前回(連載2回目)は、Windows 10から11に移行するにあたり、バックアップすべきデータを解説しました。連載3回目となる今回は、Windows 10の標準機能を利用したバックアップ方法を解説します。
Windows 10標準のバックアップ機能というと、なんだか簡単で便利そうにも聞こえますが、実はこれがかなりのクセモノ。実は、Windows 10の標準バックアップ機能はひとつではなく、数種類が搭載されています。しかも、それぞれの機能でバックアップできる内容や、保存先のメディアが変わるため、どの方法が自分に最適なのかがわかりにくいところがあります。
そこで今回は、Windows 10標準バックアップ機能を徹底解説。各機能の違いを詳しく紹介します。
※本記事は2025年8月15日時点での情報を元に作成しています。システムアップデートなどによって機能が追加されている場合があります。
Windows 10の標準バックアップ機能を使えば、ファイルごとに個別にバックアップする手間を省いてデータをある程度まとめてバックアップすることが可能です。ただし、バックアップ機能がいくつもあり、どれを使えばよいのかわかりにくいのが難点です
Windows 10には標準バックアップ機能がいくつも用意されており、保存できる内容や使い方がバラバラです。使う場所も違うので非常に混乱しますが、各バックアップ機能の目的がわかれば、自分に最適なバックアップ方法も見えてきます。
Windows 10には、以下の5種類のバックアップ機能が搭載されていますが、それぞれの特徴や目的は大きく違います。
1.システムの保護
2.ファイル履歴
3.Windowsバックアップ
4.バックアップと復元
5.システムイメージの作成
Windows 10にはバックアップ機能がいくつも搭載されており、その目的も使う場所もバラバラです。自分に最適なバックアップ方法を見極めるためにも、各バックアップ機能の特徴を知っておきましょう
それでは、各バックアップ機能の特徴や目的、バックアップされる内容をひとつずつ見ていきましょう。
システムのプロパティで利用できる「システムの保護」機能は、Windowsの状態を定期的に「復元ポイント」としてバックアップできる機能。その名のとおりWindowsシステムの保護と復元が目的で、システムファイルや設定、インストール済みソフト、Windowsの動作に大きく影響するレジストリなどが含まれます。
新しいソフトや周辺機器を導入する前に復元ポイントを作成しておけば、何か問題が生じた際に導入前の状態に素早く戻すことができます。なお、ユーザーデータは対象外となるため、復元後のユーザーデータがその時点に戻るということはありません。
・システムのプロパティで利用
・Windowsシステムの保護と復元が目的
・設定しておけば復元ポイントが定期的に作成される
・好きなタイミングで手動作成も可能
・システムファイル、設定、ソフト構成、レジストリなどをバックアップ
・保存先はシステムドライブ内の専用領域
Windows 10の設定から「システム」→「詳細情報」を開き、画面の下方にある「システムの保護」をクリック。これで「システムのプロパティ」というウィンドウが開くので、システムドライブの保護が有効になっていることを確認します。無効の場合は下の「構成」ボタンをクリックして、有効にしておけば自動で「復元ポイント」が作成されるようになります。なお、「作成」ボタンから手動で作成することもできます
「更新とセキュリティ」設定から利用できる「ファイル履歴」は、ライブラリーやアドレス帳、お気に入り、デスクトップ上のファイルなどを自動バックアップできる機能です。機能を有効にしておくと、定期的に対象の場所がスキャンされ、変更があると自動でバックアップが実行されます。
バックアップデータが上書きされず、日時ごとに個別に保存されるのが特徴で、復元の際には日時を指定してその時点の状態で復元できます。初期設定以外のフォルダーを追加することも可能ですが、著作権保護された動画や音楽などはバックアップできません。
・設定の「ファイルのバックアップ」から利用
・ユーザーファイルの日時ごとの保護と復元が目的
・機能を有効にしておけば変更があった際に自動でバックアップ
・日時を指定してその時点のファイルの状態に戻せる
・初期設定ではライブラリー、アドレス帳、お気に入り、デスクトップ上のファイルが含まれる
・保存先は外付けドライブやUSBメモリー、ネットワーク上のフォルダー
設定から「更新とセキュリティ」→「ファイルのバックアップ」を開き、「+ ドライブの追加」をクリック。保存先にしたいドライブを選択すると、ファイル履歴の機能がオンになります。すぐ下にある「その他のオプション」をクリックするとスキャンの間隔や保存期間の変更、バックアップ対象にするフォルダーの追加や削除が行えます
スタートメニューから利用できる「Windowsバックアップ」は比較的近年に追加された機能で、ユーザーフォルダーや設定、インストール済みソフト、Wi-Fi情報などをまとめてバックアップできます。バックアップに含まれるユーザーフォルダーは「ドキュメント」「写真」「ビデオ」「音楽」の4つです。
保存先はOneDriveなので非常に手軽ですが、バックアップ容量が大きいとOneDriveが容量不足になる可能性があります。データはOneDrive上に保存されますが、きちんと暗号化されているため、セキュリティ面での不安もありません。
