2019年3月22日より、「トランスフォーマー」シリーズ最新映画「バンブルビー」が劇場公開される。
公開に先立ち、同作に登場する「オプティマスプライム」のアクションフィギュア「レジェンダリーオプティマスプライム」がタカラトミーより発売。2014年に発売された傑作フィギュア「クラシックオプティマスプライム」の変形パターンを踏襲し、より大型になったモデルだ。
メーカー希望小売価格は、7,344円(税込)。
タカラトミー「レジェンダリーオプティマスプライム」
「トランスフォーマー」に興味ない人からすれば、パッと見、“いつものオプティマスプライム”に見えてしまうはず。だが実際には、各部においてこだわりを尽くした改善が施されており、往年の変形玩具ファンも納得の仕上がりとなっている。
本稿では、同フィギュアの開発を担当したタカラトミーのボーイズ事業部、大野光仁さんのコメントを交えて、「レジェンダリーオプティマスプライム」の魅力に迫る!
「レジェンダリーオプティマスプライム」(以下、レジェンダリーオプティマス)は、名作フィギュア「クラシックオプティマスプライム」(以下、クラシックオプティマス)をベースに、サイズを拡大し、多くの改変を加えた新作フィギュア。映画「バンブルビー」の公開に先駆け、2018年10月に発売されるや否やファンの間で話題となった本フィギュアは、どのような経緯で開発されたのだろうか。大野さんは次のように語る。
「映画『バンブルビー』の公開が決まり、日本公開に合わせて商品展開を企画している中で、『バンブルビー』の商品はたくさん企画されていましたが、『オプティマスプライム』(以下、オプティマス)の商品がラインアップにありませんでした。そのため、限られた時間の中で映画公開に合わせるべく、『オプティマス』の商品を開発することになりました。ただし、当時は映画に登場する『オプティマス』のデザインに関する情報がなかったんです」
実写映画「トランスフォーマー」シリーズの映画公開前に発売されるフィギュアは、開発段階での確定情報が極端に少ない。資料として届く限られたアングルのイメージイラストだけを頼りに、タカラトミーの担当者はハズブロ社と連携しながらロボットからビークルへと変形するフィギュアをデザインする。しかも、そのイラスト資料はあくまで初期段階でのコンセプトアートに過ぎないため、その後、撮影中に変更が加えられることもよくある。映画のキャラクターはCGで作られるため、比較的直前までデザイン変更も可能なのだ。
【参照記事】
“トランスフォーマーの神様”が語り尽くす! 変形ロボット開発秘話[第1回]
そういった事情から、公開前に発売されるフィギュアと、実際の作中に登場するキャラクターのビジュアルが、ずいぶんと異なることが発生する。しかしそういった実写映画版「トランスフォーマー」のフィギュア開発事情とその苦労は、近年、ファンの間にも浸透してきたため、映画公開前に発売される新作フィギュアに関しては、「少ない情報を開発者がいかに解釈し、彼らの想像力によってどのようなフィギュアが生み出されるか」に注目するという、一種独特な視点で楽しむファンが増えてきている。
ちなみに、今回の映画「バンブルビー」に登場する「オプティマス」は、ロボットモード時の姿が「クラシックオプティマス」よりも「G1コンボイ」に近い造形に仕上がっていた。
わずかな資料から、想像力を駆使して複雑な変形玩具が製作されていること自体が驚異なのだが、さらに今回の映画に登場する「オプティマス」に関してはその上を行く、まったくデザインに関する情報がない状態で開発がスタートすることになったという。
「映画の舞台が1980年代であることは聞いていたので、トレーラーキャブに『G1コンボイ』のデザインを採用し、変形機構も素晴らしかった『クラシックオプティマス』の変形をベースに使うことになりました」(大野さん)
実写映画版「トランスフォーマー」シリーズの「オプティマス」といえば、ビークルモード時のトレーラーキャブとして、フロントが突き出たボンネットタイプのトラック「ピータービルト379」(実写映画1〜3作目に登場)を思い浮かべる人も多いはずだ。しかし、2014年に公開されたシリーズ4作目の「ロストエイジ」では、四角いキャブオーバータイプのトレーラーキャブから変形する「オプティマス」が登場する。
