特別企画

「アコギ」をキレイに録音する方法、ギターのプロが教えます!

誰かに聴かせたい!と思ったことありませんか?

こんにちは。ギタリストの高村尚平です。今回は、アコギをよい音で録音する方法について解説してみようと思います。長引くコロナ禍、自宅で楽しむ趣味としてアコースティックギターを始められた人も多いと思います。最初は演奏しているだけで楽しかったギター、上達とともに「誰かに聴かせてみたい!」とか「作品として残してみたい!」と思い始めた人も多いのではないでしょうか?

アコースティックギターの音色を録音したい!と思ったことはないでしょうか?

アコースティックギターの音色を録音したい!と思ったことはないでしょうか?

ただ、どうやればアコギのような生楽器を、本来の鳴りに忠実に録音できるのでしょうか? ここがよくわからないという人も多いはずです。簡易的にスマホで録音したところで、楽器本来の響きをうまく収録することはできません。そこには専門的な機材や、多少のノウハウが必要なのです。

ということで今回、あなたのアコギの音を「できるだけ原音に忠実に録音する方法」をご紹介します。機材に関しても、後半でオススメのものをピックアップしてご紹介しますので、最後までお楽しみください!

[録音方法-1]
「スマホ+α」の機材で手軽に収録

まず、「できるだけ手軽に録音を始めたい」という人にピッタリの方法からご紹介します。中心機材は、ズバリ……「スマホ」です。冒頭で、スマホではキレイに録音できないと書いたのに、さっそくスマホの登場です(笑)。

やっぱり「お手軽」だし、誰もが持っているものですので、この時代、使わない手はないんですよね。ただ、いきなりスマホの録音アプリをポチッとしちゃだめですよ〜(笑)。これだと、アコギらしい生々しさを収録することはできないんです!

そこで必要なのが、「スマホに接続できるマイク」です。スマホの充電ポートに差し込むだけ、という簡単設計のものが各社より発売されています。これならシンプルに完結しますし、場所も取りません。しかも、ほかの録音機材に比べてコストも抑えられるので、本格的な機材を揃えるのに抵抗がある人にオススメです。また、「出先でちょっと録音したい!」みたいなシーンでも大活躍です。愛用のスマホにただ接続するだけなので、かなり使い勝手のよいシステムと言えるでしょう。

ちなみに、購入に際して気を付けておきたいのが、ご自身のスマホにちゃんと対応しているのかどうかということです。ここを間違えてしまうと取り付けられませんので、気を付けましょう。

なお、これらマイクは各社よりラインアップされていますが、どれを選んだらよいのか迷ったら、とりあえずは有名な音響/楽器メーカーが作っているものを選んでおけば間違いないでしょう。

ZOOM「XY Stereo Microphone iQ6」

ZOOM「XY Stereo Microphone iQ6」

SHURE「MV88A-A」

SHURE「MV88A-A」

Sennheiser「XS Lav USB-C」

Sennheiser「XS Lav USB-C」

[録音方法-2]
ポータブルレコーダーで録音

こちらもシンプルな、「ハンディレコーダー」を使った録音方法です。録音に特化したレコーダーですので別途マイクを用意する必要もなく、これ1台で完結するのもうれしいところ。最近のものはかなり性能がよく、拡張性も高いので、1台で音楽制作のかなりの部分を担える製品です。

ZOOM「H1nハンディレコーダー」

ZOOM「H1nハンディレコーダー」

ZOOM「H4nPro」

ZOOM「H4nPro」

ZOOMは、ポータブルレコーダーの最大手メーカー。同社の製品は、レコーディング機器に求められるほとんどの機能を備えていますので、どれにするか迷ったらZOOM製品を購入しておけば間違いないかと思います。

Tascam「DR-40X」

Tascam「DR-40X」

Tascamも、モバイルレコーディング機材の老舗。私も昔、Tascam製のMTR(マルチトラックレコーダー)にとてもお世話になったものです。こちらも、レコーディングに必要なほとんどを網羅しているため、1台でほとんどの録音シーンで困ることはないでしょう。ちなみに、私もハンディレコーダーはTascam「DR-05」という製品を持っていますが、ライブレコーディングからちょっとした楽器の録音まで、とても重宝しています。

Tascam「DR-05X」。多彩なシチュエーションで使えるため、これ1台あれば大丈夫です

Tascam「DR-05X」。多彩なシチュエーションで使えるため、これ1台あれば大丈夫です

[録音方法-3]
オーディオインターフェイスとマイクを組み合わせる


次にご紹介する方法は、現代のレコーディングの王道です。そして、個人的にいちばんオススメのものです。システムの核になるのがPCやタブレット(場合によってはスマホ)。そこに、「オーディオインターフェイス」という機材とマイクを組み合わせた録音方法です。

