今の時代にちょうどいいウイスキーの誕生です!
それが、2024年10月1日に発売された「ニッカ フロンティア」。
「ニッカ フロンティア」。500mL入りで2,200円(税込)
「ニッカ フロンティア」は、2024年で創業90周年を迎えたニッカウヰスキーの新作ウイスキーです。同社の創業者は、今も続くジャパニーズウイスキーブームのきっかけと言われる、朝ドラ「マッサン」の主人公・竹鶴政孝(ドラマでの名は亀山政春)氏であり、“ジャパニーズウイスキーの父”としても有名。
写真左が竹鶴政孝氏で、右が妻のリタ氏(「マッサン」ヒロインの、エリーのモデル)。写真は以前筆者が訪れた、ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所にて
そんなアニバーサリー商品である「ニッカ フロンティア」は、味もハイクオリティなことが期待できます。それに、デザインからしてかっこよく、500mL入り2,200円(税込)と価格も高すぎません。これは一般的な700mLで換算すれば3,080円となり、ウイスキーの既存銘柄の多くに値上げが続くなか、ありがたい話なのです。
こちらは同社の前作、2020年に発売された「ニッカ セッション」。700mLで4,620円(税込)でした(デビュー時の参考小売価格は4,180円)
とはいえ、実際に飲んでみたら「あれ?」なんてことも、なくはありません。また、今回「ニッカ フロンティア」が発売されたことによって、筆者には同社の中でほかに気になるウイスキーの存在が出てきました。そこで、開発担当者へのインタビューをお願いし、背景などを教えてもらいました。もちろん、飲み比べによる味わいレビューもお伝えします!
聞いたのはこの方、ニッカウヰスキーのグローバル事業戦略部・坂本英一さん。日本を含むグローバルのプロダクトブランディングを担い、「ニッカ セッション」も開発時から担当しました
「ニッカ フロンティア」の発売背景にあったのは、ニッカウヰスキーの志と、市場動向。まず前提として、ウイスキーは以下の4つのセグメントに分けられます。
プレステージ(700mLの平均店頭価格が5,000円以上)
プレミアム(同2,000円以上)
スタンダード(同1,000円以上)
エコノミー(同1,000円未満)
同社は特に、プレミアム以上のカテゴリーにおけるチャレンジングの強化を進めています。
写真の銘柄では、左端の「フロム ザ バレル」「スーパーニッカ」と、青い「ニッカ セッション」がプレミアム。「シングルモルト余市」など中央の3本がプレステージ、右端の「ブラックニッカ クリア」がスタンダードやエコノミーに分類されます
より具体的には、世界のプレミアムカテゴリー以上のブランドにおいて、ニッカウヰスキーは現状40〜50位であるところ、将来的にトップ10を目指そうということで生み出されたのが「ニッカ フロンティア」なのです。また、日本のウイスキーは家庭用市場が伸長しており、特にプレミアムカテゴリーが顕著というトレンドも開発背景にあります。
国内におけるブランドイメージを刷新することも狙いです。日本でニッカウヰスキーは老舗というのもあって伝統的な印象ですよね。でも実は当社、英国誌「ドリンクス・インターナショナル 2024」のワールドウイスキーカテゴリー(スコッチ、アメリカン、アイリッシュ以外)で、トップ・トレンディング・ブランド部門第1位に選ばれまして、海外ではイノベーティブなブランドと認知されているんです。
その理由は、「フロム ザ バレル」や「カフェグレーン」(後述)といった斬新なプロダクトだったり、カクテルにも割り負けない個性的な味だったりするんですけど、そもそも創業者自身が日本におけるウイスキーの開拓者だったわけで。そんなフロンティアスピリットを表現したく、それがそのまま「ニッカ フロンティア」の名になっています
1985年から発売されているロングセラーの「フロム ザ バレル」は、500mLで3,520円(税込)。四角いボトルやスタイリッシュなラベルデザインも特徴です
