一歩外に踏み出した瞬間にモワッとした熱気に包まれて足もとがフラつく日々が続いていますが、この暑さはいつになったら収まるんでしょうか。筆者はフリーランスの自宅仕事ライターなので、ひとまず外に出ずともなんとかなる……はずなんですが、実はちょっと困ったことがあります。
我が自宅は築50年以上の激古戸建て。住戸の断熱性がゼロに近いため夏冬は室温が厳しい環境になりやすいのですが、ブツ撮りなどの写真撮影に使っているスペースが廊下の一角にあるため、エアコンの風がどうやっても届きません。
当然、この時期の室温は平気で30度を超えてくるため、扇風機を回していても半時間ほど撮影をすれば、暑さでフラフラ状態になってしまいます。構造的にエアコン導入はどうやってもムリ。扇風機も涼しくない。
であれば、最近注目を集めているペルチェ式冷風扇はどうなんでしょうか? 生命維持のためには、試してみるしかありません。そこで、丸隆の「MA-871-WH」を導入してみます。
筆者自宅の撮影スペース。廊下の隅でエアコンの風も届かず、夏場は常に蒸し風呂状態の地獄です
そもそも昭和のころから「冷風扇」と呼ばれるものは存在しました。これは送風機(要するに、箱形の扇風機)の中に水タンクとフィルターを備えたもので、水を吸って濡れたフィルターを通して吸気することで、気化熱冷却によって温度が下がった風を送る仕組みです。
ただ、そもそもタンクの水が温くなっているとあまり効果がないし、それに加えて空気が水フィルターを通ることで湿度が上がってしまう。そういう点で、本当に効果的なのか、疑われやすい家電でした。
令和の冷風扇こと、丸隆のペルチェ式冷風扇「MA-871-WH」
ところが昨今、ペルチェ素子を搭載した冷風扇なるものが登場。一部でちょっと話題になってきています。今回取り上げる丸隆の「MA-871-WH」も、まさにそのひとつ。果たして令和の冷風扇は、昭和の冷風扇と比べてどのように進化しているんでしょうか?
運転前には、本体底部のタンクに「MAX」位置まで水を注ぎます
最近ではハンディファンにも付いているペルチェ素子ですが、これは電気を通すと“吸熱面”は電子が熱を奪って移動するためにヒンヤリと冷え、その裏側の“放熱面”は吸熱面から電子が運んできた熱を解放するので熱くなる、という半導体モジュールです。
理屈はさておき、とにかく電気を通すと吸熱面は周囲と比べて-10〜-15度ぐらい冷えます。一瞬で温度が下がり、静音性にすぐれ、ガスや液体の冷媒も使わないなど、いろいろとメリットが多いんです。
ペルチェ式冷風扇は、このペルチェ素子で風を冷やしているのか? というとさにあらず。先にも述べたように、吸熱面の裏側にある放熱面からは熱がガンガン出るので、空気を冷やすのは効率がよくない。そこでペルチェ素子は、気化熱冷却用の“水”を冷やすことに使われます。
ペルチェ素子で冷やされた水でたっぷり濡れた状態の背面フィルター。ここを通して吸気することで「水が蒸発→気化熱冷却→空気の温度が下がる」という仕組みです
上は運転前、下は運転後15分後の水温。ペルチェ素子によって水が冷やされているのがわかります
吸い込んだ空気を水フィルターで冷やして送り出すわけですから、当然、このフィルターを濡らしている水が冷たければ、それだけ風も冷えるわけです。
ちなみに、昭和の冷風扇もタンクの水に氷や保冷剤を入れてやることで同等の効果は得られますが、しかしこれらはいずれ溶けて常温になってしまいます。その点ペルチェ素子なら、電気が供給されている限りは冷え続けるので、長時間効果を発揮してくれそうです。
では、実際の性能はということで、懸案の我が家の撮影スペースで試してみました。
現状の室温は32度。廊下の角のため熱気がこもるし、このままいけば1時間も経たないうちに暑さで倒れてしまいそうな環境です。
ほんの少し作業をしているだけで汗が噴き出す灼熱スペース。ほんとキツい
室温は、外気温(この時点で35度)に近くなっています。こまめにエアコンのある部屋に逃げ込んで身体を冷やすしかありません
電源オンでまず前面の送風口から風が吹き出します(風量は3段階+最強風のパワフルモードの計4段階)。この時点では単に室温の風が出るだけでした。
次いで上面のパネルまたは付属のリモコンで「冷風」モードをオンにすると、タンクの水が背面フィルターへ供給され、ペルチェ素子で水を冷やしていきます。この時点でもすでに気化熱冷却はできているんですが、ペルチェ素子で冷えた水がフィルターを完全に通るまでは15分前後かかります。本領発揮はだいたい15分後とみておきましょう。暑いときは、早めのスイッチオンが必要です。
電源のオン/オフ、風量、冷風モード、タイマー、リズム風、ルーバーの上下左右スイングなどの操作が可能。パネルに表示されている数字は、本機の周辺の気温です
では冷えた風がどれほどのものかと言うと……出だしの感想は「うーん、まぁ涼しいかな?」というぐらい。エアコンのヒンヤリした風と比較すると、どうしても物足りなさは出てしまいます。
ただ、暑い最中に扇風機を回したときの「風は来るけど全然涼しくならないなぁ」という感じはなく、風が肌に当たることでそれなりに体感温度は下がる印象です。
試しに室温と風が当たる場所の気温を比較すると、2〜3度ほど低い。さらに風に当たっているため、体感としては、この温度差よりはもうちょっと涼しく感じられます。汗をかいたところに風が当たるとちょっとヒヤッとする、あの感じに近いです。
おっ、ちゃんと涼しい風が来てるな
何よりありがたいのは、風の吹き出し口の前にいる限り、熱波地獄となっている我が家の撮影スペース(室温32度)では意外と耐えられることです。いつもなら30分もしないうちにエアコンのある部屋へ避難して身体を冷やしていたところですが、今回は気がつくと1時間ずっと作業していました。
もちろん快適とまでは言えませんが、風に当たってさえいれば、暑さは十分にしのげそうといった感じです。
扇風機と風の温度を比較。扇風機はほぼ室温そのままですが、冷風扇はちゃんと温度が下がっています。そして湿度もアップ
涼しさを感じたいなら、これくらい近距離での運転が必要。パワーは強くないので、距離が離れるほど風の温度も上がってしまいます
とはいっても、顔など風が直接当たらない部分が暑いのは避けられません。エアコンのように全身で快適さを感じにくいのは仕方のないことですが、このあたりは評価が厳しくなるポイントと言えるでしょう。
あと、結局のところ湿度は上がる! これも冷やす機構上どうしようもありません。風が直接当たるところは涼しいですが、狭い室内だとトータルでは湿度上昇で不快感は上がるケースもあるかもしれません。
より効率的に風の温度を下げるなら、水タンクに氷や保冷剤を投入するのもあり。ペルチェ素子との合わせ技で、さらに1〜2度ぐらい下がりました
使ってみての感想は、まず「エアコンの代替として導入するのは止めたほうがいい」ということ。室内の気温を下げるほどのパワーはなく、期待しすぎでガッカリするに違いありません。
逆に、とにかくスポット的に涼しい風に当たれば暑さに耐えられる、という今回のようなシチュエーションであれば十分に価値はあると感じます。スポットクーラーのように排熱の処理に悩まされることはありませんし、扇風機よりはちゃんと涼しい風が出ます。
使いどころは考える必要がありますが、筆者としては「ペルチェ式冷風扇、意外といけるのでは?」とは感じました。