ソニーの最上位テレビ「BRAVIA 9 II(XR90M2)」シリーズをレビュー。今回は65V型「K-65XR90M2」を借用し、じっくりと視聴を行った
2026年のテレビにおける最大のトピックは、間違いなくRGB mini LEDバックライト搭載モデルの本格登場だ。赤・緑・青(RGB)それぞれのLEDを個別に制御し、液晶テレビのバックライト段階で「色」を作ってしまうという新世代の方式だ。
そのなかでも大本命として登場したモデルが、「BRAVIA 9 II(XR90M2)」シリーズ。ソニーが「True RGB」と称するこのシリーズは、2024年のフラッグシップ(最上位)液晶テレビ「BRAVIA 9」シリーズの後継にあたる。RGB mini LEDバックライトを独自の「RGB Backlight Master Drive Pro」で駆動することが特徴だ。ラインアップは、65V型/75V型/85V型そして超大型の115V型という4機種。
ソニーは日本を代表する高画質テレビメーカーであり、業務用マスターモニターを手掛けるメーカーでもあり、さらに映画制作の現場とも近い位置にいる(関連会社にソニー・ピクチャーズ エンタテインメントがある)存在だ。そんなソニーが、RGB mini LEDバックライトの技術を、どう使いこなすのか。これは自宅でじっくり確認する価値がある……ということで、65V型の実機をお借りして、照明下と完全暗室の両方でレビューしてみた。
自宅に設置したのは65V型の「K-65XR90M2」。寸法は1445(幅)×906(高さ)×341(奥行)mm、重量は30.6kg(いずれもスタンド含む)と、シリーズ最小サイズでもインパクトのある大きさだ。ベゼル(画面周辺の額縁)は十分に薄いのだが、スピーカーを内蔵する都合もあってパネル部は厚く、業務用モニターを彷彿とさせる重厚感すらある。
デザインとして特徴的なのはスタンド。115V型を除く3サイズが中央脚のセンタースタンドを採用している。光を屈折させるレンチキュラー加工を施した透明パネルを配置することで、背面のケーブルやスタンドそのものの存在感を弱める工夫がある。
スタンドは中央一本足の「ミラージュスタンド」。柱の部分に透明パネルを採用し、映像だけが浮かんで見える効果を狙っている。透明部分には光を屈折させる特殊加工が施されているため、背面が透けにくい
「BRAVIA 9 II」シリーズの機能として特徴的なのは、まずOSにGoogle TVを採用していること。実機を使ってみて気付いたのだが、AI機能である「Gemini for TV」が利用可能となっている。自然言語での会話が可能で、テレビでAIを使うとなると利用目的はやはり番組検索。検索時には言い回しを整えなくても意図を汲んでくれるため、以前のアシスタントより明らかに使いやすい。
OSはGoogle TV。ネット動画との親和性が高い設計で、当然Amazonプライム・ビデオやNetflix、YouTubeなどを再生可能
「テレビでもGemini」というキャッチフレーズで展開されている「Gemini for Google TV」にも対応。自然言語でコンテンツ検索などが可能で、応答もスムーズだった
ただ、試したかぎり、地デジの番組表や放送中の番組を探すといったテレビ放送系のリクエストはヒットしない。基本的にはネット動画やネット検索向け。それ以外の一般的な会話も一応こなす、という位置付けだ。
リモコンにはネット動画にアクセスできるダイレクトボタンも多数搭載。特に、ひとつだけ離れた位置にTVerボタンがあるところがユニーク。
ここで、まずは「BRAVIA 9 II」の電源を入れる前にわかる、驚きのポイントも紹介しておこう。画面の映り込みの少なさだ。新開発の低反射技術「Immersive Black Screen Pro」により、照明のついたリビングで真っ黒な画面を正面から見ても、自分の姿がほとんど映らない。単に反射光量を減らすだけでなく、映り込んだ像そのものをぼかしているため、輪郭として認識できるものが画面上に残らないのだ。マットな板に光が吸い込まれているような感覚だった。
まっ黒な画面の正面にいても、視聴者の姿がほぼ映り込まない。あえて赤色の服で立ってみたが、目視でもわからないほどの映り込みの少なさだった
ここからは「K-65XR90M2」の画質を見ていこう。まずは映像モードを「スタンダード」として、照明をつけたリビングで地デジ放送から見始める。ひと目見た印象は「地デジからキレイ」だ。
身構えてしまうような派手さはなく、むしろソニーらしい質感重視のまとめ方。広色域を持て余して全体を濃く塗るのではなく、必要な部分だけ色域を広げ、色の「深み」として見せる。同時に要所のバランスが崩れないこともポイント。白はしっかりと白だし、スタジオ出演者の肌の色にも違和感がない。
解像感とノイズ処理も素直だ。地デジ特有のモスキートノイズなどをよく抑えるが、全体としてマットな質感も残す。そして改めて感心させられるのが、発表時から話題になっていた映り込み低減だ。このマットな表面処理が、地デジ映像の「しっとり感」にもつながっているように思える。
画面の2m以内まで近づくと人物の肌などディテールがやや弱く感じられる場面もあったが、トータルで見れば地デジも十分にキレイで、実用上の不満はない。解像感志向の“画作り”とは異なるため、本機(65V型モデル)で地デジを見るならば、2.5m前後まで離れるのがよいだろう。
