リファレンスデザインのRadeon R9 Nanoビデオカードと、ライバルと目されるショート基板タイプのGeForce GTX 970を使用して、実際のパフォーマンスを見ていこう。なお、Radeon R9 Fury Xの結果も合わせて掲載するが、こちらのデータは以前掲載したものから引用している(ハード・OSの構成は同じ)。
検証用PC環境の構成表と使用したビデオカード
左:Radeon R9 Nanoビデオカード、右:ASUSのGeForce GTX 970ビデオカード「GTX970-DCMOC-4GD5」(長さ170mm)
グラフ1「3DMark FIRE STRIKE ULTRA & FIRE STRIKE EXTREME」
グラフ2「3DMark FIRE STRIKE & SKYDIVER」
それではベンチマーク結果をみていこう。まずは定番ベンチマーク「3DMark」の結果から。「Fire Strike Ultra」(解像度4K UHD)と「Fire Strike Extreme」(解像度WQHD)の結果をまとめたのがグラフ1だ。やはり解像度の高いモードでは、Fijiコアを採用したビデオカードが優勢だ。解像度がWQHDを超えてくると、その差が開く傾向になっている。特に、Ultraでの総合スコアは、GTX 970が2549ポイント、R9 Nanoが3384ポイント、R9 Fury Xが3954ポイントと、GTX 970に比べてR9 Nanoは30%以上スコアを伸ばしている。逆にFury Xと比べてみると、多少スコアは落ちるものの、その差は10%程度といったところで、Typical Board Powerが低いことを考えれば、スコアは良好といった印象だ。
また、Fire Strike(フルHD)とSky Diverの結果をみても、スコアが高い順に、R9 Fury X、R9 Nano、GTX 970となった。先述のUltraやExtremeと比べれば大きな差はないが、順当なスコアを示している。
グラフ3「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(Direct X 11)」
グラフ4「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(Direct X 9)」
グラフ5「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(FPS)」
次に、「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」のベンチマークでは、Direct X11とDirect X9それぞれのモードにして、解像度をフルHDとWQHDで実施。計測時のプリセットは最高品質にしている。グラフ3はDirect X11、グラフ4はDirect X9の結果となっている。グラフ5は、グラフ3とグラフ4で計測したときの平均フレームレート(単位:FPS)をまとめたものだ。グラフ3から見ていくと、解像度がフルHDのときのGTX 970(スコア11025)とR9 Nano(スコア11362)のスコアに大きな差はなかったが、解像度がWQHDになると、GTX 970が6702なのに対し、R9 Nanoは7809で、16%ほど上回った。グラフ4のDirect X9でもほぼ同様の結果となっている。なお、FPSに関しては、WQHDのときはGTX 970が51.5fps、R9 Nanoが60.5fps、R9 Fury Xが67.5fpsとなっており、R9 Nanoはギリギリ60fpsを超えた。
グラフ6「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」
グラフ7「MHFベンチマーク【大討伐】」
グラフ6の「MHFベンチマーク【大討伐】」では、GTX 970に比べて、フルHD時に10%、WQHD時に20%ほど上回った。また、Fury Xは、R9 Nanoから10〜13%ほど高いスコアになっており、こちらもこれまでと同じような傾向になった。なお、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」(PSO2)では、GTX 970が優勢で、R9 NanoとR9 Fury Xの違いは、10(フルHD時)〜14%(WQHD時)となった。
グラフ8「システムの消費電力」
最後に消費電力についてみていきたい。なお、OS(アイドル)は起動後20分間の平均で、そのほかの、Fire Strike(無印/Extreme/Ultra)、FFベンチ、MHFベンチ、PSO2ベンチ、はいずれも計測中の最大消費電力となっている。計測には「Watts Up? Pro」を用いた。
OSアイドル時は63〜65Wと横並び。今回テストで用いたゲーム系ベンチマークソフトでは、R9 NanoがGTX 970より平均35W(±10W)ほど高くなっているが、その分スコアも上昇している。
ピーク時の消費電力でそこ
まで差がでなかったFFベンチ(解像度:WQHD、Direct X11)を見比べてみると、その違いがわかりやすい。R9 Nanoが272Wであるのに対し、GTX 970は247W。その差は25WでGTX 970比で10%ほど高い数値になっている。しかし、このときの平均フレームレートは、R9 Nanoが60.5fps、GTX 970が51.5fpsと、GTX 970比で17%も上回っているのだ。最大消費電力は高かったが、その分、フレームレートも高くなっている。
ただ、必ずしもワットパフォーマンスがよいとは言えないシーンもあった。それが、FFベンチの解像度をフルHDにしてDirect X11で動かしたときだ。そのときのスコアは、R9 Nanoが11362ポイントで、GTX 970が10976ポイントと3%とわずかに高い程度(平均フレームレートも同じで、前者が87.8fps、後者が84.2と4%の違いしかない)だが、最大消費電力は、GTX 970が234Wであるのに対し、R9 Nanoのほうは278Wと、44W(GTX 970比で18%)も異なる。FFベンチの解像度をフルHDにしてDirect X11で動作させたときのワットパフォーマンスは、あまり高くない印象だ。
以上、R9 Nanoビデオカードの性能をチェックしてみた。同じFijiコアを採用するFury Xに比べると、さすがにパフォーマンスは10%前後落ちるものの、Fury Xに比べ最大消費電力は100Wほど低く抑えられているのに加え、基板長が160mmとかなりコンパクトな本体サイズも、R9 Nanoの大きな武器と言えるだろう。特に、解像度がWQHDを超えてくると、その強みとパフォーマンスが際立ってくる。
日本での店頭価格は、約11万円で、R9 Fury Xとほぼ同じ。価格だけ見れば高いことは確かだが、ワットあたりのパフォーマンスや本体サイズなどを考えれば、つりあいのとれた価格だと思える。現時点でFijiコアを採用する製品の中では、もっともトータルバランスにすぐれたモデルではないだろうか。また、今後はビデオカードベンダーからオリジナルモデルも登場する予定となっている。
2スロット占有型のビデオカードが入る、コンパクトなMini-ITXケースで、パワフルなPCを組むときに、パフォーマンスと消費電力を両立させたいユーザーなら、候補に入れておきたい一品だ。