家電は誰の生活にも、ヲタクのシングルライフにも必須なもの。しかし同じ家電でもファミリー層とシングルヲタク層ではなにを基準にどんな製品を選ぶべきかは全然違います。我らに必要なのはハッピーファミリー目線の家電情報ではない!
というわけでシングルライフに役立つ家電情報をヲタク目線でお届けする連載「ヲタ家電!」。今回の推し家電はリズムから登場のサーキュレーター「Silky Wind Circulator」です。ハンディファンのヒットでついにその名を世に知らしめた実力派メーカー、リズム。その技術力と「ユーザーの望みをわかってくれてる!」とうれしくなる使いやすさをこのサーキュレーターも備えています。
登場当初は怪訝な目で見られたものの今やすっかり夏の光景の一部になってきたモバイルファン。そのジャンルのヒット製品のひとつがリズムの「Silky Wind Mobile」シリーズです。
看板製品の「Silky Wind Mobile」は、カラビナ&角度調整機構が特徴
リズム株式会社は、旧社名リズム時計工業株式会社からもわかるように、元々は時計メーカーでした。それが近年になって送風家電や加湿器、スマホ防水ケースなどにも進出するとそちらも好評。なかでも「Silky Wind Mobile」は看板製品と言えます。
カラビナと角度調整機構を一体化した本体にネックストラップも標準付属で持ち運びやすく使いやすい。弱運転なら日中ずっと使えるバッテリー駆動時間に、看板技術「2重反転ファン」による十分な最大風量。当初からUSB-C採用だったのもポイントでした。
そしてこのシリーズ、上記の基本要素のおかげで当初から使いやすかったのですが、最新世代「Silky Wind Mobile 3.1」はさらに使いやすくなっています。「電源オンはボタン長押し操作必須に」「USB PD充電器にも対応」という改良が行われたのです!
とか言われても「ほんの細かな改良にすぎないのでは?」と困惑したかもしれません。でもシリーズの既存ユーザーからすると「それを待っていた!」という改良点。
筆者も旧モデルを愛用していたのですが、満足度の高いそれへのわずかな不満こそ、「持ち歩いてたらボタンがなにかにぶつかったらしく電源が勝手にオンになっていてバッテリーが減っていた」「手持ちの充電器の一部で充電できない」でした。そのわずかな不満を最新モデルは的確に潰してくれたのです。
このメーカーにはユーザーの声が届いてる! このメーカーはわかってくれる! そう感じさせてくれるアップデートだったというわけですね。
その「俺たちのリズム」からサーキュレーター登場となれば注目しないわけにはいきません。期待があるからこその不安も少しありつつその新製品「Silky Wind Circulator」の実機を確かめてみると……
期待を超える満足度でした!
2重反転ファン故のやや縦長なフォルムも大砲感を醸し出してくれてよき
ここからは、
1)抜群のお掃除のしやすさ:とにかく手間を減らせる設計
2)納得の基本性能:コンパクト&高機能
3)幅広い風量と運転音:用途や環境に合わせた最適解を選べる
4)強いて言えばの弱点:リモコンなしは不便な場合も
の流れでその魅力や注目ポイントを紹介していきます。
基本スペックや機能の話をすっ飛ばしていきなりここから紹介しちゃいますが、この「Silky Wind Circulator」というサーキュレーター、最大の推しポイントはズバリ「抜群のお掃除のしやすさ」です。
サーキュレーターや扇風機などの送風家電って、背面から空気を取り込んで正面に送り出す仕組みから、特に前後のファンガードのグリルにホコリが吹き付けられて付着して溜まりやすいですよね。それをちょくちょく小掃除しなければならないのは送風家電全般での面倒さ。しかも「たまにはグリルだけじゃなくファンも細部も徹底的に大掃除してやるぜ!」とかせっかくやる気を出しても、狭い場所に手やブラシが届かなくてあんまりすっきりできなかったりもします。
ファンガードにホコリがぶつかってくっついて溜まり、それが積み重ねってどんどん汚れていってしまいます……
つまり送風家電に求められるお掃除のしやすさとは、
●ささっと小掃除できるから面倒じゃない
●しっかり大掃除できるからすっきりできる
です。「Silky Wind Circulator」はまさにその両方をクリアしています。
まず「ささっと小掃除できるから面倒じゃない」は、見た目もスマートな「一方向スリットデザイン」によって実現されています。
前面ガードも背面ガードも一方向スリットです
一般的な放射状のグリルは、その放射に沿ってさまざまな方向にブラッシングしないとホコリを落とせません。→↘↓↙←↖↑↗みたいな感じです。文字面的にはもうコマ投げです。おザンギですわーッ!
