先日、キノコ狩り仲間のススメで「フードドライヤー」という調理家電を購入しました。食品乾燥機、ドライフルーツメーカーとも呼ばれる道具です。当初の目的はもちろんキノコを干すためでしたが、どうせ買ったのだから、もっといろいろ干してみたいところ。とはいえ、野菜チップスやドライフルーツだと普通すぎます。
そこで、「酒に合いそうなオリジナルつまみ」をテーマに、干したらウマそうな食材を手あたり次第に乾燥させてみました。
これらを一気に干してみたいと思います
私が購入したのは、ROOMMATEのヘルシーフードドライヤーという商品です。お値段は5,000円ちょっとでした。
上部の透明ケースの中に並べた食べものを、指定した温度で乾燥できるという機械
さまざまなメーカーから発売されている中で、1〜12時間のタイマー付き、大容量5段トレイ(収納時にちょっとコンパクトになる)、35〜70℃の広い範囲で温度設定が可能ということで、この商品をセレクトしてみました。
透明ケースの内部にちょっとしたでっぱりがあり、ここにひっかけると高さがアップ
収納時から高さをアップさせた状態。ほら、少し背が伸びましたよね
温度は5℃刻みで35〜70℃、時間は1時間刻みで12時間まで設定可能
ビーフジャーキーにカラスミ、スルメに鮭とばなど、干して乾燥させたつまみはだいたいうまいですよね。水分が抜けて味が凝縮され、生の状態にはない味を引き出しています。ならば新たな乾物の魅力を探りたいと思うのは、人間としてとても自然な欲求です。
そこでフードドライヤーで新しいつまみを開発するにあたって、干したら絶対ウマいであろう鉄板食品から、干すとどうなるか想像がつかない勝負食品まで、幅広く揃えてみました。
ちなみにスーパーで「これを干したらうまいんじゃないか?」と考えながらする買い物が、最高に楽しかったことをお伝えしておきます。
さて、どれがおいしくなったでしょうか?
乾燥させる温度については、今回は刺身なども試すため(おすすめするものではなく、あくまで自分の好奇心を満たすための実験として)、生ぬるい温度で加熱するのは食中毒の可能性を高めるだけなので、最高温度である70℃で加熱しました。干した結果、もし腐敗の可能性が感じられた場合は(なかったけど)、もちろん食べません。
乾燥時間は食材の様子を見ながらやって、結果として6時間になりました。食材によっては乾燥前に下味をつけたり、薄切りにしています。
※使い始めはプラスチック臭のする場合があるので、使用前に透明ケースをよく洗って、クズ野菜などで試運転をするといいかもしれません。
5段いっぱいに食材を干してみました。赤い本体部分にヒーターがあるので、そこから近い下段のほうが乾燥しやすいかな
念のため温度を確認してみたところ、ちゃんと設定した70℃にほぼなっていました
それでは、以下、干す前と干した後のビフォーアフターを、どんどんと紹介していきましょう。
干すことで姿と味がどうなるか、ぜひ想像しながら読んでみてください。
まず一番下段に並べたのは、オーストラリア産牛モモ肉の薄切り。ビーフジャーキーをイメージして、ハーブソルトをたっぷりとまぶしました
カラカラのパキパキに乾燥。噛むと脂がじんわり溶けてきます。ビーフジャーキーというか宇宙食のしゃぶしゃぶっぽい(伝わりにくいたとえ)
塩紅鮭のスライス。これは間違いなくおいしくなるはず
ガチガチになるかと思いきや、ホロホロと崩れるソフトな鮭とば風食感に。ギュッとしまった塩っ辛さが最高。お茶漬けにしたらうまそうです
サーモンの刺身を醤油漬けにしてから干してみました
醤油味が全体になじんでおり、加熱と蒸発によってか生よりもうまみ成分を強く感じます
マグロの刺身も醤油漬けにしてから干してみましょう
サーモンに比べて圧倒的に硬い。透けるほどペラペラとなり、これぞマグロジャーキーという存在に
刺身の茹でだこはどうなるかな?
