マキタ充電式保冷温庫「CW004G」(本稿の画像は一部を除きマキタのホームページからお借りしています)
ホームセンターへ行くと、買う必要があるかどうかはともかく、いろいろな工具を前になぜかわくわくしてしまう経験はないだろうか。私にはある。工具にはどんなものであれ、何かしら人を引き付ける魅力があるようだ。高価で用途が判然としないものであれば尚更だ。そして、ホームセンターの工具コーナーには、ひときわ目立つ、特別なガラスケースに入った一角がある。そう、マキタの電動工具コーナーだ。
そこに並ぶ「マキタブルー」と一部で呼ばれる、シアンに少しの黒と緑を混ぜた独特の色彩(簡単に言えば青緑色)の工具たちは、私のような道具好き、モノ好き一般人を魅了し、そして拒絶する。「ここは素人さんの来るところじゃないよ」と。
「マキタブルー」を中心としたマキタの製品群(一部)。中には一見しただけでは一般人には用途すらわからないものも含まれる。
マキタブルーの工具たちを前に、私はため息をつく。その高圧的な工具たちを動かすために必要な、専用のリチウムイオンバッテリーがとにかく高いのだ。工具の種類によっては、マキタの蓄電池1個分の値段で、他社製品が本体、バッテリー、充電器セットで丸々買えてしまったりする。しかもマキタの場合、その蓄電池の充電に必要な充電器も別売りだ。マキタの代表的な製品のひとつ充電式インパクトドライバー。写真は最新型のTD005G。標準小売価格\37,400(税別)。蓄電池と充電器は別売りだ。
もちろんマキタブルーの工具たちは、ただ高圧的なだけでなく、実際に出力も性能も高い。
しかし、「デュアルスプリングテクノロジーによる最速締付けと使いやすさの両立」(TD002GZ)も、「1充電当たりのM8ネジ、ボルト締め約4,400本の実力」(TD157D)も、ガーデン用の家具の組み立てでせいぜい20本のネジ回しの労力を惜しみたい私にはオーバースペックだ。むしろ誤って「最速打撃モード」のまま家具を組み立てようとしたりすると、「毎分4,100回の打撃」(TD003G)は私のチープなガーデニング家具を打ち砕いてしまうに違いない。「隅打ち時の傾き、業界最小」(TD162D)に至っては、その意味すらよく分からない。そして私は今回も涙を飲んでマキタコーナーを去る。それでも私はつぶやくのだ「いつかはマキタを」と。(以上はあくまで執筆者の個人的感想です。尚、マキタのラインナップには「ホーム用」とされているものもあります。為念)
しかし、転機は突然訪れる。今年私はひょんなことから、セーリングクルーザーを1艇預かることになった。そのドイツの老嬢は事情により数年間放置されていて、エンジンや艇体に多少なりとも手入れが必要な状態だ。ちゃんと整備し、海に戻しセーリングするまでにはやることが多い。クルーも集めなければならない。たぶん今年の夏、この艇は海に出られないだろう。だが、別に急ぐことはない。それでも造りのいいキャビンと開放的なコックピットがある。夏だ!マリーナだ!冷たいビールとスピリッツだ!そのために必要なのは、マキタの充電式保冷温庫だ!!
思えばこの時、私はすでに正常な判断力を失っていたのだと思う。最初から他の選択肢を排除して、マキタの保冷温庫のなかから選択するための、後付けの理論武装をアタマの中で始めていたのだ。(例えば船火事リスクを考えれば艇では信頼のできるメーカー製を使用することが必須だ!とか、現場仕様で頑丈なマキタなら多少波をかぶっても大丈夫なはず……とか云々)。それは恋愛の初期症状にとても良く似ている。とにかく、私は迷うことなくマキタの保冷温庫購入に邁進した。
マキタの充電式保冷温庫はいずれも防水性能IPX4級。「あらゆる方向からの水の飛沫(水しぶき)によっても有害な影響を受けない」のであながち間違った判断ではない?