ブラッシング方向をグリルの放射方向にいちいち合わせていかないとダメ
対して一方向スリットなら一方向の往復を繰り返すだけで小掃除完了。←→←→←みたいな感じです。
一方向スリットなら←→の動きをずらしていくだけでOK
これ実は単にアイデアの勝利というだけの話ではありません。一般的なサーキュレーターのグリルは風の流れを制御する役割を担っていて、その機能を満たすために放射状にデザインされているとのこと。ですから「掃除しにくいから放射状やーめぴ!」というわけにはいきません。
対して「Silky Wind Circulator」は、風の制御は2重反転ファン部分でほぼ完結。おかげでグリルは比較的自由にデザインでき、お掃除のしやすさ重視の一方向スリットデザインもすんなり採用できたというわけです。2重反転ファン、有能すぎ!
さらには長期テストにおいては、「放射状グリルの中心付近のようにスリットが狭く密になる部分がないため、一方向スリットはそもそもホコリが付着しにくい」というメリットも発見されたとのこと。ホコリを落としやすいうえにそもそもホコリが付きにくいって最高かよ!
ちなみに、ここまでの写真で使用しているブラシは純正オプションの「こそうじブラシ」。こんなオプションを用意しているところからも、リズムが送風家電のお掃除のしやすさにこだわっていることがわかります。
ウェーブされたブラシでホコリをいい感じに絡め取ってくれます
そして「しっかり大掃除できるからすっきりできる」は、主要パーツを簡単に取り外してバラせる構造によって実現されています。具体的には、
1)前面だけでなく背面のファンガードも取り外せる
2)ファンの取り外しも工具不要
3)本体内側に凹凸が皆無
というのが、「Silky Wind Circulator」のお掃除のしやすさポイントです。
まず大きいのは前面だけでなく背面のファンガードも取り外せること。背面ガードが取り外せない構造のサーキュレーターは、その背面ガードにじゃまされてブラシが届きにくい部分に延々とホコリが溜まり続きがちです。対して本機は背面ガードも外せる構造なのでそうはなりません。
背面ガードが外せずしかも背面側に入り組んだ形状があると掃除しにくさMAX!
「Silky Wind Circulator」は背面ガードを外せるし形状的にもスルッとしていて掃除しやすさMAX!
そして本機は、ファンガードはもちろん、ファンも取り外し作業に工具類は不要。ファンの固定に六角ナットが使われていると、外すときいちいち工具を持ち出す必要があってちょっと面倒です。本機は手締めスピンナーによる固定なのでその手間がありません。
見てのとおり工具不要の手締めスピンナー
ファンガードとファンを外した状態の本体にも注目。ホコリ溜まりになりそうな凹凸がほとんどない、シンプルな形状です。
スルッと手を入れられる形なのでブラシ掃除も拭き掃除もしやすい!
このような諸々のお掃除のしやすい要素を備える製品はもちろんほかにもあります。ですがこの「Silky Wind Circulator」は、そのすべてを揃えたうえで、一方向スリットという独自の強みまで持っているのです。ゆえにそのメンテナンス性は最高クラス!
