サムスンの「Galaxy Tab S12 Ultra」は、14.6インチの有機ELディスプレイを備えたAndroidタブレットのフラッグシップモデル。Samsungオンラインショップでの直販価格が27万円を超えるプレミアムな製品です。今回は、本機の基本性能や使い勝手を徹底検証。前モデルからの進化点や、大画面を生かせる具体的な用途をチェックしました。
2026年10月7日に発売された「Galaxy Tab S12 Ultra」。Samsungオンラインショップの直販価格は271,480円(税込)〜です ※画像のキーボードは別売りオプション
サムスンの「Galaxy Tab S」シリーズは、ハイエンド向けのAndroidタブレットです。処理性能にすぐれたプロセッサーや高画質なディスプレイを採用するうえ、スタイラスペン「Sペン」も標準で同梱します。映像コンテンツの視聴やゲームプレイはもちろんのこと、イラスト制作や動画編集などのクリエイティブワークも快適にこなせる性能を誇ります。
その最新世代かつ最上位モデルとして登場したのが、今回レビューする14.6インチの「Galaxy Tab S12 Ultra」です。
まずは、本機の基本的なスペックから見ていきましょう。
プロセッサーには、3nmプロセスで製造されるMediaTekの「Dimensity 9500」を搭載。前モデル「Galaxy Tab S11 Ultra」が搭載していた「Dimensity 9400+」と比較して、メーカー公称値でCPU性能が19%、GPU性能が17%、NPU性能が最大61%向上しています。
この処理能力の高さを生かすために、本機は、放熱性能が高められた新設計の「3Dベイパーチャンバー」を採用しています。これにより、長時間の動画編集やグラフィックデザインなど高負荷な作業でも、サーマルスロットリングを抑えて安定したパフォーマンスを発揮します。
本機最大の魅力であるディスプレイには、14.6インチの「Dynamic AMOLED 2X」(有機EL)を採用。現行Androidタブレットとして最大級となる画面サイズで、解像度は2960×1848、リフレッシュレートは最大120Hz、ピーク輝度は1600nitsに達します。大画面を生かした複数アプリの同時表示はもちろん、写真編集や映像鑑賞にも適した仕様です。
14.6インチの有機ELディスプレイ(2960×1848、リフレッシュレート最大120Hz、ピーク輝度1600nits)を採用。周囲の明るさに応じて画面の輝度とコントラストを調整する「シームレスビジョンブースター」にも対応しています
本体サイズは約326.3(幅)×208.5(高さ)×5.1(厚さ)mmで、重量は約692g。14.6インチの大画面ながらもスリムな筐体に収まっています。この筐体に容量11600mAhのバッテリーを内蔵。メーカー公称の動画再生時間は最大23時間で、最大45Wの急速充電にも対応しています。
本体背面。キーボードカバー接続用の金属接点が用意されています
有線インターフェースにはUSB 3.2 Gen1 Type-C端子を装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 7とBluetooth 6.0をサポート。背面には約1300万画素の広角カメラと約800万画素の超広角カメラ、前面には約1200万画素の超広角カメラを内蔵しています。
さらに、IP68の防水防塵性能を備え、画面内指紋認証と顔認証に対応。4基のスピーカーによる4チャンネル空間オーディオもサポートしています。OSには、Android 17ベースの「One UI 9」を採用しています。
側面には電源ボタン、音量ボタン、microSDメモリーカードスロットを配置
底面にはUSB 3.2 Gen1 Type-C端子を配置
製品ラインアップとして、メモリー/ストレージ容量がそれぞれ12GB/256GB、12GB/512GB、16GB/1TBの3モデルを用意。いずれも、最大2TBのmicroSDメモリーカードの使用に対応しています。動画や写真などで大容量のデータを扱いたい場合に、ストレージを増設できるのは大きなアドバンテージです。
SamsungオンラインショップでのWi-Fiモデルの直販価格(2026年11月2日時点)は256GBモデルが271,480円、512GBモデルが305,580円、1TBモデルが373,780円(いずれも税込)です。
続いて、「Galaxy Tab S12 Ultra」の特徴をレビューします。まずは、本機を選ぶ理由のひとつである14.6インチの有機ELディスプレイから見ていきましょう。
14.6インチの大画面ということもあり、映画などの映像コンテンツの鑑賞にもってこいのディスプレイなのですが、実際に使ってみて印象に残ったのは、やはり有機ELならではの黒の表現です。特にHDRコンテンツのクオリティには目を見張るものがありました。
以下に掲載する画像は、HDRコンテンツの表示イメージです。黒い背景の中心に被写体(花)があるコンテンツなのですが、本機では背景の黒が漆黒で表現され、その中に明るい被写体が浮かび上がるような映像となりました。花の鮮やかな色が階調豊かに再現され、実物を目の前にしているかのような臨場感がありました。
HDRコンテンツを再生すると黒い部分が漆黒で表示され、明るい部分も階調豊かに描写されます
