今、「飲めるフレンチトースト」が話題なのをご存じでしょうか?
これは、2022年9月に東京駅前の「丸ビル」で開業した「THE FRONT ROOM(ザ フロントルーム)」が、2023年からオンライン販売を開始した人気のフレンチトーストのことをさします。
「THE FRONT ROOM」公式サイトのTOP画面。右下のポップアップバナーに、「SNSで話題」との一文が……
やはり気になるのは“飲める”の一文。店みずからその自信作を“飲める”と表現したのか。はたまた、実際に食べたお客さんが“飲める”と口コミしたことからメニュー名として定着したのか。いずれにせよ、本稿では厳しい視点で真偽をチェックしたいと思います!
こちらが噂の「飲めるフレンチトースト」。公式ECサイトでは、冷凍食品として3枚セットから販売されています
まずは、「飲めるフレンチトースト」の発売元であるHUGEと「THE FRONT ROOM」について簡単に解説していきましょう。
このHUGEという企業は外食業界ではカリスマ的存在で、代表を務める新川義弘氏は“サービスの神様”としても知られています。有名なエピソードは、独立前のグローバルダイニング在籍時代に、日本の総理大臣とアメリカ大統領の会食で接客を担当したこと。グローバルダイニングもとても有名な外食企業で、HUGEの新川氏以外にも数々の敏腕シェフや経営者を輩出していますが、そのなかでも特に有名なのが同氏だと思います。
2005年設立のHUGEは、今や30店舗以上の多種多様なレストランを展開していますが、代表的なのは起業当初からのブランド「RIGOLETTO(リゴレット)」でしょう。ぜひ行ってみてくださいと言いたいところですが、詳細は「食べログ」に任せるとして、そんなHUGEが手掛けた初のカフェが「THE FRONT ROOM」なのです。
ここからは「飲めるフレンチトースト」の実態に迫っていきます。
通販の3枚セットには、フレンチトーストのほかにホイップバター、メープルシロップ、季節のソースが同梱。レシピも付いており、そこにはおすすめアレンジも記載されていました。
今回の季節のソースは、果肉入りのマンゴーパッションでした
レシピはシンプルで、まずは常温の環境に出して1〜2時間(室温に準ずる)放置。解凍されたら袋から出し、器に載せて電子レンジで温めます。目安は500Wの場合2分〜2分半。
この時点で、かなり分厚いことがわかります。はたして飲めるのでしょうか?
なお、このパンは同社系列店の「SHIBUichi BAKERY(シブイチ ベーカリー)」で培われた製法で、専用に開発したブリオッシュ生地が特徴。北海道産の厳選した小麦粉を2種ブレンドすることで、モチモチとした豊かな食感と自然な甘みに仕上げたのだとか。
そしてこの自家製パンを、ミルクや卵などに染み込ませてアパレイユという生地に仕上げていくのですが、その漬け込み時間は冷蔵庫で12時間とか。生地が分厚いため、それだけ長時間寝かせることが重要なのだそうです。
測ってみたところ、重さは225gで約4.5cm。公称では5cmとのことで、最も厚いところならそれぐらいはありそうです
味わうには、レンチンだけでもOK。ただ、バターを引いたフライパンで表面を焼くのがおすすめとのことで、軽くソテーしました。
バターを引いたフライパンで焼くと、芳醇な香りがアップするうえに、しっかりと焦げ目がついて、見た目もいっそうおいしそうです
軽く焼いたら器に戻し、ホイップバターなどを載せて完成。しっかりとトッピングすると、一段とフォトジェニックです。
飲めるのかどうか、確かめながら味わいます
ということで、単刀直入に(勝手な)争点からジャッジ。飲めるのか、飲めないのか?
答えは……飲めます。ただし内部に限る、です(※)。しかしながら、これは驚きの完成度。フワフワを通り越したトロトロのテクスチャーで、口の中で溶けていくような感覚です。噛もうにもジュワッとしており、自然と飲み込まざるを得ないというか。「飲めるフレンチトースト」のうたい文句にも納得しました。
※:ふざけてまるごと飲み込んだりするような行為は絶対にお止めください
ご覧のとおり、内部はまるでプリンのよう。つまり、飲めます! が、外側は飲めませんし、むしろしっかりめの食感なので、ナイフがないときれいにカットしづらいです
いっぽうの外側はしっかりと個体になっていて飲めないと思いますが、これはこれで正解。なぜなら、表面がしっかりしていることで内部との食感にメリハリが生まれているから。したがって、少々手間ですが焼いたほうが絶対おすすめです。焼くことで表面がカリッとし、トロッとした中身の生地とのコントラストで感動はいっそう増します。
ホイップバターは塩入りで、メープルソースはオーガニック。細部にこだわりがあり、秀逸な“味変”アイテムです
レシピに記載されていたアレンジも試してみました。
トライしたのは目玉焼き&ベーコン。前述のとおりに仕上げたフレンチトーストに、焼いたベーコンと目玉焼きを載せれば完成です。
ベーコンと目玉焼きに隠れていますが、下にはフレンチトーストが敷かれています
味わってみると、これもまた格別のおいしさ。フレンチトースト自体は控えめの甘さで仕上げられており、ベーコンの塩気や目玉焼きの卵黄部分のコクが絶妙に調和します。そもそものフレンチトーストが十分なボリュームなので、これは1回の食事としても成り立つでしょう。
カリッ、トロッ、ジュワッとした食感のアンサンブルもお見事
朝食やランチにもおすすめ
「飲めるフレンチトースト」は、キャッチーな名前に負けない実にハイクオリティーなおいしさで、これが自宅で簡単に味わえるのはうれしいところ。販売単位は3枚セットからのようですが、アレンジによって楽しみ方が広がるので、ぜひいろいろ試してみましょう。また、機会があればHUGEのレストランにも足を運んでみてください。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。