今年1月のCESの際に新製品として紹介されたGO:KEYSは、楽器初学者向けのキーボードとしてデビューした。同シリーズにはピアノオンリーのGO:PIANO、スマホ配信用ミキサーのGO:MIXERがある。
GO:KEYSは、楽器が弾けなくてもパターンを組み合わせるだけでバンドサウンドが得られる自動演奏「LOOP MIX」を搭載するなど、初心者がくじけて投げ出さないような「お楽しみ」機能満載キーボードだ。だがそれ以外の部分で楽器経験者に「これはいい!」としてバカ売れしているという。
むしろ楽器経験者にバカ売れ、GO:KEYS
かく言う筆者も楽器経験者で、子どもの頃からピアノを習い、上京してからは真剣にバンド活動をやっていた時期もある。実際に経験者視点から見ると、GO:KEYSは、価格と機能バランスが実にちょうどいいのだ。
まず鍵盤だが、多くの入門キーボードはミニ鍵盤だったり49鍵だったりするものだ。しかししっかり両手で弾ける経験者にとっては、それでは物足りない。一方GO:KEYSは、オルガンタイプではなくピアノタイプの61鍵フル鍵盤である。
鍵盤がピアノタイプで弾きやすい
キータッチはさすがにウエイトを使ったピアノタッチではないが、スッと手に馴染む弾きやすさがある。ベロシティにも対応しており、3段階で音色が変わる。
両側にスピーカーがついて、場所を選ばないのに加え、充電式単三電池6本で6時間動く。もちろんイヤホンも使えるほか、Bluetoothスピーカーにもなるので、スマホから曲を流しつつそれとミックスしてキーボードの音を聴くことができる。
スピーカー内蔵で、電源ONですぐ演奏
楽器部屋などなくても、キッチンでもリビングでも、パッと出してどこでも練習できるのだ。これで価格.comの実売では瞬間風速で4万円を切るタイミングがある。
楽器初心者で4万円出すとなると、やはりちゅうちょするだろう。逆に経験者のほうが、4万円でこれだけできれば十分という割り切りができる。
搭載されている音源は、ピアノ、オルガン、ストリングスなど8グループに分けられており、それぞれに対してかなりのプリセット数がある。表にまとめてみた。
音色はグループから選ぶだけ
ローランドといえば、シンセサイザーでは名機と呼ばれる機種がいくつもあり、本機の中でもJuno106やJupiter 8の特徴的なブラス音もプリセットされている。D-50の象徴的なキラキラ音「Fantasia」等は、マニアにもたまらないはずだ。
だがそこにこだわっているわけでもない。Van Halenのヒット曲「Jump」のイントロで聞けるオーバーハイムのブラスに似た音なども含まれており、ピアノもフェンダー・ローズやDXピアノなど他社が確立した音も収録されている。
こうした節奏の無さがエントリー機の特徴であるが、その現役時代を知る人であれば、その音を出すのにいくらかかるのかを知っているはずだ。それゆえに経験者には、大変なお得感を感じさせるのである。
勝手に自動演奏してくれる「LOOP MIX」は、自分で音楽を作るというよりも、やらされてる感が強い機能だ。初学者はすぐに飽きるかもしれない。だがイイカンジのループを録音して再生すれば、それをバックにアドリブの練習ができる。初心者はまずアドリブの練習などしないので、こうした使い方も経験者ならではだろう。
LOOP MIXはアドリブ練習に最適
GO:KEYSは、昔真剣にバンドやったんだけど、もう10何年楽器触ってないな、という人にちょうどよいキーボードだ。腕に覚えのある人ほど、「いや十分だなこれ」と納得できるだろう。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITなどのメディアを独自の視点で分析するコラムで人気。メルマガ「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」も配信中。