本稿で掲載している画像は一部を除きエレコムホームページからお借りしています。
近年、アウトドア用品と防災用品の境界が薄れつつあります。
キャンプや車中泊で使うLEDランタンやモバイルバッテリー、ポータブル電源、ソーラーパネル、電気調理器などは、アウトドアを快適にしてくれるだけでなく、地震や台風などで停電したときにも役立つものです。
その好例が、エレコムのアウトドアブランド「NESTOUT(ネストアウト)」です。
NESTOUTでは、防水・防塵・耐衝撃性能を備えたモバイルバッテリーを中心に、LEDランタン、サーキュレーター、エアポンプなど、電気を活用するさまざまなギアを展開しています。
さらに、ポータブル電源や電気調理器など、電力をより積極的に活用するための製品もラインアップしています。
こうした製品は、単に「アウトドアで便利」というだけではありません。電気や生活インフラが一時的に使えなくなった非常時にも、一定の役割を果たすことができます。
NESTOUTのユニークなところは、モバイルバッテリーをスマートフォンの充電だけに使うのではなく、さまざまなアウトドアギアを動かす「電源」として活用する発想です。
たとえばNESTOUTのモバイルバッテリーは、衝撃や振動からバッテリーを守るクッション構造を採用しており、IP67相当の防塵・防水性能を備えています。これらのバッテリーは別売りの専用ギアを組み合わせることで、そのままLEDランタンなどのアウトドアギアとして利用できます。
LEDランタンやサーキュレーター、エアポンプなど、用途に応じたさまざまなギアがモバイルバッテリー用に互換性をもって用意されているのもNESTOUTの特徴です。
これらの製品の特長は、災害時にも有利に働きます。
災害時にはどのような環境の下で電源を使用することになるかはわかりません。大規模な停電が発生すれば、スマートフォンは家族との連絡だけでなく、気象情報や避難情報などを確認するための重要な情報端末になります。夜間には照明が必要ですし、夏場には扇風機やサーキュレーターが役立つでしょう。
もちろん、これらは「災害時だから必ず必要」というものではありません。しかし、普段アウトドアで使っている道具が、そのまま停電時の生活を支える道具になるという点には大きな意味があります。
さすがにモバイルバッテリーでは動かすことはできませんが、NESTOUTには電気調理器「COOKER-1」もラインアップされています。
COOKER-1は定格消費電力500Wの電気調理器で、湯沸かし、お米の炊飯、ラーメンやおでんなど、さまざまな調理に対応します。エレコムは「消費電力が少ないため、多くのポータブル電源で使用できる」としています。
火を使わず、一酸化炭素(CO)も発生しないことも特徴です。災害時には、ガスが止まったり、屋外で火を使うことが難しかったりするケースも考えられます。そんなとき、電源さえ確保できれば温かい食事を用意できることは、決して小さなメリットではありません。
つまり、アウトドアで行っている「充電する」「照らす」「風を送る」「調理する」といった行為は、そのまま非常時の生活を支える行為にもつながるのです。
アウトドアで電気を使うときに重要なのは、電源の容量だけではありません。コンセントが自由に使えない環境では、限られた電力を「何に、どれだけ使うか」がとても重要になります。
たとえば、停電時に温かい食事を作りたいからといって、普段家庭で使っている大出力の家電をそのままポータブル電源につなぐ必要はありません。
COOKER-1のように、比較的少ない電力で調理できる専用機器を手元に置くことで、停電時にも「必要な機能を、必要な電力で使う」という考え方ができます。
もちろん、家庭用の炊飯器とCOOKER-1では、容量や調理方法、炊飯時間などが異なるため、単純に「炊飯器より何%省電力」といった比較はできません。
しかし、重要なのはそこではありません。
キャンプでは、もともと家庭のようにコンセントから好きなだけ電力を使える環境ではないと考えるのが一般的です。限られた容量のモバイルバッテリーやポータブル電源から、照明、スマートフォン、扇風機、調理器具などへ電力を振り分ける必要があるのです。
