レビュー

4,000円切りのトラックボール「M-IT10DR」はビギナー向きなのか?

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今回ピックアップするのは、2025年3月12日の記事執筆時点で価格.com最安値が3,836円のワイヤレストラックボール、エレコム「M-IT10DR」です。ほかの製品を見渡しても4,000円を切る低価格が光ります。これならトラックボールを使い始めたい初心者であっても気軽に手が出しやすいでしょう。そのあたりも含めてレビューしていきます。

エレコム「M-IT10DR」、3,836円(税込、価格.com最安価格。以下ページ内の情報はすべて2025年3月12日時点のもの)

エレコム「M-IT10DR」、3,836円(税込、価格.com最安価格。以下ページ内の情報はすべて2025年3月12日時点のもの)

本体を動かさないため操作するときに広い面積を必要とせず、慣れてしまえばマウスよりも作業効率が高くなるトラックボール。しかし万人向けのポインティングデバイスではないという事実もあります。そのため、トラックボール初心者がリーズナブルな製品から試して自分に合うのか試す。これは妥当な考え方です。

この「M-IT10DR」はトラックボールカテゴリで人気の他製品と見比べても破格の4,000円以下という低価格。では「M-IT10DR」は、本当に初心者のトラックボール入門に適切、あるいは“安くてよい製品”と言える製品なのか。チェックしていきます。

同カテゴリ内では大きめのボールを採用している

「M-IT10DR」はきわめてスタンダードな5ボタンタイプの親指トラックボールです。左右クリック・ホイールクリックのほか、サイドボタンも含めた5ボタン構成となっています。トラックボールになじみのある人には、すんなり受け入れやすいオーソドックスな設計と言えます。

左右クリックボタン、サイドボタン×2、ホイールボタンが備わる5ボタントラックボールです

左右クリックボタン、サイドボタン×2、ホイールボタンが備わる5ボタントラックボールです

本体サイズは、約96(幅)×約126(奥行)×約52(高さ)mmとトラックボールとして一般的。大きすぎもなく、小さすぎもしないサイズです。やや右側に傾いた本体は、使用時の手首の負担を減らしてくれるほか、マウスのように前後左右に動かす必要がないため、腕や肩への負担も控えめです。

覆いかぶせるように右手を置いて操作します

覆いかぶせるように右手を置いて操作します

手首への負担を考慮したエルゴノミクスデザインを採用

手首への負担を考慮したエルゴノミクスデザインを採用

親指操作タイプのトラックボールはボールサイズが直径34mmのものが多い印象ですが、「M-IT10DR」で使われているボールの直径は36mmと、わずかながら大きめ。一回の動きでマウスポインターを大きく動かせるメリットがありますね。

また、ボールが上側にある人さし指操作タイプよりもマウスの使用感に近いため、マウスしか使ってこなかった方でも、移行しやすいメリットがあります。

同カテゴリ製品のなかでは大きめ36mmのボールを採用しています

同カテゴリ製品のなかでは大きめ36mmのボールを採用しています

マウスのように本体を動かす必要がないため、大きいボディでも使いにくさはありません

マウスのように本体を動かす必要がないため、大きいボディでも使いにくさはありません

接続はエレコム独自規格の2.4GHzワイヤレス

パソコンとの接続はワイヤレスの2.4GHz帯を使用。底面部に収納できるUSB Type-A式のUSBレシーバーを用います。USBレシーバーをパソコンに接続し、「M-IT10DR」の電源を入れればすぐにペアリングが完了して使い始められます。

ただし、Bluetoothには対応しておらず、複数のデバイスとの接続はできません。バッテリーを内蔵せず、乾電池駆動(単3アルカリ乾電池1本で約25か月使い続けられる)という点も含め、高価格帯モデルでは一般的な機能を省いているあたり、低価格を実現するため、あるいは高価格帯モデルとの棲み分けのための選択だったのだろうという印象を受けます。

ちなみに、この「M-IT10DR」は「IST」というシリーズ中の「USB2.4GHz無線モデル」モデルです。Bluetooth接続モデルも用意されており、そちらは「M-IT10BR」という製品となります。また、有線接続タイプもあります。

使わないときは本体に収納できるUSBレシーバー

使わないときは本体に収納できるUSBレシーバー

ボールを支えているのは直径2mmの人工ルビー×3。なお、別売オプションとして用意されているベアリングに交換することも可能なほか、最初からベアリングを搭載した製品もあります。

送球感を支える支持システムは人工ルビー

送球感を支える支持システムは人工ルビー

安いけど “ビギナー向け”とは言い切れないワケ

「M-IT10DR」を用いて、「Word」や「Excel」といったビジネスアプリを使用してみました。最初に気になったのが、36mm径というボールの大きさが影響しているのか、思っていたよりもボールの回転が重いということ。それもボールを動かし始める瞬間にわずかな抵抗を感じます。

