2枚のSIMカードをスマートフォンへ同時にセットできる「デュアルSIM」機能は、海外メーカー製のSIMフリースマホを中心に多くの機種が対応しています。最近では、2つの回線で同時に電話の発着信ができる「DSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)」に対応する機種も増えました。
デュアルSIMには対応していてもDSDSに非対応なスマホでは、2枚のSIMカードをセットしても、通話やデータ通信ができるのはどちらか片方のSIMに限られます。いっぽうDSDSに対応するデュアルSIMスマホでは、データ通信に使っていないほうのSIMでも電話の発着信が可能なので、2つの電話番号を使い分けているような人にはとても便利な機能です。
なかでも高音質通話「VoLTE」での待ち受けが可能なDSDSの上位機能と言える「DSDV(デュアルSIM・デュアルVoLTE)」に対応するスマホでは、音声通話でもLTE通信が必須となるauのネットワークを使った格安SIMでも常時待ち受けができるので、回線の組み合わせバリエーションが大きく広がります。
DSDS機能に対応するスマホでは、2枚のSIMカードで同時に電話の着信を待ち受けることができます(画像はASUS JAPAN「ZenFone 5」のデュアルSIMカード設定画面)
DSDVにも対応するZenFone 5の場合、通知パネルにVoLTEが有効であることを示すピクトアイコンが2つ表示されます(右上の赤枠内)
裏を返せば、電話番号を使い分ける必要がない人にとっては、自分のスマホがDSDSに対応していることを意識することさえないかもしれません。ですが、DSDSには「必要に応じて2つの電話番号を使い分ける」こと以外にも、いろいろな用途があるのです。
そこで今回は、DSDS対応スマホの便利な活用法を3つご紹介したいと思います。
ひとつ目は、「ゼロレーティング」機能を備えた格安SIMの合わせ技です。
ゼロレーティングとは、特定のサービスを利用するときの通信が無料になる機能のこと。キャリアによって「カウントフリー」や「データフリー」とも呼ばれています(SNSアプリにおけるライブ動画の視聴のように、無料の対象外となる機能もあります)。
代表例は、YouTubeやApple Musicなどが対象となっているBIGLOBEモバイルの「エンタメフリー・オプション」や、「LINE」と主要SNSが対象のLINEモバイルです。
ゼロレーティングに対応する主な格安SIMと対象サービス
ゼロレーティングの対象サービスは、キャリアによって異なります。それゆえに、「いつもYouTubeばかりよく見ている」あるいは「Instagramで毎月ギガ不足になる」といったように、愛用するサービスがひとつに絞り込める人であればキャリアを選びやすいのですが、YouTubeとInstagramをどちらもたくさん楽しむ人のような場合は、ひとつのキャリアのゼロレーティングだけではカバーしきれないことがあります。
そんなときに便利なのが、SIMフリースマホのDSDS機能。ひとつのキャリアだけでは足りないなら、2つのキャリアを併用すればいいのです。注目はLINEと主要SNSが対象のLINEモバイルと、映像配信サービスや音楽聴き放題サービスが対象のBIGLOBEモバイルです。
普段はLINEやTwitterなどの通信が無料になるLINEモバイルをデータ通信用のSIMに指定しておいて、YouTubeを楽しみたいときだけBIGLOBEモバイルのSIMに切り替えます。こうすることで、YouTubeもInstagramも無料で通信できるというわけです。
月額料金は、LINEモバイルでSNSの通信が無料になる「コミュニケーションフリープラン」の月額1,110円(データ通信SIM、データ利用量は毎月3GBまで)と、BIGLOBEモバイル「3ギガプラン」の月額1,600円(音声通話SIM)にエンタメフリー・オプションを追加した場合の月額2,080円を合わせた3,190円が、一番安くなる組み合わせです。
どちらか片方を契約する場合の2倍近いコストがかかりますが、SNSも映像配信サービスもたっぷり楽しみたい人にとっては、片方だけを契約するよりも安く済みます。たとえば、LINEモバイルの「コミュニケーションフリープラン」でデータ利用量が毎月10GBのプランは、上記の組み合わせとほぼ同じ月額3,220円(音声通話SIM)。YouTubeだけで毎月4GB以上通信する人は、合わせ技のほうがお得です。