マキタは近年、工具そのものだけでなく、リチウムイオン電池の技術を生かした周辺機器のラインナップを充実させている。例えば充電式電子レンジや、充電式コーヒーメーカー、充電式ラジオ付きテレビなんてものまである。その一つが件の充電式の充電式保冷温庫だ。もともとは山奥の建設現場のような電源を確保しにくい環境においても、冷たい飲み物や温かい食事がとれるようにとの目的で作られており、7Lから50Lまでのラインアップがある。
このうち最大のCW002G(50L)は500mlペットボトル約50本を収納可能とのことだが、別に少年サッカーチームを率いるわけではないので私にはそこまでの容量は必要ない。逆に最小の7L(CW003G)では、基本据え置きを前提とした今回の用途ではやや不足感がある。
シリーズ最大のCW002Gは中身を入れない状態で重量27KG。もはや一人で持ち上げることは困難だ。
というわけで、候補は以下の3機種に絞られた。
CW001G(20L):21年7月価格.com登録 / 価格.com最安値 5万3千円前後
CW004G(29L):23年5月価格.com登録 / 価格.com最安値 6万6千円前後
CW006G(23L):26年5月価格.com登録 / 価格.com最安値 8万3千円前後
注:最安値は2026年8月中旬の水準
見ての通り、これらは機種名の数字順に発売時期が新しくなっており、それぞれ製品としての世代が違う。21年の「CW001G」から23年の「CW004G」にかけては外観が大きく変化し、今風に洗練された。
CW004G以降デザインが一新され、ふたは両方から開く仕組みに変化。それどころかそのまま取り外すことができる。(写真はCW006G)
また、「CW004G」と「CW006G」には庫室を2つに仕切って別々の温度で使える機能がある。(-18℃から60℃の範囲で「片方を氷温にして氷やアイスクリームをキープしながら、片方でビールを冷やす」「片方で飲み物を冷やしながら、片方でお弁当を温める」(※2室の温度差は30℃以内)といった使い方ができる。)この機能はどうしても捨てがたいので、非対応の「CW001G」は早々に選択肢から落ちた。もちろん見た目も重要だ。仕切り板を差し込むと自動的にセンサーが認識し、2室モードに切り替わる。CW004GとCW006Gのこの機能は私の選択の上では決定打となった。
次に「CW004G」と「CW006G」の比較だが、最新型の「CW006G」は外のパネルに6面真空断熱パネルを装備し、保冷力が2倍になったとのこと。価格.comマガジンのネタ的にはここはひとつ最新型を買って性能を試すべきところではあるが、個人の予算で本気で使うので、そうはならず、結果的に私が選んだのは「CW004G」であった。
CW006Gの真空パネルによる断熱性能の向上はマキタの保冷温庫に根本的な性能の向上をもたらした。・・・ようだ。
なぜか?
「CW004G」の容量は29L「CW006G」は23L。006Gの23Lでもなんとかなりそうに思える。しかし、仕切り板を入れて2室に分けると、カタログ上では両機種とも2L分容量が減少し、「CW004G」は9Lと18Lに、「CW006G」は8Lと13Lに固定的に分離する。私のニーズは「買ってきた氷をそのままキープし、場合によってはジンかウオッカも氷温でキンキンに冷やしておいたうえで、ビールやソフトドリンクも適切に冷やしたい」というもの。小さい方の部屋を氷点下にする分には9Lも8Lも大差ない。しかし、メインの冷蔵室はどうか。5人で船上宴会を開くとして、ビールやソフトドリンク、冷やしておきたいおつまみを考慮すると、「CW006G」の分割後の大室13L(2Lペットボトル2本+500ml4本程度)ではいかにも心もとないのだ。
CW006Gを2室に仕切った場合、大きいほうの部屋の容量は13L。仕切り板の位置は固定で動かせない。
「CW004G」が20kgに対して、「CW006G」は21kg(いずれもバッテリーBL4080F・2本込み)。あれ?なんで容量と逆転しているんだろう。真空なのに「CW006G」のパネルが重いのか?ちなみに外寸は、幅こそ同じ345mmだが、高さと長さはちゃんと「CW004G」のほうが大きい。容量やサイズが小さいのに「CW006G」のほうが重いのは、個人的にかなりのネガティブ材料だった。