燻製くらいの硬さですが、余計な味がないのでタコのうまみをストレートに楽しめます
続いてはイカ刺し。これは冷凍のタルイカかな
スルメとは違う生干しの感覚がおもしろいイカジャーキーに。歯ごたえはいいけれど味がほぼしないので、味の強いスルメイカやヤリイカを使うか、下味をつけることでもっとおいしくなりそう
辛子明太子は丸ごと1本いってみましょう
適度に水分が抜けて、カラスミみたいにミッチリと詰まった感じに。大根の薄切りと一緒に食べたい
イカの塩辛も攻めてみよう
グミキャンディーだ、これ。味の濃縮度がすごい。市販品だとちょっと甘すぎるので、今度は手作りのしょっぱいやつでチャレンジしたいですね
そのまま食べることが多いカニカマ。元々は魚なので干してもうまいはず
想像以上に硬くなりましたが、でもこの硬さがうれしい。カニカマジャーキー、これは流行るな
茹でてあるベビーホタテはどうでしょう。貝柱なのでうまいはず
噛みごたえがプラスされて、市販の干し貝柱との中間みたいな存在に。下味をつけてから干したほうが酒のつまみには合うかな
一番安かった薄切りのベーコンも干してみます
パキっと割れそうなほど硬くなり、食べるプラスチックみたいな結果に……。もっと高級だったり、厚切りだったりすればうまいはず
ハムもやってみたのですが……
ベーコンと同じ結果に。厚切りハムで再実験しなくては
最上段は漬物で実験。岩下の新生姜はどうなるでしょう
ペラッペラになったけど、生姜感が強烈。あの味が3倍くらい濃くなっています。普通の新生姜では物足りないという人にオススメ
すでに一度干してあるたくあん。いぶりがっこみたいにならないかな
残念。冷蔵庫から出しっぱなしにして、ちょっと乾いちゃったくらいの微妙な変化
梅干しに変化は起きるでしょうか
味も見た目もほぼ変化なし。同じ写真でもバレないかも
フリーズドライや塩漬けおなじみのワカメ。これは茹でてあるやつ
ビニールかセロファンみたいな見た目に。口に入れて水分と触れた瞬間に戻るのがおもしろい。溶けないオブラートみたいです
ということでいろいろな食材を干して食べてみた結果、個人的な感想をまとめてみます。乾燥だけに!
一部干し忘れてしまった食材もあるのですが、今回干した中でベスト3を上げるとすれば、高級珍味っぽくなった明太子、目の覚める味の新生姜、元との硬さのギャップがすごいカニカマですかね。
そのほか、予想通りのおいしさだったのは、塩紅鮭、ベビーホタテ、タコ。
予想外の変化をしてくれたのは、塩辛、ワカメ、マグロ、サーモン。
下味や素材次第でもっとおいしくなりそうだったのは、牛肉、イカ刺し。
そして残念な結果だったのは、ハム、ベーコン、梅干し、たくあんといった加工品。よく考えれば当たり前ですが、すでに水分が抜けている食材は、あまり乾燥に向いていないようです。
塩気を自分で調節できるのがいいですね。日持ちはしなそうですが
この経験を踏まえたうえで、あれを試してみたいとか、もっと下味をこうしたほうがいいとか、次に向けての課題がたくさん出てきました。
そしてその前に、本来の使用目的である干し野菜やドライフルーツもどんどん試してみようかなという気も。この道具、便利ですね。
乾物がお好きな方は、フードドライヤーを導入すると日常がちょっと楽しくなると思いますよ。
食材採取と製麺が趣味のフリーライター。身近な動植物を捕って食べたり、家庭用製麺機でラーメンを作る日々。 著書「捕まえて、食べる」、同人誌「趣味の製麺」が発売中。
私的標本:https://blog.hyouhon.com 趣味の製麺:https://www.seimen.club