レノボの「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」はディスプレイ部を180度回転させてタブレットのように使えるコンバーチブル構造が特徴のノートパソコンです。付属のペンで液晶タブレットのように使うこともでき、さらに最近話題のAI性能も高く「Copilot+ PC」に準拠するスペックを備えています。そう聞くと価格が高そうな気がしますが、記事制作時点で119,790円(税込、価格.com最安価格。以下価格などはすべて執筆時点2024年12月18日のもの)と最安クラス。つまり最新機能をカジュアルに楽しめる高コスパモデルです。
本記事では「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」の使い勝手や実際の性能などを詳しくレビューしていきます。
レノボ「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9 Snapdragon X Plus X1P-42-100・16GBメモリー・512GB SSD・14型WUXGA・OLED マルチタッチ対応搭載 83GH0004JP [ルナグレー]」119,790円(税込、価格.com最安価格。以下価格などはすべて執筆時点2024年12月25日のもの)
さっそくレノボ「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」について使ってみた印象をまとめました。
・コストパフォーマンスが高い最安クラスの「Copilot+ PC」です
・持ち運びやすくバッテリーも長持ちなので場所を選ばず使えます
・処理能力や使いやすさが上々でビジネス利用をはじめさまざまに活用できます
筆者によるレノボ「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」評価チャート
評価チャートについて
・実際に製品を使用して、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビューと同じ評価項目で点数を付けました。
評価項目:満足度、デザイン、処理速度、グラフィック性能、拡張性、使いやすさ、持ち運びやすさ、バッテリー、画面、コストパフォーマンス
点数:5点満点(標準点は3点)
・製品カテゴリーや価格を考慮して評価しています。ノートパソコンとしての絶対的な評価ではありません。
・本記事を執筆した筆者による個人的な評価です。評価は個人によって変わりますので、あくまでも参考程度にとどめてください。
価格.com「ノートパソコン」カテゴリーのユーザーレビュー一覧
レノボ「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」は、2024年5月にMicrosoftが提唱したAIフレンドリーなパソコンの称号とも言える「Copilot+ PC」に準拠しているのが大きな特徴です。
「Copilot+ PC」を名乗るには相応の性能が求められるため、この称号を冠しているだけである程度のサクサク動作は保証されています。しかも、本機は「Copilot+ PC」としては最安クラスであり、コスパよくAI機能を体験できます。
いっぽうで、CPUは定番のインテルではなくクアルコムのCPUを搭載しており、その影響でいくつかのソフトウェアが制限を受けることも。一般的な業務やWeb閲覧などではそれほど気にする必要はありませんが、やや懸念点かなとも言えます。
本機の価格は日によって多少の上下はありますが概ね11万円前後で、これは「Copilot+ PC」としては最安レベル。しかも本機はコンバーチブルの2in1ノートパソコンであり、性能や使い勝手を鑑みても、きわめてコスパにすぐれたノートパソコンだと言えます。
スペックについては、日常業務や私生活でのエンタメ利用に使うならば十分なモデル。重めの動画編集などのクリエイティブソフトを動かすにはややパワー不足かなといった感じですが、「マインクラフト」のような軽い設定でも遊べるゲームなら動作圏内。バッテリー動作時間も長く、用途によっては丸1日充電器なしで過ごせる可能性もあります。
レノボのノートパソコンは現在7つのシリーズが存在しますが、「IdeaPad」シリーズはコスパの高い個人向けモデルで、「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」はそのなかでも「マルチメディアやゲームを楽しめるポータブルなノートPC」とされています。
レノボ、ノートパソコンのラインアップ。なお、表中の機種紹介テキストはメーカーサイト(https://www.lenovo.com/jp/ja/laptops/)より抜粋しています
天板はマットなグレー。ロゴもシンプルでミニマルな印象
