富士通の「FMV LIFEBOOK AHシリーズ WAA/J1」は、15.6型ワイドの大きなディスプレイを備えつつ、値段と性能のバランスにすぐれたコスパ抜群のノートパソコンです。「手ごろな価格で大画面のノートパソコンが欲しい」と考えている人は、かなり魅力的な製品でしょう。
本記事では「FMV LIFEBOOK AHシリーズ WAA/J1」の使い勝手や、実際の性能などを詳しくレビューしていきます。
「FMV LIFEBOOK AHシリーズ WAA/J1 Windows 11 Home・Ryzen 5・16GBメモリ・SSD 512GB・Office搭載モデル」98,700円(税込。価格.com最安価格 2024年8月27日時点)
・Ryzen 5、16GBメモリー、MS Office搭載ながら10万円以下
・いわゆる一般的なオフィス作業には十分な性能
・豊富な端子と光学ドライブ搭載でとりあえずパソコンがほしい人にもいい
FMVは富士通が展開しているパソコンブランドで、ノートパソコン向けにはモバイルノートの「MHシリーズ」「CHシリーズ」「UHシリーズ」、リビングノートには「NHシリーズ」「AHシリーズ」など多彩なラインアップが揃っています。
「AHシリーズ」は「リビングノート」カテゴリ中の「高性能ノート」に該当します
本機は「AHシリーズ」に該当。「AHシリーズ」は15.6型ワイドの大きなディスプレイに過不足のないスペックを詰め込んだ、バランスのよいシリーズです。いっぽうでメーカーサイトで”オールインワンリビングノートPC”と記載されているように、据え置き利用を前提に設計されているため、携帯性はそれほどすぐれていません。
「FMV LIFEBOOK AHシリーズ WAA/J1」 筆者による評価チャート
評価チャートについて
・実際に製品を使用して、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けました。
評価項目:満足度、デザイン、処理速度、グラフィック性能、拡張性、使いやすさ、持ち運びやすさ、バッテリー、画面、コストパフォーマンス
点数:5点満点(標準点は3点)
・製品カテゴリーや価格を考慮して評価しています。ノートパソコンとしての絶対的な評価ではありません。
・本記事を執筆した筆者による個人的な評価です。評価は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にとどめてください。
本機はゲームや動画制作といった、パソコンに高い負荷がかかる作業を想定したモデルではありません。そのため、ゲームやクリエイティブ制作などで重要とされるグラフィック性能は控えめ。いっぽうで「Word」や「Excel」、さらにビデオ会議といったビジネスシーンで必須とされるソフトを扱うには十分な性能を有しています。また、光学ドライブを搭載するとともに、接続端子類も充実しており、ビジネスはもちろんプライベートでも活躍できる一台です。
詳細な特徴は、次項以降のレビューをご確認ください。
・「FMV LIFEBOOK AHシリーズ WAA/J1」のサイズと重量
サイズ:361(幅)×27(厚み)×244(奥行き)mm
重量:約2.0kg
ノートパソコンにおいて価格は重要な指標です。ただ、単に価格の高低ではなく、その価格が妥当であるかが大切です。それを見極めるには「そのパソコンでどんな作業を想定しているのか?」を明確にする必要があります。
筆者の考える本機の用途はビジネスユースです。文書制作や表計算といった業務上必要なソフトが快適に動くスペックを有しているかどうかが重要になります。
本機のCPUはAMD Ryzen 5 5500U、メモリーは16GB、ストレージはSSD 512GBとなっています。それに加えて「Microsoft Office Home and Business 2021」と「ATOK」、「マカフィーリブセーフ3年版」も付きます。それでいて価格は10万円以下。これだけコスパのよいモデルはなかなかありません!
