レビュー

万年筆が1本715円!? 安すぎて怖くなる「Fonte」筆記具を3週間使い倒しレビュー

基本的に買い物って、安く済んだほうがうれしいですよね。筆者は好きな物、趣味の物であっても、できるだけ安くお得に買いたい派です。むしろ、こだわりのある物こそ、安くてよい掘り出し物を見つけてみたい。

ただ、安さも一定のラインを超えると、「さすがに安すぎて何だか怖い」という感覚が湧いてくると言いますか……。「Fonte(フォンテ)」ブランドの筆記具を目にしたときは、まさにそれを感じました。

だって、スケルトンデザインの万年筆とガラスペンが各715円、好みのインクを充填して使えるボールペンと筆ペンが各825円ですよ……。思わず「怖っ」と口に出ました。そんな安すぎて怖くなる筆記具って、実際、どのような使い心地なのでしょうか? 壊れたりしないのでしょうか?

出版取次会社発のユニークな筆記具ブランド「Fonte」

そもそも「Fonte」とは、日本出版販売がオリジナル製品として展開している筆記具ブランドです。驚きの価格だけでなく、発売元が出版物の取次会社というのも、同ブランドのユニークなポイントでしょう。

本稿では「Fonte 万年筆」「Fonte ガラスペン」「Fonte ローラーボールペン」「Fonte 筆ペン」の4製品を購入のうえ、3週間じっくり使い倒してみました。

写真上から「Fonte 万年筆」「Fonte ガラスペン」「Fonte ローラーボールペン」「Fonte 筆ペン」。いずれも、ふっくら丸みのある透明ボディを採用

写真上から「Fonte 万年筆」「Fonte ガラスペン」「Fonte ローラーボールペン」「Fonte 筆ペン」。いずれも、ふっくら丸みのある透明ボディを採用

4製品ともに、それぞれのペン先の大きさに合った半透明のキャップが付属します

4製品ともに、それぞれのペン先の大きさに合った半透明のキャップが付属します

スケルトンボディ×ゴールドのペン先がかわいい「Fonte 万年筆」

「Fonte 万年筆」は、コンバーター付きで何と1本715円(メーカー小売希望税込価格)! 価格が魅力の万年筆は数多くあれど、スケルトンデザインかつコンバーター付きで、1本1,000円を切る猛者はなかなか珍しいのでは。透明ボディとゴールドカラーが入ったペン先の組み合わせがかわいいです。

ペン先には、首軸から透けて見える部分までゴールドが入っています

ペン先には、首軸から透けて見える部分までゴールドが入っています

インクの吸入は、ペン先にコンバーターを付けたまま行います。ペン先に付いた余分なインクは、やわらかい布で拭き取ればOKです

インクの吸入は、ペン先にコンバーターを付けたまま行います。ペン先に付いた余分なインクは、やわらかい布で拭き取ればOKです

書き心地は、思っていた以上に滑らか! 書き出しこそちょっとインクフローが渋めでしたが、1度なじめばストレスなくサラサラ書けました。価格帯を考えると十分なクオリティーです。

言うことがなさすぎて、試しに付属の半透明キャップを付けたままで1週間置きっぱなしにしてみました。簡易な作りのキャップですし、さすがに乾いちゃうかな……? と心配しつつ、1週間後、再び手に取ってみてびっくり。ちゃんとサラサラ書ける!

吸入していたのは染料インクだったものの、さすがに1週間も放置すれば、かすれることぐらいはあるかと予想していました。放置前と変わらずサラサラ書けてびっくりです

吸入していたのは染料インクだったものの、さすがに1週間も放置すれば、かすれることぐらいはあるかと予想していました。放置前と変わらずサラサラ書けてびっくりです

手持ちのインクを使うほかに、専用のインクカートリッジも別売りで用意されています。コンバーターは使用後に洗浄が必要ですが、カートリッジは使い捨てなので、より手軽なのが魅力的。ペン先だけ水洗いして、ちゃちゃっと付け替えられます。

インクカートリッジは、「Fonte 万年筆」だけでなく、「Fonte ローラーボールペン」や「Fonte 筆ペン」にも使用できます。

インクカートリッジは、写真では8色10本入りですが、現在は10色12本入りに刷新。単色5本入りもラインアップされています。メーカー小売希望税込価格は、10色12本入りが440円、単色5本入りが330円

インクカートリッジは、写真では8色10本入りですが、現在は10色12本入りに刷新。単色5本入りもラインアップされています。メーカー小売希望税込価格は、10色12本入りが440円、単色5本入りが330円

ちなみに、別売りの専用キャップ「Fonte キャップ」(メーカー小売希望税込価格330円)を付けると、よりデザインに統一感が出ます。「Fonte 万年筆」と合計で1,045円と、価格面のインパクトは控えめになりますが、それでもかわいい!

