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売れているのは型落ちモデルばかり? 大きな曲がり角を迎えた空気清浄機の今

スギ花粉が飛散するこの時期、注目される家電製品といえば、何と言っても空気清浄機だろう。大陸から飛来する黄砂や、有害成分を含んだ微粒子物質「PM2.5」への対応など、空気清浄機に期待される役割は年々高まりつつある。しかし、国内の空気清浄機市場はやや停滞気味。性能の進化もここ数年はほとんど見られず、いささか盛り上がりにも欠けているようだ。

暖冬とインフルエンザのピークシフトなどによって、盛り上がりに欠ける今シーズンの空気清浄機市場

図1:「空気清浄機」カテゴリーのアクセス推移(過去2年)

図1:「空気清浄機」カテゴリーのアクセス推移(過去2年)

図1は「価格.comトレンドサーチ」で見た、価格.comの「空気清浄機」カテゴリーのアクセス推移だ。これを見るとわかるように、ここ2年間で、同カテゴリーのアクセス数はほぼ横ばいか、微減している。2013年の春、中国の大気汚染が深刻化し、有害成分を含んだ微粒子物質「PM2.5」の飛来が話題になり、この年、空気清浄機は爆発的に売れた。しかしその後、空気清浄機はコンスタントに売れてはいるものの、それ以上の盛り上がりを見せることなく、市場にはやや停滞ムードが立ちこめている。

なかでも今シーズンはやや深刻だ。通常であれば、空気清浄機の新モデルが発売される10〜11月くらいから「空気清浄機」カテゴリーへのアクセスが高まり、年末から2月くらいの間にかけてピークを迎える。最近の空気清浄機は、加湿機能を備えた加湿空気清浄機が主流になってきており、冬場の乾燥対策や、インフルエンザ予防などの効果も期待されていることから、購入タイミングとしては、冬の12月〜1月というのがもっとも多くなっているのだ。

しかし、今シーズンを見ると、12月の初旬に一時的にアクセスが上がったものの、それ以外は全般的に低調な推移をしていることがわかる。昨シーズンに比べても、アクセスの山がひとまわり小さく、年明け以降もほとんどアクセスが上がっていない。ようやく、スギ花粉が飛散し始めた2月末になって、少しアクセスが上がってきたものの、昨年レベルには達していないというのが正直なところだ。

この理由であるが、ひとつには、今シーズンの暖冬が大きく影響していそうだ。上記のように、最近のトレンドである加湿空気清浄機は、冬場の乾燥予防や、インフルエンザ対策用としても利用されるため、暖房器具などと同じく寒くなると自然に売れてくる傾向がある。それが今年はほとんどないまま終わってしまった。また、例年では1月後半くらいに来るインフルエンザの流行ピークが、今年は2月頃にシフトしたことも大きいだろう。暖冬にともなうこれらの外的要因によって、今シーズンの空気清浄機市場は今ひとつ盛り上がりに欠けたと言ってよさそうだ。

性能・機能は頭打ち。売れているのは昨年の型落ちモデルばかり

図2:「空気清浄機」カテゴリーにおけるクチコミ数推移(過去2年)

図2:「空気清浄機」カテゴリーにおけるクチコミ数推移(過去2年)

図2は、「空気清浄機」カテゴリーにおけるクチコミ数の推移だ。これを見ると、今シーズンのクチコミ数は、昨シーズンの約半分くらいであることがわかる。図1のカテゴリーへのアクセス数推移に比べて、投稿されるクチコミの数がだいぶ少ない。これは、とりもなおさず、今シーズンの空気清浄機製品に対する、消費者の関心の薄さを示すものだ。

実を言えば、ここ数年くらいの間、空気清浄機は大きな技術革新を行っていない。10年前くらいの時点では、各メーカーとも自社独自の機能を磨いて、さまざまな機能追加や性能向上を行っていた。シャープは「プラズマクラスター」、パナソニックは「ナノイー」のイオン放出で差別化を図り、ダイキンは独自のストリーマ技術による内部除菌と、フィルターが目詰まりしにくい電気集塵で差別化を図っていた。しかし、数年前から、特にイオン放出機能において、各メーカーごとの機能差がほぼなくなり、集塵性能についても頭打ちの状況が続いている。昨シーズンのモデルと、今シーズンのモデルを比較してみても、性能的にはほとんど差異が見られない。ダイキンなどは、今シーズン、デザインを大幅に変更したモデルを発売し、こうした状況に風穴を開けようとしたが、空気清浄機の新モデルに対する消費者の興味関心は、やはり全体的に低調に推移してしまったようだ。

図3:「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品ベスト5(2016年3月9日時点)

図3:「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品ベスト5(2016年3月9日時点)

こうした状況を考えながら、今シーズンの売れ筋モデルを見てみると、ひとつの大きな特徴に気がつく。何と売れ筋ベスト10の製品のうち、2015年モデルはわずか2製品。そのほかの8製品はすべて昨シーズンの型落ちモデルなのだ(図3)。ベスト5に限って見ると、2015年モデルは1製品のみ。4位にパナソニックの「F-VXL90」が入っている以外は、すべて型落ちモデルである。