2つ目は、快適な通信速度で利用できる「サブブランド」と、データ利用量が使い放題になる格安SIMの合わせ技です。
大手キャリアのサブブランドとして知られるワイモバイルやUQ mobileは、格安SIMの通信速度が低下しやすい平日の12時台や18時台でも、比較的良好な通信速度が得られます。価格.comマガジンで毎月実施している通信速度調査でも、両ブランドはランキング上位の常連となっています。
ただ、サブブランドの主力プランには通話料割引が含まれていることもあって、同じデータ利用量を備えた一般的な格安SIMの料金プランと比較した場合、月額料金が割高に設定されています。
ワイモバイルの「スマホプランL」やUQ mobileの「おしゃべりプランL」「ぴったりプランL」の月額料金は、5,980円です(いずれもデータ利用量は毎月12GBまで)。たとえば、同じデータ利用量を持つIIJmio(みおふぉん)の「ファミリーシェアプラン」は月額3,260円なので、その差額は2,720円に達します。
ワイモバイルとUQ mobileのスマホ向け料金プラン
そんなサブブランドのデメリットを補完できるのが、「使い放題」の格安SIMです。U-mobileの「LTE使い放題」は、月額2,480円でデータ利用量が使い放題のデータ通信SIM。サブブランドの毎月2GBまで使えるプラン(月額2,980円)と組み合わせても、月額料金は合計5,460円で済みます。
普段のデータ通信は使い放題のSIMに設定しておいて、残りの容量を気にせず通信。会社のお昼休みのように速度が遅くなりがちな時間帯だけサブブランドのSIMに切り替えて通信すれば、データ利用量が少ないプランでも1か月を乗り切りやすくなります。
また、サブブランドのUQ mobile自身も、上り・下りとも最大500kbpsと低速ながら、月額1,980円で利用できる「データ無制限プラン」を提供しています。月額2,980円の「おしゃべりプランS」や「ぴったりプランS」と組み合わせれば、「おしゃべりプランL」「ぴったりプランL」よりも1,000円近くコストを抑えることが可能です。
3つ目は、異なるネットワークに対応する格安SIMの合わせ技です。
格安SIMは大手キャリアのネットワークに相乗りしているので、エリアの広さは大手キャリアと変わりません。ただ、大手キャリアといえども場所によっては電波が届きにくく、通信が安定しない場所が今も存在しています。
たとえば、自宅ではNTTドコモの電波が入りにくく、会社ではauの電波が入りにくいというケース。普通のスマホなら、電波の入りにくい場所は我慢するしかありませんが、DSDS対応スマホであれば、NTTドコモとauそれぞれのネットワークに対応する格安SIMで同時に電話の待ち受けができます。その場に応じて電波が入りやすいほうのSIMをデータ通信用に設定すれば、自宅と職場のどちらでも通信しやすくなるのです。
そんな場合に活用したいのが、1社で複数のネットワークに対応している「マルチキャリア」と呼ばれるMVNOの格安SIM。特に、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアすべてのネットワークに対応しているmineoに注目です。
mineoでは、前月から繰り越したデータ利用量をメンバーどうしで合算して共有できる「パケットシェア」という機能を提供しています。メンバーになれるのは最大10回線までで、同じ名義で契約している回線同士で共有することも可能です。
前述のケースの場合、mineoでドコモ回線を利用する「Dプラン」とau回線を利用する「Aプラン」をそれぞれ契約し、パケットシェアのメンバーとして登録しておきます。すると、どちらの回線で通信をする場合でも、データ利用量は繰り越して合算された分が優先的に消費されます。ひとつの回線だけを契約している場合と同じように、データ利用量を無駄なく使えるのです。
複数のネットワークに対応しつつ、データ利用量の共有もできる主な格安SIMには、mineo以外にもLINEモバイル、楽天モバイル、IIJmio(みおふぉん)、イオンモバイル、BIGLOBEモバイルなどがあります。
ただし、LINEモバイルはau回線のSIMでデータ利用量を共有できませんし、他の格安SIMはいずれもNTTドコモとauの組み合わせとなります。組み合わせられる回線の自由度を優先するなら、mineoを選ぶのがいいでしょう。
2つ以上のネットワークに対応する主な格安SIM