注文から数日後、私のマキタ充電式保冷温庫「CW004G」とパワーソースキット「XGT6」は到着した。翌日満充電にしたバッテリー2つをCW004Gに装着。艇の泊地まで運ぶ。CW004GZO(オリーブ色)のグリーンが初夏のマリーナに映える。
私はCW004Gをポンツーン(浮き桟橋)の艇のそばまで引いていく。大口径の車輪と運搬しやすい110°の角度に固定されたキャリーハンドルのためか、約20kgあるCW004Gの移動に大きな負担はない。さすがマキタだ。
しかし、艇のそばまで行って私は気がついた。ヨットの舷側は高い。しかもヨットの周りには転落防止のためのライフラインが巡らせてあり、さらにハードルが高い。(後で測ってみたところ、ポンツーンから上のライフラインの上部までの高さは約130cmあったうえ、CW004Gの高さ47.1cmを加えた約1.77mをクリアしなければならなかった。さらに奥行き分もある)。
最初の2回のトライでは、私はCW004Gを船上に上げることはできなかった。3回目の試みで、渾身の力をこめ、頭まで使って、ようやく船上に上げることができた。いくらIPX4防水のマキタ製とはいえ、海に落として無事であるとは思えない。あと1kg重いCW006Gだったら、ダメだったかもしれない。私は改めてCW004Gを選択した自分の判断の正しさに満足した。
無事乗艇したマキタCG004G
CW004Gを最初に見たとき、これはコックピットテーブルに最適なのではないかと考えた。艇の上にかろうじて保冷温庫を引き上げた私は、さっそくコックピット(通常、ヨットの後部にある操船のためのオープンスペース)にCW004Gを置いてみた。結果は予想通り、ぴったりはまった。しかし、ぴったり過ぎて足が入らない。片側に寄せれば、一人では使えるかもしれない。しかしそれではあまりにも侘びしい。
コックピットの前部にぴったりはまることははまったのだが・・・
結局、設置場所は水面下のキャビンのチャートテーブル横に収まった。若干邪魔だが、艇のバラスト(重り)としても機能しそうで、ヨットの中の置き場としては理にかなっている。
結局キャビン内のコンパニオンウェイの下キャビンテーブルの横に鎮座することになった。
CW004Gは発売からすでに3年を経過している。そのため、基本性能は価格.comの口コミをはじめ、各種のブログ、YouTubeなどの動画で語られているので参照してほしい。
これらのレビューでは「機能的にはおおむね満足だが、保冷温庫に充電機能がないのが不便(ACコードやシガーソケットによる使用は可能だが、ACコードにつないでもバッテリーに充電はされない)」と語られているものが多いようだ。
しかし、ここではあくまで個人の関心に従っていくつかの「機器テスト」を試みた。
CW004Gのカタログ等には「2Lペットボトル6本縦置き可能」「500mL約30本」等の記載はあるが、350mlの缶ビールが何本入るのかの記載がない。
そこでまずは何本のビールが入るのか試してみることにした。
隙間なくビールを詰めてみた
仕切りを取り除き1室仕様にして、ビールを順番に詰めていくと、CW004Gには38本の缶ビールが入ることが分かった。10人が乗船しても一人4本弱のビールが飲める計算だ。この結果にはとても満足した。
なんと38本もの缶ビールを入れることができた!
しかし現実的には、やはり仕切りを使って片方は氷温で使いたい。その場合は何本になるのか? 結果は24本。仕切った後でもビールがちょうど1ケース入ることになる。5人であれば一人5本、4人であれば一人……まぁいい。期待通り、CW004Gの容量に不足はない。
マキタの充電式保冷温庫は、基本、「冷えているものをそのまま冷やし続ける」ことを前提に作られている。その限りにおいて何ら不満のない性能を発揮する。
しかし、船に置きっぱなしの使用環境を考えると、当然、前回の残りの飲料などを常温から冷やすというニーズも出てくるだろう。常温に戻ってしまったビールやほかのアルコール飲料を十分冷たいと感じられる程度、あるいは「キンキン」といえるほどまでにCW004Gで冷やすには、どのくらいの時間が必要だろうか?また、CW004Gで氷は作れるのか?