この理由はシンプルだ。昨年モデルと新モデルの性能差がほとんどないからである。しかも、最新の2015年モデルに比べて、前年発売の2014年モデルの販売価格はかなり安い。性能差がほとんどなくて、安く買えるのであれば、ほとんどの人は昨シーズンの2014年モデルを選ぶだろう。

「KC-E50」(2014年モデル)

シャープ「KC-E50」(2014年モデル)

図4:シャープ「KC-E50」(2014年モデル)と「KC-F50」(2015年モデル)の最安価格推移(過去3か月)

図4:シャープ「KC-E50」(2014年モデル)と「KC-F50」(2015年モデル)の最安価格推移(過去3か月)

例として、現在売れ筋1位のシャープ「KC-E50」(2014年モデル)の例を見てみよう。こちらの最安価格(2016年3月9日時点)は16,950円。これに対して、2015年モデルとなる「KC-F50」の最安価格(2016年3月8日時点)は29,880円。実に新モデルの4割以上の安値で、型落ちモデルが購入できるのだ(図4)。

ダイキン「MCK70R」(2014年モデル)

ダイキン「MCK70R」(2014年モデル)

図5:ダイキン「MCK70R」(2014年モデル)と「MCK70S」(2015年モデル)の最安価格推移(過去3か月)

図5:ダイキン「MCK70R」(2014年モデル)と「MCK70S」(2015年モデル)の最安価格推移(過去3か月)

さらに、現在売れ筋2位のダイキン「MCK70R」(2014年モデル)と、その後継機である「MCK70S」(2015年モデル)との最安価格を比べてみると、「MCK70R」が27,280円なのに対して、「MCK70S」は52,800円(2016年3月8日時点)と、こちらも新モデルの4割以上の安値で、型落ちモデルが購入できることがわかる(図5)。

パナソニック「F-VXL90」(2015年モデル)

パナソニック「F-VXL90」(2015年モデル)

図6:パナソニック「F-VXK90」(2014年モデル)と「F-VXL90」(2015年モデル)の最安価格推移(過去3か月)

図6:パナソニック「F-VXK90」(2014年モデル)と「F-VXL90」(2015年モデル)の最安価格推移(過去3か月)

唯一の例外がパナソニックだ。現在売れ筋4位の「F-VXL90」は、売れ筋ベスト5では唯一の2015年モデルだが、こちらの最安価格は44,662円(2016年3月9日時点)。これに対して前年モデルにあたる「F-VXK90」の最安価格は47,199円(2016年3月9日時点)で、最新モデルのほうが2,534円も安い(図6)。ちなみに、同じ2015年モデルで比べると、「F-VXL90」は最大風量8.7m3/分の高性能タイプであるが、最大風量7.5m3/分のシャープ「KI-FX75」(44,784円)や、最大風量7.0m3/分のダイキン「MCK70S」(52,800円)よりも低価格。最大風量のクラスで見るとワンランク上のモデルながら、他社のワンランク下のモデルよりも安い販売価格を実現している(図7)。こうした価格面での優位性により、パナソニックの場合、他メーカーとは違って最新モデルのほうが売れているという現象となっているのだ。

図7:2015年モデル「F-VXL90」「KI-FX75」「MCK70S」の最安価格推移(過去3か月)

図7:2015年モデル「F-VXL90」「KI-FX75」「MCK70S」の最安価格推移(過去3か月)

全体的におしなべて見ると、風量5.5m3/分のミドルクラス製品では1.7万〜2万円。風量7.0m3/分のハイクラス製品では2万円台。風量7.5m3/分以上のハイエンドクラス製品では3万〜4.5万円程度というのが、空気清浄機の売れる価格帯レンジと言えそうだ。最新モデルであっても、このレンジを大きく超えるような場合、あまり売れないことが多い。

ダイキン「MCK55S」

ダイキン「MCK55S」

図8:ダイキン「MCK55S」の売れ筋・注目ランキング推移(過去3か月)

図8:ダイキン「MCK55S」の売れ筋・注目ランキング推移(過去3か月)

唯一の例外は、現在売れ筋9位に入っているダイキンの「MCK55S」で(図8)、こちらは風量5.5m3/分のミドルクラス製品でありながら、39,180円という最安価格(2016年3月9日時点)をつけており、かなり割高だ。しかしながら、本製品がそこそこ売れているのは、今シーズンから大きく変えたスリムボディの筐体が支持されているからだろう。このように、何らかの機能追加や価値提供があれば、上記に示したような価格レンジでなくとも売れることもあるが、そうでない限り、価格面で高止まりしてしまうと、市場に出回っている前年モデルのほうが売れるということになってしまう。そういう意味で、今、空気清浄機市場は、大きな曲がり角にさしかかっていると言えるかもしれない。

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

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