・スタートメニューから利用
・ユーザーフォルダーだけでなくシステム設定もバックアップできる
・含まれるユーザーフォルダーは「ドキュメント」「写真」「ビデオ」「音楽」の4つ
・設定、インストール済みソフト、Wi-Fi情報などもバックアップが可能
・保存先はOneDrive
スタートメニューから「Windowsバックアップ」を開くと、専用の画面が表示されます。ここでバックアップしたい項目を選んで「続行」をクリックすることで、OneDriveにバックアップデータが保存されます
コントロールパネルから利用できる「バックアップと復元」は、ユーザーフォルダーや指定したフォルダーをバックアップできる機能。ドライブのシステムイメージをバックアップに含めることもできます。
保存先としてUSBメモリやSDメモリーカード、外部ストレージなどを用意する必要がありますが、新しいパソコンにデータを移行する際にも復元しやすいのが特徴です。ただし、Windowsやソフトの設定などは保存・復元できないため、新しいPCでは設定し直す必要があります。
・コントロールパネルの「バックアップと復元(Windows 7)」から利用
・初期設定では「ドキュメント」、「ミュージック」、「ピクチャ」、「ビデオ」フォルダーが含まれる
・好きなフォルダーを指定して追加できる
・保存先はUSBメモリーやSDカード、外部ストレージ
コントロールパネルの「バックアップと復元(Windows 7)」からバックアップ機能を利用できます。Windows 7で実装された機能なので名前に「Windows 7」とありますが、Windows 10でも利用できます。「バックアップの設定」をクリックすれば、保存先や保存内容を設定するウィザード画面が表示されます
コントロールパネルの「バックアップと復元」の画面から利用できる「システムイメージの作成」は、完全バックアップを作成できる機能です。システムや設定、インストール済みソフト、ユーザーデータなど、指定したドライブ内のすべてのものをバックアップできます。
保存先は別ドライブやDVD・ブルーレイ、ネットワーク上のフォルダーが利用可能。システムイメージを作成しておくことで、何かの理由でパソコンが起動しなくなった際、素早く元の環境を復元することができます。つまり、現パソコンの緊急起動用のバックアップが主な目的となります。
・コントロールパネルの「バックアップと復元(Windows 7)」から利用
・システム、設定、インストール済みソフト、ユーザーデータなど、指定ドライブをまるごとバックアップ
・複数のドライブをまとめてバックアップも可能
・PCが起動しなくなった際のシステム修復ディスクも作成できる
・保存先は別ドライブやDVD・ブルーレイ、ネットワーク上のフォルダー
コントロールパネルの「バックアップと復元(Windows 7)」画面の左にある「システムイメージの作成」から、システムイメージを作成できます。システムイメージの作成とあわせて、PC緊急起動用の「システム修復ディスク」をCD-RまたはDVD-Rで作れます
以上が5つのバックアップ機能の特徴と違いですが、バックアップは大きく、「ファイルを保存」するものと「状態を保存」するものの2つに分かれています。このうち、ファイルを保存するものは、ユーザーデータの保護を目的としており、今回のようにWindows 11への移行という目的に最適です。
いっぽう、状態を保存するものは、システムまで含めたパソコンの状態をまるごとバックアップします。何かの理由でパソコンが不安定になったり、起動しなくなったりした際に素早く元の状態に復元することが目的なので、データの移行にはあまり向きません。
これらを踏まえて、Windows 10から11にデータを移行するにあたり、最も手軽な方法は「3」の「Windowsバックアップ」。ファイルの保存と状態の保存の中間的な使い方ができるため、ファイルと同時に、Windowsやソフトの設定なども移行できるのが強みです。ただし、OneDriveの容量が足りるのであれば、という条件付きです。
OneDriveの容量が足りない場合は、「4」の「バックアップと復元」を使うのがよいでしょう。USBメモリーやSDカード、外部ストレージなどを用意する必要がありますが、古いパソコンでバックアップを行い、新しいパソコンに機器を挿し直して復元すればいいので比較的手軽です。
ここからは、この2つのバックアップ機能を使って、Windows 10のデータをバックアップする方法を解説していきます。
「Windows バックアップ」は比較的新しい機能で、ユーザーファイルや設定、インストール済みソフト、Wi-Fi情報などをまとめてOneDriveにバックアップできます。もし、OneDriveの空き容量が十分に足りるのであれば、このバックアップ方法が最も手軽です。
ただし、Windowsバックアップに含められるユーザーフォルダーは「ドキュメント」「写真」「ビデオ」「音楽」の4つのみで、任意のフォルダーを加えることができません。このため、任意のフォルダーのバックアップは、個別にOneDriveに追加する必要があります。
「Windowsバックアップ」はスタートメニューから素早く開くことができます。まずはスタートメニューを開き、「W」の欄から「Windowsバックアップ」を選択します
