レビュー
新しい音や発想が生まれるギター

エレキとアコギが合体! Fenderの新感覚ギター「Acoustasonic」をストラト使いが弾いてみた

Fenderから登場した話題のニューギター「American Acoustasonic Telecaster」(以下、Acoustasonic)は、ひとことで言うなら「1台でエレクトリックギターの音もアコースティックギターの音も出せるギター」。そこで今回は、Fenderの代表モデル「ストラトキャスター」を愛用し続けている筆者が、この画期的なAcoustasonicを実際に使ってみてレビューしたいと思います!

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ちなみに筆者、昨年は個人的に2本目のストラトを追加購入してしまったほどの「Fenderエレキギター・ファン」。……なのですが、アコギを弾いた経験はほとんどありません。Acoustasonicのインパクトは、果たして筆者の中にある「エレキとアコギの壁」を超えるのか?

……と試してみたらこのギター、エレクトリックとアコースティックの音を「使い分けられる」だけではなく、「ミックスして使える」というのもポイントで、かなりおもしろいものでした。あなたのギターサウンド&プレイの新たな扉を開いてくれる1本になるかもしれません。

▼手始めに、以下の動画でAcoustasonicのサウンドをチェック!

「エレ」と「アコ」が合体しているからこそ生まれる新しいサウンド! テレキャスにも親しむストラトユーザーの筆者が、実際に使ってみて実感したその魅力をご紹介していきましょう

作り物ではない! 生音あってこその自然な音色

というわけでこのAcoustasonic、シンプルに言えば「1本でエレクトリックギターの音色とアコースティックギターの音色を、スイッチひとつで切り替えて使い分けられるギター!」です。もちろん物理的に生音が変化するわけではなく、電気的に出力されてギターアンプから出てくる音が変わります。

といっても、これまでにも存在していた「ブリッジにピエゾピックアップを追加してエレアコ風の音も出せるようにしたエレクトリックギター」や、「エレクトリックギターの音を電気的に加工してアコギっぽくするエフェクター」とは全くの別物!

これが全体像! 今回お借りしたカラーは「サーフグリーン」でした

これが全体像! 今回お借りしたカラーは「サーフグリーン」でした

見ての通り、そもそもの物理的な音響構造からしてエレクトリックギターとアコースティックギター、両方の要素をあわせ持っています。ギターの生音自体が「エレクトリックのソリッドさとアコースティックの響きをバランスよく兼ね備える」ものになっているのです。

その生音からエレクトリックギター的な成分を電気的にピックアップしたものがエレクトリックギターの音色、アコースティックギター的な成分を電気的にピックアップしたものがアコースティックギターの音色、それぞれのサウンドの基本になります。

エレクトリックでもアコースティックでも、そのサウンドの核はこのギター本来の生音。だからどちらの音色も作り物ではない、「本物」の感触を自然と備えるわけです。

弾き心地は“太弦”エレクトリック感覚

その生音を生み出すボディは「テレキャスターのアウトラインにアコースティックギターの要素を収めた」といったような印象です。外枠の形としては、名称にもなっている「テレキャスター」。その枠の中にアコースティックギターらしいホールやブリッジが収められています。

コンター部分の木目を残してカーブを強調したデザインがテレキャス的には新鮮

コンター部分の木目を残してカーブを強調したデザインがテレキャス的には新鮮

ヘッドのFenderロゴはデカールではなく刻印! 渋い!

ヘッドのFenderロゴはデカールではなく刻印! 渋い!

ネックも、ヘッドストックを見ればわかるようにおおよそテレキャスタイプ。エレクトリック側に近い形のネックですが、その材質はフェンダーエレクトリック伝統のメイプルではなく、アコースティックギターで一般的なマホガニーです。ネックの太さ、厚みやナット幅などは、エレクトリックとしてはやや太め、アコースティックとしてはスリム、といったところ。

ネック裏はマホガニー材の感触も生かしたマットなサテンウレタンフィニッシュ

ネック裏はマホガニー材の感触も生かしたマットなサテンウレタンフィニッシュ

指板材はエボニー。近年のハンドメイドギターでは大胆な木目を生かした指板が流行だが、こちらの個体も見事!

……という形からも想像できるように、ボディの抱え心地やネックの握り心地など、総じての「弾き心地」はエレクトリックギターのほうに近いです。上述のように、アコギには全く親しんでいない筆者でも大きな違和感は覚えませんでした。

エレクトリック準拠の薄いボディとコンター加工のおかげで抱え心地がよい!

