アップルが2015年9月16日(米国時間、日本時間17日)に公開した「iPhone」や「iPad」向けの最新OS「iOS 9」。今月25日に発売される「iPhone 6s/6s Plus」に搭載されるだけでなく、発売済みのiPhoneやiPadにもインストールできる。アップデートは無料。iPhoneやiPad単体でファイルをダウンロードしてアップデートできるほか、Macやパソコンの「iTunes」を経由してアップデートすることも可能だ。世代を重ねるごとに、さまざまな機能が追加されてきたiOSだが、最新のiOS 9はどこが新しくなったのだろうか。主な新機能を紹介したい。
なお、iOS 9を利用できるのは、iPhone 4s/5/5c/5s/6/6 Plus/6s/6s Plus、iPad 2、iPad(第3世代)、iPad(第4世代)、iPad Air/Air 2、iPad Pro、iPad mini/mini 2/mini 3/mini 4、iPod touch(第5世代)、iPod touch(第6世代)。2011年発売のiPhone 4sなど、古いモデルでもiOS 9は利用できる。
iOS 9はアップデートするためのファイル容量が少ないのも特徴だ。容量は1.2GBで、アップデートのためにストレージの空き容量を増やす手間がかからない。小さなことだが、ダウンロード時間の短縮にもなり、ユーザーにとってはありがたい
iOS 9では、いくつかの純正アプリが大きく機能強化された。その一例が「メモ」アプリだ。テキストだけでなく、写真や地図、ホームページのリンクなどが加えられるようになり、手書きにも対応するなど、多機能なメモアプリに進化している。添付したファイルを一覧できる機能があり、後から見直す際に必要な情報を見つけやすいのも便利だ。メモは「iCloud」と連携し、iPad(iOS 9で対応)やMac(OS X ElCapitanで対応)でも見られる。
ホームページのリンクや写真、チェックリストなどを追加できるようになったメモアプリ(左)。「Safari」の共有ボタンをタップするとメモの項目が追加されており、ここからメモを作成したり、既存のメモに追加したりできる(右)
地図アプリの「マップ」には交通機関の情報が追加され、地下鉄や電車を利用した経路案内が可能になったが、利用できるのは北米の一部の都市とメキシコシティ(メキシコ)、ロンドン(英国)、中国だけで、残念ながら日本では利用できない。
新しいアプリとしては「iCloud Drive」が追加された。iCloud Driveは、ファイルをクラウドに保存して、ほかのデバイスと共有できる機能だ。以前から存在していたが、ファイルごとに管理はできず、「Pages」や「Keynote」などアプリごとで管理していた。iOS 9では閲覧用のアプリが追加され、ファイルごとに管理できるようになった。初期設定では表示されていないが、「設定」→「iCloud」→「iCloud Drive」で、「ホーム画面に表示」をオンにすると表示される。
なお、WWDC2015にて発表された純正のニュース閲覧アプリ「News」は日本では提供されていない。
iCloud Driveを表示するには、「設定」→「iCloud」→「iCloud Drive」で、「ホーム画面に表示」をオンにする(左)。iCloud Driveは、iPhoneでは見慣れないフォルダでファイルを管理する(右)
iPad限定の新機能が「マルチタスキング」だ。2つの作業を同時にこなせる機能で、作業効率を高める機能と言える。マルチタスキングには、「Slide Over」「Split View」「ピクチャ・イン・ピクチャ」の3つの機能があるが、注意点は利用できるiPadが比較的新しいモデルに限定されていること。Slide Overとピクチャ・イン・ピクチャはiPad Pro、iPad Air/Air 2、iPad mini 2/mini 3/mini 4でしか利用できない。Split ViewはiPad Pro、iPad Air 2、iPad mini 4でしか利用できない。筆者の手元にある第3世代のiPad では残念ながら、どの機能も使えなかった。
Slide Overは、右端から左にスワイプすると画面の右端に別のアプリが起動し、操作できるというものだ。ホームボタンを押してアプリを切り替える必要がなくなるのがポイント。たとえば、Safariでインターネットを閲覧しながら、Slide Overでカレンダーアプリを立ち上げて、スケジュールを確認したり、予定を追加したりできる。Split Viewは、Slide Overを発展させた機能で、2つのアプリをアクティブな状態で同時に開ける。ピクチャ・イン・ピクチャは、ビデオを小画面で表示できる機能だ。「FaceTime」やビデオなどを小画面で表示しながら、メールを書いたり、調べ物をしたりできる。
