すっかりとおなじみとなった(と思う)大集合シリーズ。今回のテーマは定番文房具の代表とも言えるボールペン。これまでも、思わず首をかしげたくなる珍品から、人に見せびらかさずにはいられない逸品まで、さまざまなボールペンをご紹介してきました。ということで、今回はその集大成。筆者お気に入りのユニークなボールペンをテーマごとにまとめてご紹介いたしましょう。
ボールペンのボディ素材と言えば、高級品では金属やセルロイドが、お買い得品ではプラスチックというのが一般的ですが、ほかにも木材や紙を使ったボールペンもあります。まずは特徴的なボディ素材で作られたボールペンをご紹介いたしましょう。
ドイツに本拠を置く筆記具や製図用具で有名なステッドラー社のボールペンで、ボディ素材に採用されたのは独自開発のコンクリート。そのため1本ごとに気泡の場所が違う微妙な模様が独特の表情を持っています。
また、使い込むことで、汚れなどが自分だけのテクスチャーとしてボディに記録され、オンリーワンの1本に仕上がっていく様も楽しめる逸品です。
純度が高く強度を増したコンクリートが採用されています。素朴な感じの色合いがとても印象的です
本体とノックボタンにはステッドラーのロゴマークが描かれています。また、クリップには、ステッドラープレミアムのイニティウムクリップを採用
筆者が購入したものには、0.7mmの中字(黒色)のリフィルが入っていました。ステッドラーのロゴは入っていますが、いわゆるヨーロッパタイプと言われる「G2」型のものです
ボディ形状は、人間工学に基づいて考案された特殊な六角形。ざらついた感じはまったくなく、コンクリートとは思えない上質な手触りです
かつて万年筆をはじめペンのボディ素材として一般的に使われていたセルロイド。耐久性の問題などもあって、ボディ素材として見かけることは少なくなりましたが、なかには大西製作所のように、セルロイドならではの柔らかな手触りや独特な色合い、艶を生かした高級ペンを作り続ける会社もあります。
大西製作所の大西慶造氏は、ろくろを使いセルロイドを削り、磨き上げ、1本ずつ手作りで仕上げています。熟練職人が伝統工芸技法で紡ぐセルロイドボールペンは、まさに唯一無二の逸品と言えます。
手作りならではの独特の艶やかさと木目調の模様が魅力的です
リフィルはSCHMIDT(シュミット)社のものが使われています。こちらもヨーロッパタイプ
手にした瞬間に高級品とわかる質感の高さが魅力です
「PURE MALT(ピュアモルト)」で使われているボディ素材は木材。しかも、実際にウイスキーの樽として活躍したホワイトオークが使われています。樽用のホワイトオークは、樹齢100年以上の大木で、さらに50〜70年ウイスキーの樽として活躍します。つまり、150年以上の時を大切に使われてきた木材が、「PURE MALT」として生まれ変わっているわけです。
なお、オークとは日本では楢(なら)や樫(かし)の木のことを言います。「PURE MALT」には、使われている木材によって、ナチュラルなダークブラウンのやさしい色合いの「PURE MALT」、深みのある色合いと重厚な気品が感じられる「PURE MALT oak wood premium edition」の2種類があります。時を重ねてきた木材は、使い込むほどに、愛着がわいてきます。
筆者が愛用しているのは、重厚なオフブラック仕上げが特徴の「PURE MALT oak wood premium edition」で、赤・黒2色のボールペン+シャープペンシルタイプ。ほかにもさまざまなタイプがあります
使いたいペンを上にして(写真の場合は赤)ノックします。戻すときは、クリップにある小さなポッチを押します
リフィルに一般的なものが使われているのも、うれしいポイントです
高級ボールペンを使い、気に入った色と太さで文字を書くのもいいですが、残念ながら筆者はまだその域には達していないようです。やはり複数色が使えたり、あれこれとおもしろい機能があったりするボールペンに魅力を感じてしまいます。ここでは、なにかと便利な多機能が特徴のボールペンをご紹介します。
マルチなペンと言えば、数色のボールペンにシャープペンシルがセットされた2+1や3+1が一般的です。しかし、ぺんてるの「スーパーマルチ8」は、黒・赤・青色のボールペンが3種類、PPCノンコピー(コピーやスキャンしても文字が写りにくい)の水色・蛍光ピンク・蛍光イエロー・赤色の色鉛筆が4種類、さらにHBの鉛筆芯が本体に内蔵。まさにマルチさ満載のペンに仕上がっております。使い方がちょっと独特なことが難点ですが、すぐに慣れるのでご安心を。
ボールペンと色鉛筆を自由自在に使い分けられる、これ1本あれば、ノートや手帳をマルチにカラフルに彩れますよ♪
今回は「スーパーマルチ8セット」を購入。セットは「スーパーマルチ8」本体に替え芯、専用の芯削り器がセットされています
クリップ部分を回転させて使いたい芯に合わせます。まずは黒のボールペンを使ってみましょう
ノックすると黒のボールペンが出てきます
芯を戻すには逆さにしてノックします。このへんが独特です
続いて鉛筆を使ってみましょう(色鉛筆も同じです)。まずはクリップを使いたい芯の位置に合わせます
鉛筆(色鉛筆)の場合は、ボールペンと違ってノックすると芯が一気に全部出てくるので、指先などで止めて長さを調整します。これも独特。使い終わったら逆さにしてノックするのは同様です
TROIKA(トロイカ)は、イギリスで生まれたメタル製ギフトの老舗。現在はドイツに拠点を移し、世界各地でモダンデザインアイテムを展開しています。ご紹介するのは、同社の数あるメタルギフトのひとつ「マルチボールペン コンストラクション」。
特徴は1本のペンに集約された5種類の便利機能。ボールペンとしての機能に加えて、ペン上部はタッチペン(静電容量方式)として使えます。また、タッチペンのタッチ部分の中には、プラスとマイナスのドライバーを内蔵。さらに、ボディの側面は4種類の定規として使え、加えて水準器も装備、まさにマルチで使える多機能ボールペンに仕上がっております。これは男子が大好きなパターン。手放せなくなりそうな予感がひしひしとします!
