コーヒーはもっぱら深煎りブラック一辺倒の筆者。多い時は1日に3杯以上、市販のドリップバッグにインスタント、街の喫茶店やカフェチェーン、気づけば30年以上もブラックコーヒーを飲み続けてきました。
ただ、豆に特別なこだわりがあるわけでもなく、ドリップ技術が向上もせず、味の違いもたいしてわかるわけもなく……長らくただの消耗品的な付き合いでした。しかし、ここ数年は世間の流行りに乗じてコーヒーへの興味が湧いており、コーヒー豆をミルで挽いてみたり、YouTubeを参考にドリップのやり方を真似てみたりしています。そんなところに、目にしたのがサンコーのコンパクトコーヒーロースター「ロイジー」です。
熱風式焙煎でコーヒー豆をムラなく煎ることができ、新鮮な豆の風味と味わいを自宅で楽しめるとのこと。さらに温度と時間を自在に調整して好みの味が模索できるといいます。
しかも本格的なロースターは高額な製品も多い中、ロイジーは2万円以下と比較的リーズナブルな価格帯。さっそく試してその実力を確かめてみたいと思います。
サンコーのコンパクトコーヒーロースター「ロイジー」。手ごろな価格ながら、焙煎の温度や時間を細かく設定できるのが特徴です
まずは「ロイジー」のディテールを確認していきます。
パーツは大きく本体とチャフコンテナに分かれ、本体部分の分解などはできません。電気ケトルのような見た目で、キッチンなどに置いても違和感のないデザイン。ケトルと並べてカフェ感を出すのも楽しいです。キッチン棚などに収納しやすいサイズ感もグッドです。
なお電源コードは約1メートルと、環境によっては延長コードの使用が必要となりそうです。また、定格消費電力が1100Wと大きめのため、コンセントのつなぎ過ぎには注意しましょう。
本体と付属パーツの一式。電気ケトルのようなデザインの本体と、チャフ(コーヒー豆を煎った際に分離する薄皮)を回収するチャフコンテナ、メンテナンス用のブラシと、計量スプーンというセットです
本体にチャフコンテナをセットした様子。重量は約1.3kgとズッシリ感もありますが、ハンドルがしっかりと握りやすくなっています。本体サイズは高さが23.5センチ、幅が16センチ、奥行きが21センチです。チャフコンテナを含まないサイズは実測で高さが約20センチ程度、ハンドル部を除いた本体径は約13.5〜16センチ程度です
本体の中央は豆を入れるローストコンテナ部。投入口の周囲には空気口がぐるっと囲みます。2箇所ある突起部はチャフコンテナにはまるようになっています。またハンドル部の天面には操作パネルが搭載されます
チャフコンテナは上フタと分離する構造。上フタには取っ手があり、焙煎後に熱くなった状態でもチャフコンテナごと取り外しができます。チャフコンテナの側面と上フタにはメッシュ状の通気口フィルターを備えるほか、上フタの中央のガラス窓でローストコンテナの内部が視認できます
本体の構造を押さえたところで、さっそく焙煎を始めていきたいと思います。
まずはコーヒーの生豆を計測。1回あたり60g〜80gと分量が決まっているため、今回は70gの生豆を焙煎してみます。
流れとしては、ローストコンテナに生豆を入れて、チャフコンテナをセット。焙煎時間と温度を設定したらスタートし、終わるまで見守るという感じです。
なお焙煎時間と温度の設定は3段階のフェーズが用意されており、フェーズ1は120〜160度/1〜10分まで、フェーズ2は160〜200度/1〜6分まで、フェーズ3は200〜220度/1〜6分までの範囲で、温度は1度刻み、時間は1分刻みと細かく自由に設定できます。
さらに焙煎終了時には約4分間の自動冷却時間が設けられており、焙煎にかかる時間はフェーズ1〜3プラス冷却4分を合計した時間となります。
注意点としては、高温になるため、万が一の発煙・発火に備えて目を離さないことと、焙煎途中で電源を落とさないこと。電源を落とした場合はすぐに再起動し、手動で冷却ボタンを押して強制冷却を行わないと発煙・発火の恐れがあるとのこと。今回通常使用を続けた限り、発火などの兆候はありませんでしたが、取り扱いは慎重にした方がよいでしょう。
