本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当者に、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それを編集担当者が実際に購入!……という自腹買い企画です。
第21回は、「高機能なシャープペンシル」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
1月11日が「シャー芯の日」なの、知っていました?(この収録は2023年1月中旬に行われました)
初耳ですね。そんな記念日があるんですか
ぺんてるが提唱して、2023年に制定されたばかりなんですけどね。「1」がシャープペンシルの芯に見えるから、ということらしいです
できたばっかりじゃないですか。で、「シャー芯の日」は何かすることがあるんですか?
シャー芯って、普段はシャープペンシルの影に隠れて目立たないでしょ。なので、改めて芯の魅力を伝えていこうよ、という話みたいですね。ちょっと漠然としてるかな
うーん。でも確かに、シャープペンシルに関して語られるときも、芯にまで話がいたることってあまりないですよね
だって実際、今日も今から高機能なシャープペンシルのほうのおすすめの話をしますからね(笑)
えー! この導入でそう来ます!?
やっぱりシャープペンシルのほうが、紹介してても盛り上がるじゃないですか。でも、発売されたばかりの最新シャー芯がすごかったんで、その話もあとでします
ここ10年のシャープペンシル業界は「芯が折れない」というところが主戦場で、各メーカーともに芯が折れないシャープペンシルばかり開発していたんですね。だけど最近は、いろいろと工夫のしどころが変わってきた印象で
そういえば、芯が折れないシャープペンシル、いっぱい出ていましたよね。最近は違うんですか?
各メーカーともに新しい方向性を模索している気がしますね。たとえば、これ、三菱鉛筆の「ユニ アルファゲル スイッチ」(以下、スイッチ)というシャープペンシルなんですが……
衝撃吸収ゲルをグリップに封入した「ユニ アルファゲル スイッチ」(三菱鉛筆)
三菱鉛筆のシャープペンシルと言えば、「クルトガ」が有名ですよね
そう、書くたびに芯がわずかに回る機能で、常に芯先が尖っているから細い字も書きやすい!というのが「クルトガ」の特徴。中高生の認知度が100%という“バケモノシャープ”ですね。で、もちろんこの「スイッチ」にも「クルトガ」機能は入っているんですよ
でも、製品名に「クルトガ」とは付いてない?
そこがポイント。実は「クルトガ」機能をオン/オフ切り替えられるんです
「クルトガ」のオン/オフはクリップをひねって行います。「HOLD」表記が見えているのがオフ状態
えっ、せっかくの「クルトガ」をオフにしちゃっていいんですか?
「クルトガ」は細字を丁寧に書くには便利なんだけど、書くたびに先端が「カチャカチャ」とブレて落ち着きがないんですよ。オフにすると芯先が動かなくなるので、集中してダーッと速書きしやすくなる
「クルトガ」機能オンの状態で書くと、芯の回転に合わせて軸中央のゲージも回ります
「クルトガ」って、そんな「カチャカチャ」してましたっけ
それで「クルトガ」が苦手って人もいるぐらいにはブレる。でも、丁寧にノートを清書するときは「クルトガ」があるといいんですよ。本当に字がキレイになるから。いっぽうで、メモを取ったり、板書したりなんてときは、オフのほうが断然書きやすい。スイッチングで使い分けられると快適ですよ
へー!