慣れている人なら誤差の範囲かもしれませんが、カーソルを初めて動かすときに「引っ掛かる」ような感覚があるのは事実。親指操作のトラックボールに慣れていない方が初めて使うときは、ボール操作に気をとらわれて、「Word」のカーソル移動や、「Excel」のセル選択がしにくいのではないだろうか、という印象を抱きました。

また、最初に使ったときは、力強く回転させてもブレーキが早めにかかりました。ボールを保持している人工ルビーを清掃すると多少改善はしましたが、高級モデルほどの動きとはならず。比較してわかるようなわずかな差なんですけどね。ボールの慣性を生かしたスピーディーなマウスポインターコントロールがトラックボールの最大の利点であることを考えると、ピーキーな個性を持っていると言わざるをえません。

ボールを操作する際の微妙な引っ掛かりが気になります

ボールを操作する際の微妙な引っ掛かりが気になります

クリックボタンやサイドボタンに関しても、コストダウンの影響? と感じるところがありました。ボタンの押し心地が硬めなのです。誤操作しにくいというメリットはありますが、軽いクリックに慣れている人だと「もう少し軽くてもよいのに」と感じるでしょう。

ボタンは硬めな印象です

ボタンは硬めな印象です

クリエイティブ作業に挑戦するのは厳しいか

Adobeの「PhotoShop」やイラスト制作などのクリエイティブソフトでは、ペンツールやブラシでの微妙なライン調整など、細かいカーソル操作を要求されるシーンが多々あります。「M-IT10DR」を用いて写真のレタッチを行ったところ、ビジネスアプリやブラウザーで感じたボールの動きの鈍さをより強く感じる結果となりました。
ただ、これは動きのよさに定評がある「ベアリング」に交換することで、改善できるのではとも感じました。なお最初からベアリングを用いた「M-IT11DR」というモデルもあります。こちらの最安値は記事執筆時点で4,920円でした。

なお「M-IT10DR」は、専用アプリを使うことで各ボタンの割り当てやジェスチャー機能の設定が可能です。こちらはかなり優秀でして、ショートカットキーや、ジェスチャー操作、連続したキー入力(マクロ入力)も設定できます。アクティブになっているアプリによってプロファイルを切り替えることも可能。念入りにセッティングすると、複雑なワークフローが必要とされるクリエイティブソフトでも生産性を大幅にアップできます。

だからこそ、より多くのボタンを用意している上級機が気になってきますね。エレコムのトラックボール/マウス用アプリは、多ボタンモデルであればより使いやすくなりますから。

エレコムのカスタマイズ性能をフルに生かすなら上位モデルのほうがよいかもという印象です

エレコムのカスタマイズ性能をフルに生かすなら上位モデルのほうがよいかもという印象です

【まとめ】価格を超えた使い勝手、ただし慣れた人により向いている

今まで、厳しい視点でレビューしてきました。それは冒頭で記したように、初心者向きか、あるいは安く、なおかつ高性能なモデルであるかという判断基準でジャッジしたためです。

結果、初心者がさまざまな用途で使いたかったり、あるいはマウスから乗り換えて、生産性を高めたりしたいなら、高価でも多ボタンの上級モデルのほうがよいと感じました。

しかし、安さゆえに万能ではないことを理解して触れるのであれば、「M-IT10DR」はコストパフォーマンスにすぐれたモデルだと断言できます。グリップ感がしっかり確保されており、手首の返しも控えめなため、長時間操作しても疲れにくいというメリットがありますし、多彩なボタン操作を求めないなら、M-IT10DRのリラックスしたポジションでの操作感は魅力的。Webブラウジングなど、ゆったりと作業を進めたいシーンには十分マッチします。

そのため、すでにトラックボール操作に慣れている人であれば「M-IT10DR」には価値があると感じるはず。価格の割りにしっかり使えるハイコスパモデルとしてとらえられます。予備のトラックボールとして用意しやすい価格ですし、15インチ級のビジネスノートやゲーミングノートであれば、本体と重ねて使うこともできます。マウスポインターの大きな動きは「M-IT10DR」、精細な動きはタッチパッドで行うという二刀流もしやすいでしょう。むしろそういった需要があるからこそ、トラックボール売れ筋ランキングの9位という人気なのではないでしょうか。

ノートパソコンの上に置いて使える点は高く評価したいですね。新幹線などでの移動中にもトラックボールで快適に作業できます

ノートパソコンの上に置いて使える点は高く評価したいですね。新幹線などでの移動中にもトラックボールで快適に作業できます

武者良太
Writer
武者良太
1971年生まれのガジェットライター。出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。PCやスマートフォンのハードウェアレビューから、ガジェット市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。
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柴田崇志(編集部)
Editor
柴田崇志(編集部)
モノ雑誌で10年弱編集を経験した後、カカクコムに入社。前職ではAV家電やカメラを中心に幅広い製品を担当。スペックからわかりづらい製品の違いをわかりやすく説明したいです。
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