特集
TFの玩具を30年以上作ってきた國弘高史さんを直撃取材

“トランスフォーマーの神様”が語り尽くす! 変形ロボット開発秘話[第1回]

映画「トランスフォーマー」シリーズの変形ロボットは、大手玩具メーカーのタカラトミーから数多く発売されている。なかでも、劇場版映画に合わせて発売されるロングセラーの「ムービーシリーズ」や、映画の歴代キャラクターをスケール統一デザインで再設計した「スタジオシリーズ」が人気だ。

本稿では、そんなタカラトミーが手がける「トランスフォーマー」(TF)の変形ロボットの魅力に迫るべく、変形ロボットを30年以上作り続けてきた、同社ボーイズ事業部の國弘高史さんに話を聞いた。全3回にわたってお届けする。

【目次】
第1回 TFトイ初期の苦労と“「リベンジ」版オプティマスプライム”
第2回 TFの変形ロボットの作り方
第3回 國弘さんが選ぶ「お気に入り5選」

株式会社タカラトミー
ボーイズ事業部 シニアスペシャリスト
國弘高史さん
【PROFILE】
1960年生まれ。1984年にタカラ(現タカラトミー)に入社。1985年から現在まで、トランスフォーマーをメインに30年以上にわたって変形玩具を作り続けてきた。ファンの間で不屈の名作とされる、2009年公開の映画第2弾「トランスフォーマー/リベンジ」版の変形ロボ「オプティマスプライム」(「RA-01オプティマスプライム」)をデザインしたことでも有名

第1回
TFトイ初期の苦労と“「リベンジ」版オプティマスプライム”

たった2枚のイラストから変形ロボットを開発

――昨年の2017年、劇場版映画第1弾「トランスフォーマー」の公開から10年を迎えました。まずは、これまでの「ムービーシリーズ」について教えてください。「スタジオシリーズ」が登場する前の「ムービーシリーズ」の新製品は、基本的に映画の公開前に発売になるので、細かい情報がない中で制作されてきたそうですね。

國弘 そうなんです。これは仕方のないことなんですけれど、制作の段階ではまず情報がないんです。基本的に、私たちも映画が完成するまでは本編映像は観られませんので、ロボットとビークルそれぞれ斜め前と斜め後ろから見たイラストの各2枚だけが映画制作会社から届いて、それを頼りに作っていくんです。

――つまり、細かい情報、というか、ボディのデザインの詳細はわからないわけですか……。

國弘 新キャラクターはそうですね。2作目以降の、「オプティマスプライム」や「バンブルビー」など、前作とあまり変わりがないキャラクターに関しては、前作をコマ送りして観られるんですけど、アクションシーンの動きはやっぱり速すぎてぶれるので、結局わからないぞってなったりとかもあります(笑)。

――映画公開直前まで情報をもらえないのは、何か理由があるんでしょうか。

國弘 昔の特撮映画、たとえばゴジラ映画とかであれば、まず着ぐるみを作るじゃないですか。だからそれに合わせて玩具も作れる。だけど最近の映画の場合、役者さんが演技している段階では、ロボットはCGのフレームだけで事足りるんですよね。映画をプリントするギリギリまで、ロボットのデザインは修正できるわけです。

――つまり情報をもらえないと言うより、厳密に言うと世の中にまだ最終情報がないんですね。

國弘 正式なデザインは決まっていないと思います。CGのディレクターが最後の最後に変えてしまうってこともありえますから。

――実際にこれまで、いきなり変わってしまったモデルはありますか。

國弘 3作目の映画(2011年公開の「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」)の時に、「DA15 ジェットウイングオプティマスプライム」を発売したんです。

「DA15 ジェットウイングオプティマスプライム」。ジェットウイング部分は、ビークルモード時(写真下)にも合体できる

――國弘さんがデザインした“「リベンジ」版オプティマスプライム”に若干アレンジを加えて、背中に装着する「ジェットウイング」が付属するセットですね。確かに映画に出てくるものとは、羽根の部分の形状が違いましたね。