エレクトリック準拠の薄いボディとコンター加工のおかげで抱え心地がよい!

ネックジョイントは斜めカットでハイポジションへのアクセスをよくしてあるタイプ

ネックジョイントは斜めカットでハイポジションへのアクセスをよくしてあるタイプ

ただし、ブリッジ周りとピックアップはアコースティックギター用の弦に最適化。「3弦が巻き弦のアコースティックギター弦」を張らないと、各弦のイントネーション、オクターブチューニングが合わなかったり、ピックアップの出力バランスが崩れたりといったことが予想されます。

弦を乗せているサドルの2弦部分の調整はアコースティック弦に合わせてある。そして弦太い!

弦を乗せているサドルの2弦部分の調整はアコースティック弦に合わせてある。そして弦太い!

というわけで、一般的なエレクトリックギター弦よりも太いアコースティック弦を張ることになるわけです。弦のベンド、チョーキングを多用する演奏などでは少しきつくなるかもしれません。

しかし、前述のネックシェイプや出荷時の弦高などのおかげか、筆者にとってはアコースティックギターそのものと比べたらやはり弾きやすいです。それに普段よりも太い弦というのは、それはそれで普段とは違うセッティングで普段とは違う演奏を試みるきっかけにもなりそう。そこも後ほど試してみましょう。

また前述のように2弦3弦のチューニング等については注意が必要ですが、異なるサウンドと弾き心地を狙い、あえてエレキ弦を張ってみるのもアリかもしれません。好みにあわせていろいろ探っていくとおもしろそうです。

ボディにはアコースティクな新構造を採用

そんなわけで、ルックスや演奏性についてはエレクトリックギター寄りなこのモデル。しかしボディについては、外枠がテレキャスターであることのほかは、むしろアコースティックギターの要素のほうが強いのでは? とも感じます。

最大のポイントは、「STRINGED INSTRUMENT RESONANCE SYSTEM(SIRS)」テクノロジーと名付けられている技術。アコースティック構造のボディ内部の音響処理に関するものと思われます。

サウンドホールの処理が普通のアコースティックギターと明らかに違う!

サウンドホールの処理が普通のアコースティックギターと明らかに違う!

このモデルのボディの材質はサイド&バックがマホガニーでトップがシトカスプルースという、アコースティックギターとしては一般的なもの。しかし前述のようにこのモデルの外枠の形や厚みはテレキャスのそれです。中を空洞にして材質をアコギと同じにしても、それだけではアコースティックな響きを十分には得られません。

かといってボディの大きさや厚みをアコギ並みにしたら、それはもう普通のアコギです。今度はエレクトリックギター的なサウンドが出しにくくなるでしょうし、演奏性も違ってきてしまいます。

そこでおそらくですが、「テレキャスのシェイプとサイズで、エレクトリックの演奏性や音の芯は維持しながら、アコースティックな響きも十分に確保できるボディ構造」を導き出したものがこの「STRINGED INSTRUMENT RESONANCE SYSTEM(SIRS)」なのでしょう。

具体的な構造は不明ですが、たとえばサウンドホールはなめらかなカーブでボディ内につなげられています。一般のアコースティックギターにはない特徴です。ボディの小ささや薄さをカバーして響きを引き出す、何らかの仕組みがあるのでしょう。

ボディ側で弦を固定するブリッジ周りは、テレキャススタイルではなく、アコースティックギターのスタイル。ブリッジはアコースティックギターらしいサウンドの大きな要素であるトップ板の響きに直結する個所なので、それを引き出すためにアコースティック側に寄せた構造にしてあるものと思います。

その効果を確認するために、ギターアンプにつなげずに弾いて生音を確認してみました。すると、ボディに空洞を持たないソリッドボディのエレクトリックギターとは明らかに異なり、ボディ内がくりぬかれているシンライン構造のエレクトリックともやはり異なり、「もっとアコースティックで、しかし完全なアコースティックギターそのものともちょっと違う」……そんな独特な響きがしました。

冒頭にも述べましたが、電気的に出力する前の生音の時点でしっかり、「エレクトリックとアコースティックのちょうどいい感じの中間地点の音」に落とし込まれています。「エレクトリック的でもありアコースティック的でもあり、どちらの要素も含んでいる音」です。だからこそ、その音を基にエレクトリックの音もアコースティックの音も高い完成度で作り上げ、出力することができるのでしょう。