この初期アニメの「G1コンボイ」を思わせる「オプティマス」の登場に、往年のファンは歓喜した。その「オプティマス」をイメージして、2014年の同映画公開直前に発売されたのが、ムービーアドバンスドシリーズの変形フィギュア「クラシックオプティマス」だ。ビークルモード時のガワ(トラックの外装)を裏返すことで、そのままガワがロボットの上半身になるという革新的な変形パターンによってロボットモード時の見事なプロポーションを実現。その変形機構の採用によって、簡単な手順ながらダイナミックな変形を行えることでも絶賛された、まさに名作変形玩具だ。
左が「クラシックオプティマス」。右が「レジェンダリーオプティマス」。今回、比較用の「クラシックオプティマス」には、トランスフォーマームービーザベストシリーズで発売されたリカラーバージョンの「MB-01」を使用している。ロボット時の高さは、18.5cmから、22.5cmとひと周り大きくなった印象だ
「しかも今回、『クラシックオプティマス』のボイジャーサイズからサイズを変更して、新たにリーダーサイズにすることが決まった。『クラシックオプティマス』の担当者と意見交換をしながら開発を進めました」(大野さん)
トランスフォーマーは大きく分けて、デラックスクラス(小)、ボイジャークラス(中)、リーダークラス(大)と、サイズでクラス分けされており、クラスによって価格帯も異なる。つまり、今回の変更では、中サイズから、大サイズに拡大されることになった。クラスとともに価格も上がるため、追加要素を増やすことが可能になる。
新たに増えたギミックのひとつが、ファイスチェンジギミック。トランスフォーマームービーアドバンスドシリーズの「AD31 アーマーナイトオプティマスプライム」などと同じく、頭を持ち上げて、顔部分をクルリと回すことで、マスクのオン/オフを切り替える
「レジェンダリーオプティマス」には、「オプティマス」の銃としておなじみの「イオンブラスター」が付属するが、こちらも本体と同様に変形する。7つのステップを経て変形後、薄い形状となり、ロボットの背中に装着できる。そして驚かされるのは、装着させたままロボットモードからビークルモードに変形できることだ。
「イオンブラスター」の変形だけでも一見の価値あり! 7つの工程を経て、最終的に右下の写真のように変形する。ただ、武器として手に持たせた時の保持力はイマイチだった。小さな突起にはめるコツをつかめば、うまく装備させることができるはず
バックパックのような形で、背中のジョイントに取り付けられる
「『クラシックオプティマス』の担当者と話し合ううちに『イオンブラスターを付けたまま変形できたらスゴいよね』ということになり、そちらにもトライしました。本来、『トランスフォーマー』はAからBへと変形する中で、武器も身体にしまいこんでいるという設定です。その再現にチャレンジしたんですが、結構難しかったですね」(大野さん)
「トランスフォーマー」の変形フィギュアの多くは、装備している武器を変形時にいったん外して置いておき、ビークルモードに変形後に先ほど取り外した武器を外装にマウントする。
なかには、武器が変形したうえでボディの一部として装着でき、そのままビークルモードへ変形するフィギュアもある。たとえば、名作として何度もリメイクされている「トランスフォーマー/リベンジ」公開後に発売された「RA-24 バスターオプティマスプライム」も、「イオンブラスター」が燃料タンクに変形して、ロボットの背面に装着され、そのままビークルモードへと完全変形が可能だ。
写真はリメイク版の「トランスフォーマー MB-11 ムービー10thアニバーサリー オプティマスプライム」。手に持つ「イオンブラスター」が変形する
「イオンブラスター」は、トレーラーキャブ時のボディの下にあるタンクに変形する(現在別カラーの復刻版「トランスフォーマー MB-17 オプティマスプライム リベンジバージョン」が発売中)
しかし、今回の「レジェンダリーオプティマス」は、そういった過去の武器一体変形タイプのフィギュアを凌駕する。
ビークルモード時に、タイヤの地上接地面からボディ底面までのわずか6mmほどの空間に「イオンブラスター」が違和感なく完全に収まってしまうのだ。トレーラーの底面に配置するには、タイヤの回転の妨げにならないように完全に固定する必要がある。突起の形状や配置の工夫が、この驚異的である意味“どうかしてる”とも言える変形機構を生み出しているのだ。
