ZTEのゲーミングブランドであるREDMAGIC(レッドマジック)は、SIMフリースマートフォン「REDMAGIC 10 Pro」を2025年2月6日に発売する。歴代のREDMAGICシリーズはゲームに特化した製品だが、本機はFeliCaポートを備え、「おサイフケータイ」に対応した日常的に使える製品となった。この「REDMAGIC 10 Pro」のレビューをお届けしよう。
「REDMAGIC 10 Pro(Moonlight ムーンライト)」、税込直販価格152,800円、2025年2月6日発売
今や、ゲームはスマートフォンの重要な用途のひとつ。ゲームの進化は著しく、凝ったグラフィックを魅力にするものも多い。そうしたゲームを快適に動作させるには、ハイエンドと呼ばれる高価で高性能なスマートフォンが欲しくなる。「REDMAGIC」シリーズは、そうしたハイエンドスマートフォンの中でも、特にゲームを重視した “ゲーミングスマートフォン”と呼ばれる製品だ。
その最新モデルである「REDMAGIC 10 Pro」の外見はなかなか個性的。角張った四角いボディは背面に凹凸がない平面デザインで、ロゴマークや空冷ファンにLEDを使ったイルミネーションが備わっており、いかにもゲーミング機器という雰囲気だ。
検証機の「Moonlight ムーンライト」は背面が透明だ。派手だが大人っぽさも漂っている
下側面にUSB Type-Cポートを配置。USB 3.2 Gen-2(USB 10Gbps)と、DPオルタネートモードの映像出力に対応している。SIMスロットはnanoSIMスロットを2基搭載、eSIMには対応していない
ヘッドホン端子を搭載、ほとんど遅延のない有線イヤホン・ヘッドホンはゲームでは重宝する。充電を行いつつ有線ヘッドホンが使えるのも便利。なお、ワイヤレス接続ではSnapdragon Soundに対応しており、用途に応じて低遅延の音楽再生が行える
側面の左右2か所にタッチ式ショルダーボタンを搭載。アクションゲームでは重宝する
側面の赤いスイッチはゲーム特化モード「ゲームスペース」への切り替えを行う
背面のロゴマークにイルミネーションが仕組まれている。イルミネーションは控えめで、設定でオフにもできる
約6.85インチの有機ELディスプレイは、ディスプレイの下にカメラを埋め込むUDC(Under Display Camera)構造を採用する。パンチホールやノッチがなく、画面占有率は95.3%と驚異的な高さだ。解像度は2688×1216で30bitの色深度に対応。リフレッシュレートは最高144Hz、タッチサンプリングレートはマルチポイント入力時で960Hz、ピンポイントなら瞬間最大2500Hzになる。こうしたゲーム向けの性能にとどまらず、明るい屋外でも見やすい2000nitsの最大輝度や、ちらつきを抑える2592HzのPWM調光に対応など実用性能も高い
画面占有率は95.3%。画質も十分
UDCのため、フロントカメラの存在はほとんどわからず、ディスプレイの画質に対する悪影響はほぼ無視できる。なお、カメラの画質与える影響は、AIを使った補正でカバーする。自撮りの画質にこだわる場合には最適とは言えないが、ゲームを主目的にするなら視界を遮らないメリットが勝る。
UDC構造のディスプレイだが、カメラ部分は肉眼ではほとんど確認できない
注目点として、FeliCaを備えた「おサイフケータイ」対応機となったことをあげたい。同じくゲーミングスマートフォンのASUS「ROG Phone8」シリーズも「おサイフケータイ」に対応しており、本機もそれを追随したようだ。なお、「ROG Phone8」は、防水・防塵に対応しているが、「REDMAGIC 10 Pro」は空冷冷却システム「ICE-X」を備えるため、防水・防塵には対応していない点が異なる。
ファンを備えた空冷システム「ICE-X」を搭載。高い冷却性能を誇るがエアフローを確保するためボディは防水・防塵には対応していない
搭載されるSoC「Snapdragon 8 Elite」は、2024年秋に発表されたスマートフォン向けSnapdragonシリーズの最上位グレード。1世代前の「Snapdragon 8 Gen 3」と比べて、通常の処理を受け持つCPUの処理性能が45%、ゲームで重視されるグラフィック性能も40%それぞれ向上しているという。近年は、メディアテック社のハイエンドSoC「Dimensity 9000」番台が強力なライバルとして台頭しているが、「Snapdragon 8 Elite」は現状における最高クラスの高性能SoCだろう。
実際の処理性能を、いくつかのベンチマークアプリを使って調べた。なお、比較対象として「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」を搭載する前モデル「REDMAGIC 9S Pro」のスコアとあわせて掲載している。なお、いずれもパフォーマンス重視の設定にしている。
「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のスコアは2808936。なお、前モデルで「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」を搭載する「REDMAGIC 9S Pro」のスコアは2111462なので、25%ほどのスコア向上となっている。