別売りの「Fonte キャップ」を装着した姿。写真の「スケルトン」を始め、計12色を展開しています

別売りの「Fonte キャップ」を装着した姿。写真の「スケルトン」を始め、計12色を展開しています

サリサリ書き応えのある「Fonte ガラスペン」

「Fonte ガラスペン」は、万年筆と同じく1本715円(メーカー小売希望税込価格)と、破格と言えるガラスペンです。ただ、ガラスでできているのはペン先のみ。ボディ部分は透明のプラスチック製のため、気楽に扱えそうです。

実際に書いてみたところ、紙面に「カリカリッ」と引っ掛かる感じが気になりました。個体差もあるので一概には言えませんが、滑らかな書き心地を期待していたのでちょっと残念。筆記角度や合わせる紙を調整したら、「サリサリ」ぐらいに落ち着きました。

筆者とは反対に、硬めの鉛筆を当てたような手応えのある書き心地が好きな人や、筆記音を楽しみたい人にとってはよいモデルでしょう。

「サリサリ」という筆記音がして、H2の鉛筆を連想しました。書き応えを求める人に向いていると思います

「サリサリ」という筆記音がして、H2の鉛筆を連想しました。書き応えを求める人に向いていると思います

ペン先をインクに直接浸して使うので、コンバーターには非対応。ただ、ボディからペン先を外すことは可能なので、ボディ側の空洞を使って遊ぶのも楽しそうです。

好みのインクを吸入して使える「Fonte ローラーボールペン」

「Fonte ローラーボールペン」は、「Fonte 万年筆」と共通のコンバーターが付属しており、ボールペンでありながら、万年筆用インクを充填して使えるのが魅力です。

価格は1本825円(メーカー小売希望税込価格)と、ボールペンとしてはお高めですが、「インクを吸入して使えるボールペン」としては格安! コンバーター付きのボールペンは、ほかのメーカーからもいくつか発売されていますが、1本1,000円を切るものはなかなか見ません。

「Fonte 万年筆」と違って、ペン先からコンバーターを外して、直接インクを吸い上げて使います

「Fonte 万年筆」と違って、ペン先からコンバーターを外して、直接インクを吸い上げて使います

実際に書いてみたところ、ボールペンという機構ゆえか、出てくるインク量は控えめな印象。万年筆やガラスペンで書くときよりも、色味が薄く出ているように感じました。その分、インクが裏抜けしづらいので、合わせる紙を選ばず使えました。

透明ボディは、「Fonte 万年筆」や「Fonte 筆ペン」と共通のパーツで、丸みのあるフォルム

透明ボディは、「Fonte 万年筆」や「Fonte 筆ペン」と共通のパーツで、丸みのあるフォルム

写真上から、「Fonte ローラーボールペン」で書いた場合、「Fonte 万年筆」で書いた場合、「Fonte ガラスペン」で書いた場合。同じインクでも、なかなか印象が異なります

写真上から、「Fonte ローラーボールペン」で書いた場合、「Fonte 万年筆」で書いた場合、「Fonte ガラスペン」で書いた場合。同じインクでも、なかなか印象が異なります

ちなみに、書き心地に関しては特筆するようなことはなく、率直に言って「ものすごく普通なボールペン」という印象でした。ただ、筆記角度はやや寝かせ気味にしたほうが、インクフローが安定して書きやすかったです。

筆記角度80〜90度で立てて書いた場合(写真上)と、60〜70度で寝かせて書いた場合(写真下)の比較。後者のほうが滑らかに書けました

筆記角度80〜90度で立てて書いた場合(写真上)と、60〜70度で寝かせて書いた場合(写真下)の比較。後者のほうが滑らかに書けました

色変わりインクが使いたくなる「Fonte 筆ペン」

「Fonte 筆ペン」は、ボールペンと同じく1本825円(メーカー小売希望税込価格)で、かつ「万年筆用のインクが使える」という特徴を持つ筆ペンです。「Fonte ローラーボールペン」と同じく、コンバーターを取り外して、直接インクを吸い上げて使います。

紙の上で走らせてみると、毛筆タイプならではの緩急の付いた線が書けて、インクの濃淡がはっきり出ました。これは楽しい……! ペン先はよくしなって、重ね塗りも楽しいです。

太く表情豊かな線が書けて、色が変わるインクとの相性抜群!

