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楽天モバイル本サービス開始、iPhoneの5G対応など今年も激動でした

「ahamo」の衝撃! 2020年を振り返る、格安SIM/MVNO業界ニュース

新型コロナウイルス感染症を抜きにしては語れない1年となった2020年。コストの安さが魅力の格安SIMは、2020年9月末の時点で1,600万契約に達しています(総務省が2020年12月に公開した統計資料より)。緊急事態宣言の発出・解除や東京オリンピックの開催延期といった社会的に大きなニュースが相次いだ今年の格安SIM市場を取り巻く注目の動きを振り返ってみたいと思います。

※記事中の価格は特に表記がない限り税別です。

2020年は格安SIM/MVNO業界にとっても大きな1年となりました

2020年は格安SIM/MVNO業界にとっても大きな1年となりました

ニュースその1:大手キャリアが5Gサービス開始、一部MVNOも5Gに対応

2020年3月、大手キャリアのNTTドコモ、au、ソフトバンクが相次いで5G(第5世代移動通信システム)によるサービスを開始しました。2020年に登場した大手キャリアの端末は5Gに対応するものが多く、アップルの2020年iPhone新機種「iPhone 12 mini」「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」も初の5G対応iPhoneとして話題になりました。

日本国内で販売されているアップルの2020年iPhone新機種は5GのSub6に対応

日本国内で販売されているアップルの2020年iPhone新機種は5GのSub6に対応

現在主流の4Gに次ぐ5Gは「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」が特徴で、周波数が低い「Sub6」(3.7GHz帯/4.5GHz帯)と高い「ミリ波」(28GHz帯)の2種類の周波数帯を活用します。Sub6は広い範囲をカバーするのが得意で、4Gの技術を活かせることもあり、5Gの開始当初はSub6のみでサービスが始まっています。

もうひとつのミリ波はSub6よりも高速通信が期待できるものの、直進性が強く広範囲をカバーするのは苦手です。駅周辺やスタジアムのように混雑するエリアや施設をピンポイントでカバーする用途に向いており、ドコモとauは2020年9月からミリ波の運用を始めています。ミリ波の普及には時間を要することもあって対応機種はまだ少なく、日本国内で販売されているiPhone 12シリーズもSub6だけに対応しています。

5Gは大手キャリアでも提供が始まったばかりという段階ですが、いち早く5Gサービスの提供を始めたMVNOもあります。LogicLinksが提供する「LinksMate」では2020年6月から「5G回線オプション」(月額500円)の提供を始めていて、ドコモの5Gエリアで利用することが可能です。また、インターネットイニシアティブは2020年10月から法人向けにau回線での5Gサービスの提供を始めています。

LinksMateは2020年6月から「5G回線オプション」の提供を開始(LinksMateのWebサイトより)

LinksMateは2020年6月から「5G回線オプション」の提供を開始(LinksMateのWebサイトより)

もっとも、Sub6もミリ波も2020年12月時点におけるエリアは東名阪などの大都市圏に限られており、地方では5G対応機種でも4Gサービスを利用することになります。たとえば筆者が住む長野県佐久市では、今後の予定も含めて5Gエリアはまだ整備されていません。MVNOの大半は現在も4Gサービスを提供しており、格安SIMで5Gサービスの選択肢が増えるのはしばらく先のことになりそうです。

ニュースその2:楽天モバイルが本サービス開始、5Gもスタート

2020年4月8日、楽天の「楽天モバイル」が自社回線における本サービスを開始しました。楽天モバイルの本サービス開始は当初2019年10月1日が予定されていたものの事実上延期され、プレサービスとして一部地域在住の5,000名を対象とした「無料サポータープログラム」が始まっていました。

本サービスと同時に提供が始まった料金プランは、楽天回線エリアなら通信も通話も無制限の「Rakuten UN-LIMIT」(月額2,980円)1種類のみ。au回線を利用するパートナー回線エリアではデータ利用量が毎月5GBまでに制限されます。楽天モバイルは物理的なSIMカードを用いないeSIMも提供しており、「Rakuten Hand」「AQUOS sense4 lite」といったAndroid端末の他に、動作保証外ではあるもののeSIM対応のiPhoneシリーズでも利用することが可能です。

また、楽天モバイルは9月30日に5Gサービスの提供を開始。料金プランも5G対応の「Rakuten UN-LIMIT V」に月額料金据え置きでアップグレードされており、5Gを利用する際に追加料金が不要であるだけでなく、契約事務手数料やMNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティ)制度利用時の転出手数料も無料化されています。

2020年4月に本サービスを開始した楽天モバイルは9月に5Gサービスも開始(楽天モバイルのWebサイトより)

2020年4月に本サービスを開始した楽天モバイルは9月に5Gサービスも開始(楽天モバイルのWebサイトより)

いっぽう、楽天モバイルでは自社回線サービス提供の要となる基地局整備が進められているものの、2020年12月時点でカバーされているのは主要都市に限られます。楽天モバイルは2021年夏までに人口カバー率90%以上を目指すとしており、基地局整備が進むとみられる2021年前半の通信環境が注目されます。