だからこそ、必要以上に大きな電力を使う機器ではなく、目的に応じて消費電力を抑えた機器を選ぶ。
この発想は、そのまま防災にもつながります。
たとえば停電時、家庭用の大出力家電を使う代わりに、低消費電力の電気調理器で必要な量の食事を作る。照明も部屋全体を明るくするのではなく、必要な場所をLEDランタンで照らす。冷暖房の代わりに、消費電力の小さいサーキュレーターを使う。
こうして一つひとつの機器の消費電力を抑えていけば、同じ容量のポータブル電源でも、より長い時間にわたって生活を支えることができます。
つまり、防災において重要なのは「できるだけ大容量の電源を用意する」ことだけではないのです。
「限られた電力を、できるだけ少ない消費電力で、生活に必要な機能へ振り分ける。」
この考え方こそ、電源を自由に使えないアウトドアで培われてきた知恵であり、停電時の暮らしにも応用できる考え方なのです。
「たくさん電気を持っていること」だけでなく、「持っている電気を無駄なく使うこと」。
NESTOUTのようなアウトドア向け電源・ギアは、こうした「電気を効率よく使う暮らし方」そのものを体現し、日常の中で体験できる道具とも言えるでしょう。
あたりまえですが、モバイルバッテリーだけでは、使用できる機器や出力に限界があります。そこでより大きな電力を必要とする場面で活躍するのがポータブル電源です。
NESTOUTシリーズには、「NESTOUT POWER STATION 700N(DE-NEPS700Nシリーズ)」がラインアップされています。
現行モデルは容量712.25Wh、AC出力は合計700W。ACコンセント2口に加え、USB Type-C×2、USB-A×2、カーアクセサリーソケット×1を備え、合計7口から出力できます。ACコンセントは正弦波出力に対応しています。
重量は約6.2kg。エレコムは、容量700Wh台のポータブル電源として「最小・最軽量クラス」としています。
大容量のポータブル電源は、容量が大きくなるほど重量も増えがちです。その点、約6.2kgという重量は、車への積み下ろしやキャンプサイトでの移動を考えると扱いやすい部類と言えるでしょう。
また、地面の水濡れや砂、凹凸などの影響を受けにくいデザインや、背面のバーハンドルによる保護構造など、アウトドアでの使用を意識した設計も特徴です。専用収納バッグやサイドケースも付属します。
AC出力は合計700Wなので、電気毛布や電気調理器、小型炊飯器などの機器を使用できます。ただし、実際に使用できるかどうかは接続する機器の消費電力や起動時の電力などによって変わります。特に消費電力の大きな家電を使用する場合には注意が必要です。
エレコムは700Nについて、容量712.25Whの電力を使って、NESTOUTの扇風機を約77時間、60Wの電気毛布を約10.1時間使用できるほか、COOKER-1では水500mlを約9回、1合の炊飯を約8回行えるという使用例を示しています。実際の使用時間や回数は、接続機器や環境などによって変わりますが、限られた電力を複数の用途に振り分けるというポータブル電源の使い方をイメージしやすい数字です。
ポータブル電源では近年、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)を採用した製品が目立つようになっています。LFPは一般に、熱安定性や長寿命さらにはコスト面でもメリットがある電池材料と言われています。この特徴はポータブル電源でもメリットとなるはずです。
それでは、なぜNESTOUT POWER STATION 700NはLFPではなく、三元系リチウムイオン電池を採用したのでしょうか。
その答えのひとつが、「持ち運びやすさ」にあります。
エレコム700Nの容量は712.25Whありながら、本体重量は約6.2kgです。
つまり、三元系リチウムイオン電池は、一般にLFPよりエネルギー密度を高めやすく、軽量・コンパクト化に適しているという特徴を備えており、それを生かした製品といえるでしょう。
このことから700Nは、単純に「最新のポータブル電源だからリン酸鉄リチウムイオン電池」という方向ではなく、キャンプに持ち出すことを前提に、エネルギー密度の高さを生かして軽量・コンパクトさを重視した製品と見ていいと思います。