この方法のよいところは、なんと言っても、PC、オーディオインターフェイス、マイクといったアイテムを、すべて自分好みにチョイスでき、自由度高く録音環境を構築できる点。そのため、ほかの方法に比べて少し複雑なシステムとなり、多少の勉強も必要になります。ですが、長い目で見ると、このあたりの仕組みを覚えておいて損はないので、ぜひチャレンジしていただきたいところです。

では、仕組みを解説いたします。このレコーディング方法でサウンドの要となる機材が、オーディオインターフェイスです。簡単に言えば、「音というアナログ素材をデジタル素材に変換する機材」のこと。先述の「スマホ+マイク」の組み合わせや、ハンディレコーダーでの録音でも、内部で同じことをしています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

システムの全体像はこんな感じ

システムの全体像はこんな感じ

昨今の音楽制作は、PCに取り込んだ音データを、専用のDAWソフトを使用して編集していくスタイルが中心です。その取り込みの段階で、いかに原音をロスさせないかが重要で、その部分を担うのがオーディオインターフェイスなのです。つまり、オーディオインターフェイスのよし悪しで、取り込まれる音に大きな変化が出てしまうわけです。

生楽器の音の取り込みは、オーディオインターフェイスに搭載されたマイクプリアンプにマイクを接続して行います。このマイクプリアンプの質によって録れる音が大きく左右されるため、レコーディングスタジオなどでは高額な単体マイクプリアンプを複数使い分けています。ただ、高性能な機材を求めると予算も膨らんでしまいますので、始めはマイクプリアンプに定評のあるオーディオインターフェイスを選ぶとよいでしょう。なお、マイクプリアンプの詳細は後述いたします。

もちろん、収録用のマイクも重要です。ダイナミックマイクかコンデンサーマイクかによっても録れる音に違いが出ますし、メーカーによってサウンドもだいぶ異なります。これらの機材をチョイスする過程もレコーディングの楽しみのひとつですので、そこも含めて自分らしいレコーディング環境を構築していきましょう!

実際に録音してみよう
マイクはどこに向けたらいい!?

システムが決まったら、さっそく録音開始です! これから定番のセッティングを解説しますが、生楽器の録音に100%の正解はありません。ギターによってももちろん変わりますし、録音環境や機材によっても結果が大きく異なります。最後は自分の耳が頼りになりますが、自分にとって心地よい音を、楽しみながら探していきましょう!

まず想像してみてもらいたいのですが、アコギを録音する際、マイクはどこに向けたらよいと思いますか? サウンドホール? ブリッジ? それとも……?? 実際、多くの人は「サウンドホール」にマイクを向けるのではないかと思います。アコギの音はここから出ていそうですものね。

ところが! アコギはサウンドホールだけでなくボディ全体で鳴っており、多くの人がマイクを向けがちなサウンドホール周辺からは、低域が主に鳴っているのです。ですので、ここだけを狙ってしまうと、高域の足りない「こもった音」が録音されてしまいます。そのため、マイクを1本しか立て(られ)ないような場合では、サウンドホールに直接マイクを向けるようなセッティングはあまり好ましくありません。

では一体、どこに立てるとよいのでしょうか? 1本のマイクでバランスよい録音を狙うときには、「指板の端とサウンドホールの間くらいを、ネック側から45°程度の角度で狙う」のがポイントでしょう。

指板とサウンドホールの間くらいを狙う感じ

指板とサウンドホールの間くらいを狙う感じ

ギターに対して45°くらいの角度を付けてマイクをセット

ギターに対して45°くらいの角度を付けてマイクをセット

ここまでで、マイクの設置角度と狙うポイントがわかったかと思います。今回は、手軽に録音を始めていただきたいのでマイク1本での録音方法をご紹介していますが、複数のマイクを用意できるという人は、より広がり感のある録音も可能です。その場合、追加分のマイクをどこに設置するかで、音の印象はかなり変わります。

たとえば、ボディを狙うようにすると低域がより強調されますし、狙う場所や角度によっても音質が変わります。ギターに対して上から狙えば低音弦側の音が強調され、逆に下から狙えば高音弦側の音が強調されます(弦の並びを考えるとわかると思います)。

このようにして、自分のイメージする「アコギの音」に近づけていく作業はとても楽しいですよ!

マイクからの“距離”で音は変わる!?