なお、American Originalを筆頭に、トラディショナルなシリーズにおいてはネック調整をする際にネックを外す必要があるモデルが多いFender製品ですが、Acoustasonicではネックを外さなくてもヘッド側からトラスロッドの調整ができるようになっています

アコースティック+アナログ+デジタルで生み出すサウンド

というわけで次のポイントは、そのエレクトリック的でもありアコースティック的でもある生音を、どのようにキャッチしてそれぞれの音色で出力するかです。

弦の振動やボディの響きを電気信号に変換するパーツ「ピックアップ」は、以下の3基を搭載しています。

●サドル下:Fishman Under-Saddle Transducer
●ボディ内部:Fishman Acoustasonic Enhancer
●ブリッジ側:Fender Acoustasonic Noiseless Magnetic Pickup

といっても外から見えるのはブリッジ側のピックアップだけ

といっても外から見えるのはブリッジ側のピックアップだけ

サドル下のピエゾピックアップは、エレクトリックアコースティックギターで一般的な設置場所と種類。普通にアコースティックギター的な音をキャッチするためのピックアップですね。

ボディ内部のエンハンサーと呼ばれているものは、特にボディトップの振動を拾うためのものとのこと。ボディを叩いてのパーカッション的サウンドを拾うのにも活躍しているはずです。ブリッジ側に設置のピックアップはエレクトリックギター的なサウンド用。

なお、サドル下とボディ内部のピックアップはアコースティックギター用ピックアップのトップブランド、Fishman製とのことです。

そしてそれらのピックアップからのアナログ音声信号を使い分けたり、ブレンドしたりした音を基にデジタル処理を加えることで、さまざまなアコースティックギター、エレクトリックギターのサウンドを生み出しアウトプットするのが、FenderとFishmanが共同で開発した「Acoustic Engine」サウンドプロセッサーとなります。

まとめるとAcoustasonicのサウンドは、

●STRINGED INSTRUMENT RESONANCE SYSTEMというアコースティック技術で響きを与えられたギターの生音を……
●さまざまなアナログエレクトリック技術による3つのピックアップでキャッチして……
●Acoustic Engineによるデジタルプロセッシングで完成させてアンプに出力する!

という流れで生み出されていると言えるでしょう。どれが欠けてもこういったギターは実現できなかったはずです。

エレクトリック回路の電源としてUSB充電式バッテリーを内蔵

エレクトリック回路の電源としてUSB充電式バッテリーを内蔵

無数のサウンドをシンプルなコントロールで操作!

さて、そんな複雑そうなアナログ&デジタルサウンドシステムのコントローラー部分がこちらになるわけですが……

ノブが2つとレバーがひとつだけ

ノブが2つとレバーがひとつだけ

何と普通のテレキャスターと同じく、ノブが2つと5wayレバーセレクターが1つだけ! 写真左からボイスセレクター/モッドノブ/ボリュームノブです。セレクターでエレクトリックサウンドとアコースティックサウンドを切り替えられます。以下の動画にて、まずはポジション1のエレクトリックサウンドと、ポジション5のアコースティックサウンドの切り替えをチェックしてみましょう。

さて、気になるのは「モッド」ノブですよね。テレキャスでいうところのトーンノブの場所に設置されているこのノブの機能は、ざっくり言えば「そのセレクターポジションでの2つの音色バリエーションのブレンド具合の調整」です。

先ほどの5ポジションを備えるセレクターと組み合わせることで、下記のように複数のアコースティックギター、エレクトリックギターの音色を基にしたサウンドバリエーションを設定できます。

……アコースティックギターのサウンドバリエーション、どんだけ詰め込んできやがってるの!? と、アコースティック素人としては圧倒されます。もうむしろこのギターのサウンドバリエーションを参考に、アコースティックギターの材質やボディスタイルでの音色の違いを学べてしまいそうです。

特にわかりやすいのはポジション2かと思います。「セレクターレバーでポジション2を選び、モッドノブをAの側に回し切った状態」では純粋なアコースティックギターの音色が出力されます。同じく「ポジション2でもモッドノブをBの側に回し切った状態」だとエレクトリックギターの音色がブレンドされます。

そして、ここが大切なのですが、モッドノブは無段階可変のコントロールノブなので、AとBの中間のセッティングも自在です。つまり、

「アコースティックギターのサウンドとエレクトリックギターのサウンドを半々に混ぜたサウンド」
「エレクトリックギターのサウンドを基本にアコースティックの響きを少しミックスしたサウンド」