そもそも、人が冷たいと感じる飲料の温度は何度か? コンビニでソフトドリンクを買ってきて、5分以内に赤外線温度計で液温を測ると10.5℃。飲むと普通に冷たい飲料であることから、一般的に「冷たい飲み物」の定義をいったん10℃としてみる。
一方、「キンキンに」冷えた飲料はそれよりさらに冷たいものを期待したい。ただ、ラガービールに関しては3℃を下回ると、タンパク質やポリフェノール、タンニンなどが結合し、白濁して味わいも変化する「寒冷混濁(チルヘイズ)」という現象が起きることが知られている。そのため、一応その水準手前の4℃を「キンキン」に冷えた飲料と定義することにする。
測定は都度各飲料をCW004Gから取り出し、よく振って温度の均一化を図ったうえでフタを取り、赤外線温度計のセンサーを中の飲料に向けて測定する。
この方法だと、開けるたびに庫内の温度が上昇し、飲料も同様である。また、赤外線温度計での測定も数回測って平均はとったものの、手動での極めてプリミティブな方法なので誤差は免れない。そもそも、船内に数日以上放置した状態でスタートしているので、本来種類にかかわらずすべての飲料は基本気温と同じ温度になっているはずだが、船内で置かれていた位置によるのかスタート時の温度にばらつきがあるなど、「実験」と呼ぶには精密さに欠ける内容であると言わざるを得ない。一方で、大人数で保冷温庫を使用した場合、頻繁な保冷温庫のフタの開け閉めは当然生じるし、飲料自体のフタの開け閉めはないものの、頻繁に振られて温度の均一化を図ることはない分は冷え方は遅くなるはずだ。
以上を踏まえて、以下は「まったく意味のないわけではない参考値」程度と考えてほしい。
マキタ保冷温庫を2室設定とし、小さいほうの部屋を-18℃の氷温、大きいほうを0℃に設定。水、缶コーヒー、ビール、ウイスキー、ジン、ウォッカ等の飲料の時間経過ごとの温度を測る。
設定は左の小さい部屋が−18℃、右の大きいほうの部屋が0℃
実験の結果は下表のとおり
まとめると以下のようになる。
●氷温室の場合、夏の35℃前後の室温に放置された飲み物は、大体2時間から2時間半で「冷たい飲み物」といえるレベルに冷え、4時間後には「キンキンに冷えた」飲み物となる。
●冷蔵室の場合には「冷たい飲み物」になるまでに4時間半から5時間の時間を要する。6時間半後でも「キンキンに冷えた」飲み物は出来なかった。
●なお、物質には「比熱」という概念があり、一定の冷やす力に対する反応の仕方は液体、金属それぞれ異なり、「水」は特に大きい(冷えるのが遅い)とされる。したがってアルコール飲料の場合は「アルコール度数が高いほど早く冷える」といえ、結果もおおむねその通りとなっている。
●アルコール度数が比較的高い「ウォッカ」の冷え方があまり早くないのは、他のジンやウイスキーが小瓶だったのに対し、コンビニのラインナップ上、中瓶を実験に使用したためと考えられる。そのことから、「分量の少ないものほど冷えやすい」のではないかと推定されるが、この実験だけでは確証が得られなかった。
●表にある飲料以外に、氷温室の「小分け皿」と冷蔵室にそれぞれ缶ビール2本ずつを入れた。ビールのアルコール度数は低く、上記の比熱の考え方からいくと水に近い。缶ビールはふたをするわけにはいかないので、水が十分に冷えた段階で実際に開缶して温度を測る形にした。
まず、氷温室の水が10℃を切った2時間半後に氷温室の缶ビール1つを開缶して飲んでみたが生ぬるい。測定結果は14.5℃。「小分け皿に入れた飲料は冷えにくい」ことが判明した。その時点で氷温室の小分け皿を撤去し、残りのビールは他の飲料と同じ平場(底面)に置き直した。最終6時間半後に開缶してみると-1.0℃の過冷却状態となっていた。味はともかく、これは間違いなく「キンキンに冷えた」ビールであった。水の温度推移から推定すると、たぶん3時間半から4時間後には氷温室ではキンキンに冷えたビールが出来上がっていたものと思われる。ちなみに冷蔵室のビールは4時間半後(冷蔵室の水が10.8℃になり他の飲料もおおむね10℃前後に冷えた時点)で開缶してみたが、十分冷たい8℃に冷えていた。残り1本は、最後まで冷蔵室の飲料が4℃を下回らなかったので、未開封に終わった。
●5時間後、氷温室で0.7℃に低下した水のペットボトルの中には、うっすら氷が生成されているのが確認できた。
●その他:氷温室の飲料が「比熱」の考え方に従った形で水の温度低下が相対的に遅かったのに対して、冷蔵室のほうが水も含めて途中までは大体同じペースで温度が下がっている。これがセンサーやソフトウェアの仕様によるものか、何らかの物理的な法則なのかはよくわからなかった。
凡例の上から3つジョニ黒、ジン、水は氷温室
この仕切りトレイに入れたビールは冷え方が鈍かった。写真はマキタのホームページから
なお、これ以外にもいくつもの使用試験を試みた。結果に自信の持てないものも多いためここではすべては取り上げないが、上記の2-1の結果をみて「もしかしたら、冷蔵室を作ったことが全体の足を引っ張ったのではないか」との仮定で、1室のみで温度を-18℃に設定したケースの結果のみ報告する。
●このケースでは、3時間半後には大体の飲料が「冷たい」と感じられる温度まで低下した。2-1の結果の中間であり、大体感覚的には合っている。
●疑問なのは、比熱が大きいはずの水の温度の低下が早いことである。ただ、5時間経っても庫温は目標の-18℃には達しておらず-6〜-7℃でうろうろしていることから、2-1の冷蔵室で見られた「目標温度に達するまでは、どの飲料も大体同じペースで温度が低下する」のと同じ現象とも考えられる。
以上からCW004Gは、
●缶ビール最大38本を収納でき、2室に仕切った後でも24本を冷やせる。
●室温の飲料をできるだけ早く冷やして飲みたければ、2室に仕切って小室のほうで設定を-18℃にすれば、夏でも2時間半後には冷たい飲み物を、4時間後には「キンキンに冷えた」ビールを飲むことができる。
●常温の多くの飲料を冷やす場合でも、4時間前から冷やしておけば、大体の飲料は十分に冷える。
●時間をかければ常温の水から氷を作ることも可能。
次回最終回は、必要に迫られて勇躍マキタのインパクトドライバーを買いにホームセンターに出かけた筆者が、なぜかハンディ掃除機を買って戻った経緯と、マキタの奥深いバッテリーワールドの関係を解説する予定です。