残念ながら、今回はマルチタスキングを試せていないが、対応端末を入手できたら、その使い勝手を改めて報告したい。
Slide Over(アップルのホームページより)
ユーザーインターフェイス(UI)は「iOS 8」からほとんど変わっていない。システムフォントが追加され、微妙に文字のデザインが変わっているがほとんどの人は気付かないだろう。大きく変わったのはホームボタンを2度押すと表示されるマルチタスク画面。起動中のアプリがより大きく表示されるようになった。また、iOS 8ではよく連絡をとる人が表示されていたが、iOS 9では表示されなくなっている。
細かい点だが、アプリから別アプリに遷移した際に、画面の左上に「○○に戻る」という表示が加わった。この文字をタップすると1つ前に利用していたアプリに戻れる。ちょうどAndroidの「戻る」ボタンと同じような使い方ができるのだ。
iOS 9のマルチタスク画面(左)。「Spotlight」でメモを検索した結果のページ(右)。左上の「検索に戻る」をタップするとSpotlightの検索結果ページに戻れる
検索機能も着実に強化されている。特に「Siri」を使った音声での検索機能が充実した。たとえば、「静岡で撮影した写真を見せて」と言うと、日付、撮影地、アルバムのタイトルをもとに、静岡で撮影した写真が表示される。「去年、静岡で撮影した写真」と言うと、去年の写真が表示されるなど、絞り込みも可能だ。スポーツの試合結果や天気、計算なども音声で調べられる。検索範囲も広がっており、スポーツでは日本のプロ野球の試合結果も調べられるようになった。検索をベースにした先読み機能にも注目したい。ホーム画面で下にスワイプすると表示される「Spotlight」には、よく電話をかける人や、その場所に関連するニュース、時間帯でよく使うアプリなどが表示される。ポイントは、キーワードを入力しなくても表示される点だ。利用履歴や時間、場所に応じて必要な情報を賢くレコメンドしてくれる。使い始めたばかりで、その便利さは未知数だが、iOS 9ではSpotlightを使う機会が増えそうだ。
このほか、iOS 9ではバッテリー駆動時間も伸びている。環境光センサーと近接センサーにより、画面を下にしてテーブルに置くとiPhoneがそれを認識して、通知を受け取っても画面がオンにならないようにするなど、細かな省エネ機能の積み重ねによって、1時間長く使えるという。特に古いiPhoneを使っている人にとって、バッテリーが長持ちするのはありがたいのではないだろうか。さらに、一部のAndroidスマートフォンに搭載されているような「低電力モード」も搭載された。このモードを有効にすると、消費電力を抑えるために、画面の明るさが少しだけ暗くなり、アプリのバックグラウンド更新や自動ダウンロードなどがオフになる。低電力モードにしても、動作の軽快さには大きな変化はないように感じた。
ホーム画面を下にスワイプすると表示されるSpotlight。新たに一番左のホーム画面を右にスワイプしても表示されるようになった。検索ボックスに文字を入れなくても、よく連絡をとる人や、その時間帯でよく使うアプリなどが表示される。ニュースもその場所に関するものが表示される(左)。日本のプロ野球の試合結果も調べられるようになった(右)
「設定」→「バッテリー」から、「低電力モード」のオン・オフが可能。バッテリーの使用状況も確認できる
最後にiOS 9にアップデートする際の注意点を抑えておこう。まずはデータのバックアップは忘れずにしておこう。次によく利用するアプリの対応状況を確認したい。主要なアプリは対応しているが、ゲームなどの一部アプリでは、アップデートすると強制終了するなどの問題が発生している。
また、MVNOのSIMカードを利用
している人もMVNOの対応状況を確認してからアップデートするようにしよう。「IIJmio」を提供するインターネットイニシアティブでは、新しいAPN構成プロファイルがインストールされていればiOS 9で動作するが、古いプロファイルをインストールした状態でiOS 9にアップデートすると3G/LTE通信ができなくなるという(Wi-Fiはつながるので、プロファイルをインストールし直せば解決できる)。ニフティの「NifMO」も「iOS 9用APN構成プロファイル」のダウンロードが必要だ。
筆者は、iPhone 6 PlusでiOS 9を試しているが、旧OSのiOS 8に比べて遅くなった感はなく、快適に動作している。動作も安定している。「Facebook」「Dropbox」「Chrome」「Office」(Excel、Word、PowerPointなど)など、よく利用するものはすでにiOS 9に対応している。アップデートはされていないが、「LINE」や「Google Maps」といった定番アプリも問題なく使える。焦ってアップデートする必要はないが、よく使うアプリが対応していれば、早めのアップデートを検討してもいいだろう。