なども出せます! 出せちゃいます! 他ポジションでも同じく、さまざまなブレンドのサウンドを生み出せます。

【動画アリ】弾いてみた! エレとアコが合体しているからこそ生まれる「新しい音色」

そのモッドノブによる音色のブレンドも含めてですが、このギターは「エレクトリックとアコースティックを1本で済ませられるから持ち替えの必要がない!」という単純な便利アイテムにとどまるものではありません。もっと新しい可能性を感じさせる楽器です。

たとえば昨今ではメジャーになってきている、演奏をリアルタイムサンプリングして重ねていくひとりアンサンブル的なパフォーマンスとの相性は抜群なはず。この1本だけで、

1)アコースティックのボディを叩いてのパーカッシブなリズム
2)アコースティックのコードストローク
3)エレクトリックのディストーションリフ

などなど、ギターを持ち替えることなく次々とサンプリングして重ねていくこともできるはず。

またこのギターでは自然と、エレクトリックギターとアコースティックギターどちらの音を出すときにも、同じひとつのギターアンプやエフェクターシステムを共有することになります。だってどちらの音も同じギターで演奏するわけですから。

すると、従来は一部のアグレッシブでアバンギャルドなギタリストのみが実践していた「アコギにもエフェクトかけまくるぜ!」的な発想が、僕のような凡人にも身近なものになってくるわけです。エフェクターはもうつないであるんだから、アコースティックサウンドでも試しに踏んでみよう! 的なノリで。

今回の試奏環境だとこんな足元。って歪み系しかないじゃねーか!

今回の試奏環境だとこんな足元。って歪み系しかないじゃねーか!

▼歪み系真空管ペダルをつないでアコギサウンドを弾いてみた

というわけで、同じくFenderの新製品である真空管搭載ドライブペダル「MTG TUBE DISTORTION」とつないで歪ませたセッティングのまま、アコースティックサウンドに切り替えて弾いてみたのが以下の動画。

歪ませ設定のまま、「エレクトリック(ポジション1)→ エレ+アコのブレンド(ポジション2)→ アコースティック(ポジション5)」の順にサウンドを切り替えてみました。アコースティックギターの音を歪ませるの、ガレージロック感が出てかっこいいかも!

▼チューニング1音下げ&エレ+アコ設定でヘヴィなリフを弾いてみた

また、演奏性についてのところで触れたように、このモデルにはアコースティック用の太い弦が張られていて、弦の張りが強いです。なのでエレクトリックの細い弦に慣れている筆者には張りが少しきついわけですが……

しかし、テンションがきついってことは、チューニング下げても十分な張力を維持できるんじゃね? むしろ弾きやすくなるんじゃね? なんて発想も生まれてきます。というわけで、チューニングを全弦1音下げにした上で歪ませて、ヘヴィメタル的なリフを弾いてみたのが以下の動画です。

エフェクトペダルで深めに歪ませたメタリックなリフを、「エレクトリック(ポジション1)→ エレ+アコのブレンド(ポジション2)→ アコースティック(ポジション5)」の順に切り替えて演奏。こちらではエレクトリック+アコースティックのブレンドがヘヴィでエッジも立っていて好感触! 太弦のおかげでチューニングを下げても弦の張りは十分にキープされており、音がダルくなりすぎたりもしていません。もう1音下げてもイケそうなほどです。

アコースティックギター成分を入れつつ歪ませた音色は、最新技術な最新ギターによるサウンドなのに、雰囲気としてはむしろちょっとビンテージ感があるような気もします。これは想像力を刺激されるかも……!

エレキ専門orアコギ専門ギタリストそれぞれに試してほしい新感覚!

というわけでこのAcoustasonic、たしかにアコースティックギターとしての力も十分ですが、エレクトリック専門ギタリストが、「エレクトリックギターとしてのプレイやサウンドの中に、アコースティックギターの成分も取り入れて新しい音や演奏を生み出せるギター」として使うのもアリな気がします。もちろん逆に、アコースティックギタリストがエレクトリックの要素を導入するために使うのだってアリでしょう。

エレクトリックとアコースティックの両刀ギタリストにとって便利なことはもちろん、エレクトリック専門ギタリストあるいはアコースティック専門ギタリストにとっても、それぞれに新たなサウンドをもたらし、そのプレイスタイルを拡大するインスピレーションを与えてくれそうな1本です。楽器屋さんで見かけたらまずはちょっと試してみてほしいです。その際にはぜひ、歪みサウンドもお試しを!

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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