食のやりすぎ“推し”伝説

伝説のお菓子「ルマンド」の継承者!? ブルボンの新顔「ラングレイス」はどんな味?

本連載は、フードアナリストの独自視点で、知られざるフードや銘酒を深掘りするコラム企画「食のやりすぎ“推し”伝説」。第8回は、2024年で誕生50周年を迎えた、ブルボンの「ルマンド」と、同ファミリーに加わった新作「ラングレイス」を主役に“モノ語り”をつづります。

ブルボンの新作「ラングレイス」(左)と「ルマンド」(右)

ブルボンの新作「ラングレイス」(左)と「ルマンド」(右)

伝説の商品「ルマンド」――。

これは、ブルボン公式サイト内のコンテンツ名。謙虚なブルボン社が“伝説の”と自画自賛するほどの名作が、「ルマンド」なのです。同社の名作は数知れず、「アルフォート」や「チョコ&コーヒービスケット」など、それぞれにファンがいることでしょう。もちろんそれらは筆者も大好きです。

都内のスーパーにて。棚にはブルボンのさまざまなブランドが並んでいました

都内のスーパーにて。棚にはブルボンのさまざまなブランドが並んでいました

ただ、前述の公式サイトにて、ブルボンは「当社の代名詞とも言えるロングセラー商品『ルマンド』」とも書いており、やはり“ブルボン朝”の王様は「ルマンド」だと言えるでしょう。

そして、2024年は「ルマンド」発売から50周年というアニバーサリーイヤー。この記念すべきタイミングで、新顔「ラングレイス」が誕生しました。

「ラングレイス」(左)と「ルマンド」(中央)と、もうひとつの新作「ラングロールショコラノワール」(右)

「ラングレイス」(左)と「ルマンド」(中央)と、もうひとつの新作「ラングロールショコラノワール」(右)

そんな「ルマンド」と「ラングレイス」は似ている要素がきわめて多く、気になっている人はたくさんいるでしょう。また、「ラングレイス」の影に埋もれがちながら、「ラングロールショコラノワール」という新商品も発売されています。そこで今回は、「ルマンド」の栄光なる歴史を振り返りつつ、2種の新商品との食べ比べをおこないます。

2024年はブルボンの“ボーナスステージ”だ!

まずは、ブルボンの歴史から振り返りましょう。意外に思うかもしれませんが、ブルボンは新潟生まれです。新潟県柏崎市の和菓子店、最上屋の子息が1924(大正13)年に創業した北日本製菓がブルボンの前身。社名はその後1952(昭和27)年に北日本食品へと変わり、さらに1989(平成元)年、長年親しまれていた商標「ブルボン」に変更し、今にいたります。

米どころの新潟発祥である強みは、「ピッカラ」や「チーズおかき」といったロングセラー米菓が物語っていると言えるでしょう。ちなみに前者は2024年で発売45周年、後者は40周年を迎えており、そもそも会社自体が2024年で創立100周年。ブルボンにとって、2024年のアニバーサリーイヤーはいわば“ボーナスステージ”や“確変”のようなものであり、そんななか、今回放たれた大本命が「ラングレイス」なのです!

「100」の「00」を、麦と稲穂で表現しているところがステキ。ちなみにブルボンという名称は、高級感のある洋風菓子などにふさわしいブランド名として1963年に商標に使われたのが最初です

「100」の「00」を、麦と稲穂で表現しているところがステキ。ちなみにブルボンという名称は、高級感のある洋風菓子などにふさわしいブランド名として1963年に商標に使われたのが最初です

そして、同社の代名詞である「ルマンド」は、1974(昭和49)年に誕生。ネーミングは、世界に広がるお菓子になってほしいという想いを込め、フランス語で「世界」を意味する「ル・モンド」の造語として名付けられました。

近年はエクステンション(ブランド内の別ライン)のラインアップも拡充。こちらは2016年にデビューし、一時品薄になるほど大ヒットした「ルマンドアイス」のカップ版「ルマンドクランチアイス」

近年はエクステンション(ブランド内の別ライン)のラインアップも拡充。こちらは2016年にデビューし、一時品薄になるほど大ヒットした「ルマンドアイス」のカップ版「ルマンドクランチアイス」

「ルマンド」の味に関する特徴といえば、何層にも重なったクレープ生地と、内巻きのフォルム。あの独特な形は、くしゃくしゃにした紙を見た際にひらめいたそうです。ということで、改めて「ルマンド」からチェックしてみましょう。

「ルマンド」はパリサク食感とミルキーなココアクリームが絶品

「ルマンド」のスペックは、1本7.4gあたり37kcal、糖質5.2g

「ルマンド」のスペックは、1本7.4gあたり37kcal、糖質5.2g

「ルマンド」が誇るおいしさの秘訣は、幾重にも重なる薄い焼きクレープ生地と、それをやさしく包み込んだ甘さ控えめのココアクリームにあり。袋から取り出すと、ココアの香りはおとなしく、それよりはバターのほうが強く感じます。

王様の威厳すら感じさせる、堂々とした存在感

王様の威厳すら感じさせる、堂々とした存在感

ココアクリームの厚さは絶妙で、生地を引き立てるさりげなさ。そのため、実にアクティブなサクサク食感で、大げさに言うならパリパリとも表現できます。商品の外袋には「エクセレントクレープ」と書かれていますが、まさにエクセレント!

