アップル「iPad Pro 9.7インチ」
タブレット端末は、ここ数年の間にかなり激しい変遷をたどってきた。当初はアップルの「iPad」が人気を博す。その後、Androidタブレットが市場の主導権を握り、さらにはWindowsタブレットが隆盛してくるなど、3つの陣営がかなり激しいシェア争いを行ってきた。そして、ここへ来て、またさらなる変化が起こりつつある。それは、アップル「iPad」の人気復調のきざしだ。
図1:「タブレットPC」カテゴリーと「ノートパソコン」カテゴリーのアクセス数推移(過去2年間)
図1は、「価格.comトレンドサーチ」で見た、過去2年間における「タブレットPC」カテゴリーと「ノートパソコン」カテゴリーのアクセス数推移を示したもの。この2つのカテゴリーはここ数年ほぼ同じようなアクセス推移を示しており、消費者の側からすると、どちらもほぼ同一のカテゴリーとして認識されている。ノートパソコンもタブレットも、ここ数年はアクセスが漸減傾向にあるが、どちらかと言えば、タブレットのほうが下落幅は大きいと言える。特に昨年1年間は、タブレット市場では大きな盛り上がりがなく、カテゴリーとしてはやや厳しい状況が続いている。
図2:「タブレットPC」カテゴリーにおける主要メーカー5社別のアクセス数推移(過去6か月)
図2は、過去半年間における「タブレットPC」カテゴリー・主要メーカー5社別のアクセス数推移を示したもの。これを見ると、この半年で大きくアクセスを落としているのは、「ZenPad」で知られるASUSであることがわかる。それと入れ替わるように、3月以降首位に躍り出たのは「iPad」のアップル。さらに3位以下の、マイクロソフト、Lenovo、NECといったメーカーは、NECを除いて漸減している。
これを見てわかるのは、これまで一定の人気を保っていた低価格のAndroidタブレットが人気を失ってきていることと、マイクロソフトの「Surface」に代表されるWindowsタブレットもやはり人気を下げていることだ。逆に、これまで、これらAndroid、Windows勢に押されていた感のあるアップル「iPad」が、ここへ来て人気を回復しつつある。
図3:「タブレットPC」カテゴリーにおける売れ筋ランキングベスト5(2016年6月1日時点)
図3は、2016年6月1日時点での、「タブレットPC」カテゴリーにおける売れ筋ランキングベスト5である。何と1位、2位にアップル「iPad Air2」の容量別モデルが並び、4位にも「iPad Pro 9.7インチ 128GBモデル」がランクインするなど、5モデル中3モデルがアップル「iPad」製品で占められている。逆に、つい先頃までランキング上位をにぎわせていた、低価格Androidタブレットはすっかりなりを潜めてしまっている。こうした状況は、ここ1年ほどは見られなかったものであり、実際の売れ筋においても、アップル「iPad」の復調が見て取れる。
図4:「タブレットPC」カテゴリーにおける売れ筋ベスト5製品のランキング推移(過去6か月)
では、最近のアップル「iPad」の復調傾向は何が原因となっているのだろうか。図4は、過去6か月間における、「タブレットPC」カテゴリーの売れ筋ベスト5製品のランキング推移を示したものだ。これを見ると、ASUSの「Transbook T100HA」や「ZenPad 7.0」などは、比較的安定した人気を維持しているが、アップル「iPad」については、安定した人気を保っている「iPad Air2 Wi-Fiモデル 64GB」を除いて、3月以降にかなり激しい上昇を見せていることがわかる。
これは、3月22日に発表され、3月31日に発売が開始された「iPad Pro 9.7インチ」の影響だ。以前にもお伝えしたように、「iPad Pro 9.7インチ」の発売によって、スペックが近く安価な「iPad Air2」の人気までもが引き上げられたことによる。特に、低価格の「iPad Air2 Wi-Fiモデル 16GB」の人気が再燃したことが大きく影響している。
以前にお伝えした4月上旬段階では、「iPad Air2 Wi-Fiモデル 16GB」の人気はまだベスト10圏外といったところだったのだが、その後徐々に人気を上げ、今ではベスト5の常連になっている。これに加えて、新モデルの「iPad Pro 9.7インチ 128GBモデル」の人気も徐々に上がってきており、安定した人気の「iPad Air2 Wi-Fiモデル 64GB」を加えた3モデルが、売れ筋ランキングの上位に常に位置するという状況になったのである。なお、ベスト5圏外ではあるが、「iPad Pro 9.7インチ 32GBモデル」も、6月1日現在7位につけている。
図5:アップル「iPad」人気4モデルの最安価格推移(過去6か月)
図5は、過去6か月間における、アップル「iPad」シリーズの人気4モデルの最安価格推移を示したもの。3月31日に「iPad Pro 9.7インチ」が発売された段階では、その価格の高さゆえに、同サイズで価格の安い「iPad Air2」の人気が高まったわけだが、それから2か月経った今では、その価格差も若干縮まりつつある。2016年6月1日時点での「iPad Pro 9.7インチ」の最安価格は、128GBモデルが79,700円、32GBモデルが61,199円。これに対して、「iPad Air2」の最安価格は、64GBモデルが51,500円、16GBモデルが41,700円。価格差は依然としてあるものの、「iPad Pro 9.7インチ」の最安価格が128GBモデルで1万円近く下がっていることもあり、両者の間で購入を迷っていた人にとっては、「iPad Pro 9.7インチ」が買いやすい状況となりつつある。こうした状況で、「iPad Pro 9.7インチ」「iPad Air2」双方の人気が高まっているのが、今の「iPad」人気の復調につながっていると見ていいだろう。
図6:「タブレットPC」カテゴリーにおける売れ筋ベスト5製品のアクセス推移(過去6か月)
ただ、逆に見れば、これはAndroid勢、そしてWindows勢の人気後退による、相対的な「iPad」の人気浮上ともいえる。図6は、過去6か月間における、「タブレットPC」カテゴリーの売れ筋ベスト5製品のアクセス推移を示したものだが、売れ筋では「iPad」に交わされた感のある、ASUSの「Transbook T100HA」と「ZenPad 7.0」もアクセス数ではまだ依然として上にある。また、ここには掲載していないが、つい先日まで根強い人気を誇っていた、BLUEDOTの激安Andoridタブレット「BNT-71W」については、現在品切れとなっており、それでランキングから姿を消しているのだが、再入荷すればまたランキング上位に返り咲くということも十分にあり得る。これから7月にかけて、Androidタブレット、Windowsタブレットの新モデルが投入される可能性も高く、そうなると、再度人気ランキングの上位が変動する可能性も出てくる。この流れが、長らく続いているアップル「iPad」の本格的な人気復調につながるのか、今後も注意深く見守りたい。