Googleの最新スマートフォン「Pixel 10」の登場により、併売が続く従来機「Pixel 9」とどちらを買うかは悩ましい問題。実は、2モデルともに128GB版が128,900円、256GB版が143,900円と、「Pixel 10」とまったく同じ価格になっています。
左が「Pixel 9」、右が「Pixel 10」
ちなみに、価格.comでは2モデルの価格差は約20,000円前後と、「Pixel 10」ほうが価格が高くなっています。この価格差なら新モデルでもいいかとなる人もいると思いますが、今回は「カメラ」機能が大きく変わっており、すべての人に新モデルがいいとは断言しにくいんですね。
そこで今回は、「Pixel 10」と「Pixel 9」の違いにスポットを当てつつ、カメラ画質やパフォーマンスなどを中心に実機比較レビューをお届けいたします。
まずは、「Pixel 10」と「Pixel 9」の主な変更点を下記にまとめたので、ご覧ください。
最も大きな違いはカメラ。「Pixel 10」は望遠カメラが追加され、背面のメインカメラがダブルからトリプル構成となりました。しかし、トータルでの製造コストを合わせるためか、超広角カメラのイメージセンサーが48MPから13MPへと低画素化され、オートフォーカス機能も省かれています。そのため超広角カメラのオートフォーカス機能を利用した、シームレスな超至近距離でのマクロ撮影機能が利用できなくなりました。
また、広角カメラのセンサーサイズは、「Pixel 9」が1/1.31インチだったところ、「Pixel 10」は1/2インチと小さくなっています。望遠カメラが新たに採用されたことで、超解像ズームが最大8倍から最大20倍に向上した点は大きなメリットですが、イメージセンサーのサイズはともかく、マクロ撮影しにくくなった点は個人的には非常に残念です。
「Pixel 10」(上)は広角カメラ、超広角カメラ、望遠カメラのトリプル構成に進化。ただし、イメージセンサーのサイズなどスペックダウンした部分もあります
「Pixel 9」は被写体に寄っていくと、自動的にオートフォーカス対応超広角カメラに切り替わり、超至近距離でのマクロ撮影が可能です
「Pixel 10」で被写体に寄りすぎると、「離れてください」という警告が表示されます
「Pixel 10」はほかにも「Pixel 9」からスペックダウンしている機能があります。たとえば、Wi-Fi 7がWi-Fi 6Eに変更され、ほかのデバイスを充電できる「バッテリーシェア」非対応となったのはチェックしておくべきです。
いっぽう、プロセッサーが最新世代のモデルに変更されたり、ディスプレイ輝度が向上したり、バッテリー駆動時間が延長されたり、磁石でピタッと装着できる「Google Pixelsnapワイヤレス充電」に対応したことは明確なメリットです。
左が「Pixel 10」、右が「Pixel 9」
SIMカードトレイは「Pixel 10」では上面に移動しました
なお、Googleの公式ストアで両モデルのスペックを比較表示してみると、「Pixel 9」に下記の機能が記載されていません。
【カメラ機能】
カメラコーチ、自動ボケ補正、オートベストテイク
【編集機能】
Pixelスタジオ、スカイスタイル(空のスタイル)、被写体のサイズ変更と移動、背景のぼかし、ズーム画質向上
【Google AI】
Pixelスクリーンショット、マジックサジェスト
しかし、これはどうも発売時点のスペックのようで、原稿執筆時点で「Pixel 9」を確認してみたところ、写真撮影をアドバイスする「カメラコーチ」、「スカイスタイル(空のスタイル)」、「被写体のサイズ変更と移動」、「ズーム画質向上」、「マジックサジェスト」以外の機能は実装されていました。現在未実装の機能も、今後のアップデートで提供される可能性がありますね。
「Pixel 9」を確認したところ、Pixelスタジオ、背景のぼかしは利用できました
「Pixel 10」と「Pixel 9」でテスト撮影してみたところ、広角カメラについてはほぼ同等の画質だと感じました。ただし、イメージセンサーのサイズは「Pixel 10」のほうが小さいためか、全体的にわずかにPixel 9のほうが暗部の階調がしっかりと写っている傾向がありました。
とはいえ、画像処理ソフトウェアのバージョンが異なるため、そのような違いが出た可能性もあります。なお、たまたまかもしれませんが、「スイフトスポーツ」の「チャンピオンイエロー」は「Pixel 9」のほうが実際の色に近いですね。
Pixel 10(上)、Pixel 9(下)。広角カメラで撮影
Pixel 10(上)、Pixel 9(下)。広角カメラで撮影
いっぽう、光学5倍ズームの望遠カメラを搭載し、超解像ズーム最大20倍に対応した「Pixel 10」は、より遠くの被写体に寄ることができます。さすがに超解像ズーム最大20倍で撮影した写真は40インチ前後の大画面テレビで表示すると塗り絵感がありますが、ノートPCやタブレットぐらいのディスプレイなら実用的な解像感を備えています。望遠撮影の機会が多い人には、「Pixel 10」がやはり圧倒的におすすめですね。
Pixel 10(上、20倍)Pixel 9(下、8倍)
「Pixel 10」が搭載するプロセッサー「Google Tensor G5」は「Google Tensor G4」に対して、平均CPU速度が30%向上、TPUが最大60%強化と謳われています。実際、今回試用しているときにパフォーマンス不足を感じたことはなかったです。
ただし、3DアクションRPG「原神」をインストールしてみたところ、初期設定の「グラフィックス品質」「スムーズ」は「Pixel 10」と「Pixel 9」にほぼ違いはありませんでした。「Google Tensor G5」のGPU性能は具体的な数値が公表されていないので、3Dゲームのフレームレートなどは向上していない可能性があります。
なお、「Pixel 10」に関しては「原神」のプレイ時に問題が発生することがSNSなどで報告されています。今回のレビュー時は「Pixel 10」で「原神」をプレイしても特に問題は発生しませんでしたが、同ゲームのプレイヤーは留意する必要があります。
なお、参考値として定番ベンチマークで計測したスコアを以下に掲載しました。手短かにスコア全体を総括すると、「Google Tensor G5」のCPU性能は向上していますが、GPU性能については「3DMark」のWild Life Extreme以外は「Google Tensor G4」のほうが高いスコアを記録しており、多くのゲームで「Google Tensor G4」のほうが快適に動作する可能性があると言えるでしょう。
「AnTuTu Benchmark V10」
「Geekbench 6」
「3DMark」
「Pixel 10」は、望遠カメラを追加し、ディスプレイ輝度やバッテリー駆動時間も向上しています。いっぽう、超広角カメラの画素数低下やマクロ撮影の制限など、一部でスペックダウンも見られます。前モデルの「Pixel 9」が併売されているため、望遠撮影を重視するなら「Pixel 10」、高画質な超広角撮影やマクロ撮影を求めるなら「Pixel 9」を選ぶのをおすすめします。
また、ゲームを重視するなら「Pixel 10」よりも「Pixel 9」のほうが快適に動作する可能性が高いです。そもそも、「Google Tensor G」シリーズはゲームにおけるパフォーマンスの評判が高くないため、本格的にゲームを遊ぶ人は「Galaxy」シリーズなど、「Snapdragon」系のSoCを搭載するスマホを選ぶのが安心でしょう。