まずはコーヒーの生豆を本体に投入します。付属の計量スプーンを使う場合はすりきり3杯が約80gの目安とのことですが、豆ごとに水分量や密度が異なるため、スケールで計る方がより確実です
チャフコンテナをはめてコンセントにつなぎ、右下の電源ボタンを長押し。液晶画面が表示されたら左下の設定切り替えボタンを押してフェーズごとの温度と時間を設定します
ちなみにメーカーのホームページには、サンコーの社員さんが検証を行った焙煎目安のレシピが公開されているので、今回は公式のレシピをもとに試してみたいと思います。まずは中煎りのレシピを試してみました
スタートするとブウォーっと音を立てて焙煎が始まります。音量はなかなか大きく、ちょっとした掃除機くらいのボリューム感。住宅環境にもよりますが、深夜帯などでの使用は控えた方が無難そう。
焙煎中は熱風でコーヒー豆がグルグルと回転し、徐々に茶色く色づいていくのがわかります。特に温度帯が変わるフェーズの切り替え地点で、色の濃さがわかりやすく変化しているように感じました。
焙煎中は香ばしいスモーキーなにおいが漂い、焙煎をしている実感がふつふつと湧いてきます。
ただ香りはよいのですが、本体の上方に立ち上る熱と、焙煎開始直後は特に煙もそれなりに発生します。部屋の天井が煙やオイルで汚れるなどが気になる場合、初回は換気扇の下など換気状況のよい場所で焙煎してみた方が無難です。
なお、参考までに手鍋でも焙煎を試してみたところ、発生する煙の量はもっと多く、本機ではかなり煙の量が抑えられていることがわかりました。
コーヒー豆の回転する様子や稼働音、熱気などの確認に、焙煎中の様子を動画で撮影しました。12分ほど経過した、フェーズ2から3に移る200度を超えたあたりから、豆の色がいっそう濃い色に変化していきます
フェーズ3までの焙煎が終わると、自動的に約4分間の冷却が開始。冷却が終わると機器が停止します。チャフコンテナを取り外して中を確認すると、よく知っているコーヒー豆の色になっていました
コーヒー豆を皿に移して確認。完了から2分ほど時間を空けた状態で手ですくってみましたが、ほんのりと温かい程度までしっかりと冷却されていました
ちなみに焙煎後のコーヒー豆の重さを計ってみると、焙煎前に70gだった生豆が58.7gになっていました。焙煎により豆に含まれる水分などが抜けたようです
粗熱がとれた段階でチャフコンテナを開けると、回収されたチャフが溜まっていました。本体の周囲にチャフが散らばることはなく、付属ブラシで手入れすればすぐに取り除けました。なお連続運転をする場合、必ず30分以上空けるようにします
焙煎5回につき1度はチャフコンテナの清掃が推奨されています。市販のセスキ炭酸ソーダを60度程度の湯1リットルあたり10gの分量で溶かし、チャフコンテナを一晩〜1日くらい浸け置きし、不要になった歯ブラシなどでフィルターの隙間なども掃除後、しっかりと乾燥させます
無事に焙煎が済んだので、いよいよ味の確認をしてみたいと思います。
わくわくしながら豆を挽き、いつも通りのハンドドリップで淹れてみると、心なしか、ややとがった苦味と雑味はあるものの十分に美味しく感じます。もちろん、筆者はドリップの技術はもとより、味に関しても素人なので、あくまでも個人的な感想ですが、いつも飲んでいる市販の焙煎済みのコーヒー豆と比べても、ほとんど遜色のないように感じました。
ただ自家焙煎のやり方についてネットで口コミなどをいろいろと検索してみると、焙煎直後は豆にガスが溜まり燻されたにおいが強く、飲み頃ではないといいます。
そこで、1週間ほど寝かせた状態と焙煎直後の状態とで飲み比べをしてみることに。なるべく同じ淹れ方ができるドリッパーと同じ挽き方、同じ湯温など条件を揃えてみました。
すると、確かに寝かせた豆で淹れたコーヒーの方がより雑味の少ないまろやかな味に感じました。寝かせることでよりバランスのよい、飲みやすいコーヒーに仕上がると言えそうです。
とはいえ、元々同じ豆を使っているので味の傾向は似ており、とがりのある味も煎りたてならではの味なので、どちらも楽しめるのが自家焙煎のよいところなのだと感じました。