國弘 あれは制作段階で私が見ていたイラストとは、相当似てるんですよ。でも完成した映画を観たら違う形になっていた(笑)。そういうことはままありますね。たとえば今回、「スタジオシリーズ」で発売したばかりの「ブロウル」(「SS-12 ブロウル」)は、1作目の時に小型の「デラックスクラス」と大型の「リーダークラス」という2つのサイズのモデルを、異なるデザイン&変形で発売してるんです。今回の「スタジオシリーズ」は違うんですけど、その1作目の2製品は私が担当しました。で、1作目の時に「リーダークラス」で出したのは、「オプティマスプライム」「メガトロン」、そして「ブロウル」の3点だけだったんです。

――「ムービーシリーズ」は、小型の「デラックスクラス」、中型の「ボイジャークラス」、大型の「リーダークラス」と、サイズによって分かれていますが、「リーダークラス」は1番大きいサイズのシリーズですね。

國弘 「ブロウル」は、「リーダークラス」で出すぐらいだから、たぶん映画でも大活躍するはずだと思って頑張って作ったんです。でも、劇中では最後のほうにチョロッとだけ出てきて、すぐやられるっていう……。あれなら、「ボーンクラッシャー」を「リーダークラス」で作ったほうがよかったなって(笑)。だからつまり、誰も映画が完成するまで、何がどうなるのかわからないってことです。

――デザイン段階ではあまり情報がないということは、ある程度認知されているので、そこも含めて「ムービーシリーズ」を楽しんでいるファンが多いですよね。ちなみに1作目の時から、同じような環境だったんですか。

國弘 そうですね。特に1作目の時って誰もまだ実際に動いてるものを見てないじゃないですか。イラストだけだと、それがどういう構造でどんな動きするかっていうことはわからない。だから試写を観て初めて、あいつらは中にフレームがあって、それに車のパーツがパンパンパンと付いていて、それが動くと相対位置が変わる仕組みになっているということがわかったんです。だから2作目以降は、そういった構造を想定して作れるようになりましたね。フレームがあって、そこにパーツが付いている形にすると、自然とシルエットや形はもちろん、雰囲気も似てくるんです。

左が実写映画1作目「トランスフォーマー」の公開前に登場した「MA-01 オプティマスプライム」。右が2作目「トランスフォーマー/リベンジ」公開前に登場した「RA-01 オプティマスプライム」(以下、“「リベンジ」版オプティマスプライム”。現在は販売終了)。同じキャラクターだが、雰囲気が一気に映画に近づいた

“「リベンジ」版オプティマスプライム”は偶然から誕生した

――その2作目の映画が始める前には國弘さんがデザインされた名作“「リベンジ」版オプティマスプライム”が発売されていますよね(何度も新バージョンの発売が行われ、2018年3月にも日本語音声が入ったバージョン「MB-17 オプティマスプライム リベンジバージョン」が発売中)。
“「リベンジ」版オプティマスプライム”は、僕もバージョン違いをいくつも所有しているんですが、大人が何十回変形させても飽きない。ある意味、変形玩具の完成形のような玩具ですが、あの名作が生まれた経緯を教えてください。

國弘 ひとつ目(「MA-01 オプティマスプライム」)を作ったあと、2年後に映画の続編をやることが決まって、これを出したんですよ。普通、そのスパンだったら、そのまま同じ製品を売ってもいいじゃないですか。でも、映画2作目の公開前に、劇中で「ジェットファイアー」と合体することが明らかになったんです。それで、玩具も新規で制作して合体を再現することになった。だから初めは想定外だったんです。

「RA-13 ジェットファイアー」(現在は販売終了)。戦闘機が“杖をついたおじいちゃんロボット”に変身! さらに「オプティマスプライム」と合体する

――劇中の「オプティマスプライム」の基本デザインは、変わってないですもんね。

國弘 そうなんですよ。で、これも映画の2作目が公開される前に発売になるじゃないですか。そうすると新しいものを作っても、同じ価格帯で同じようなロボットだと違いがわからないし、誰も買う気にならなかったら嫌だなというのがありまして。どうすればいいかなと考えた。お客様が玩具売り場でパッケージを見た時に、“映画のオプティマスプライム”とそっくりだったら、「これは前モデルと違うやつだ!」と、気づいてもらえるかなと思って。だから、できる限り似せることを考えて作りました。

――ちなみに、2作目の「トランスフォーマー」の変形ロボットは特に、劇中の変形と似ていると言われてますよね。

國弘 よくそう言われますね。

――“「リベンジ」版オプティマスプライム”も似ているように思うのですが、作中の変形を意識してデザインされてるんですか。

國弘 それはないですね。たまたまです。もちろん何度も変形シーンを観たんですけど、細かく観続けると最後は、「無理じゃん!」ってなりますから(笑)。“「リベンジ」版オプティマスプライム”の場合は、変形よりも中にフレームがあったり、内部の生き物っぽいところを再現することをまず考えてました。

――映画第1作で動くキャラクターを観たうえで、初めてデザインする「ムービーシリーズ」というのも大きかった?