YouTubeチャンネル「カカクTV by 価格ドットコム」からコンテンツを再生
動きの表現も自然で、倍速駆動パネルと「XRモーションクラリティー」による処理は、スポーツ中継のパン(横移動)でも動きが安定している。テレビ番組内のCGやアニメーションなどもクリアになるので、この映像補間処理が生きるシーンは多い。
なお、地デジを明るさ「最大」の設定(デフォルト値)で表示すると、画面全体が明るく、正直なところ若干まぶしい。設定内に「省電力設定」もあるので、一度実力を確認したら、「省電力設定」を使うか、明るさを手動で下げて見るのが正解だ。
こちらもリビングの照明下で撮影したSDR素材のデモ映像。映り込みがないうえ、輝度表現もていねいだった
また、視野角について、ソニーはRGB mini LEDの採用でカラーフィルターへの依存が減り、視野角も広がると言及しているが……やはり液晶らしい角度への依存はある。VAパネルらしい挙動で、斜め横位置から見ると若干の色抜けがあり、特に明部が白く飛びがち。ただし、そこから先は大きく崩れないため、気になりにくいだろう。
続いて完全暗室での画質をチェック。Ultra HDブルーレイ「トップガン マーヴェリック」とHDRのテスト映像を用いて確認してみた。
暗室での画質チェックは「シネマ」モードで。名前のとおり、映画鑑賞に向いた落ち着いたバランスの設定だ
まずは「トップガン マーヴェリック」。「シネマ」モードを選ぶと、いかにも映画らしい抑えたバランスになる。チャプター2の屋外のシーンは色乗りがよく、階調のていねいさ、リアルさが好印象。派手さではなく色の正確性や安定した再現に振り切っている。ここがソニーのRGB mini LEDの使いこなしだ。
ジェットエンジンの排気や計器類といったピーク部分の表現は意外にも控えめ。とにかく派手さに振り切った機種ならジェットエンジンも白く輝くところだが、本機では炎の中の橙から白への階調を保つことを重視しているのだろう。暗いグラデーションが画面を占める場面でも、ほとんどバンディング(階調の段差)が見えなかったところも優秀だ。
HDRデモ映像の実写はこちら。ピーク輝度を誇示するのではなく、リソースを階調の再現性に振り分けていると言うべき画作りだった
ちなみに、SDR/HDR映像ともにピークの出方はカスタマイズ可能。ハイライトをより明るく出す方向に振ることもできる。ここは好みの問題もあるが、上げすぎると明るいシーンで単純にまぶしくなる。やはり、開発者がチューニングを重ねたデフォルトのバランスがよいと思う。まずは標準設定でしばらく見てから、物足りなければ少しずつ上げる、くらいの付き合い方がよいだろう。
「ピーク輝度」設定で、輝きを強めるようなカスタマイズも可能
ハロー(光漏れ)については、暗い背景に明るい被写体が浮かぶ場面でも、正面からの視聴では気にならない。もちろんこれには限界もあり、斜め上からのぞくように見えると、発光部分の周囲が白く浮かんで見える。そこまで求めるなら有機ELが有利、というのが正直なところだろう。
分光放射計によるピーク輝度と全白輝度の測定も実施
輝度性能の測定も実施してみた。機材は分光放射計のTOPCON「SR-3A」で、最大輝度を測る目的で白色をテスト。最大輝度を記録したのは、SDRでは、ダイナミックモードの面積比10%で3076cd/m2、全白(100%)で789cd/m2。HDRでは、ダイナミックモードの面積比10%で3334cd/m2、100%で830cd/m2だった。
音質についても紹介しよう。
スピーカーシステムは「Acoustic Multi-Audio+」。従来(「BRAVIA 9」シリーズで)は画面の下と上に分散していたスピーカーユニットが、画面裏の中ごろ横一列に配置されている。65V型の場合は8ユニット(フルレンジ×2、ツイーター×2、サブウーハー×2、ビームツイーター×2)が最大80W出力のアンプで駆動される。セットアップ時にはリモコン内蔵マイクを使った自動音場補正を実行できるので、まず実行しておきたい。
スピーカーユニットは画面裏横一列に配置されている。「高・中・低音域のスピーカーをすべて同じ高さに配置することで、定位感のある音に」なるとされている
このスピーカーシステムはとても完成度が高い。画面奥に立体的な空間が広く展開するタイプで、声の定位も明瞭。「トップガン マーヴェリック」での轟音の響きも心地よく、テレビ単体としては十分に高品位。いっぽうで、それ以上のサラウンド的な広がりや、ド派手な演出はない。視聴位置後方や高さ方向の包囲感まで求めるなら、サウンドバーとの組み合わせを検討したい。
RGB mini LEDバックライトを搭載した最新テレビと聞くと、圧倒的な色の濃さやまぶしいほどの輝度を誇示するような画質を想像するかもしれないが、本機の方向性はむしろ真逆。落ち着いた、堅実な画作りだと言える。高性能バックライトで得たリソースの余裕を、色の深みと階調の再現性に振り分けて画質を高め、さらには映り込みを抑えて画質を高めるための視聴環境にも配慮している。このアプローチはかなりユニークだ。
高画質マニアならば、暗室での漆黒の再現性や斜め視聴時の見え方を考慮して有機ELという選択肢はありうるだろう。しかし、明るいリビングで映える絶対的な高輝度、そして映り込みの少なさは、「BRAVIA 9 II」シリーズの優位点と言える。安心して買える最上位テレビが欲しい人に、素直に推せる画質・音質・機能が充実したRGB mini LED液晶テレビだ。