太く表情豊かな線が書けて、色が変わるインクとの相性抜群!

ただ、インクが多く紙に載る分、調子に乗って書きまくると、紙の裏面までインクがにじんだり、紙が水分でヨレヨレになったりすることも。がっつり遊びたい場合は、水彩紙など水に強い紙を選んだほうがよいでしょう。

ちなみに、ほかの「Fonte」製品と比べると、全体的なサイズはやや大きめ。そして、ボディやコンバーターの仕様も異なります。コンバーターの規格は、ほかの「Fonte」製品と入れ替えて使うことはできません。

半透明キャップをした際の全長は、「Fonte 筆ペン」が約12.3cm、「Fonte 万年筆」が約12cm(いずれも実測値)。「Fonte 筆ペン」内蔵のコンバーターは、つまみやピストン部分にブラックが採用されています

半透明キャップをした際の全長は、「Fonte 筆ペン」が約12.3cm、「Fonte 万年筆」が約12cm(いずれも実測値)。「Fonte 筆ペン」内蔵のコンバーターは、つまみやピストン部分にブラックが採用されています

3週間じっくり使ってみた! 壊れた個所は……?

結論から言うと、筆者が3週間使った限りでは、使用に支障が出るような故障は発生しませんでした。4製品ともファーストインプレッションが予想以上によかったので、「これならもう元は取れた! 1週間ぐらいで壊れても後悔しない」ぐらいの気持ちで遊び倒していたのですが、思わぬうれしい結果になりました。

強いてあげるなら、ボディ後端にある丸いパーツが、一部ぐらぐら揺れるようになったことが変化と言えば変化かも。ペン本体を出したりしまったりする際には「カチャカチャ」と小さな音がしますが、文字を書く程度の動きでは鳴らないので、筆者は気にせず使い続けています。

後端に丸いパーツがくっついているのは、万年筆、ガラスペン、ボールペンのボディ。今回入手した3本のうち、2本が若干「カチャカチャ」と揺れるようになりました。1本はそのままなので、個体差かもしれません

後端に丸いパーツがくっついているのは、万年筆、ガラスペン、ボールペンのボディ。今回入手した3本のうち、2本が若干「カチャカチャ」と揺れるようになりました。1本はそのままなので、個体差かもしれません

あと、「Fonte ローラーボールペン」と「Fonte 筆ペン」は1度インクを入れると、洗浄しても、まっさらな状態に戻せません。それゆえ、別のインクを入れ替える際には、色が混ざってしまう可能性があるので要注意です。

なお、同社は「Fonte ローラーボールペン」について、「構造上、洗って完全に色を抜くことはできません」「1つの色をくり返し使うことをおすすめします」とアナウンスしています。

実際に、「Fonte ローラーボールペン」と「Fonte 筆ペン」を水にひと晩つけて、念入りに洗浄してみましたが、それでもインクを落とし切れませんでした

実際に、「Fonte ローラーボールペン」と「Fonte 筆ペン」を水にひと晩つけて、念入りに洗浄してみましたが、それでもインクを落とし切れませんでした

【まとめ】気兼ねなく遊び倒せる高コスパ筆記具!

以上のことから、「Fonte」の筆記具シリーズは、作りの甘さを感じる部分もありますが、トータルで考えると「この価格帯で、これだけ遊べるならお得では?」と感じました。

特に「Fonte 万年筆」は、これから万年筆デビューしてみたい人の「最初の1本」としても十分おすすめできます。とりあえず安く買ってみて、気に入ったら専用キャップを追加購入してカスタマイズする、ということもできますし。

ただ、プラスチック製のスケルトンボディは、かわいいはかわいいでも、「おもちゃっぽいかわいさ」という感じ。きちんとした場面で使う筆記具というよりは、プライベートで気兼ねなく遊べる筆記具として購入したほうがよいと思います。

ちなみに、今回使い続けた中で、筆者のいちばんの推しになったのは「Fonte ローラーボールペン」でした。外出先でちょこっとメモした文字が、お気に入りのインクの色だと、想像以上にテンションが上がります

ちなみに、今回使い続けた中で、筆者のいちばんの推しになったのは「Fonte ローラーボールペン」でした。外出先でちょこっとメモした文字が、お気に入りのインクの色だと、想像以上にテンションが上がります

和田友梨(編集部)
Writer / Editor
和田友梨(編集部)
万年筆、インク、紙を肴に飲む辛党ライター。チカチカ点滅するモニター画面や丸い押しボタン、ローレット加工を施したダイヤルなど、レトロチックなデザインにロマンを感じます。
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