内釜に土鍋を採用したタイガー魔法瓶の圧力IH炊飯器「土鍋ご泡火炊き」シリーズの最上位グレードの新製品「JRXシリーズ」が登場。ラインアップは炊飯容量5.5合の「JRX-T100」と3.5合の「JRX-T060」の2機種で、IHコイルの構造を一新し、同社史上最高温度を実現したのが大きな進化点です。今回は、2023年7月21日に発売された新モデルの特徴を「JRX-T100」を中心に紹介するとともに、メディア向け体験会で試食したごはんの味もレポート!
市場想定価格は「土鍋ご泡火炊き JRX-T100」が148,500円前後(税込)で、「土鍋ご泡火炊き JRX-T060」が137,500円前後(税込)。両モデルにコスモブラックとムーンホワイトの2色を用意。各色の内側が「JRX-T100」です
外観デザインは前モデルとほぼ同じですが、炊飯器の状態を知らせる「エモーショナルランプ」を搭載。炊飯中は赤色、保温中は橙色、予約時は緑色に点灯します
IH炊飯器は、IHコイルに電流を流すと発生する磁力線が内釜の金属部を通過するときにうず電流を発生させ、その際に生じる電気抵抗で内釜自体が発熱します。ゆえに、IHコイル部はIH炊飯器において心臓部とも言える重要な部分。IHコイルの量や巻きつけ方が変わると熱量や熱の伝わり方も変わります。そのコアな部分を、「JRX-T100/T060」は一新。従来モデルのIHコイル部には底面と側面の間にIHコイルのない部分がありましたが、そこにもIHコイルを巻きつけて内釜を包み込むように配置することで、IHコイルの表面積が従来モデルと比べ約160%アップしました。さらに、IH中央部のコイルを2層にし、内釜底面の発熱体の銀含有量も増やして発熱パワーをアップ。この「300℃ WレイヤーIH」構造と蓄熱性にすぐれる内釜「本土鍋」の相乗効果で、炊飯時の最高温度はタイガー史上最高の約300度を実現。また、この新しい構造を採用したことで、土鍋を直火で炊くような炎の温度差も再現できたそう。激しい沸騰と最高約300度での炊き上げ、土鍋の遠赤効果による輻射熱などを組み合わせた新しい炊き技「ご泡火(ほうび)炊き」で、甘みと香り、旨みを引き出したごはんを炊き上げます。
写真ではわかりませんが、新モデルは中央のIHコイルが2層になっています。そして、底面と側面のIHコイルの間にあった隙間にもIHコイルをシームレスに配置
IHコイルの巻きつけ方も変更されています。これまでは保護枠(黒い枠)とIHコイルを組み合わせていましたが、新モデルでは、保護枠に溝を施し、IHコイルを直接巻きつける方法を採用。底部分と一体化させることでより緻密な温度制御ができるようになったそう。メーカーの担当者によると、この巻き方にたどり着くまで3〜4年の研究期間を要したといいます
三重県四日市市の「四日市萬古焼」を使用した内釜「本土鍋」の底面には、IHに反応するように特殊コーティングを施しています。新モデルは、そこに練り込む銀の量を約14%増やし、加熱量をアップ
金属釜と比べ約4倍の遠赤効果を持つのも「本土鍋」の特徴
ただ、激しい対流で炊き上げるとお米同士がぶつかり合って表面が傷つき、べちゃついた食感になったりや、デンプンが流出して旨みが損なわれたりする可能性があります。しかし、土鍋を採用した「本土鍋」は泡がクッションとなり、お米一粒一粒をガード。一般的な金属釜の場合、釜の側面に沿って泡が発生しますが、「本土鍋」は垂直に上がった細かい泡がお米の間を通過するため、お米同士がぶつかりにくくなるのです。お米を傷つけることなく炊き上げることで、ハリとツヤのある粒立ちのいいごはんが炊き上がるそう。
細かい泡で米を包み込み、表面を傷つけずに炊き上げられるのも土鍋ならでは
炊き上がったごはんは、見るからにハリとツヤがあります
試食してみると、ふっくらとして粒立ちがよく、それでいて甘みも感じます
前モデルにも米の銘柄に合わせて炊き方を調整する「70種類の銘柄巧み炊きわけ」機能を搭載していましたが、新モデルはさらに炊き分け機能が充実しました。同じ銘柄でも育った地域によって個性が異なるため、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄という6地域2ブランドのコシヒカリを炊き分ける「産地炊き」機能を追加。さらに、IoT機能を搭載したことで、スマートフォンのアプリを使い、新たに発売されたブランド米に対応した炊飯プログラムをダウンロードしたり、新米の季節(毎年9月ごろ〜翌年1月ごろまで)には、水分量の多い新米に合わせた炊飯プログラムを使用したりできるようになりました。
コシヒカリに限定された炊き分け機能ですが、「産地炊き」を使えば、その地域で作られたコシヒカリの個性を引き出す最適な炊き方が実行されます
体験会では、「産地炊き」機能を使って炊き分けた3地域のコシヒカリを試食しました。
左から、山形県遠藤農場の「遠藤五一コシヒカリ」、石川県の「えちゃけなコシヒカリ」、佐賀県唐津市の「天川コシヒカリ」です
「遠藤五一 コシヒカリ」は粒立ちと香りのよい炊き上がりで、お米の甘みをしっかり感じるため煮魚など濃い味のおかずにも負けない味わい。「えちゃけなコシヒカリ」はふわふわとしたやわらかめの食感で、「天川コシヒカリ」は一粒一粒をしっかり感じる食感でした。同じコシヒカリでも、このように個性は大きく異なります。水量などを変えず、それぞれの個性を最大限に楽しめるのが「産地炊き」機能の魅力。
このほか、外出先からの予約時間の変更や、遠方に住む家族の炊飯器として登録することで利用状況の通知が届く「見守り機能」など、便利なアプリ連携機能もいろいろ用意されています。
家電流通専門誌で白物家電と家電量販店と流通に関する取材・執筆・編集を担当。趣味は料理、旅行、舞台鑑賞、米国ドラマ視聴など。クラシック音楽の”現代音楽ファン”というと変人扱いされることが悩み。