グラフィック性能を計測する専門のベンチマークアプリ「3DMark(Wild Life Extreme)」の結果。左が本機、右は「REDMAGIC 9S Pro」。3割弱のスコアアップとなり、フレームレートも32.56PFSから41.17FPSに向上している
処理性能を計測する「GeekBench 6」のスコア。シングルコアとマルチコアともに約3割のスコア向上となった
いずれのベンチマークテストも「REDMAGIC 9S Pro」と比べてスコアが著しく伸びている。ただし、メーカーの言うような40%の性能アップまでは確認できず、処理性能もグラフィック性能もおおむね30%のスコア向上だった。
先日価格.comマガジンでレビューを届けしたオッポ「OPPO Find X8」(MediaTek Dimensity 9400搭載)は、「AnTuTuベンチマーク」が2712888、「Geekbench 6」のシングルコアが2816、マルチコアは8796、「3DMark」のWild Life Extremeのスコアは6598となっており、本機はそれよりわずかだが上回るスコアとなっている。僅差だが、本機は現状最速のAndroidスマートフォンと言っても過言ではないだろう。
本機の特徴である冷却機構「ICE-X」の性能を調べるため、「AnTuTuベンチマーク」を4回連続で動作させた。
左から1回目、2回目、3回目、4回目。「REDMAGIC 10 Pro」はゲームにおける処理性能を3段階で調整できる機能があり、1回目はバランス、2回目と3回目は高パフォーマンス、4回目は省エネと切り替えている
処理性能の調整でスコアがはっきりと分かれるようだ。相当の発熱がある2回目と3回目のベンチマークテストでもパフォーマンス重視に切り替えたらスコアがはっきりと伸びていることには驚いた。発熱は多いもののサーマルスロットリングはギリギリまで抑えているうえに、ユーザーがパフォーマンスをコントロールできる余地が広い点も含めて異色の高性能と言えるだろう。
内蔵するバッテリーは7050mAhで、タブレットのような大容量だ。なお、バッテリーセルは前モデルよりもエネルギー密度を25%も向上させており、サイズや重量の増加が抑えられている。
なお、USB PDを使用した出力80Wの充電器を同梱しているが、急速充電の最大出力は100W。オプション設定で「ターボチャージ」という機能があり、こちらを使って100W充電器を使用したところ、充電は約32分で完了した。ちなみに「ターボチャージ」を使用しない場合の充電時間は約35分なので、そこまで劇的な違いはないようだ。
描画設定を最高にしたうえでフレームレートを60FPSに引き上げた「原神」でフィールドをひたすら駆け回っても7〜10分で1%のバッテリー消費で済んでいる。しかも、本機はバッテリーを迂回して直接有線で駆動する「充電分離」(いわゆるパススルー給電)にも対応。また、ゲームではない日常の利用でも、1日に3時間程度の利用ペースなら24時間で30%以下のバッテリー消費で抑えられていた。使い方次第で4日ほど充電せずに済みそうだ。
80Wの充電器を同梱
メインカメラは、光学式手ブレ補正機構を備えた約5000万画素の広角カメラ(35mm換算の焦点距離は24mm)、約5000万画素の超広角カメラ(同換算の焦点距離は14mm)、約200万画素のマクロカメラ(マイクロカメラ)のトリプルカメラだ。
以下に、静止画の作例を掲載する。いずれも、初期設定のままカメラ任せでシャッターを押すだけの撮影を行っている。
明暗差の大きい日中の構図。暗部のノイズは目立たず、白飛びや黒つぶれも抑えられており、クセのない肉眼の印象に近い仕上がり。カメラに特別なこだわりがなければ十分満足できるだろう
構図中央付近のハイライトにフレアが現れている。そこまでコントラストの高い構図ではないが、明暗差の処理は不得手のようだ。構図の隅のノイズもかなりはっきり現れている
ハイライトを強調しているが、光学式手ブレ補正のおかげで手ぶれも抑えられており、手軽に見栄えのする夜景が撮影できる
上と同じ構図だが、ホワイトバランスがアンバーに傾いている。ディテールも全般的にぼやけており、ハイエンドスマートフォンとしてはもの足らない
広角カメラは一定水準以上だが、超広角カメラの画質はあまり高くない。カメラ切り替え時のもたつきや、シャッタータイムラグが目立つなど、レスポンスも近ごろの製品としては今ひとつだ。ゲーミングスマートフォンであることを考えれば予想された結果ではあるが、カメラを重視するのであれば別の製品を選ぶほうがよいだろう。
筆者はゲームの際は「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載するスマートフォンを使用しているが、本機はそれと比べて瞬間的に発生するコマ落ちの頻度が少なく、性能の向上を実感できた。また、パンチホールやノッチのないUDCディスプレイの完成度が高く、「おサイフケータイ」対応など実用性が向上したことも評価できる。加えて、7050mAhの巨大なバッテリーの影響もあり実用的な高性能スマートフォンと言えるだろう。いっぽう、カメラの性能は、特に超広角カメラにおいて通常のハイエンドスマートフォンよりも限界が低い点は把握しておきたい。
ゲームを主目的にしている場合はもちろんだが、何よりも高性能にこだわる人にも適した存在だ。税込価格も122,000円からで性能の割には安価。“ゲーミング”というイメージにとらわれずに選ぶ価値があるだろう。