さて「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」を紹介するに当たって、まず「Copilot+ PC」について説明しましょう。これはMicrosoftが定義している次世代のAI搭載Windows パソコンを指します。いわば、AIが軽快に動作する称号のようなものです。
「Copilot+ PC」を名乗るにはいくつかのシステム要件があります。
・「40TOPS以上のNPU性能」
・「16GB以上のメモリー容量」
・「256GB以上のSSDストレージ容量」
上記の3つの要件を満たすモデルを価格.comで検索すると、本機は最安から2番目となります(2024年12月25日時点)。
「Copilot+ PC」要件での価格.com検索結果。11万円台のノートパソコンは2機種しかありません
最新OSのWindows 11は、独自のAI機能を搭載しています。「Copilot+ PC」とは、最新のAI機能が満足に動くことの証明でもあり、最新のWindows体験をいち早く味わえるモデルとも言えます。AI機能も今後増加していくと見られていますし、お試し感覚でAI機能を使ってみたい人にとってはコスパのよい選択肢となるでしょう。
電源アダプターと電源コード、それから「Lenovo デジタルペン」が同梱されます
本機はタッチディスプレイを搭載しており、付属の「Lenovo デジタルペン」で手書き作業やイラスト制作ができるのも特徴。カジュアルな使い方をカバーしつつ、AIのような最新機能も手広く押さえているのもうれしい点です。
「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」は、通常のノートパソコンとしてだけでなく、ディスプレイを180度回転させてタブレットのように使うことも可能です。タッチ対応の有機ELディスプレイはタブレットとして使っても相性がよく、操作性に問題はありません。
ディスプレイはWUXGA(1920×1200)の有機EL。発色がよく、文字や写真もくっきり
また、膝上に置いてタブレットのような使い方も想定されています。デスクで使うときはノートパソコンとして、ソファやベッドなどのリラックスしたシーンではタブレットとして使う、といった二刀流が持ち味です。
画面を回転させると自動的に縦表示に切り替わります。マルチタッチ対応で、ピンチ・ズームも可能
個人的に使いやすかったのが、タブレット状態にして少しだけ角度をつけるスタイル。こうするとスタンドにタブレットを置いたようなスタイルになり、好みの角度で使えます。視野角も広く、やや斜め気味から見ても問題なし。なお、光沢画面なので反射はややあります。
「Lenovo デジタルペン」の描き味は滑らか。発色のよさも相まって液晶タブレットとしても使えそう
推し要素である「Copilot+ PC」によるAI機能ですが、実は現状でそれほど活用機会が多いわけではありません。記事執筆時点では「Cocreator」「Windows Studio エフェクト」「Image Creator」「ライブキャプション」が「Copilot+ PC」独自の機能としてリリースされているものの、正直なところいずれも実用的とは言えず……。
しかし、「Copilot+ PC」最大の機能として期待されている「Recall」が正式実装されれば話は変わってくるかもしれません。
WindowsのAIアシスタント「Copilot」を一発起動させられる「Copilotキー」も搭載
「Recall」は”作業をさかのぼって調べる”と発表されているように、自動でパソコン画面のスクリーンショットを撮影し、過去の作業をさかのぼって探せるのが大きな特徴。一度でも閲覧したファイルであれば断片的な情報でも検索ができるという画期的な機能です(2024年12月時点で、Windows Insider向けにプレビュー版がリリース済み)。
MicrosoftがこれからどのようなAI機能をリリースしていくかは未知数ですが、AIへの注目度はますます上がっていくはず。それら新機能の受け皿として、「Copilot+ PC」準拠のパソコンを持っておくのもアリでしょう。
本機のCPUには、ARMアーキテクチャで動作する「Snapdragon X Plus X1P-42-100」」が採用されています。このCPUに対応していないソフトも少なからず存在しており、ここは留意が必要な点です。記事執筆時点では「Adobe Illustrator」「Adobe InDesign」などの一部クリエイティブソフトに加えて、「フォートナイト」などの一部PCゲーム、さらに「PCMark10」などが利用不可でした。
ただし、エミュレーションモードによって動かせるソフトも存在し、マイクロソフトもARM版Windows 11の互換性改善に取り組み続けています。個人開発レベルのソフトでは対応が難しいものもあるかもしれませんが、そこまでニッチな用途を想定していないのであれば、ARM版だからと言って神経質になる必要はないでしょう。