趣味のアイテム、たとえば自転車や楽器のお掃除なら趣味の一環として楽しめて苦にならない方も、実用家電のメンテナンスには手間暇をかけたくないのでは? でもかといってお手入れせずに放置は気分がよくないですよね。「Silky Wind Circulator」はそんな方にもおすすめできます。
後回しになりましたがここからは、基本的なスペックや機能、送風性能を見ていきましょう。
実際にお部屋に導入検討する際に気になるサイズは、276(幅)×250(奥行)×356(高さ)mm。実測でファンを収納する本体的な部分の直径は23cmほど、設置面となる台座部分も同じく直径23cm程度の円形です。
身長170cmちょいの筆者の手の大きさとの比較
このサイズ感は「サーキュレーターとしては小型な部類」と言えるでしょう。たとえば無印良品のサーキュレーターは歴代大体大小2モデル展開で、その直径は大が30cm強、小が20cm強ほど。本機はその小のほうと近しいサイズ感です。シングルライフのおうちにもフィットしてくれます。
サーキュレーターは24時間運転もありえる家電なので消費電力も要チェック。本機はDCブラシレスモーター採用で、消費電力は2.3W〜57W、電気代目安は1時間あたり0.1円〜1.8円とのこと。最大の57W/1.8円はバカデカですが、そちらは通常運転時ではなく後述のTurboモードでの数値でしょうから、あまり気にしなくてよいかと思います。
電源はACアダプター方式
続いては機能面をチェック。風量は1/2/3/4/5/Turboの6段階、左右首振りは60度/90度/120度の3段階、オフタイマーは1H/4H/8Hの3段階が用意されています。サーキュレーターは「3段階の風量調整のみ!」みたくシンプルな製品もあるジャンルなので、その中で見れば本機は高機能型ですね。
操作ボタンはすべて台座に集約
あと衣類乾燥モードというボタンもあります。こちらは部屋干しの補助に適した風量・首振り・タイマー設定をワンボタンで実行できるという機能です。初期設定は風量3・首振り90度・タイマー8時間ですが、衣類乾燥モード中に設定を変更するとその設定がメモリーされ、次回以降はそちらが適用されます。
なのでこれ、衣類乾燥モードという名称ですが、汎用的なプリセット設定ボタンとしても使えそうです。よく使う設定の組み合わせを記憶させておくと便利かもしれません。
といった操作ボタンは台座部分にタッチボタン式で実装。リモコンは用意されていません。この「タッチボタンでリモコンなし」という仕様は、本機単体で見ればたいした弱点ではありませんが、使い方によっては不便さにつながることもあるかもしれません。そこは後ほど説明します。
手動での上下首振りの調整範囲はすごーく広くて、スペック表記としては約-30度〜210度です。前でも後ろでも30度下までのうつむきセッティングが可能です。
赤矢印が送風方向。前方30度下までうつむき可能です
そして後方も同じく30度下までうつむき可能
後ろに送風したければ台座ごと動かして後ろを向かせてもいいのですが、それをやろうとすると電源ケーブルが意外とけっこうじゃまになったりするんですよね。それに配慮しての設計かもしれません。
サイズ感や機能性はとても優秀。でもサーキュレーターでいちばん大切なのはもちろん送風性能です。風量は豊かで運転音は静かというのが理想なわけですが、リズム必殺の2重反転ファンを搭載するこのモデルはその理想にどこまで迫ってくれるのか?
2重反転ファンは、後ろのファンで空気を集める/前のファンで筒状の風を送るという役割分担で静かで直進性の強い風を作る技術です
風量設定は前述のように6段階。その風量/運転音の印象をまず大まかにまとめると以下のような感じでした。
●ターボ:限界突破/さらにかなりうるさい
●風量5:超超強風/かなりうるさい
●風量4:超強風 /うるさい
●風量3:強風 /大きい
●風量2:微風 /十分静か
●風量1:超微風 /静か
風量も運転音も2→3と3→4のところで特に大きく変化。詳しく説明していきましょう。
風量1は本当に超微風。3mほど離れると顔を向けても風を感じにくいほどの微風っぷりです。ですが筆者宅の狭い室内で天井に向けて運転しておいたところ、夜になって高さ約120cmのハイベッドに横になって目を閉じたときにふと、空気の微かな揺らぎに気づきました。室内の空気は静かに、しかし確かに、循環させられているようです。
なおメーカーとしては扇風機的な利用も想定。運転音27dBという静かさもプッシュされています。実機での印象も、サーキュレーター製品として最高の静かさとまでは言えませんが、最高クラスには届く静かさ。エアコン稼働時にはエアコン側の運転音にマスキングされ、こちらの運転音はほぼ聞こえなくなります。
扇風機としても活躍
