手帳やメモ帳でなく、もう少し大きめのノートを仕事用に持ち歩いている方もおられるでしょう。書き込める面積が大きいため、ふと思いついたアイデアやちょっとした議事録を残しておくには、ノートのほうが便利なケースも多かったりして。筆者も日常的にA5サイズのリングノートをカバンに入れて携帯しています。
ただ、普通のノートは情報が時系列でしか記入できないため、「書き終わった後にプロジェクト単位でページをまとめ直す」や「不要なプライベートのメモ部分だけ抜き取っておく」などといった使い方はできません。
紙面が編集できるノートと言えば、まず思いつくのはルーズリーフですが、どうしてもバインダーが重くてかさばるので、社会人のカバンで携帯するには不向きです。しかし逆に“軽くて薄いルーズリーフバインダー”があれば、それはもしかしてビジネスノートの最適解になるかも!?
ルーズリーフと言えば、バインダーに備わっている開閉式リングに穴の開いたリーフ(用紙)を束ねて綴じることで、ノートとして使えるというもの。基本的には中学・高校生が勉強用に使うノートなので、どうしても大量のリーフ(50〜100枚)を綴じる前提の製品が多く、さらにリングの開閉機構がかさばるため、重く分厚くゴツくなってしまいがち(昨今は随所に工夫が施された軽量タイプの製品も出ていますが……)。
驚くほど軽いルーズリーフバインダー「ラセーノ」(キングジム)
ところが、2024年10月にキングジムから発売された「ラセーノ」は、そんな重・厚・ゴツいイメージを大きく覆す、まったく新しいルーズリーフシステムなんです。実際にこのルックスからだと、ルーズリーフだと気づくほうが難しいのではないでしょうか。それぐらいに、見た目からしてスッキリと薄い! 何せリーフ+表紙・裏表紙の厚みと「らせんリング」の径だけなので、携帯性も背表紙のあるバインダーとは大きく違ってきます。
一般的なルーズリーフバインダー(左)との比較。厚みは半分以下です
従来のルーズリーフバインダーは硬い表紙と背表紙があり、その内側に26本(B5の場合)の開閉式リングを備えているのが一般的です。対して「ラセーノ」には背表紙がなく、表紙から上下2か所に小さな綴じ具が飛び出しているのが見えるのみ。ルーズリーフというより、どちらかというとリングノートの雰囲気に近い印象です。
そしてこの2つの小さな綴じ具(らせんリング)こそが、軽・薄・スマートなルーズリーフバインダーを実現した最大のポイントなんです。
クルッと巻き付いて紙を綴じる樹脂製の「らせんリング」
プニッとやわらかな「らせんリング」はそれぞれが1本の帯で、それを表紙とリーフの穴にクルクルと巻き付けることで綴じているという仕組み。バネやヒンジのような機構は一切なく、ただリング素材の弾力だけでらせん状に巻いているだけなので、そもそも重くなりようがありません(螺旋だから製品名も「ラセーノ」です)。
正直なところ、あまりにシンプルすぎて「えっ、そんなので大丈夫なん?」と聞いちゃうレベルですが、これで意外としっかり綴じられています。
ちなみに重量はA5サイズのリーフ30枚を搭載して実測で約102g。対して樹脂リングの一般的なバインダーが186gなので、その差は歴然でしょう。リーフを編集できるバインダーとしては、世界中で見てもまず間違いなく最薄・最軽量だと思います。
約102gというのは、バインダーとしてはちょっと衝撃的な軽さ。ちなみに「らせんリング」は1個あたり約0.7gしかありません
「綴じ具はリーフの穴に巻いているだけ」と述べましたが、実際に綴じ具を外してリーフを抜き挿ししたり、改めて綴じ直したりするには、ちょっと特殊なやり方が必要になります。
まず綴じ具を外す場合ですが、裏表紙を360度折り返して最終ページが見えるようにしたら、綴じ具の端が長/短と出ているので、長いほうをつまんでゆっくり引っ張ってください。するとスルスルとほどけるように綴じ具が抜けて、最終的にスポンと穴から抜けます。この抜ける感触はなかなか気持ちいいかも。
まずは裏表紙を表側に折り返して、最終ページがいちばん上になるようにセット
飛び出しているリング端の長いほうをつまんで……
そのまま引っ張ると、「らせんリング」がほどけていきます
最後はこんな感じでスポンと抜けました!
これを上下それぞれに行うと、表紙とリーフがバラけて編集可能に
綴じ直すときは先ほどと逆手順で、綴じ具の尖った側を綴じ穴に挿し入れて、クルクルとねじるようにしていくと綴じ具が入っていき、最後に端の短い側を穴に入れると完了です。
今までに体験したことのないアクションなので、慣れるまではちょっととまどうかもしれませんが、それでも2〜3回もやればコツは掴めるはず。この「らせんリング」での最大綴じ枚数は40枚ぐらい。あまりいっぱいまで綴じると表紙の開閉がしにくくなるので、30枚ぐらいにとどめておくほうが使いやすそう。
綴じるときは、「らせんリング」の先端から穴に挿し込んでいくだけ
一般的なルーズリーフやリングノートは、利き手と逆のページ(右利きなら左側ページ)に記入する際に、中央のリングにどうしても手が乗り上げてしまいます。これが、地味に手が痛いし書きにくい。
でも「ラセーノ」は紙面の上下にリングが分割しているため、真ん中では手が乗り上げることがありません。万が一にリングに触れることがあっても、柔らかリングなのでほとんど気にならないのは大きなメリットと言えるでしょう。
リングに手が乗り上げないことで、書きやすさも優秀です
「軽くて使いやすい!」とよいところばかりを褒めてみましたが、個人的に1つ気になるのが、リーフが専用品であるというところ。というのも、「らせんリング」を挿し込むためには、「ラセーノ」専用ルーズリーフの特殊形状穴(3つの穴がつながったもの)が必要だからです。
穴のピッチ自体は従来のルーズリーフと同じなので、市販リーフの穴を切り取ってつなげれば代用は可能ですが、手間を考えるとあまりおすすめできません。なので、もし「ラセーノ」が気に入ったなら、専用リーフも合わせてストックしておくべきかもしれません。リーフが切れたからと言って、普通のリーフのように手早くコンビニで入手するのは難しいですからね……。
「らせんリング」用の3連穴以外は一般的なリーフと同じ。面倒ですが、穴をつなげば専用リーフの自作もできなくはない?
専用リーフは50枚でA5サイズが363円、B5サイズが385円(いずれも税込・公式サイト価格)。一般的なリーフが250円前後なので、ちょっとお高め
とはいえ、ルーズリーフとしての軽・薄・スマートさはまず世界最強クラスで、一度これに慣れてしまうと、ほかに代えがきかなそう。編集できる仕事用ノートで、かつ収納しやすい&携帯しやすいものが欲しいのであれば、まずここから試してみるのがよいと思います。