國弘 そう、劇中のあの生き物っぽい雰囲気を出したかったんです。だから胸を押すと奥の赤いLEDが光って言葉を話すギミックを入れたりしました。実はそのために電池を入る必要が出てくるので胴体がごついんですけど、そこに目がいかないように手足のバランスとデザインでごまかしているんです。ただ「ジェットファイアー」と合体できる機構を入れることが大前提としてあったので、変形に関しては、それを考えながら作ったために偶然こうなったという部分が多いですね。

“「リベンジ」版オプティマスプライム”と「ジェットファイアー」が合体するとこんな感じ

“「リベンジ」版オプティマスプライム”と「ジェットファイアー」が合体するとこんな感じ

――その制約が奇跡的に作用したと。
構造面で特にこだわってる部分はありますか。

國弘 変形ロボットによいポージングをさせるためには、関節がよく動かないといけないんですけど、そもそも自立もさせないといけない。いろんなポーズをつけるということは、「ボールジョイント」(さまざまな角度に動くボール型の関節パーツ)が必要だということなんですね。でも、「ボールジョイント」はうねうね動いてしまい、どうしても関節が弱くなる。だから“「リベンジ」版オプティマスプライム”の「ボールジョイント」には、角度を調節・固定するための「クリック」機能を採用しました。これはこの時に初めて取り入れたんですが、少しだけど効いているんです。

「ボールジョイント」に小さなポッチが付いたことで、さまざまなポージングが可能になった

「ボールジョイント」に小さなポッチが付いたことで、さまざまなポージングが可能になった

――この小さい突起と溝が、ボディを支えてるんですね。制作期間は長かったのですか。

國弘 相当時間がかかりましたね。で、なんとか合体できるように作ったんですけど、合体時と各ロボット単体の時のパーツ数がどうしても合わない。でも、どうにかこうにか一体変形できるように作って、完成した映画を観たら、「ジェットファイアー」本人が死んでしまって、「オプティマスプライム」とはパーツ取りをするような形で合体してて。「全然違うやん、バラッバラやん!」って(笑)。それは合わないはずやなって。
 
――わはは! もう映画を観るまでは何もわからないんですね。それ以降に別のサイズとかで何点も「オプティマスプライム」の製品は出ていますが、変形機構が“「リベンジ」版オプティマスプライム”のものに近い製品が多いですよね。2017年に発売された「マスターピース版」(「MPM-4 オプティマスプライム」)も、“「リベンジ」版オプティマスプライム”がベースになっている気がしたんですが。

國弘 それも別にそうする必要はなかったんですけど、担当者が「いろいろ考えた結果、“『リベンジ』版オプティマスプライム”に近い感じがなんかキマる」と言ってたんです。そういう意味で、“作りやすい正解”が偶然あの時に出たんやないかなと思っています。

――では、「ジェットファイアー」との合体がなかったら、あの変形パターンにはなっていなかった?

國弘 確かに制約があったうえでこうなったわけですからね。それがなかったら、どうなってたかは全然わからないですね。

――“「リベンジ」版オプティマスプライム”は、エポックメイキングというか、現在のほかの変形ロボット玩具にも大きな影響を与えてますよね。現在主流の変形機構のベースが詰まっている気がします。

國弘 自分では意識はしてないです。しかし、そう言ってもらえることが多いのは事実ですし、他の開発者みんなの発想のもとになっている部分は少しあるのかもしれないですね。

第2回 TFの変形ロボットの作り方へ続く。

河上拓

河上拓

「日経エンタテインメント!」から「月刊ムー」まで、エンタメやホビーを中心に幅広く活躍するマルチライター。トランスフォーマーなどの変形玩具、海外ボードゲームに詳しい。

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