電子書籍の閲覧でも14.6インチの大画面ディスプレイは威力を発揮します。
特に電子コミックの表示においては、画面は大きければ大きいほど快適です。最近のコミックはデジタル環境で制作されているためか、非常に細かな部分まで描き込まれています。また、作品によっては小説と見まがうほどセリフが多く、単行本サイズの画面だと文字を読みにくいと感じる作品もあります。
特に小さな文字が見えにくくなってきた人なら、電子コミックの視認性に不満を感じた経験があるはずです。実際、筆者は普段11インチの「iPad Air」を使っていますが、文字の多いコミックを読むたびに「大画面モデルを選ぶべきだった」と感じていました。もし、11インチ程度の画面で文字が読みにくいと感じているようであれば、「Galaxy Tab S12 Ultra」の高品位な14.6インチディスプレイはかなり使いやすいと感じることでしょう。
画面のアスペクト比は約16:10。コミックを見開き表示すると左右に余白が生じますが、14.6インチの大画面のため、余白があっても文字は大きくて読みやすいです(※鈴木みそ氏「ナナのリテラシー 1」より)
ただし、画面が大きいぶん、使っていて大きさや重さが気になることもあります。重量が約692gもあるため、両手で持ち上げたままの長時間の操作は現実的ではありません。スタンドで自立させるか、膝やデスクの上に置いて使うスタイルが基本となります。
ちなみに、4本指や6本指でFPSゲームを操作する場合には、この画面の大きさが大きなアドバンテージとなります。複数の指を駆使してゲームをプレイする人にとっては、本機の14.6インチディスプレイは魅力的でしょう。
「Galaxy Tab S12 Ultra」を使ううえで、積極的に活用したいのが標準で付属するスタイラスペン「Sペン」です。スタイラスペンの書き味については好みが分かれますが、個人的には「Sペン」の書き味を非常に気に入っています。
良し悪しは別にして、iPadの「Apple Pencil」は硬めで、ペン先が滑るような書き味です。いっぽう、「Sペン」は摩擦が強めで、適度な抵抗感があります。筆者はペン先が滑りすぎると文字を書きにくく感じるのですが、「Sペン」はやわらかめの鉛筆のような書き味。小さな文字を連続で書くような使い方でも書きにくいとは感じません。
「Sペン」は標準で同梱。鉛筆のような書き味で文字が書きやすいです
長文を入力するのであれば、別売りの純正キーボード「Galaxy Tab S12 Ultra | Tab S11 Ultra Pro Keyboard」もぜひセットで購入したいところです。純正品だけあって打鍵感は良好で、打鍵音も低め。タッチパッドにも適度なクリック感が備わっています。
人によって好みが分かれそうなのが、英語配列を採用していること。とはいえ、文字キーの配列は素直で、キーが不自然に詰め込まれた箇所もありません。日本語配列と位置が異なる一部の記号キーには慣れが必要ですが、そこさえ覚えてしまえば快適に文字入力できます。
ちなみに、筆者は普段、日本語配列のキーボードを使用していますが、英語配列にもそれほど抵抗はありません。実際、ちょっと戸惑うのは「@」の入力ぐらい。普段の原稿で@を入力することはめったにありません。日本語配列と英語配列の二刀流も、それほど難しくないというのが率直な感想です。
別売りの純正キーボード「Galaxy Tab S12 Ultra | Tab S11 Ultra Pro Keyboard」(税込59,400円)を装着すれば、ノートパソコンに近いスタイルで作業できます
次に、「Galaxy Tab S12 Ultra」の処理性能を確認していきましょう。
定番ベンチマーク「Geekbench 7.1.0」を実行したところ、CPU性能を測るSingle-Core Scoreは2780、Multi-Core Scoreは9194となりました。続いてGPU性能を計測したところ、OpenCLのスコアは15204、Vulkanは18219でした。
「Geekbench 7.1.0」のSingle-Core Scoreは2780、Multi-Core Scoreは9194
「Geekbench 7.1.0」のGPU Score(OpenCL)は15204
「Geekbench 7.1.0」のGPU Score(Vulkan)は18219
Geekbench公式ランキングのスコア(2026年10月22日時点)を参照すると、「Dimensity 9400+」を搭載する「Galaxy Tab S11 Ultra」と比べて、「Geekbench 7.1.0」のSingle-Core Scoreは122.4%相当、Multi-Core Scoreは114.1%相当、GPU Score(OpenCL)は110.1%相当、GPU Score(Vulkan)は104%相当のスコアを記録したことになります。
サムスンの公称値ではCPU性能が19%、GPU性能が17%向上すると謳われています。今回の比較では、CPU性能はおおむね公称値に近いスコアの伸びを確認できましたが、GPU性能の向上幅は公称値よりも控えめでした。