風量2は普段使いにちょうどよさそうな微風です。それでいて運転音も風量1からドカンと大きくはなったりはせず、コスト/パフォーマンスならぬ運転音/風量も優秀。風量1と2の運転音は、純粋な音量が小さめなだけではなく、周波数が低めで柔らかな音調のおかげで、うるさいと感じにくいのもうれしいところです。ひとり暮らしの狭めの部屋なら、常用風量は1もしくは2が静かで快適かと思います。
風量3からは、広めの部屋の空気もぐいっと撹拌してエアコン効率を高める!などの使い方にフィットしそうな、しっかりとした風量を送り出してくれます。これぞサーキュレーター!という活躍をしてくれそうです。運転音は風量2と比べてあきらかに大きくなりますが周波数はまだ低め。空間が広いほど運転音は目立ちにくくなるので、広めの部屋ならそこまでうるさくは感じないかもしれません。風量3もなかなか使いやすそうな印象です。
風量4ではさらにしっかりとした風量になりますが、運転音もかなり大きくなってきます。風量4以上は音量アップに加え、運転音の周波数が高くなることで耳障りさが強まるのもポイント。風量3までを「低音」とすれば風量4以上は「中高音」で、人間の耳がより敏感な帯域なのです。
5とTurboはもう嵐のような風量で運転音も嵐。このコンパクトさにして風量は筆者宅の大型サーキュレーターと同等以上を叩き出しますが、比例して運転音もうるさくなります。体感的にはマキタの充電式クリーナーの音量と同程度のうるささです。
ですが特にTurboは、「超風量を叩き出すが約1時間で自動停止」という、一時的に超パワーを発揮するV-MAXや界王拳みたいな風量設定。それこそ掃除機のような短時間集中使用を想定したモードですから、掃除機並みのうるささも許容範囲でしょう。
掃除機レベルの運転音も短時間なら許容範囲です
テスト期間中に特に使いやすく多用したのは、いちばん静かな風量1と、運転音/風量のバランスにすぐれる風量2でした。エアコンの冷房や除湿を補助する空気撹拌のために天井に向けて使っていたのですが、筆者自室の狭さならその微風でも十分に機能。部屋がもっと広いなら風量3が使いやすそうですね。
また超風量の5やTurboも瞬間的には大活躍。筆者は天気がよく湿度の低い日には、サーキュレーターの強風を部屋のあちこちに向けて空気をかき混ぜたうえで、今度はサッシ側から換気扇に向けてサーキュレーターをぶん回し、外気をガンガン取り込んで空気を入れ替えています。その際にはその超風量が本当に役立ってくれました。短時間で空気を入れ替えてくれて、加えてその強風で部屋のあちこちのホコリを吹き飛ばし吹き上げ、舞い上がったそのホコリも換気扇に向けてぶっ飛ばしてくれるおまけ付き。換気効率と爽快感、大幅アップです!
最後に、強いて言えば弱点になるかも?という部分について。
前述のように、本機の操作系はタッチ式の本体ボタンのみで、リモコンは用意されていません。
この点は、一日中運転しっぱなしみたいな使い方が多いサーキュレーターとしては、たいした不便にはつながらないでしょう。ですが扇風機的な使い方をする場合には、リモコンで風量や首振りを調整できたほうが便利と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
加えていまどきにおいては、「リモコン対応でない家電はスマートリモコンでコントロールできない」というのも弱点になるかもしれません。外出先からエアコンと一緒にオンにしたり、温度湿度センサーと連動させてオンオフしたり、そういったことができないわけです。電源ボタンが機械式ならそれをオンにしたままでスマートプラグを使えば電源オンオフだけは外部制御できますが、本機はタッチ式ボタンなのでそれもできません。
でもこれは本当に「強いて言えば」の弱点です。スマートリモコンを使っていない、使う予定のない方ならまったく気にする必要がないですからね。
でも今後はもしかしたら「リモコンは付属しないけれど、スマートリモコンからの電源オンオフを受け付けるためのリモコン受光部&制御機能だけは搭載」なんて仕様の家電も出てくるのかも?と筆者は期待しています。
と弱点もあげてみましたが、こんなのもう「弱点をあげようとしたらこんな無理矢理感のある弱点を捻り出すしかなかった」ということで、逆説的にこの製品の完成度を表してるようなもの。リモコン対応ならさらにうれしかったとはいえ、「リモコンありなら120点だったけどリモコンなしでも余裕で100点」みたいな感じです。大満足です。
ということでリズムから登場のサーキュレーター「Silky Wind Circulator」は、期待に応えるどころか期待を超える逸品でした。今夏の送風家電はこれに注目! そしてきっと今後も魅力的な製品を展開してくれるはずのリズムに注目! です。