「ロボット状態では背中に付いていて、ビークル状態ではどこに配置されているのがベストなのかを考えました。変形途中で外れずに、ロボットモードに変形したあとに取り外せるようにする、という部分にはかなり苦労しました」(大野さん)
変形途中、「イオンブラスター」は写真のようにトレーラーキャブの底面に移動、固定する
左が「レジェンダリーオプティマス」。「イオンブラスター」は、車体底面のわずかなスペースに収まる。右の「クラシックオプティマス」と比べてすき間なくパーツが詰まっている印象だ
武器が底部に収まっていても、タイヤは回転するのでコロコロ走らせて遊べる。右の「クラシックオプティマス」は、荷台部分に武器をマウント。本来は後者のスタイルが主流だった
ほかにも、「クラシックオプティマス」からグレードアップした部分は多い。
「リーダーサイズですから、ボイジャーサイズではできなかった可動部分を増やしていきました。タイヤの移動は、変形させていく際の位置関係が難しかったですね。『クラシックオプティマス』で、やりづらかった腕の変形をいかに簡単にできるか、という点でも苦労しました」(大野さん)
「レジェンダリーオプティマス」は、足元から2つめのタイヤの位置が変形中に移動。スムーズに動き、確実に固定できる各部の調整も素晴らしい。さらに、肩部分のパーツも増えて、ロボットモードが映画版「オプティマス」のデザインにさらに近づいた
【写真左】変形中にタイヤ位置が移動。ロボット時はこの状態。【写真右】トレーラーキャブ時は写真のように下部に移動する
随所にメッキ塗装が施されており、高級感も増している
パーツが増えたことで細部がリアルになった。左側のみ、腕のパーツが移動してキャブの天井になった状態
キャブ背面も、可動してフタ(グレーのパーツ)が付き、すき間がなくなった
この誰もが驚く変形は健在。ロボットモード時のボディが、裏返るとトレーラーキャブに変形。巨大なロボットの上半身が見事にキャブの内側へと収まる
「クラシックオプティマス」ではタイトだった肩の部分の変形が、肩部分のパーツが増えて腕とボディの間に隙間ができたことで、若干余裕が生まれ、変形しやすくなった。下の写真で、変形完了! トレーラーキャブはさらに「G1コンボイ」の雰囲気が強まった
トレーラーキャブは、さらに「G1コンボイ」風に仕上がっているのもファンにはたまらないところだ。
「せっかくの80年代テーマですから『G1コンボイ』の玩具デザインに近づけました。個人的にはロボット時のプロポーションが気に入っていますね。『G1コンボイ』のマスターピース『MP-10コンボイ』(別売)のトレーラーを連結できるようにしていますので、お持ちの人は試してみてください」(大野さん)
こだわり抜いた改良を盛り込んだうえで、サイズも大きくなり、触りやすくなった「レジェンダリーオプティマス」。ガシガシ遊べる変形玩具としてかなり楽しめる。変形工程は意外に簡単なので、初めて「トランスフォーマー」を買う人にももってこいだ。
トレーラーキャブのリアにあるジョイントに「MP-10」のトレーラーを連結可能
大野光仁さん
【Profile】
1980年にタカラ(現タカラトミー)に入社。入社以来男児玩具開発チームに在籍(海外開発も含め)。途中、開発本部に在籍。ボーイズ事業部ボーイズ第1企画部には2015年4月より在籍。現在に至る。担当フィギュアで1番のお気に入りは「G1のプロール」。
大野さんが担当したトランスフォーマーシリーズ:コンボイのプロトタイプ、サンストリーカー、ランボル、プロール、ハウンド、アイアンハイド、ダイノボット軍団、トリプルチェンジャー、デバスター、ライデン、メトロフレックスなどのG1、ヘッドマスターのフォートレスマキシマス、トリプルチェンジャーエイプフェイス、スーパージンライ、メタルホーク、ムービー1コメットのオプティマス&スタースクリーム、アニメイテッドの自動変形オプティマス、マスターオプティマスプライム(G-SHOCKコラボ製品)
「日経エンタテインメント!」から「月刊ムー」まで、エンタメやホビーを中心に幅広く活躍するマルチライター。トランスフォーマーなどの変形玩具、海外ボードゲームに詳しい。