コーヒーを淹れるのに使用したセット。ドリッパーはハリオの「浸漬式ドリッパー スイッチ」を使用。豆を挽くのは「Delimo 電動コーヒーミル コードレス 臼式 ステンレス」を使いました
右が焙煎直後、左が1週間寝かせた状態のコーヒー豆。1週間寝かせた方はうっすらと表面にオイルのようなテカリ感が出てきています
コーヒー豆12グラムを中挽きにし、浸漬式ドリッパーに投入。90度のお湯を160ml注いで、数回のかくはんをした後、2分後にスイッチを解除して一気に落とすやり方で統一しました
カップにコーヒーを注いで並べてみました。右が焙煎直後、左が1週間寝かせた方です。においを嗅いでみると、焙煎直後のほうがやや強く香りを感じましたが、色など見た目的にはほとんど違いはありません
最初はオーソドックスに中煎りで試してみましたが、せっかく色々な焙煎ができるので、浅煎りや深煎りも試してみることに。サンコーのレシピを参考にして煎り時間を変えてみると、明らかに豆の色が異なる出来栄えになりました。
先ほどと同じく、淹れ方を統一して飲み比べてみると、同じコーヒー豆とは思えないほど違いが感じられました。特に浅煎りは見た目だけでなく、酸味のあるフルーティーな味で、コーヒーとティーの中間くらいの味わいに。
もちろん、深煎り向きや浅煎り向きなど、使用する生豆によっても大きく変わる部分ですが、同じ生豆でも味のバリエーションが楽しめることこそ、本機の真骨頂なのだと感じさせられました。
焙煎したコーヒー豆を右から、浅煎り、中煎り、深煎りの順に並べてみました。左に向かって色のグラデーションが濃くなっていくのがわかります
中挽きにしたコーヒー豆を浸漬式ドリッパーで淹れました。右から、浅煎り、中煎り、深煎りで、比べてみると浅煎りは色が淡めです。ちなみに浅煎りは挽き方を粗挽きにし、通常のドリッパーを使った場合はもっと淡く苦味の少ない味わいになりました
ここまではサンコーの出しているレシピを見ながら焙煎をしてきましたが、本機はフェーズごとの温度と時間を自由に変えられるのが持ち味。そこで、失敗も覚悟でオリジナルの焙煎にも挑戦してみることに。
目標としたのは、最近近所のスーパーで購入していた市販のコーヒー豆で、エチオピア モカの深煎り。とりあえずエチオピア産の生豆を購入し、サンコーのレシピで深煎りにしてみると、スーパーで購入したものに比べて色がやや淡めの仕上がりになりました。
ならば、もう少し焙煎感を出してみようと、最も高温が設定できるフェーズ3で、焙煎時間を最大6分まで段階的に上げてみることにしました。
結果は、色に関してはかなり近づけることができました。ただ、味や香りは明らかに異なり、最大の6分まで焙煎した豆はしっかり苦味とコクはあるものの風味が飛んでいるような味わい、5分はコクが強くてちょっと重めの味、4分は他と比べると風味は感じるものの、市販に比べてスッキリ感が足りないという感じで、もちろん美味しいのですが、なかなかうまくはいきません。
そもそも使っている豆が同じではないので当然かもしれませんが、高温だけを長くすればよいというものではなく、各フェーズの調整をより細かくしながら、自分の好みの味を探していくのがアプローチとしては正しそうです。
その後、フェーズ3の焙煎温度を215度で4分、210度で5分など温度も変えながら、コーヒー豆を直接かじって硬さや苦さなども確認していくと、より好みの味に近づいてきました。途中、似たような味が続くとわからなくなってきたり、時間を置くと味の感じ方が変わったりと紆余曲折ありながらも、味を模索していく作業にDIY感もあり、「これかも!」と近づく喜びも得られました。
サンコーの深煎りレシピと同じく、フェーズ1を160度/8分、フェーズ2を200度/5分とし、フェーズ3のみ220度/4分〜6分まで変更してみました。さらに1週間寝かせると、黒光りした状態に。右からフェーズ3を4分、5分、6分と変更した順に並んでいます