動画編集ソフト「DaVinci Resolve 19」は問題なく動作。ややカクつくもののFHD動画の編集ならできそう。レンダリング時はNPUが動作しています
ここからは、各種ベンチマークソフトを使って本機の性能を数値で見ていきましょう。本機のスペックは、CPUが「Snapdragon X Plus X1P-42-100」、メモリーが16GBです。なお、すべてのソフトは充電しながら計測しています。
Geekbenchのスコアは、「Single-Core Score」が2374、「Multi-Core Score」が10992、グラフィック性能を示す「OpenCL Score」が9661と出ました。CPUのスコアについては「Core Ultra 5-125H」と近い結果で、11万円前後という本機の価格を考慮すればかなりコスパのよい結果と言えます。GPUスコアについてもそこまで低いわけではありません。
Geekbenchのベンチマーク結果
ゲーミング性能を計測する「Fire Strike」のベンチマーク結果は3590と出ました。肌感よりも高い結果になった印象で、グラフィック性能についてもコスパのよいモデルと言ってよさそうですね。高負荷のゲームは厳しくとも、軽量〜画質を落とした中量ゲームであれば楽しめるでしょう。
3DMark Fire Strikeのベンチマーク結果
Cinebench 2024の測定結果は、シングルスコアが107、マルチスコアが662でした。シングルスコアについてはアップルの「M1 Max」に迫るものがあり、やはりコスパが優秀と言えます。マルチスコアはシングルほど出ていないものの、「M1 Max」に対して20%減といったところです。
Cinebench 2024のベンチマーク結果
総じて、同価格のノートパソコンのなかでは悪くない印象です。さすが「Copilot+ PC」を名乗るだけの性能だなとも言えますし、なんなら「Copilot+ PC」かどうかを抜きにしてコスパだけを評価しても、十分にアリなモデルです。
端子類については、USB3.2 Gen2 Type-Cポートが2基、USB3.2 Gen1 Type-Aポートが2基、さらにHDMIとmicroSDカードリーダーがあり、ほぼ完璧な布陣。LANポートは非搭載ですが、軽作業を想定している本機は有線接続の機会はそれほどないと思われるため、妥当な判断。Wi-Fi 7に対応しているのも最新機種らしく、またうれしいポイントです。ただ、今回のレビューでは発生しませんでしたが、一部のモデルにおいてWi-Fi接続時にネットワークエラーが発生するクチコミが価格.comで報告されています。初期設定されているネットワークドライバの問題のようですが、こういった問題があることは購入前に知っておいたほうがよいでしょう。
写真上部は左側面、写真下部は右側面。電源ボタンが右側面に付いているのは珍しい
バッテリー駆動時間は約14.1時間(JEITA3.0:動画再生時)と非常に長く、業務内容次第では朝9時からほぼ終日充電不要で過ごせるレベル。省電力性の高いクアルコムのCPUの特徴が生きている点であり、タブレットやタッチ操作などさまざまな使い方が提案されている本機の性能とも噛み合っています。急速充電にも対応しており、約2時間でフル充電が完了します。
また、本機への充電は付属の充電アダプターではなく、65W以上の市販のUSB充電器からでもOK。昨今はコンパクトな充電器も増えてきたため、充電器とセットで持ち出しても省スペースで済みます。
11万円前後という手ごろな価格でありながら、最新のAI機能の動作を保証する「Copilot+ PC」に準拠した性能を持っている「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」。この時点でかなりお得感があったのですが、実際に使ってみると「普段使いならこれでよいのでは?」と思えるほどよい使い勝手でした。
たとえば、2in1性能。折りたたんでタブレットスタイルにすれば、ソファでリラックスしながら大画面でブラウジングが楽しめます。性能についても安かろう悪かろうな印象はなく、最安クラスといえど安っぽい「とりあえず感」がなかったのが気に入りました。もしこの価格で2in1じゃなかったら物足りなかったかもしれませんし、逆に2in1で使えるからといってスペックを落としていたら性能面に不満があったかもしれません。
この価格でCopilot+ PCが買えてしまうお得感もありつつ、いっぽうでAI性能に注目せずにコスパだけを評価しても満足できる、バランス感覚にすぐれたモデルと言えます。個人的にはタブレット使いがとても便利だったので、手ごろな2in1ノートパソコンを探している人、あるいはタブレット+キーボードを探している人にもオススメです。