ニュースその3:雑誌の付録から始まった「0 SIM」がサービスを終了

2020年8月31日、ソニーネットワークコミュニケーションズの格安SIM「0 SIM」は、この日をもってサービスの提供を終了しました。

0 SIMは毎月の通信量に応じて月額料金が変わる段階制の料金プランを採用していました。段階制のプランそのものはめずらしくありませんが、その月の通信量が500MB未満であれば月額料金は音声通話SIMなら700円、データ通信SIMなら0円で済むという、格安SIMのメリットである「コストの安さ」を極限まで追求したサービス内容が0 SIM最大の特徴でした。

元々0 SIMは雑誌の付録として2015年12月にサービスを開始していましたが、好評を受けて翌2016年1月には申込受付を開始。月の通信量が1GB以上の場合はほかの格安SIMと比べて割高になる傾向があったためにメインの回線として活用するのは難しかったものの、たまに持ち出すタブレットなどで利用するサブ回線として0 SIMを契約していた人も多かったのではないでしょうか。

2020年8月31日でサービスを終了した0 SIM(nuroモバイルのWebサイトより)

2020年8月31日でサービスを終了した0 SIM(nuroモバイルのWebサイトより)

ニュースその4:大手キャリアを中心に料金プラン改定の動きが広がる

2020年は12月に入ってからサービスを巡る大きな動きが相次ぎました。

12月3日、NTTドコモは5G/4G向けの新しい料金プラン「ahamo」を発表しました。特徴は料金の安さで、データ利用量が毎月20GBまでで月額料金は2,980円。各通話最初の5分間が無料になる通話料割引があらかじめ組み込まれていて、月額1,000円のかけ放題オプションが用意されます。「ahamo」の提供は2021年3月からの予定です。

これは既存の料金プラン「5Gギガライト」で毎月1GBまで通信する場合の3,150円を下回り、4Gの「ギガライト」で2年契約ありの場合の2,980円と同額です。つまり、「ahamo」は既存プランの最低料金(ただし割引を考慮しない)と同等の金額でデータ利用量はその20倍が付与される上に、月額700円の「5分通話無料オプション」まで組み込まれていることになります。

ただし、「ahamo」は長年提供されてきたキャリアメールに対応せず、家族で契約している各回線から500円〜1,000円が割り引かれる「みんなドコモ割」や、固定回線とのセット割引「ドコモ光セット割」も対象外です。受付もオンライン経由に限定されるなど、既存の「ギガホ」「ギガライト」とは異なるタイプの料金プランという位置付けです。

ドコモは既存プランの見直しも進めていて、12月18日には従来の「5Gギガホ」「ギガホ」を拡充しつつ料金を引き下げた新プラン「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」を発表しました。「5Gギガホ プレミア」は月額6,650円でデータ利用量は使い放題、4Gの「ギガホ プレミア」は月額6,550円でデータ利用量は毎月60GBまで。提供は2021年4月1日からの予定です。

旧プランと比較すると、「5Gギガホ プレミア」はデータ利用量が毎月100GBから使い放題になった上に「5Gギガホ」よりも1,000円安く、「ギガホ プレミア」はデータ利用量が「ギガホ」の毎月30GBから2倍に増えつつ月額料金は600円安くなります。また、1か月の通信量が3GB以下だった場合、新プランはどちらも月額料金が1,500円割り引かれます。

ドコモの新プラン「ahamo」は既存の料金プランとは異なるタイプの料金プランという位置付け(ahamoのWebサイトより)

ドコモの新プラン「ahamo」は既存の料金プランとは異なるタイプの料金プランという位置付け(ahamoのWebサイトより)

こうしたドコモのサービス改定に対し、大きな動きを見せたのがソフトバンクです。12月22日、ソフトバンクはメインブランドやサブブランドの「ワイモバイル」から提供される新プランと、新たなブランドの立ち上げを発表しました。

オンライン専用の新ブランド「SoftBank on LINE」では、「ahamo」の対抗となる月額2,980円でデータ利用量が毎月20GBまでの料金プランを提供。このプランでは一部サービス利用時の通信が無料になる「ゼロレーティング」機能として、LINE利用時にデータ利用量が消費されません(一部対象外の通信あり)。通話料は「ahamo」と同様に各通話最初の5分間が無料で、月額1,000円のかけ放題オプションを用意。ネットワークは5Gと4Gの双方に対応します。

なお、現在格安SIMサービスを提供している連結子会社のLINEモバイルはソフトバンクに吸収合併される方向で検討を進めることも明らかにされており、SoftBank on LINEのサービス開始とともに新規受付は終了となります。SoftBank on LINEは2021年3月からサービスが始まる予定です。

メインブランドのソフトバンクからは既存の「メリハリプラン」の後継となる5G/4G向けの新プラン「メリハリ無制限」が提供されます。プランの名称からもわかるようにデータ利用量は無制限で、月額料金は6,580円。月の通信量が3GB以下だった場合は1,500円安い5,080円になります。「メリハリ無制限」の提供開始は2021年3月の予定です。

