待つと、結構長く感じます
そして完成。できあがりを見比べてみると、お湯が入って立体的になった分、より太さの違いがはっきりわかります。
「もっちもち麺」は太いので、パッと見ではどことなく生麺のような印象も
「液体つゆ仕上げ」は見慣れた「どん兵衛」です
そしてようやく実食へ。「もっちもち麺」を食べると、一瞬で「うぉぉっ!」となるのが、もっちもちだけでなくふわふわの弾力。3層になっているとのことですが、麺の内部に空間があるようなエアリー感で、生地の表面もいい意味でふやけたようなゆるさを感じます。
確かにもっちもちながら、全体的にやわらかい食感でコシはありません。なので、近いのは讃岐うどんではなく(そもそも讃岐はもっと太いですし)、有名どころだと博多うどんが近いかもしれません
いっぽうで、通常の「どん兵衛」である「液体つゆ仕上げ」を実食。こちらはいつもどおりの安定的な食感ですが、コシはこちらのほうが強く感じます。また、持ち上げる麺の本数が多くなるため、つゆの量も比例的に多め。「もっちもち麺」は吸水率が高いので水分量はどっちもどっちですが、麺とつゆが口の中に広がっていく感じにはかなりの違いがあります。
食べ慣れているせいか驚きはありません。とはいえ完成度の高さは、さすが「どん兵衛」!
麺だけを取り出して比較してみると、「もっちもち麺」のほうが太さとともに強さ、インパクトを感じます。またこうして麺だけを見ると、やはり生麺を思わせるルックス。
「液体つゆ仕上げ」のほうが麺の色は濃くなった印象。これは、液体のほうがつゆが濃色で、かつ湯量も少ないからでしょう
個人的に、日清食品のカップ生麺うどんといえば「日清のごんぶと」を思い出しますが、あれはコシがあったので別物。「もっちもち麺」も太いものの、立体的というよりは平べったい麺ですね。とはいえ乾麺でこの太さにチャレンジしたメーカー魂はすばらしい!
次は「10分どん兵衛」と比較。先に軽く触れましたが、これは「どん兵衛」の一般的な調理時間目安の5分を無視して、倍の10分待つというレシピ。味としても「麺がもちもちになる」「これはこれでウマい!」など好評価が多く、そして日清食品も「5分にこだわりすぎてたのかな、と思います」と「10分どん兵衛」を評価することになりました。
この比較では「液体つゆ仕上げ」が先。残り8分のところで「もっちもち麺」にお湯を投入します
そして2品が完成しました。麺をメインにチェックするため、きつねを別皿に移すとこのように。「液体つゆ仕上げ」は麺が水分を吸っているので全体の量も多く感じます
「10分どん兵衛」を食べてみると、コシが失われている分、通常の「5分どん兵衛」より“もちふわ感”は豊か。ふわふわ加減に関しては「もっちもち麺」より上のほわほわで、これは悪く言うと伸びているのですが、好きな人は好きな弾力でしょう。
長時間かかる点は同様。ただ、舌に乗ったときのタッチ、かんだときのテクスチャー、口に広がる水分量は違います
そして改めて「もっちもち麺」を食べると、こちらのほうが“もちふわ感”が自然。「10分どん兵衛」はある意味バランスを崩しているので、うどんの完成度としては「もっちもち麺」に軍配が上がるでしょう。
「もっちもち麺」が博多うどんに近しいとあえて表現するのであれば、「10分どん兵衛」のムニュッとした感じは、埼玉が誇る(筆者は埼玉育ち)チェーン店の山田うどん、ほわっとした感じは伊勢うどん(伊勢はもっと極太麺ですが)と言えるかもしれません。
新発売の限定プレミアム「もっちもち麺」は、非常におもしろいカップうどんでした。この感覚は食べてみないとわからないので、ぜひみなさんにも通常の「どん兵衛」と食べ比べていただきたいです。
ぜひ「もっちもち麺」を買って比較を!
“うどん県”をアピールする讃岐の本場、香川県では「年明けうどん」が風習となっていますが、この文化をインスタント麺業界で初めてカップ化したのも実は「どん兵衛」。年末は「年越しそば」を食べる人が多いと思いますが、年が明けたらぜひ「もっちもち麺」を食べてみてください。ただし売り切れ必至なので、今のうちにご用意を!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。