「ニッカ フロンティア」は、竹鶴氏の開拓精神を味でも表現するために、創業の地である余市蒸溜所のヘビーピートモルト(※1)原酒をキーモルト(ブレンドの中核となるモルト原酒)に採用しています。ブレンデッドウイスキーでありながら(※2)、モルトウイスキーのブレンド比率を51%以上にした贅沢なつくりであり、さらに、常温でろ過する「ノンチルフィルタード」(※3)とすることで、香味成分が豊富に残り、豊かな香りと複雑な味わいを感じられるとのこと。
※1:スモーキー香が強い大麦麦芽、麦芽、モルト
※2:ブレンデッドウイスキーは、モルト原酒とそのほかの穀物や連続式蒸溜機でつくるグレーン原酒を調合したウイスキーで、単一蒸溜所のモルト原酒のみでつくる「シングルモルト」よりは比較的安価
※3:一般的なウイスキー製造では、にごりや澱(おり)の発生を防ぐために冷却ろ過(チルフィルタード)を行うところ、あえて常温でろ過することをノンチルフィルタードと呼ぶ
ボトル下部にもロゴが刻印されています
また、ウイスキーは樽出し後に割り水をして40〜43%程度のアルコール度数に下げるのが通例ですが、「ニッカ フロンティア」の割り水は少なく、アルコール度数は48%。ハイボールやカクテルにしても、割り負けない味の厚みも魅力です。
今夏から12月25日まで、東京・表参道で展開している「THE NIKKA WHISKY TOKYO」も、ブランドイメージ刷新の取り組みのひとつ。バーエリアでは、世界中で活躍するトップバーテンダーとコラボしたカクテルが楽しめます
では、実際の味はどうなのかをチェックしていきます。まずは「ニッカ フロンティア」をストレートで飲んでみると、熟したオレンジのような果実味が優雅に香り、味わいは樽のコク深さをまとった、ウッディな甘みが印象的。
トップノートは柑橘のフルーティーさ。スモーキーフレーバーは想像よりソフトですが、足元で下支えする貫禄があり、大人なビターテイストを演出します
甘やかなイメージはバニラを思わせる華やかさで、アルコール度数48%ならではの厚みもナイス。この香り高さやエレガントな味わいは「フロム ザ バレル」(後述)に通じますが、「ニッカ フロンティア」も実に贅沢。価格以上の価値を体験できることでしょう。
少し加水したり、ロックで飲んだりすると、よりフルーティーなニュアンスやビター感を楽しめると思います
スモーキーフレーバーについて坂本さんからは、「『ニッカ フロンティア』のメッセージとして“スモーキー薫る、新境地。”を掲げていますが、ウイスキー愛好家の方はギャップを感じるかもしれません」という話もありました。
たとえば、スモーキーフレーバーの強い銘柄が多いアイラ島のスコッチウイスキーと比べれば、「ニッカ フロンティア」はかなり抑えめですね。もちろん、ピート(スモーキー香の元となる泥炭)をもっと効かせて、コアなファンの方に刺さる味を目指すこともできました。ただ、そこまでの個性を狙ったわけではありません。
私たちが「ニッカ フロンティア」で目指したいのは、もう少し間口の広いキャラクター。プレミアムカテゴリーの入門として、ウイスキーの奥深い世界への入口として親しんでいただける、ベストバランスを追求しました
坂本さんは「コアターゲット層を飲み方でたとえるなら、ハイボールを親しんでいらっしゃる方ですね。ぜひそのベースを、『ニッカ フロンティア』でお試しいただけたらと思います」とも
確かに、ウイスキーのスモーキーフレーバーになじみがない飲み手であれば、「ニッカ フロンティア」でも十分にピートの個性は感じられるでしょう。スモーキーなウイスキーの入門にも最適な1本だと思います。
さて、ここまでで何度か名があがっている「フロム ザ バレル」は、「ニッカ フロンティア」とスペック的な要素が近いのですが、味はどう違うのでしょうか。また、筆者としては一部ファンの間で噂されている「フロム ザ バレルは終売するかも?」の真偽も気になります。
というのも、年々「フロム ザ バレル」は入手困難となっており、そのいっぽうで「ニッカ フロンティア」が新発売されたことが何かに関係している……とも考えられるからです。
すると、坂本さんは「安心してください。『フロム ザ バレル』は終売しませんよ!」と、にっこり
「フロム ザ バレル」は、ニッカが海外進出するうえで最も注力したブランドのひとつであり、国内に留まらず海外にも多くのファンがいらっしゃいますので、その需要にも応えていきたいと思っています。しかしながら、供給の問題があり、品薄であることは事実です。申し訳ありません!