「Windowsバックアップ」が開いたら、「フォルダー」の右にある「∨」をクリックし、バックアップに含めたいユーザーフォルダーを「On」に設定します
その下にある「アプリ」「設定」「資格情報」に関しても、バックアップに含めたい項目を「On」に設定します。もし、開いても設定できない場合は、過去にバックアップが実行されているということ
「アプリ」、「設定」、「資格情報」のバックアップ設定は、設定の「アカウント」→「Windowsバックアップ」内にあります。もし、バックアップ内容を変更したい場合は、設定を開いてオン/オフを変更しましょう
右下の「続行」をクリックすると、Windowsバックアップが実行されます。バックアップする容量にもよりますが、しばらく時間がかかるので完了するまで待ちます
「準備が完了しました」と表示されれば、バックアップは完了。PC名の右にある「∨」をクリックすると、バックアップされた内容を確認できます
任意のフォルダーを追加でバックアップしたい場合は、個別にOneDriveに追加していく必要があります。OneDriveの設定では、任意の場所にあるフォルダーを指定して同期することができないため、エクスプローラーで「OneDrive」を開き、バックアップしたいフォルダーをその中にドラッグ&ドロップして追加します。
任意のフォルダーを追加する場合は、エクスプローラーで「OneDrive」を開き、その中にバックアップしたいフォルダーをドラッグ&ドロップしていきます。大容量過ぎるとOneDriveの容量が足りなくなるので、空き容量の様子を見つつ少しずつ作業しましょう
OneDriveの空き容量が足りない場合や、個別にフォルダーをOneDriveに追加するのが面倒な場合は、「バックアップと復元」機能を使うのがおすすめです。こちらはやや古い機能なのでコントロールパネル内にあり、正式名称は「バックアップと復元(Windows 7)」。Windows 7とありますが、Windows 10でも使えます。
保存先としてUSBメモリーやSDメモリーカード、外部ストレージなどが必要です。設定などは引き継げませんが、任意のフォルダーを指定してバックアップできるので、こちらのほうが1回で完結するわかりやすさはあります。
スタートメニューを開き、「Windowsシステムツール」の中にある「コントロールパネル」を選択します
コントロールパネルが開いたら、「システムとセキュリティ」の下にある「バックアップと復元(Windows 7)」を選択します
「バックアップと復元(Windows 7)」の画面が開くので、バックアップの項目の右にある「バックアップの設定」をクリックします
別画面が開き、バックアップデータの保存先として利用できるドライブが検出されます。バックアップ先として使いたいドライブを選択し、右下の「次へ」をクリックします
バックアップ対象の選択画面が表示されるので、「自分で選択する」を選び、右下の「次へ」をクリックします
フォルダー選択画面が表示されるので、バックアップに含めたいすべてのフォルダーにチェックを入れ、右下の「次へ」をクリックします
バックアップ設定の確認画面が表示されるので、漏れているフォルダーがないか確認します。問題なければ右下の「設定を保存してバックアップを実行」をクリックします。なお、ここでスケジュール設定をしておけば、定期的に自動バックアップも可能です
元の画面に戻り、バックアップが実行されます。容量にもよりますが、しばらく時間がかかるので完了するまで待ちます
バックアップが完了するとバックアップ結果の確認が表示され、下のバックアップ欄に先ほどの設定が追加されます。さらに下の復元欄では、先ほどバックアップしたデータをもとに復元が可能になりますが、今回は復元する必要がないのでコントロールパネルを閉じて構いません。これでバックアップ作業は完了です
今回、Windows 10の標準バックアップ機能の種類と違いを解説しましたが、正直なところどの方法も一長一短があります。ただ、OneDriveを利用できるなら別途ストレージを用意する必要がないため、データの移動は最も手軽です。
第2回を参考に、バックアップデータをすべて1か所にまとめてあれば、Windowsバックアップ機能でユーザーフォルダーと設定を引き継ぎ、まとめてある残りのバックアップデータをOneDriveに保存するだけなので移行はさほど手間ではないでしょう。
OneDriveの容量不足を解消する裏ワザとして、Microsoft 365の1か月無料体験を利用するという手もあります。Microsoft 365ユーザーは特典としてOneDriveの容量が1TBにアップするので、無料体験期間中に一気にデータを移行するという手が使えます。
もし、バックアップデータがしっかりまとまっており、設定を引き継ぐ必要がないなら、外付けSSDなどを使ってファイルを移動するのもひとつの手です。移行後のファイル置き場を個別に決められるので、しっかり整理しながら移行したいという人はこの方法が最適かもしれません。
Windows 10から11へのデータ移行は、どの方法が正解というものではないので、自分に合った方法を見つけましょう。次回は、バックアップしたデータをWindows 11環境で復元する方法を解説します。