コンサバ商品と思われているテレビも、実は数年ごとに新しい波が来ている。3D、スマートTV、4Kと来て、一昨年あたりから注目されているのがHDRだ。
ひと口にHDRと言っても、中身はHDR10とHLGの2つがあることはご存じだろうか。大雑把な理解としては、映画やゲームはHDR10、テレビ放送はHLGと思っておけばいいだろう。
現在市場に出ているテレビは、HDR10が先にサポートされた。HLGはまだ本放送が始まっていないため、サポートが遅れており、2015〜6年頃に先行して発売されたテレビでは、後日ファームアップで対応という形になっているものも少なくない。2017年発売のモデルは、ほとんどがHDR10とHLGの両対応となっているようだ。
筆者も仕事柄、HLGで撮影できるデジタルカメラをレビューする機会も多い。これまではいちいち対応テレビも一緒にお借りしていたのだが、モノが大きいだけに設置するのも返却するのも大変だ。もうそろそろ自分でも買わないと、と重い腰を上げた次第である。
筆者はこれまで、PCモニター代わりに40インチの4Kテレビを使っており、できればこれをスポッと入れ替える形でHLG対応にしたかった。したがって40インチでHLGという条件で探したわけだが、これに該当するのは東芝「REGZA 40M510X」しかなかった。HLG対応4Kテレビでは、これが最小で最安モデルとなる。
仕事モニターとしてピッタリサイズ
東芝と言えば、2015年の粉飾決算事件に端を発し、多くの事業が整理されているのはご存じだろう。REGZAに代表される黒物部門は、子会社である東芝映像ソリューションへと移管されたが、2018年2月末に発行済み株式の95%を中国ハイセンスグループへ譲渡した。
東芝映像ソリューションはハイセンスの子会社ということになるが、REGZAを含めた「東芝」の名前の使用権はそのまま残る。開発・サポートもそのままということなので、当面は心配ないだろう。
40M510Xは、筆者が購入したときは8万円台前半で安定していたが、そろそろ新製品が投入されるのか、3月に入ってまた値が下がり始めた。すでに発売当初の半額近くになっており、かなりのお買い得モデルとなっている。
東芝REGZAは、細かい画質調整ができるのがウリだ。特にHDMI入力に関しては、「ライブ」「映画」「ゲーム」「PC」「写真」といった専用の「映像メニュー」が選択できるのに加え、4KでもBDなのか放送なのかを選んで調整する「コンテンツモード」を備える。
細かい映像メニュー
映像ソースごとの特性に合わせるコンテンツモード
しかもこれらの設定は、4つのHDMI入力に対してそれぞれセットできるため、レコーダやゲーム機は入力の何番に何をつなぐと決め打ちしておけば、入力切り換えだけでそれ専用のトーンに切り替わる。
HDR10とHLGの切り換えは、HDMI信号のメタデータを判別して、自動切換となっている。メタデータの内容を細かく表示する機能があり、今どっちのモードで動いているのかがわかる。
下の画面はHDR対応となったAmazon Fire TVの新モデルを接続したところだが、レンジ変換特性がST 2084と記載されている。これはHDR10で採用されているPQガンマのことで、現在HDR10モードで動いていることがわかる。HLGモードの際にはSTD-B67と表示されるはずだが、まだ確認していない。
信号のステータスが確認できる
昨今のテレビにしては珍しく、下部に正面向きのスピーカーを備えている。正面向きスピーカーは、ソニーが両脇に付けたモデルがヒットしているところだが、従来の下向きに反射音を聴かせるタイプでは、どうしても音が奥まってしまい、台詞などが聞きづらい。スピーカーはオンキヨーとの共同開発だそうで、そのサイズから低音は期待できないが、音の明瞭度が高い。
オンキヨーと共同開発の正面向きスピーカー
また仮想音源技術を使い、スピーカー位置ではなく、画面の中央から音が聞こえるように補正されており、ドラマなどでは自然な視聴ができる。
PCモニター兼、HLG対応カメラの映像確認のために購入したのだが、HDRコンテンツも十分楽しめる作りとなっており、こうしたテレビがすでに10万円しないという市場のスピードの早さに、驚くばかりである。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITなどのメディアを独自の視点で分析するコラムで人気。メルマガ「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」も配信中。