続いては、マイクとギターの距離について解説してみようと思います。マイクとギターの距離は一般的に「10〜30cm」と言われ、近くなるほどギター単体のドライなサウンドが得られ、離れるほど空気感を含んだ立体的なサウンドになります。

響きの少ないレコーディングブースのような場所では、ギターに近づけて録音して後からエアー感を足すような加工を施すのがよいでしょうし、空間自体の響きが美しい場所での収録であれば、少し離して場所の響きも一緒に録音するのがよいでしょう。その場所の空気感も一緒に収録できて、雰囲気が出ると思いますよ!

ちなみに、どんなマイクを使ったらよいか、また、録音・編集をするDAWソフトについては以前ご紹介しておりますので、こちらの記事をご参照ください。

インターフェイスによって音はかなり変わる!

アコギのレコーディングではマイキングの話に終始することが多いと思いますが、先述のとおり「オーディオインターフェイス」によってもサウンドの質は大きく変わります。音源をデジタルデータに変換してPCに取り込む役目のオーディオインターフェイスがよくなければ、どんなに良質なマイクをセオリーどおり正しく設置しても、イメージどおりの音は収録できません。

デジタル信号に変換するだけだったら、どんなものでもいいんじゃないか? と思われるかもしれませんが、そうではありません。実は、オーディオインターフェイスに搭載されている「マイクプリアンプ」の質がものを言うのです。ちょっとそこを解説しておこうと思います。

「iD44」の背面。本機は4つのマイクプリアンプを搭載しています

「iD44」の背面。本機は4つのマイクプリアンプを搭載しています

マイクで拾われた音というのは、実は、とってもとっても小さい音なのです。これを「マイクレベル」と言うのですが、聞こえないくらい小さく、音楽データとしてはとても使いものにはなりません。そこで登場するのがマイクプリアンプ! この微弱な信号を、何百倍にも増幅して大きくしてくれるのです。この増幅されたものを「ラインレベル」と言い、このラインレベルにまで増幅して初めて、音楽制作に使える音源となるわけです。

となると、マイクプリアンプのクオリティによって音に差が出るということは、何となくご理解いただけると思います。実際は、音のよし悪しにとどまらず、各社が目指している理想の音も異なるため、「このメーカーの音が好き」というように好みが分かれる、とてもディープな世界なのです。

もちろん、単体のマイクプリアンプであればより好みのものに出会えると思いますので、金銭的な余裕がある人は好みのマイクプリアンプを個別に購入したほうがよいでしょう。ですが、初めて機材を揃える人にとっては知識も必要になるため、少しハードルが高いと思います。そこで、単体機でなくても十分使えるプリアンプを搭載したオーディオインターフェイスを今回はご紹介してみようと思います。

プリアンプが光る!
オーディオインターフェイスのおすすめモデル

今回ご紹介する機種は、すべて10万円を切る価格帯に統一。オーディオインターフェイスに搭載されているマイクプリアンプだって捨てたものではない!という、マイクプリアンプにこだわった製品をピックアップしてみました。

UNIVERSAL AUDIO 「VOLT176」

UNIVERSAL AUDIO 「VOLT176」

UNIVERSAL AUDIO 「VOLT176」

この「VOLT176」は、UNIVERSAL AUDIO独自の「チューブエミュレーション・サーキット」を内蔵しており、ヴィンテージマイクプリ・モードを使用すると、伝説的なプリアンプの音を再現してくれます。使い方は簡単で、「VINTAGE」というスイッチをONにするだけ。これで高価なプリアンプの雰囲気を再現できてしまうなんて、本当によい時代になったものです……。

UNIVERSAL AUDIOのインターフェイス自体、昔から音がよいと定評があるので、安心して導入していただけると思います。

AUDIENT「iD4mkII」

AUDIENT 「iD4mkII」

AUDIENT 「iD4mkII」

以前、AUDIENTの「evo」シリーズを以前ご紹介したことがありますが、このメーカーはイギリスで誕生した業務用音響機器ブランドで、世界中の多くの有名スタジオで導入されている実積があります。そんなAUDIENTが、今まで培ってきたプロ用コンソールのマイクプリを搭載し、スタジオクラス最高峰のAD/DAをインストールして作ったのが「iD」シリーズです。これ、簡単にスタジオ品質の録音が楽しめてしまうスグレモノなんですよ!