定番ベンチマークのスコアだけではどのぐらいの性能なのかピンとこない人もいることでしょう。そこで今回は、実際の処理速度を確かめるため、動画の書き出しを試してみました。60分の動画をフルHD、25フレーム/秒、10Mbpsという設定で動画編集ソフト「CapCut」で書き出したところ、完了までにかかった時間は4分19秒。動画の再生時間に対して、わずか約7.2%の時間で処理できたことになります。
1時間の動画を5分足らずで書き出せるのは十分に実用的です。もちろん、素材の形式やエフェクト、トランジションの内容によって処理時間は変わりますが、これだけの処理能力であれば、一般的な動画編集の書き出しでストレスを感じることはまずないでしょう。
60分の動画をフルHD、25フレーム/秒、10Mbpsで書き出したところ、4分19秒で完了。動画の再生時間の約7.2%で書き出せた計算です
ゲームは定番の3DアクションRPG「原神」をプレイしてみました。画質を「高」、フレームレートを「60」に設定しても滑らかに動作します。大きな画面でゲームを高画質のまま楽しめるのはうれしいところです。
「原神」は画質「高」、フレームレート「60」に設定しても滑らかに動作しました
バッテリー駆動時間については、ディスプレイの輝度と音量を50%に設定し、YouTube動画を2時間連続再生したところ、バッテリー残量は100%から87%に減りました。つまり単純計算では、バッテリー残量0%まで15時間23分動作することになります。
最後に背面カメラの描写性能をチェックしていきましょう。本機は背面に約1300万画素の広角カメラと約800万画素の超広角カメラを搭載しています。そこで、超広角の0.6倍から通常の1倍、デジタルズームの2倍、8倍まで撮影してみました。
左からLEDフラッシュ、広角カメラ、超広角カメラ
超広角カメラで撮った作例では、木々や階段を含む広い範囲が1枚に収まっています。いっぽう、広角カメラでは風車の白い壁や空の雲、周囲の緑がバランスよく描写されています。この2枚の作例を見る限り、色を派手に強調しすぎることなく、風景を自然に記録できています。広角カメラと超広角カメラで色味が揃っている点も好印象です。
本機は望遠専用のカメラを搭載していないため、2倍と8倍はデジタルズームになります。2倍では1倍撮影時とそれほど変わらぬ解像感が保たれていますが、8倍になると壁や葉の細部にデジタルズームならではの塗り絵感が目立ちます。小さな画面でサムネイルとして見る程度なら十分なクオリティですが、30インチを超えるような大画面で鑑賞するのであれば、素直に望遠カメラを搭載したスマホを使ったほうがよさそうです。
広角カメラで小さな花に近づいてみました。指先と比べると花の小ささがよくわかりますが、黄色い花びらや中央の雄しべまで描写されており、背景も自然にぼけています。風景だけでなく、身近な草花の記録にも使えますね。
ナイトモードでは、駅のホームを撮影してみました。明るいホームと暗い線路が同居するシーンですが、電車の形や周囲の建物がしっかりと描写されています。明るい照明にはやや白飛びが見られますが、このぐらいであれば許容範囲です。
なお、本機は、14.6インチの大画面で撮影中のライブビュー映像を確認できるので、撮影体験自体がなかなか面白いです。プレビューの時点で、どこにピントが合っているかもしっかり確認できます。画質自体は最新のフラッグシップスマホには及びませんが、大画面を生かした撮影を十分に楽しめると感じました。特にピンボケなどの失敗写真にその場で気づきやすいという点では、スマホのカメラよりも使い勝手がよいと思います。
以上、「Galaxy Tab S12 Ultra」の特徴を見てきましたが、いかがだったでしょうか? 大画面ハイスペック機ということで、映像コンテンツ、電子コミック、ゲームといった用途で便利に使える端末であると感じていただけたのではないでしょうか。
画面の大きさは、スペックの数値以上に大きなアドバンテージです。同じ映像コンテンツでも、大画面で見るだけで迫力は段違い。電子コミックの読みやすさも変わりますし、「Sペン」での手書きやイラスト制作においても、作業スペースの広さが効いてきます。11〜12インチ程度と14.6インチの差は決して小さくありません。
とはいえ、本機は、27万円を超える高額製品です。iPadシリーズとは異なり、スタイラスペン「Sペン」が標準で同梱されていたり、タブレット向けの「Adobe Photoshop」がプリインストールされていたり(プレミアムモバイルプランを4か月間無料で利用可能)と付加価値はあるのですが、気軽に購入できるものではありません。購入の際には、自分のタブレットの使い方にあわせて価格に見合う価値があるかを慎重に見極めたいところです。
なお、大画面はそれほど必要ないのであれば、同じ「Galaxy Tab S」シリーズの「Galaxy Tab S12+」が有力な選択肢になります。「Galaxy Tab S12+」は、「Galaxy Tab S12 Ultra」と同等の基本性能を備えた12.6インチモデル。Samsungオンラインショップでの256GBモデルの価格は227,480円(税込)。「S12 Ultra」と比べると44,000円安いです。携帯性を重視するなら、軽くてコンパクトな「S12+」のほうが使いやすいと感じるのではないでしょうか。
ディスプレイのサイズは、手前の「Galaxy Tab S12+」が12.6インチ(2800×1752)、奥の「Galaxy Tab S12 Ultra」が14.6インチ(2960×1848)