天板は光沢と反射がある質感。指紋が付きやすいが簡単に拭き取れる
参考までに、価格.com内で同じCPU、同じメモリー容量、同じストレージ容量のノートパソコンを検索すると、価格の下限値はちょうど60,000円あたりになりました。「Office Home and Business 2021」の定価が43,980円(税込。公式サイト価格)なので、本機の価格は(スペックだけを見るなら)決して高価ではないことがわかります。
むしろOfficeソフトを別途購入せず利用できるのはメリットでもあり、購入してすぐ仕事で使えるノートパソコンという意味で、きわめてビジネスノートらしいつくりともいえますね。
引き続き筐体周りを見ていきましょう。
本機の重量は約2.0kgと、ノートパソコンとしては重い部類。そのため持ち運びにはあまり向いておらず、自宅や社内で据え置いて使うのがおすすめです。ちなみにバッテリー持続時間は、約4.9時間(動画再生時 JEITA3.0)で、電源なしで1日使うには不安です。また、USB Type-C端子からは充電はできないため、基本的にはACアダプターと一緒に使うことになります。そうした意味でも、しっかり給電できる自宅や社内のデスクが活躍の場となるでしょう。
15.6型ワイドの画面は臨場感も十分。ディスプレイはグレア(光沢)仕上げ
本体サイズも薄型とは呼べず、ガッシリとしたつくり。「一時的に持ち出して外出先や別の部屋で使いたい」といった程度であれば可能ですが、毎日持ち歩くとなると約2.0kgの重さは無視できません。2Lのペットボトルがバッグに入っているのと同じことですしね。
パソコン本体、充電用ACアダプター、電源ケーブルが同梱。アダプターの重さは実測値243g
本機のコストパフォーマンスが高いことは紹介しましたが、実際の性能はどうなのか。ベンチマークソフトで計測してみました。結果は、いかにもオフィス業務用といった測定値となりました。いわゆる動画視聴やオフィス業務程度の用途には十分ですが、3Dゲームなどには向きません。
オフィスワークでの性能を測れる「PCMark 10」での計測結果は、総合値4686と出ました。提供元のUL Benchmarkでは、一般的なオフィス業務や簡単なメディアコンテンツを制作する場合は計測結果中央の「Productivity」スコアが4,500以上のシステムを推奨しています。今回は7,464と出ているので、十分な性能があるといえますね。
「PCMark 10」での計測結果。一般的なオフィス用途には十分といえる
次はレンダリング能力を測る「Cinebench 2024」をテスト。このベンチマークはグラフィック性能を測るものですが、スコアはあまり伸びませんでした。計測結果は「Single Core」が68、「Multi Core」が286です。
「Cinebench 2024」での計測結果。シングルコア68、マルチコア286は決して高いスコアではない
最後はパソコンの総合性能を測るGeekbenchで計測した結果、「Single-Core Score」が1467、「Multi-Core Score」が5506、さらにGPU性能を示す「OpenCL Score」は12909を記録しました。
ちなみにSingle-Gore Scoreは「Intel Core i7-12700」の「Single Core Score」2500を基準としています。「Intel Core i7-12700」は高性能なCPUですが、それを含めても本機は高性能とは言いがたい結果です。
「Geekbench 6」での計測結果でもGPUスコアは高くない
ちなみに本機は底面のカバーを外せば、簡単にメモリーの増設が可能です。メモリーを24GBに増設してスコアが伸びたという報告もあるため、お手元に運よくあまったメモリーがある場合は差し替えてみるのもよいかもしれません。
”オールインワン”を名乗るだけあって本機は端子類が豊富です。LAN端子、HDMI端子、USB3.2(Gen1)Type-A端子を2つ、USB3.2(Gen2)Type-C端子、USB2.0 Type-A端子に加えて、SDカードスロットまで搭載しています。ビジネスの現場ではパソコンを外部ディスプレイやプロジェクターにつなぐ機会も多いため、HDMI端子で接続できるのは便利です。
画面上が右側面、画面下が左側面。充電端子は左側面に位置する
また、DVDドライブを搭載している点も見逃せません。近年のノートパソコンは小型軽量化の影響か、光学ドライブを内蔵したモデルはそれほど多くないのが現状。先方からデータがCD-ROMで送られてきたときや、会社の古いバックアップデータを読み出す際などに活躍してくれるでしょう。プライベートでも、音楽CDのデータを取り込んだりDVDを鑑賞したりと、意外と出番は多いかもしれません。
右側面に搭載されたDVDドライブ。データの書き込みにも対応
本機で筆者が特に気に入ったのは、キーボードの打鍵感でした。キーストロークが深めで、ノートパソコンらしからぬガツガツとしたタイピングが可能です。これも近年の薄型なノートパソコンではなかなか得られない体験ですね。
ノートパソコンらしからぬ、リッチな打鍵感が味わえるキーボード
キーストロークは約2.5mmと、一般的なノートパソコンに比べて深めです。さらにどの指からも均等な力加減で打ち込めるよう、キーが反応する荷重を指のポジションに応じて3段階に調整されています。こうした細やかな配慮は、長く使えば使うほど恩恵を感じるものです。キーピッチはフルキーと同等の約18.4mmです。
「グッ」と押した感があるキー。打鍵音はカタカタ系で、消音性は高い
テンキーには「00」があり、これもノートパソコンとしては珍しい仕組み。経理計算をする人にとっては心強いでしょう。
テンキーは文字キーから少し空いた場所に配置されており、エンター周辺で誤入力してしまうこともない。確定申告時期には大活躍してくれそうだ
ディスプレイを上げると底面がわずかに持ち上がり、キーボードがユーザー側へ傾く
本機をひと言で表すなら「THE・普通のノートパソコン」。高度な処理速度やグラフィック性能、軽さといった突出した性能こそないものの、「そういうのいらないからぱっと仕事に使えるパソコンが欲しい」といった声にはバッチリ応えてくれるでしょう。ビジネスノートとして高い適正があり、事務所やオフィスで使うパソコンとしてしっかり活躍してくれそうです。こうした地味ながらも的確にツボを付いてくるバランス感覚は、いかにも国内メーカーらしいなと感じます。
ビジネス以外の場面では、たとえばメインパソコンにMacを使っている人にとっての「とっさのとき用Windows機」として持っておくのもアリ。光学ドライブを搭載し、またサポート類が充実しているため、パソコン初心者が選ぶモデルとしてもおすすめです。