上手にスパッと切ることが難しい、繊細な層状の生地。空洞も見事で、こうした構造が軽やかなタッチにつながっています

上手にスパッと切ることが難しい、繊細な層状の生地。空洞も見事で、こうした構造が軽やかなタッチにつながっています

味はかなりマイルドなココアテイストで、カカオは控えめのクリーミーな方向性。生地は甘香ばしく、繊細なサクサク食感と相まって、口どけも上品に広がります。やさしくまろやかなココアクリームとの一体感も、バランスが最高ですね。やはりこのおいしさは唯一無二。もはや形容しがたいレベルに達した、「ルマンド味」と言っちゃっていいレベルです。

「ラングレイス」はサクサク生地とチョコレートが秀逸

お次は新商品の「ラングレイス」王子を実食。名称はラングドシャと、グレイス(「優雅さ」「美しさ」などの意味)の掛け合わせかと推測します。ちなみにラングドシャとは薄くて軽い食感のクッキーのことで、ブルボンの代表作で言えば「プチチョコラングドシャ」も同じジャンルですね。

「ラングレイス」は1本7.4gで、重さは「ルマンド」と同じ。エネルギーは39kcal、糖質は4.7gです

「ラングレイス」は1本7.4gで、重さは「ルマンド」と同じ。エネルギーは39kcal、糖質は4.7gです

「ルマンド」はクレープ生地なので、ラングドシャ生地の「ラングレイス」とは異なりますが、見逃せないのがその製法。先ほど「ルマンド」外袋に記載されている「エクセレントクレープ」に触れましたが、「ラングレイス」の場合はそこに「ルマンド製法」と書かれているじゃないですか!

「ルマンド製法」についてはCMで語られています。薄く焼き上げたラングドシャ生地を、「ルマンド」のクレープ生地のように繊細に折り重ねているとのこと

「ルマンド製法」についてはCMで語られています。薄く焼き上げたラングドシャ生地を、「ルマンド」のクレープ生地のように繊細に折り重ねているとのこと

まずは香りからチェックします。「ルマンド」よりもカカオの要素が濃く、ミルクチョコレートの甘い香りがふんわり。チョコクリームのコーティングは「ルマンド」同様か、少し厚め。

色以外は、長さも形状も「ルマンド」と共通

色以外は、長さも形状も「ルマンド」と共通

食べてみると、さりげない量のチョコクリームで包まれ、軽快なクリスピー食感をしっかり楽しめます。サクサク感は「ルマンド」のほうが強く感じますが、これは「ルマンド」がクレープなのに対して「ラングレイス」はラングドシャという、生地の違いかもしれません。ただ、思ったよりもラングドシャっぽいホロホロ感はなく、生地は明らかに「ルマンド」寄り。甘さに関しては互角に感じますが、香りやコク、ビター感などに違いがあるので、よりじっくり食べ比べて確かめます。

両者の違いはクリームとサクサク具合にあり

「ルマンド」と「ラングレイス」を交互に食べ比べると、その違いが浮き彫りに。やはり、少しだけ「ルマンド」のほうがサクサクしています。そして甘さはほぼ同じ。ただ、「ラングレイス」を包むチョコレートクリームは、「ルマンド」のココアクリームより存在感が強く、融点も低い(溶けやすい)気がします。

断面の比較はご覧のとおり

断面の比較はご覧のとおり

また、「ラングレイス」のほうがチョコレートの香りやコクなどが強く出ている分、濃厚な仕上がり。そのため、コーティングの量はほとんど同じですが、「ラングレイス」のほうが生地よりクリームを豊かに感じやすく、いっぽうで「ルマンド」のほうが生地の風味や軽やかさ、サクサク感を強く感じます。

やはり「ルマンド」は絶妙な設計バランスで、生地のやさしい甘香ばしさや、繊細なクレープ生地のテクスチャーをダイナミックに感じさせてくれます。改めて、半世紀にわたり愛され続ける名門の底力に敬服しました。

パッケージのサイズはほぼ同じですが、「ラングレイス」は11本入りに対し、「ルマンド」のほうが12本入りで、1本多いです

パッケージのサイズはほぼ同じですが、「ラングレイス」は11本入りに対し、「ルマンド」のほうが12本入りで、1本多いです

「ラングロールショコラノワール」は「ルマンド」「ラングレイス」とは別物

と、ここらでそろそろ紹介したいのが、「ラングレイス」と同日に発売された「ラングロールショコラノワール」です。この名は、往年の名伯楽「ルーベラ」の後継者かつ上位互換とされる「贅沢ラングロール」でおなじみでしょう。その名のとおり、ラングドシャを巻いたお菓子であり、その生地をチョコで包んだタイプが、この「ラングロールショコラノワール」です。