右から220度/4分〜6分と並べました。どれもしっかりと苦味があり、個人的には好みに近い味でしたが、一緒に飲み比べをしていた妻は「苦すぎて重い」と意見が割れる結果に。その後、妻は牛乳を足してカフェオレで飲んでいました
16歳の時にブラックの味を覚えてから30年間、おそらく1日1杯は飲み続けてきたコーヒーですが、これまで自分で生豆から煎ってみようと思ったことは一度もありませんでした。
ですが今回「ロイジー」を試してみて、「自家焙煎って楽しい」と感じました。
もちろん、これまで飲んできた市販のドリップやインスタントコーヒーも変わらず好きですが、どうしても似た傾向のなじみある味ばかりを選びがちで、型にはまった飲み方をしていたんだなと気付かされました。
個人的に意外な発見としては、これまで苦手だと思っていた酸味のあるコーヒーが、いろいろバリエーションを試すうちに美味しく感じるようになったことです。また、朝は軽めにフルーティーなコーヒー、夜はしっかり苦い深煎りコーヒーというふうに、その日・その時の気分やコンディションで淹れるコーヒーの味を選ぶ楽しみが増えました。
また喫茶店に行った時にも、これまでは迷わず深煎りを頼んでいましたが、今日は浅煎りを頼んでみようかなと思ったり、どうすればこういう感じの味になるんだろうと想像したりすることも増えました。
もちろん苦手な味になってしまう失敗もありますが、「今日のは苦い」とか「これはうまく行った気がする」などと家族であれこれ言い合うのも楽しい時間です。何より「自分で作る」ということが、失敗も味と感じさせる、特別な体験となります。
そんな自家焙煎ならではの楽しさを簡単に感じさせてくれる「ロイジー」。本気で欲しくなるとともに、新たなコーヒー沼の始まりも予感して……恐ろしくも楽しい検証となりました。
今回、ロイジーで自家焙煎を試すにあたり、初めてコーヒーの生豆を買ってみましたが、実は近所のスーパーなどには売っておらず、意外と買えるお店が限られていることを初めて知りました。焙煎を手掛けている街のコーヒー豆販売店や、一部のコーヒーチェーン店で売られることもあるようですが、今回は手軽なネット購入にしました。
また、販売ショップによって、輸入した豆をそのままの状態で販売しているケースと、虫食いなどの不良豆を取り除きサイズを選別(ハンドピック)したうえで販売しているケースがありました。ネットで調べるとハンドピックのやり方を説明しているサイトなどもあり、今回は質よりも量を重視して、劣化が大きいものだけは自分で取り除けばよいと割り切りました。もちろん不安もあるので、ユーザーレビューは吟味し、なるべく不良豆が少ないなど好意的な口コミの多いショップの製品を選ぶようにしました。もし手間をかけず、最短で理想の味を目指すなら、ショップで選別済みの高級豆を選ぶ方が無難かもしれません。
どの生豆を買えばよいのか、というのも悩んだポイントです。
品種の違いはもちろんですが、産地ごとに特有のグレード表記が定められており、欠点豆(カビ・未成熟・割れ などで味わいを損なう原因となる豆)の数が基準である場合もあれば、標高やサイズが基準である場合もあり、おそらく大半の人が混乱するのでは。しかもこれらの等級は、必ずしも美味しさを保証するものではなく、要素のひとつだそうです。
結局何が正解なのかは買って試すしか判断のしようがないとは思います。とはいえ、まずはとにかくショップの説明と口コミを読み込み、気になる産地のグレードも都度調べて知見を深めることが、好みの豆にたどり着くための手段の1つと言えそうです。今回もそのようにしつつ、予算と相談しながらひたすら悩んで選びました。ただ、その手間や難しさも自分で焙煎する醍醐味なのかもしれません。
ちなみに、普段買っている焙煎済みの豆と今回購入した生豆のコストを比べると、生豆を1kgで購入した場合、100gあたりの価格は生豆の方が200円ほど割安。ただ生豆は焙煎すると質量が2割程度減るので、少量で買う場合はそれほど価格差はなさそう。生豆は購入キロ数が多いほど割安になる傾向があり、ひとつの銘柄を大量購入すれば、焙煎豆よりコスパにすぐれると言えそうですが、家庭で楽しむぶんには、あまりコスパにとらわれない方がよさそうです。