700Nは三元系を採用しながら、電気用品安全法(PSE)の技術基準をクリアした安全設計とし、各種の保護機能を備えています。
一般的にはリン酸鉄リチウムイオン電池のほうが電池材料としては熱安定性などの面でより安全とされていますが、製品ベースでは一概に「リン酸鉄リチウムイオン電池だから安全」でも、「三元系だから危険」と言えるものでもありません。
700Nの場合は、三元系ならではの特性を生かしながら、保護回路や製品設計によって安全性に配慮する、という考え方なのです。
これは、700Nを「アウトドア用ポータブル電源」として見るうえで重要なポイントです。
防災用途だけを考えれば、電池の長寿命や熱安定性は大きな魅力になります。しかし、アウトドア用品として考えるなら、「重くて持ち出すのがおっくう」になってしまえば、せっかくのポータブル電源の価値が下がります。
そうした意味でも、700Nはこの「容量・重量・携帯性・安全性への配慮」のバランスを狙った製品と言えるでしょう。
とはいえ、モバイルバッテリーも、ポータブル電源も、蓄えた電気は、使い切れば給電できなくなります。
そこで組み合わせて考えたいのが、ソーラーパネルです。
NESTOUTでは、モバイルバッテリーなどを充電できるソーラー製品も用意されています。また、ポータブル電源もソーラーパネル用の入力端子を備えています。
これにより、モバイルバッテリーやポータブル電源を「電気を蓄える道具」だけでなく、「外部から電力を補充できる道具」として活用できる環境が整えられるわけです。
ただし、ソーラーパネルによる発電量は、天候、季節、時間帯、設置角度などによって変化します。災害時にソーラーパネルだけで必要な電力を確実にまかなえるとは考えず、AC電源や車からの充電など、複数の充電手段を確保しておくことが重要です。
停電が数日間に及んだ場合、外部から電力を補充できる手段があることは大きな安心材料になります。
「蓄えておく」だけではなく、「複数の方法で充電できるようにしておく」。
この考え方が、災害時の電源を考えるうえでは重要です。
防災用品としてポータブル電源やモバイルバッテリーを購入しても、いざというときに充電されていなかったり、操作方法が分からなかったりしては、その能力を十分に生かせません。
だからこそ、「普段から使う」という発想が重要になります。
モバイルバッテリーを充電してLEDランタンを点灯する。ポータブル電源から家電を動かしてみる。ソーラーパネルを実際に広げ、どの程度の時間でどのくらい充電できるのかを確認する。
こうした日常の経験そのものが、災害時の予行演習になります。
また、普段から使っていれば、バッテリーの残量や保管場所を意識するようにもなります。
「アウトドア用品だからキャンプでしか使えない」という固定観念を捨ててみると、アウトドアで使う「ポータブルな生活インフラ」は、停電時にもそのまま役立つ可能性があります。
重要なのは、これらを「非常時専用」にしないことです。
普段はキャンプや車中泊を快適にし、暮らしにアクセントをもたらす。いざというときには暮らしを支える。
日常生活の中で実際に使っているからこそ、充電方法も、消費電力も、使用時間も、機器の操作方法も分かっています。
それは、災害が起きてから初めて説明書を読むのとは大きな違いです。
そして、防災時の停電対策とは必ずしも「できるだけ大きな電池を用意すること」ではありません。
どれだけの電気を持っているか。そして、その電気をどれだけ効率よく使えるか。
この二つを考えることが、停電時の生活を支えるうえで重要になります。
アウトドアでは、限られた電源を大切に使いながら、照明、通信、送風、調理など、必要な機能を確保していかなければなりません。
その経験は、電力が自由に使えなくなった災害時にも、そのまま役立ちます。
省電力設計のアウトドア用品を「普段使いできる防災用品」として捉え直すこと。
それは、特別な防災用品をしまい込むのではなく、日常の延長線上に防災を組み込み、限られた電気で暮らす知恵まで身につけるという、これからの防災のひとつの形と言えるでしょう。