あともうひとつ、「アルファゲル」という衝撃吸収ゲルを使ったグリップがとにかく優秀。シリコン/アルファゲル/シリコンの3層構造なんですけども、握った分だけ内側からグッと押し返すような反発力があって、握りがとても安定するんだ
やわらかいけど適度な弾力があって、指の疲労感を軽減させる「アルファゲルグリップ」
それ、いいですね。シリコンのグリップって、やわらかすぎてズルズルとズレることありますもんね
そういうズレ感もないから、無理に力を入れて握らなくてもいい。つまり、指の負担が減るというわけ。僕は割とグリップにうるさいタイプのユーザーを自認してますけど、これは昨今のペングリップの中でも最高評価をあげたい
それはすごいな……
次に紹介するのは、三菱鉛筆の「クルトガ」と並んでバケモノ級の認知度を誇るパイロット「ドクターグリップ」シリーズの最新版「ザ・ドクターグリップ」です
シリーズ最新のフラグシップモデル「ザ・ドクターグリップ」(パイロット)
おっ、通称「ドクグリ」ですね。これもシャープペンシルの大ブランドだ
その大ブランドに定冠詞の「The」を付けて製品名にしてるのがスゴい。自信がないとこれはできないでしょ
確かにそうだ
「ドクグリ」シリーズのフラグシップモデルという扱いになるんですが、その最大の機能が「静音性」なんです
ちょっと意外な機能かも。芯が折れないとか、芯が回転するとか、そういう書き心地の部分が目玉じゃないんだ?
静音性、大事ですよ。たとえば、図書館とか静かなカフェとかで勉強するとき、ノック音がやたらと響いて気になることがあるんですよね
うーん、正直、ノック音をあまり気にしたことがないんで……
内部構造を見直すことで、ノック音がとてもマイルドに
シャープペンシルのノック音はボールペンのものよりは静かなんですけど、押す頻度が高いでしょ。だったら静かなほうがいいのは間違いない。内部の部品形状を見直すことで、ノック音は従来比50%減を実現しています
そういえば、ボールペンも静音ノック機能のものが最近出てましたよね。いまは静音ノックがトレンドなんですかね
気にしている人が割といるのは間違いないと思うよ。ちなみに「ドクターグリップ」シリーズのシャープペンシルには、後端のノックノブ以外にもうひとつ、軸を振ることで芯を出す「フレフレノック」って機能もありまして
あー、なんか見たことあります。振って芯が出るやつ
慣れるともう「フレフレ」しか使わなくなるぐらいに便利なんですけど、軸内のオモリを上下に「ガシャガシャ」振る衝撃で芯を出してるので、ノックノブ以上にうるさいんだ
そういう仕組みなんだ。そりゃうるさいでしょうね
「ザ・ドクターグリップ」は、軸内にあるオモリ受けのバネを調整することで、衝撃を吸収しています。なので、「フレフレ」のガシャガシャ音も50%減という静音設計なんです
ちなみに、この「フレフレ」ってオン/オフできないんですか? 筆箱の中で揺れて芯が出ちゃったりしない?
軸中央をひねってマークを合わせると、「フレフレ機構」がロック。この状態でもノックノブは機能します
おっ、実はそこもポイントなんだ。「ドクターグリップ」シリーズでは初となる「フレフレロック機構」も搭載しています。持ち運ぶときは、ロックをかけておくと安心ですよね
それは安心だ!