たぶん個人的にはこの辺に閾値があった。「CW004G」が最安値66,000円前後なのに対し、「CW006G」は最安値83,000円前後。5万円越えは何とか我慢するとしても、10万円に接近する価格を「冷蔵庫未満、クーラーボックス以上」の商品に支払うのがどうしても納得できなかったのだ。しかも前述の通り、マキタ製品(蓄電池系)はこれだけでは済まず、蓄電池と充電器が別途必要になる。
現行最大容量のバッテリー(BL4080F)2本を使用した場合、2部屋モードでの連続使用可能時間目安のカタログ値は「CW004G」が18時間、「CW006G」は27時間。これは明らかに「CW006G」のほうが優位だ。ただ、18時間通しで飲み続ける予定はないし、電源が切れてもクーラーボックスとしてある程度の保冷は期待できる。仮に2泊3日程度のセーリングに出るとしても艇のバッテリーやポータブル電源等を併用すれば、「CW004G」の保冷時間でもさほど不便は感じないだろうと判断した。
「CW004G」以前のマキタのすべての現行保冷温庫には、側面外部に昔の自動販売機についていたような「栓抜き」が付いているのだが、なんと「CW006G」ではこれが廃止されてしまった。それはそうだろう。最後に王冠付きのビン入り飲料を飲食店以外で飲んだのがいつだったか思い出せないほどだ。しかし、この栓抜きのレトロ感というか昭和現場感は捨てがたいものがある。
新デザインとはミスマッチな「栓抜き」がついているのがCW004Gのチャームポイントだ。実際に使うシーンはあまり想像できないのだけれど・・・。きっと何かの役に立つに違いない。
ちなみに、27kgの大型機CW002Gを除いて付属していたショルダーベルトもCW006Gには付属していないことにも一応言及しておきたい。
以上の理由から、私は今回「CW004GO(オリーブカラー)」の購入を決めた。色をオリーブにしたのは、船内にあの「マキタブルー」を持ち込んだ瞬間、その色の持つ魔力によりアウトドア気分が減じられ、残された艇の整備作業への強迫観念に自然に意識が移ってしまうことを懸念したためだ。
次に蓄電池と充電器について。保冷温庫はいずれの機種もマキタの「40Vmax」と「18V」2種類の蓄電池に対応している。しかし、上記の通り「CW006G」の真空パネル保冷機構による保冷性の向上を選択しなかった私には、保冷時間を少しでも多めに維持するために容量の大きな40Vmaxの選択しかないように感じられた。
正直、ここまでの機種選定に労力を使い果たしていた私は、複雑なマキタの蓄電池周りのラインナップを理解しようとする気力が湧かなかった。
結論だけ先に書くと、あるショップのセット商品を参考に「40V5.0Ahバッテリ(注:マキタでは蓄電池をこう呼ぶ)2個」と「2.1kwの2個口充電器」、そして「専用ケース」がセットされたパワーソースキット「XGT6」を選んだ。
選んだパワーソースキットXGT-6は、容量、充電速度ともにシリーズ最強の組み合わせではないが、それでも保冷温庫本体の価格を上回った。
長くなったので、マキタ製品を使用するうえでもっとも重要かつ核となる「バッテリ」にかかわる子細や、CW004Gの使用感等は次回以降とさせていただく。
ここでは、色を選べないバッテリーおよび周辺機器のマキタブルーが、自宅の和室で異様な「現場感」を放っていること、そして、さんざん悩んで購入した保冷温庫より、エイヤ!で決めたバッテリと周辺機器のほうが高かったことにだけ言及しておきたい。
ただ、この時は「バッテリー、いやバッテリは高価だが、その汎用性は高い。これで私にも無限のマキタワールドが広がるのだ」と自分を納得させた。
マキタ 保冷温庫 CW004G(オリーブ) 66,677円
マキタ 40Vパワーソースキット XGT6 67,405円
合計金額 134,082円
私とマキタCW004Gの夏物語は始まるのか?