「iPhone SE」
2016年3月22日(日本時間)未明に、アップルから発表された新型スマートフォン「iPhone SE」。「iPhone 5」シリーズと同じ4インチ液晶のスクエアボディに、最新モデル「iPhone 6s」並みのハードウェアを内蔵させた、いわば「小さな巨人」的なモデルと言える。明日、3月31日に発売となる本製品だが、製品発表から約1週間、ユーザーはどういった反応を示したのだろうか。「価格.comトレンドサーチ」のデータから検証する。
図1:「スマートフォン」カテゴリーのアクセス数推移(過去6か月)
まずは、今回の「iPhone SE」が、スマートフォン市場全体に与えたインパクトを見てみよう。図1は、過去6か月における「スマートフォン」カテゴリーのアクセス数の推移を示したのものだが、この半年間、「スマートフォン」カテゴリーの総アクセス数はゆるやかな右肩下がりとなっており、「iPhone SE」が発表された3月22日の段階でも、多少アクセス数がアップしてはいるものの、全体的な漸減傾向は変わっていない。つまり、スマートフォン市場全体における「iPhone SE」の登場インパクトはさほどのものではないということができる。
図2:「スマートフォン」カテゴリーにおける主要メーカー別アクセス数推移(過去3か月)
では、メーカー別に見た場合の「iPhone SE」のインパクトはどうだったか。図2は、過去3か月の「スマートフォン」カテゴリーにおける主要5メーカー別アクセス数の推移を推移を示したもの。これを見ると、2016年初頭の段階では、「Xperia」シリーズが好調のソニーがトップを走っており、他のメーカーと大きな差をつけていたが、徐々にその人気が下がってきていることがわかる。2月下旬には、「GR5」が好調な人気を博しているHuaweiに迫られるが、その後も、ソニーが首位を守り続けている状況だった。しかし、3月22日の「iPhone SE」の発表によって、それまで3〜4位の間を漂っていたアップルのアクセス数が2倍以上に伸び、一時的に首位のソニーを抜き去る場面も見られた。しかし、その伸びも1日程度で、再びソニーが首位に返り咲き、アップルは2位に留まるという状況となっている。明日3月31日の発売日以降に伸びる可能性はあるが、現状では、首位のソニーを覆すほどのインパクトとはなっていない。
図3:「iPhone SE」と「iPhone 6s」とのアクセス数比較(過去6か月)
図3は、今から約半年前の2015年9月25日に発売されたアップルの「iPhone 6s」シリーズ2モデルと、今回発売される「iPhone SE」シリーズ3モデルとのアクセス数比較だ。まだ初速1週間の状況ではあるが、その数値で比べると、今回の「iPhone SE」の注目度は、半年前の「iPhone 6s」の注目度のほぼ半分程度と見ることができる。確かに、今回の「iPhone SE」に関しては、「iPhone 6s」の小型版という位置づけであるため、機能的なサプライズはない。そうした目新しさのなさが、最新機能を備えて登場した「iPhone 6s」に比べると、注目度にマイナスに働いたものと考えられる。
図4:「iPhone SE」と「iPhone 6s」とのクチコミ数比較(過去6か月)
クチコミの数も同様だ。図4は、「iPhone 6s」シリーズ2モデルと、「iPhone SE」シリーズ3モデルとのクチコミ数比較だが、こちらも「iPhone SE」のほうが、「iPhone 6s」の発売時の約半数〜2/3程度にとどまっている。なお、クチコミの話題の中心は、端末の機能に関するものではなく、契約方法、特にSIMフリーモデルで使えるSIMカードに関するものがほとんどだ。これについては後述する。
図5:「iPhone SE」シリーズ人気5モデルのアクセス数比較(過去1か月)
では、今回発売となる「iPhone SE」シリーズの中では、どんなモデルが注目されているのだろうか。図5は「iPhone SE」シリーズの中で人気の5モデルのアクセス数推移を示したものだ。これを見るとわかるように、今回発売されるモデルの中では、圧倒的にSIMフリーモデルの人気が高い。1番人気は、SIMフリーの16GBモデル、2番がSIMフリーの64GBモデルで、3位にようやくNTTドコモの16GBモデルが来るという具合だ。3月29日時点でのアクセス数を比較すると、1位のSIMフリー16GBモデルと、3位のNTTドコモ16GBモデルとでは、実に3倍もの開きがあり、その差は歴然としている。なお、国内で「iPhone」シリーズをいち早く展開してきたソフトバンクの名前は、すでに上位には見ることができない。
上記の図4で見たクチコミの内容でも、SIMフリーモデルで使えるSIMカードに関する情報のやり取りがメインになっており、逆にNTTドコモなどのキャリア版モデルでは、価格情報(3月25日まで発表されなかった)についての情報のやり取りが活発化していた。こうした状況からも、今回の「iPhone SE」に関しては、これまでのような通信キャリアモデル中心の販売ではなく、アップルが直接販売するSIMフリーモデルが販売の中心になっていきそうな気配すら漂わせている。
図6:「スマートフォン」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス比較(過去3か月)
図6は、「スマートフォン」カテゴリーにおける人気5製品のアクセス推移を示したものだ。約1週間前に発表されたばかりの「iPhone SE」シリーズでは、上記のSIMフリーモデル・2機種がベスト5内にランクインしているが(3月30日時点で、SIMフリー16GBモデルが2位、SIMフリー64GBモデルが3位)、現在1か月以上も首位をキープしているHuawei「GR5」の人気は超えられていない。また、ひと足早く3月2日に発表され、中旬より発売されているASUS「ZenFone Max」の人気も高まってきており、「iPhone SE」からすると決して楽観視はできない状況にある。驚くべきは、これらベスト5製品がすべてSIMフリーモデルであるという点。すでにSIMフリー化が本格化していたAndroid勢はもとより、iPhoneにもいよいよSIMフリー化の波が本格的に訪れたといってよさそうだ。