「フロム ザ バレル」に限った話ではありませんが、需要に追いつけるだけの商品を潤沢に生産できていない点は、当社の課題だと認識しています。「ニッカ フロンティア」はその点を踏まえ、少しでも安定供給に近づけるように努めてまいります。「フロム ザ バレル」と「ニッカ フロンティア」は、容量や価格帯など、似ている側面もありますが、構成原酒も異なりますので、飲み比べればキャラクターの違いがわかるはず。ぜひお試しください
「フロム ザ バレル」は、いわば“樽出し”という意味で、アルコール度数は「ニッカ フロンティア」の48%をさらに上回る51%です
飲んでみると、確かに! 「フロム ザ バレル」はクリーミーな表情が豊かで、より甘やか。51%のボディもさすがで、コク深くどっしりしています。余韻のビター感は「ニッカ フロンティア」にも似ていますが、果実味やピートはおとなしく、この点は大きく違うと感じました。
「ニッカ フロンティア」はモルトの原酒比率を高くしていますが、「フロム ザ バレル」のモルト比率はそこまで意識的ではありません。いっぽう、カフェ式連続式蒸溜機でつくられるグレーンの原酒香味は、「ニッカ フロンティア」に比べて強めに出る構成で、特有の伸びやかな甘みを感じられると思います
宮城峡蒸溜所にある、世界でも稀少な「カフェ式連続式蒸溜機」でつくられるグレーン原酒。その酒質を生かして熟成、ブレンドされたグレーンウイスキーが「ニッカ カフェグレーン」です(写真は宮城峡蒸溜所にて)
2銘柄の味わいの違いをまとめると、「ニッカ フロンティア」はオレンジのような果実味と、心地よく香るスモーキーフレーバーが印象的。いっぽうの「フロム ザ バレル」は、アルコール度数が3%高い分、ボディや飲みごたえにいっそう厚みがあり、香味にはクリーミーな甘やかさを豊かに感じます。
ちなみに、この2銘柄がともに500mLである理由は?
「ニッカ フロンティア」が500mLである大きな理由は、トライアル障壁を低くしたいという狙いです。量も価格も、700mLより試しやすくなりますから。ただし「フロム ザ バレル」の販売当時は今とトレンドが異なりますし、トライアルを意識したわけではありません。それよりも、樽出しの凝縮感をどう表現するかという、ブランドコンセプトやメッセージの打ち出し方として500mLでデザインしています
「ニッカ フロンティア」の飲み方に関して、坂本さんがおすすめを教えてくれました。それが、炭酸水の上にウイスキーを浮かべるフロートハイボール。コツは炭酸水を先に注いでから、スプーンの先端などを使ってウイスキーをやさしく静かに注ぐことです。
フロートハイボールは、2色の美しいカラーも魅力。詳細なレシピは公式サイトにて
ヒントになっているのは、昔からあるウイスキーフロートというカクテルです。ウイスキーと水の比重の違いを利用してつくる、いわば味や色の変化を楽しめる水割りですね。フロートハイボールは「ニッカ フロンティア」の魅力的な原酒の風味を存分に楽しめるうえ、炭酸割りの爽快感も味わえるのがポイント。特に味わいとしては、ひと口目のダイナミックさがウリであり、「ニッカ フロンティア」ならではの濃縮感を堪能いただけるはずです!
つくるのが簡単かつ、見た目が華やかでインパクトがある点も、坂本さんがフロートハイボールをおすすめする理由とか
飲んでみると、うん、これもイイですね! 「ニッカ フロンティア」のフロートハイボールは加水によって香りが開く分、フルーティーさや、ハチミツを思わせる甘やかな表情が豊か。余韻にはウッディなコクと、ビター感やスモーキーフレーバーが爽やかさと調和して、ストレートで飲むよりも心地よく感じられます。
運がよければ、ノベルティを付けているお店も!
味わい的にも価格面でも、デイリーのウイスキーよりワンランク上のリッチな銘柄を楽しみたい人に、「ニッカ フロンティア」はうってつけ。取り扱い次第では、コンビニでも販売されています。ぜひ、いろいろな飲み方で味わってみてください。