また、既存のサブブランドであるワイモバイルでは2021年2月から5Gサービスが提供されることが発表されました。これにあわせて導入される「シンプルS」「シンプルM」「シンプルL」は5G/4G共通の新プランで、毎月のデータ利用量はシンプルSから順に3GB、10GB、20GBまで。月額料金は1,980円、2,980円、3,780円となっています。従来の「スマホベーシックプラン」に含まれていた通話料割引は含まれておらず、各通話最初の10分間が無料になる月額700円の「だれとでも定額」や、かけ放題になる月額1,700円の「スーパーだれとでも定額(S)」が用意されます。

SoftBank on LINEから月額2,980円で毎月20GBまでの新プランが提供される(ソフトバンクのプレゼンテーション資料より)

SoftBank on LINEから月額2,980円で毎月20GBまでの新プランが提供される(ソフトバンクのプレゼンテーション資料より)

ドコモの「ahamo」発表に先立つ2020年10月28日、ワイモバイルとKDDIのサブブランド「UQ mobile」から毎月20GBのデータ利用量を持つ新たな料金プランが発表されていました。ワイモバイルの「シンプル20」は月額4,480円(各通話最初の10分間が無料になる通話料割引付き)、UQ mobileの「スマホプランV」は月額3,980円(通話料割引はなし)。提供開始はワイモバイルの「シンプル20」が2020年12月下旬、UQ mobileの「スマホプランV」が2021年2月以降とされていました。

両ブランドの新プランは、総務省が10月27日に低廉で多様なサービスから自分のニーズに合ったものを選べる環境の整備を目的とする「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表した翌日に発表されており、武田総務大臣もアクション・プランに対応したものと一旦は評価していました。

ハイスペックなメインブランドとローコストなサブブランドの2本立てが可能なソフトバンクとKDDIに対し、サブブランドを持たないドコモがどのようなサービスで対抗するのかが注目される中で発表された「ahamo」は大きな話題となり、ソフトバンクの新ブランド立ち上げや既存ブランドの新サービスへとつながっていきます。10月発表の「シンプル20」もサービス内容が再検討され、前述の2021年2月提供開始予定の「シンプルL」として新プランの一部に組み込まれました。なお、12月24日午前の時点でKDDIは「ahamo」の対抗となるサービスを発表していませんが、2021年1月にも新サービスを発表する予定とされています。

ドコモの「ahamo」やソフトバンクの新ブランドSoftBank on LINEは、格安SIMとも競合するサービスです。3,000円前後の価格帯における格安SIMの料金プランにおけるデータ利用量はおおむね毎月10〜12GBまでで、20GBには届きません。「ahamo」やSoftBank on LINEはこれまで価格と品質のバランスで棲み分けができていた大手キャリアと格安SIMの境界線を大きく書き換えるサービスと言え、現在この価格帯で格安SIMを利用しているユーザーの少なからぬ数が乗り換えることも考えられます。

一部のMVNOからは早くも「ahamo」に対抗するサービスが登場しています。日本通信は12月10日から月額1,980円の「合理的20GBプラン(今は16GB)」の提供を開始。サービス開始時点でのデータ利用量は毎月16GBまでですが、プラン名にも示されているように「ahamo」のサービス開始以降は20GBに増量されることが発表済みです。同プランには毎月合計70分までの通話が無料になる無料通話分も組み込まれています。ただ、こうした対抗策を打ち出せないMVNOは、大手キャリアと格安SIMの境界線が曖昧になりつつある市場で苦しい戦いを強いられることになりそうです。

日本通信は早くも「ahamo」に対抗する「合理的20GBプラン(今は16GB)」の提供を開始(日本通信SIMのWebサイトより)

日本通信は早くも「ahamo」に対抗する「合理的20GBプラン(今は16GB)」の提供を開始(日本通信SIMのWebサイトより)

また、サブブランドの新プランを一旦は評価した武田総務大臣は、その後メインブランドからサブブランドへの乗り換え時に手続きや手数料が掛かる点を改めて問題視していました。これを受けてソフトバンクとKDDIは、メインブランドとサブブランドを切り替える際のMNP転出手数料、新規契約事務手数料、契約解除料を無料化する方針を12月9日に明らかにしています。

ドコモでは2021年4月1日からMNP転出手数料を無料化する予定で、ソフトバンクとワイモバイルもグループ外へのMNP転出手数料を2021年春から無料化する方針を表明しています。転出手数料がなくなることで格安SIMへの乗り換えもしやすくなりますが、大手キャリアのメインブランドからサブブランドへとグループ内の乗り換えもしやすくなることから、サブブランド以外の格安SIMや、自社回線エリアがまだまだ限られている楽天モバイルを選ぶユーザーが減少することにつながるかもしれません。

大手キャリアのメインブランドやサブブランドと格安SIMの間でユーザーの動きが活性化することが予想される2021年。「ahamo」の衝撃がもたらした動きが市場に及ぼす影響に注目です。

松村武宏

松村武宏

信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。

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