「ラングロールショコラノワール」は、1本8.1gあたり47kcal、糖質4.1g。意外にも、糖質は比較的控えめです

「ラングロールショコラノワール」は、1本8.1gあたり47kcal、糖質4.1g。意外にも、糖質は比較的控えめです

写真左が「ルーベラ」(現在は終売)。右が後継者の「贅沢ラングロール」です

写真左が「ルーベラ」(現在は終売)。右が後継者の「贅沢ラングロール」です

「贅沢ラングロール」はバターを36%とたっぷり使っているのが特徴ですが、「ラングロールショコラノワール」は“贅沢”ではないからか、2.5%と少なめ。とはいえ、それはチョコレートとの兼ね合いもあっての2.5%だと筆者は信じています。バターが強いと、チョコレートのコクやビター感がマスクされがちですからね。

「ルマンド」や「ラングレイス」よりも太く短めで、生地にぎっしり感があります。「ラングレイス」よりも、断然ラングドシャらしさの強い設計ですね

「ルマンド」や「ラングレイス」よりも太く短めで、生地にぎっしり感があります。「ラングレイス」よりも、断然ラングドシャらしさの強い設計ですね

生地に関しては、ココアパウダーを練り込んでいることもポイント。食べてみると、太い分「贅沢ラングロール」よりもワイルドで、しっとりしつつもサクサク感があり、ただ「ラングレイス」ほどのエアリーな軽さはありません。しかし、これはこれでチョコレートの魅力が詰まっていておいしいです。今回ご紹介した3商品の中で選ぶなら、「ラングロールショコラノワール」がいちばん好き、という人がいてもおかしくないでしょう。

こうして並べると、「ラングロールショコラノワール」が、かなり別物だということがわかるはず

こうして並べると、「ラングロールショコラノワール」が、かなり別物だということがわかるはず

【まとめ】万人向けは「ルマンド」だがチョコ好きならほかの選択肢もアリ

ここまで解説した3商品を比べてみると、「ルマンド」と「ラングレイス」は形も食感も似ていました。「ルマンド」はやさしい風味のココアクリームがサクサク生地を引き立て、上品な味わい。いっぽう「ラングレイス」は、チョコレートクリームのまろやかなほろ甘さを、サクサク生地とともに楽しめるお菓子です。

そして、サクサクしながらもホロホロでしっとりとした、ラングドシャ生地ならではの食感を、十分なチョコレートテイストで味わえるのが「ラングロールショコラノワール」でした。ラングドシャや、チョコレート菓子という観点から言えば、「ラングレイス」よりも「ラングロールショコラノワール」のほうが正統派です。

「ラングロールショコラノワール」は、しっとり感がある分、きれいに切りやすいのも特徴でした

「ラングロールショコラノワール」は、しっとり感がある分、きれいに切りやすいのも特徴でした

以上をより簡潔にまとめると、下記のとおり。ぜひ参考にしてください。

ルマンド:独自の層状サクサク生地と、やさしい甘さの黄金比が芳醇なブルボン王朝の最高傑作。万人向け

ラングレイス:「ルマンド」の魅力を備えたチョコレート風味菓子。チョコ好きの「ルマンド」ファンにおすすめ

ラングロールショコラノワール:しっとりしたホロホロ感とサクサクが調和した、チョコレート味のラングドシャ。「ブルボン プチシリーズ」の2トップ「プチチョコラングドシャ」や「プチチョコチップ」、また「ブルボン 濃厚チョコブラウニー」が好きな人は必食

ぜひ実際に食べ比べを。その際、「ルマンド」と「ラングレイス」は繊細な生地が飛び散りやすいのでご注意ください

ぜひ実際に食べ比べを。その際、「ルマンド」と「ラングレイス」は繊細な生地が飛び散りやすいのでご注意ください

総評としてはどれもおいしく、“推し”をひとつに絞るのは難しく感じましたし、チョコ好きかどうかなどで好みは分かれると思います。ただ、名作「ルマンド」のDNAを持つ「ラングレイス」は直系の王位継承者であり、ブルボン王朝の貴公子と呼ぶにふさわしい傑作であることは間違いありません。50周年を迎えた「ルマンド」と、創業100周年のブルボン、次の時代を見据えた取り組みにも注目です。

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中山秀明
Writer
中山秀明
グルメ、ファッション、カルチャー、ライフスタイルを得意とする編集プロダクションを経て独立し、フードアナリストの資格を取得。内食・外食のトレンドやカルチャーに詳しく、深掘りレビューやインタビューなどを得意とし、さまざまな雑誌やウェブメディアをメインに、編集と撮影を伴う取材執筆を行っている。酒類や調理家電、タバコ関連にも強い。時折、テレビ番組や大手企業サイトに食の有識者として企画協力することも。
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しえる(編集部)
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しえる(編集部)
生活雑貨・食品に加え、ウォーターサーバーなど、サービス系商品の記事をメインに担当している2児の母。自称「ポテチマスター」。ポテトチップスを中心に1日3袋のスナック菓子をたいらげるお菓子狂です。
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