最後に紹介するのが、「シャー芯の日」を提唱したぺんてるの新製品シャープペンシル「オレンズ AT デュアルグリップ」(以下、AT)です
自動芯出し機能でノンストップ筆記を実現した「オレンズ AT デュアルグリップタイプ」(ぺんてる)
「オレンズ」シリーズと言えば、フラグシップモデル「オレンズ ネロ」がありましたよね。自動で芯が出る機能を実証するために、1万文字を延々と書く!というしんどいレビュー記事を書いたんで、よく覚えています(笑)
最初に1回ノックして芯を出したら、あとは芯が切れるまでオートで芯が出続けるんですよね。「自動芯出し機能」と言うんですが、この「AT」にも搭載されています
ノックせずに書き続けられるのは、シンプルに便利ですよね
芯の減りとともにパイプが後退していき(写真左)、紙から先端が離れるとパイプと芯が元の長さに(写真右)。これでノックせずに延々と書き続けられます
学校のテストみたいな1分1秒を争うシーンでは役立つはずです。ただ、「オレンズ ネロ」は軸内で芯をホールドするチャック(シャープペンシルの心臓部)を金属の削り出しで作るというリッチなことをしていたんですが、それが大変すぎて量産できなかったんですよ
あー、だいぶ長いこと売り切れが続いてましたっけ
そこで「AT」ではチャックを樹脂にして量産しやすくしつつ、それでもきちんと精度が出るように新設計されています。試し書きを結構しましたけど、自動芯出しも含めて、めちゃくちゃ書きやすいシャープだと思いますよ
見た目もなかなかカッコいいですよね。グリップとか
滑らずに握れて、かつ低重心で書きやすいデュアルグリップ
金属+ラバーのデュアルグリップというやつです。金属の重みで低重心化しつつ、ラバーでグリップ力を担保するという構成。なんか“鬼の金棒”みたいな雰囲気ですけど、握りやすいですよ
ちょっと握ってみたいな
あと、ここにプラスして紹介しておきたいのが、「AT」とほぼ同時期に発売となった最新のシャー芯「Pentel Ain」です
「AT」とセットで使いたい最新芯「Pentel Ain」(ぺんてる)
あっ、ようやく芯が来た!
ぺんてるとしては13年振りの芯ブランド刷新なんですが、これが使ってみると衝撃的で……
言うてもシャー芯が衝撃的ってこと、ないでしょ。そんなに変わる?
シャー芯って、「濃さ」と「減りにくさ」、「滑らかさ」と「折れにくさ」、「消しやすさ」と「汚れにくさ」がそれぞれトレードオフ関係にあるんですね
はいはい、濃い芯はやわらかいから減りやすい、みたいな話だ
なので、どのメーカーの芯もある程度はステータスに偏りがあるんですが、「Pentel Ain」はそれらを全体的に高める方向で作られてます。で、試してみると特に「滑らかさ」がスゴいんですよ
従来のぺんてる芯(写真左)との筆記比較。微妙な差ではあるけど、確実に書きやすくなっています
書いててわかるぐらいに滑らか?
書いててハッキリわかるぐらいに滑らか。特に芯の先端エッジが崩れ始めたあたりから、めちゃくちゃスルスル書ける印象ですね。これは革新的な芯だと思います
うわー、そう言われるとめっちゃ気になる!
何より、「自動芯出し機能」と滑らか芯の相性が抜群。せっかくスルスルと気持ちよく書いてるところに、急にノックを要求されると興ざめじゃないですか。そういう点で、このシャープペンシルと芯は純正セットとして、組み合わせて使うのがオススメですね
どうですか、今回はどれか気になるのあった?
そりゃもう「AT」と「Pentel Ain」芯のセットですよ。シャー芯なんて言うほど性能は変わらないだろ?と高をくくっていたんですが……、きだてさんがそこまで言うなら、試してみたいですよ
うん、従来の芯とか他メーカーの芯とも書き比べてみましたけど、実際に違いは体感できましたね。これはやっぱり試して欲しいかな
あとは「クルトガ」をオン/オフしてみたい気もちょっとします。オン/オフしてどれぐらい違いがあるのか、こっちも試したい
「スイッチ」ですね。こういう設定のオン/オフって、自分が普段から使う設定にしたらもう二度と切り替えない、みたいなのが普通なんですよね。だけど、「クルトガ」機能のオン/オフは使うシーンによって切り替えたほうが圧倒的に便利。使い分ける価値があるなーって感じです
そう聞くと、やっぱり気になるな。うーん、考えます
ぺんてるの「オレンズ AT デュアルグリップタイプ」と「Pentel Ain」のセットがどうしても使ってみたくなり、自腹買い! 持った感じは低重心なうえにグリップも効くので、手にスッと収まります。書き味は、ノートの上を滑るようにサラサラと書けるスムーズさが魅力。もちろんノックするのは最初の1回だけなので、集中して板書を写したり、人の話を速記したりするのにもってこいの1本だと実感できました!
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。