筆者はシルバーを購入。ほかにもブラックやメタリックゴールドなどカラーバリエーションは豊富です
先端部分を回転させるとペン先が出てきます
ペンの上部はタッチペンになっています
タッチ部分を外すと中からプラスドライバーが登場。反対側はマイナスドライバーになっています
ボディの側面は定規としても使えます
水平かどうかを測る、気泡管水準器も装備
最後にご紹介するには、思わず友人や周りの人たちに自慢したくなる特殊機能や独自性を備えたボールペンです。人前でも、そうしたうんちくをまったく披露せずに使い続けられたならば、相当に胆力の強い方であると感服いたします。
こちらは、フィッシャー社が開発、販売する「スペースペン」。NASA(米国航空宇宙局)の厳しい検査を経て、本物の宇宙飛行士によって使用されている、文字どおり宇宙で普通に使える特殊なボールペンです。通常のボールペンは、地球の重力によってインクがボールの先へと落ちていきますが、スペースペンは内部に封入された窒素ガスの圧力によってインクがボールペン先に移っていくため、無重力状態でも使用可能。逆さにしても書けますし、水中や極度の寒さ暑さ(-34〜121℃)においてもスムーズに文字が書けるというすぐれもの。密閉状態で特殊な粘着性の強いインクを採用しているので、インクが乾燥することなく100年以上の保管も可能とされる逸品です。
また、リフィルのカラーリングもブラック以外にシルバーやターコイズ、パープルなど豊富に用意されています。ちなみにアメリカと宇宙開発を競ったソビエト連邦では、「スペースペン」を導入するまで、鉛筆を使っていたと言われています。まあ、都市伝説かもしれませんけどね♪
筆者が購入したのは、スペースペンを代表するフラッグシップモデルの「AG-7」。立派なケースに入っています
「アストロノート」シリーズの「AG-7」は、人類初の有人月面着陸を成し遂げたアポロ11号のクルーによって使用された歴史的モデル
窒素ガスが充填された、一体成型、完全密閉の金属製インクカートリッジ。購入時は黒色の中字(BLACK MED)がセットされています
なんと、水の中でも本当に字が書けました。紙さえ破れなければ何の問題もなさそうです。しばらくそのままにしておきましたが、文字がにじむこともありませんでした。スゴイ!!
続いてご紹介するのは「タクティカルペン」。「タクティカル」とは、戦術的な、用兵上の、といった意味の単語で、日本では「護身用ペン」として販売している場合もあります。護身に役立つのかどうかはさておき、筆者が面白いと思ったのは、そのペンを作っているのがあのS&W(Smith&Wesson)社であること(S&W社以外の製品もあります)。S&W社は、世界的に有名なアメリカの銃機器メーカーで、なかでも44マグナム(S&W M29)は、映画「ダーティーハリー」のセリフで世界最強の拳銃として紹介されたこともありよく知られています。
ちなみに、坂本龍馬も、S&Wが初期に製造した1、2という拳銃を愛用していたとのこと。個性的なペンが欲しいなんて方にプレゼントすれば喜ばれそうです。また、この形状は、筆者のように、足ツボを押すのが大好きな方にもピッタリですぞ♪
本体はアルミ合金のしっかりしたもの。カラーはブラック以外に、グレーやブルーなどもあります。なお筆者が愛用しているのはキャップがネジ式のもの(はめ込み式のものもあります)
クリップ部分にはSmith&Wessonのロゴマークが入っています
リフィルはドイツのシュミット(SCHMIDT)社のものを採用。書き味は良好です
皆さんいかがでしたか? いずれも甲乙つけがたい逸品なので特段のランキングはありませんが、個人的に気に入っているのは、「スペースペン」と「PURE MALT」の2本です。
「スペースペン」は、なにより書き味が筆者好み。油性インクならではの粘着性を感じつつも、非常にスムーズにペン先が流れていく感じがなんとも素敵です。また、他のボールペンと比べてリフィルのカラーリングが非常に豊富なことも好印象です。
いっぽうの「PURE MALT」には、長い年月を経た独特の木の温もりとやさしさを感じることができます。筆者はすでの数年来のお付き合いですが、この程度では150年の月日を経たホワイトオークに失礼というもの。まだまだ使い続けたいと思わせる魅力を感じます。
ほかにも、セルロイドボディのペンは今となっては貴重な手作りの逸品ですし、「スーパーマルチ8」はとてもよく考えられたペンだと感服しております。残念ながら、絵心と芸術的センスが皆無な筆者には「スーパーマルチ8」は使いこなせそうにありませんけど……。
皆さんも素敵なペンを見つけ、人生のパートナーとして末永くお付き合いください。
主に東京の湾岸エリアに生息しているが、中国、タイ、インドネシアなどでの発見情報もあり、その実態は定かではない。仲間うちでは「おっちゃん」と呼ばれることも。