プロのオーディオパフォーマンスの技術を凝縮した、コンパクトなオーディオインターフェイス

プロのオーディオパフォーマンスの技術を凝縮した、コンパクトなオーディオインターフェイス

今回「iD4」と、上位機種の「iD44」を使ってアコギのレコーディングを行ってみましたが、アコギのダイナミクスをしっかり収録でき、iDシリーズに搭載されているマイクプリアンプの高い性能を実感しました。「iD44」に関しては、チャンネルごとにファンタム電源のON/OFFスイッチが搭載されているのが個人的にはかなりツボで、コンデンサーマイクとダイナミックマイクの併用にもしっかり対応してくれます。普段愛用しているRMEの「Babyface Pro」では、専用のソフトでファンタムのON/OFFをしなければならず、少しわずらわしさを感じていたため、こういう物理スイッチの存在はとてもありがたく感じられました。

AUDIENT「id44」

AUDIENT「id44」

ANTELOPE AUDIO「ZEN GO SYNERGY CORE」

こちらも、コンソールグレードのディスクリート・マイクプリアンプを搭載したオーディオインターフェイスです。プロフェッショナルスタジオでのみ使用されている技術を詰め込んだ、まさにハイエンド機のスペックとのことで、スタジオクオリティーの録音を手軽に楽しめます。

37種類(!)のエフェクトが同梱されているので、追加費用をかけず、制作に必要なすべてのツールが手に入るのも、これから始めようとしている初心者にとってうれしいところです。アコギのレコーディングにはコンプやイコライザー、空間系エフェクトをかけたくなるものなので、これらのエフェクトがまとめて手に入るのは本当にお得だと思います。ギター系のエフェクトも充実しているため、ギタリストが持つオーディオインターフェイスとしては最適な選択肢のひとつと言えるでしょう。液晶パネルを搭載しているので、使い勝手がとてもよさそうです。

FOCUSRITE「Scarlett 2i2 3rd Gen」

今回ご紹介する中で最も安価なのが、この「Scarlett 2i2 3rd Gen」。価格は安いのですが、さすが名門FOCUSRITEの製品。まったく手を抜いていません! そんな「Scarlett」ですが、特におすすめしたいのが「AIRモード」という機能です。なんとFOCUSRITEの伝説的モデル「ISAプリアンプ」のサウンドを再現してくれるというのです!

私も単体で「ISAプリアンプ」を使うことがありますが、これを通すだけで収録する音のレベルが1ランク上がります。単体で購入するとそれなりのお値段になりますので、再現とは言え、この価格で購入できる「Scarlett 2i2」を選択肢に入れていいのではないでしょうか。

FOCUSRITE「Scarlett 2i2 3rd Gen」

FOCUSRITE「Scarlett 2i2 3rd Gen」

RME「BABYFACE Pro」

今回の中でダントツに高額な機種ですが(ギリギリ10万円を切る価格です)、筆者も現在愛用中なのでご紹介させていただきます。ほかのモデルのように伝説のプリアンプの音をシミュレートしているわけではありませんが、単純に音の解像度が高く、録音後の編集のしやすさは抜群です。予算に余裕のある人にはオススメです!

 RME「Babyface Pro」

RME「Babyface Pro」

好みの音を見付ける醍醐味

各社が目指すプリアンプのサウンドは、異なります。往年の名機たちにしても、サウンドの傾向は異なるので、結局のところ、好みの世界なんだと個人的には思っています。ですので、実際にいろいろなオーディオインターフェイスを体験してみて、自分の好みの音を探していくというのが、機材選びの楽しみであり、醍醐味なんだと思います。

かく言う私も、今までにオーディオインターフェイスを何台も乗り換えてきました。本稿執筆時点で、自宅作業では「Babyface Pro」を使用することが多いのですが、ハンディレコーダーで録音してしまうこともありますし、安価なSteinbergの「UR22mkII」で録音することもあります。もちろん、これからもその時々の好みに合わせて買い足していくと思います。

今回試した中で、AUDIENTの「iD」シリーズはアコギのサウンドを素直に収めるのに向いており、とても私好みの製品でした。実際、マイクプリアンプの音は各社で本当に異なるので、シーンによって使い分けるのもありだな……なんて思っています。もちろん、お財布にはやさしくないのですが……(笑)

AUDIENTの「iD44」(左)と「iD4mkII」(右)

AUDIENTの「iD44」(左)と「iD4mkII」(右)

最後に、オーディオインターフェイスにしてもマイクにしても、意外ですが重要な要素として「見た目」の好みもあると思います。ギターにしても好きな色や形があるように、毎日使うものだからこそ見ていてワクワクするものを選ぶということも結構重要かもしれませんよ! そういう意味では、今回ご紹介した中では近代的なルックスの「ZEN GO SYNERGY CORE」は個人的にかなり好みでした(笑)。

それでは、最後までお読みくださり、ありがとうございました。

高村尚平

高村尚平

藤沢市のギター教室「ギターの処方箋TAKAMURA」を運営するギタリスト兼講師。ギターと機材が三度の飯より好き。過去には機材メーカーに在籍し、全国で実演セミナーを開催していたほど。

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