シャープペンシルを使うときは大体、芯を出すために軸後端のノブを「カチカチ」とノックするはずです。シャープペンシルの基本動作と言えるものですが、この「カチカチ」がわずらわしく感じること、意外と多いのではないでしょうか。
たとえば、テンポよく書いていたのに、芯が減って線が途切れてしまったときとか。書くのを中断し、指をノブにかけるために軸を握り直して、ノブをノックして、また書くために軸を握り直して……、と必要な動作とはいえ、せっかくの集中力が切れてしまうし、いちいち軸を握り直さなきゃいけないのも面倒です。
ノック不要のオートマチック・シャープもありますが、その多くは数千円する高級品なので、気軽には手が出しにくい。そこで今回は、ローコストでノックの手間を大幅に軽減できる最新シャープペンシルを紹介します。
サンスター文具から発売された「トッププルシャープ topull S」(以下、「トプルS」)は、ノック機構をこれまでにない位置に配置したシャープペンシルです。
実は、シャープペンシルからノックの手間を少しでも減らそうという試みは以前からあって、軸の側面にボタンを付けたサイドノックや、軸を真ん中から軽く折ることで芯が出るボディノックなど、さまざまな方式が考案されてきました。しかしいずれも、構造が複雑になってコストが上がるなどのデメリットが発生し、うまく行かなかったのが実情です。
これに対して「トプルS」はシンプルに、軸の先端にノックを付けました。
特殊な先端ノックを備えたシャープペンシル「トプルS」(サンスター文具)。芯径は0.5mmのみ。本体カラーは「ブラック」や「ホワイト」などのベーシックなカラーに加えて、「ミント」や「バイオレット」などのやわらかなカラーも展開しています
握ってみると、まずグリップ部に不思議な分割線があり、そこから先端へかけて1段絞られたように細くなります。さらにその先の小さな金属の口金の先から芯が出るという構造です。
一般的なシャープペンシルとはペン先周辺の印象がかなり異なります
先端ノックをする場合、細い軸部分を人さし指と中指で挟むように保持して、グッと握るように引き込みます。すると「カチッ」という音とともに芯が少し出るので、あとは芯が必要な長さになるまでノックを繰り返せばOK。
これが「トッププル」と呼ばれる新しいノック機構です。
段差に指をかけて引くことでノックできます
「トッププル」機構の最大のメリットは、ノックするときにいちいち軸を握り直す必要がない、ということ。筆記姿勢から指を伸ばして先端に引っ掛ければ、そのままノックできます。そしてまたすぐに書き始められるので、時間のロスはほとんど感じないはず。
実際に試してみても、ノックし終わってから筆記姿勢に戻る時間は1秒以下とスムーズ。これなら集中力も途切れにくそう。
ノックして筆記姿勢に戻るまでが1秒以内と、とにかくタイパが高いです
慣れないうちはウッカリ軸後端に手が伸びがちですが、そこにはノックはありません!
ただ、試用中にちょっと気になったのが、ノックの重さです。指をかけるスペースがやや狭いこともあって、ノックを引く際には、成人男性の指の力でも割と抵抗を感じました。ひんぱんにノックを繰り返せば、手が疲れてしまうかもしれません。
もちろん感じ方には個人差があるので、できれば購入前にノックフィールを触って確認できると安心でしょう。
「トプルS」はグリップ部に分割線があるため、握る際、この部分に指が当たってしまうと少し気になるかもしれません。使い始めのときは避けて握ればよいのですが、偏芯しないように軸を回しながら書いていると、たまに指が分割線の凹にはまったりするので、握り方にはちょっとコツがいります。
ただ、これに関しては、慣れれば割と無意識によい位置で握れるようになるので、あまり気にしすぎることはないかも。
握ったときの指の位置は、大体このあたりに落ち着くはず
芯の補給は、先端の細軸部分をひねってリフィルを抜き出して行います。
リフィル自体がかなり細いので、芯のストックは2〜3本でいっぱいという感じ。入れすぎると詰まってトラブルになる可能性もあるので、多機能ペンのシャープユニットと同等の加減で運用するのが確実だと思います。
ちなみにこのリフィルは、多機能ペン用のシャープユニットを流用しているようです。おそらく、生産コストを下げるためと考えられます。
リフィルが細いため、芯を4本以上ストックしておくのは無理そう。こまめに補充するのがよさそうです
いろいろな部分が一般的なシャープペンシルと異なるため、使い慣れるまでは違和感を覚える部分もあるでしょう。特に、先端ノックの重さは気になる人が多そうです。
その代わり、ノックから筆記に戻るまでのスピードは、オートマチックモデルを除けば現行品としては最速かも。タイパ・効率重視で、集中力をキープしたい! 書くスピードを上げたい! という人なら、試してみる価値はあるんじゃないでしょうか。