レビュー

Google Homeと何が違う? ソニー初のスマートスピーカー「LF-S50G」をじっくり使ってみた

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縦方向に対向配置した2ウェイスピーカーシステムを初採用! コンパクトな本体からは想像できない高音質サウンドを実現

まずは、差別化ポイントのひとつ「音質」についてくわしく見ていこう。

LF-S50Gでは、コンパクトな筐体から360°全方位に広がるサウンドを実現するために、同社のスピーカーとして初めて、縦方向に対向配置した2ウェイスピーカーシステムが採用された。具体的には、48mm径のフルレンジスピーカーユニットを上向きに、53mm径のサブウーハーユニットを下向きに配置。スピーカーユニットの間に配置した2ステージディフューザーを用いて、スピーカーユニットの発生した音を効果的に放射させることで、360°全方位に対して均一に広がるサウンドを実現している。

縦方向に対向配置した2ウェイスピーカーシステムを採用するLF-S50Gの内部構造

縦方向に対向配置した2ウェイスピーカーシステムを採用するLF-S50Gの内部構造

写真中央部に見えるコマのような形のパーツが2ステージディフューザーだ。この2ステージディフューザーを挟み込むように、2つのスピーカーが縦に並んで配置されており、それぞれのスピーカーユニットから発せられる音がディフューザーを介して360°均一に拡散されるようになっている

Google Homeは、3つスピーカーユニットを本体中心から3方向に向けて配置してやることで、全方位に広がる音を実現するというアプローチだった。この構造だと、本体サイズを小さくすればするほど、スピーカーユニットの大きさは小さくなってしまう。音質的にはやや不利な構造だ。しかも、Google Homeの場合は本体背面にはスピーカーを配置しておらず、360°すべてをカバーできていないのだ。コンパクトな筐体でパワフルなサウンドを360°全方位に届けるというなら、LF-S50Gの設計は実に理にかなっているのだ。

Google Homeのスピーカーユニット。音を届けたい方向にスピーカーユニットを向けるという構造だ。スピーカーユニットを小さくしないと本体サイズも小さくできないため、音質的にはやや不利な構造だ

また、フルレンジスピーカーユニットから発する中広域のエネルギーを無駄なく伝えるために、ボイスコイルボビンにセンターキャップをダイレクトに結合した構造を採用したほか、コンパクトな筐体のスピーカーで課題となる低域のボリューム感についても、バスレフダクトの一部にダンプ材を詰めた「ダンプドバスレフダクト」を採用することで強化を図っている。

LF-S50Gに採用されたダンプドバスレフダクト。ダンプ材を使って低域をうまくコントロールしてあげることで、コンパクトな筐体ながら、迫力のある低音再生を実現した

実際にLF-S50GとGoogle Homeを並べ、サウンドを聴き比べてみると、その差は圧倒的。特にボイスコントロールの声、ボーカル楽曲やラジオなどの人の声は、ボリュームを絞った状態でも明瞭で、非常に聴きとりやすい。AIの声でさまざまな情報を得るスマートスピーカーにとって、声が聴きとりやすいということは、非常に大きなメリットと言えるだろう。

LF-S50Gの楽曲再生時の音質は、正面で音楽を聴くことが想定された一般的なスピーカーと比べると、多少物足りない部分もある。とはいえ、360°スピーカーとしてみたらかなり優秀だ。Google Homeも、小型版の「Google Home mini」に比べて高音質だといわれていたが、コンパクトな筐体からは想像できないエネルギッシュなボーカルや、それに埋もれない躍動感のあるドラム、ウッドベースの豊かな余韻などを聴くと、どれもかすんでしまう。音の広がりや分離感、低域のキレなどは、圧倒的にLF-S50Gのほうが上だろう。

「OK Google」を何度言う必要がない! ジェスチャーコントロール機能が意外と便利

LF-S50Gは、Google Homeと使い勝手の面でもいくつか差別化が図られている。そのなかでも特徴的なのが、本体に手を触れずに、センサー部のある本体上面に手をかざし、各種操作が行えるジェスチャーコントロールだ。具体的には、下記に記載した6つの操作が可能となっている。

(1)手前から奥に向かって手をスライド(再生中の楽曲の再生/停止)
(2)左から右に向かって手をスライド(曲送り)
(3)右から左に向かって手をスライド(曲戻し)
(4)本体上部で指を時計周りに回す(ボリュームアップ)
(5)本体上部で指を反時計周りに回す(ボリュームダウン)
(6)奥から手前に向かって手をスライド(Googleアシスタントの起動)

実際にいろいろと試してみたが、特に便利だったのが、(6)のGoogleアシスタントの起動だ。Googleアシスタントを搭載するスマートスピーカーの場合、「OK Google」「ねぇ Google」というキーワードが、Googleアシスタントが立ち上がるトリガーになっている。現状、Googleアシスタントでは、非常に限られた条件でしか会話するように続けてやり取りすることができず、たとえば、「OK Google、○○調べて」と問いかけると、その質問に対しての回答はしてくれるが、そこから続けようとすると、また「OK Google」と言わないといけないことがほとんどだ。

ボイスコントロールは確かに便利なのだが、マイクに向かって「OK Google」と何度も言うのはやはり面倒だ。そういったとき、LF-S50Gなら、手をかざして手前にスライドするだけで、Googleアシスタントを立ち上げることができるのだ。センサーが本体上面にかないため、手の届かない場所に本体が設置されているときに使えないのが少々残念だが、手が届く場所に設置しているのであれば、ぜひ積極的に活用していきたい機能ではある。

また、NFC機能やBluetoothペアリングボタンも、Google HomeにはないLF-S50Gならではの特徴だ。LF-S50GやGoogle Homeは、無線LANのほか、Bluetooth通信機能も備えており、Bluetoothスピーカーとしても使えるようになっているわけだが、Google Homeの場合は、Bluetoothのペアリングの際、Google HomeのアプリからBluetooth機能を立ち上げる必要があるなど、かなり厄介なものになっている。

その点、LF-S50Gは、NFCによるワンタッチのペアリングに対応しており、Google Homeアプリを起動できないウォークマンなどのデジタルオーディオプレーヤーとのペアリングも簡単だし、NFCを搭載していない製品でも、Bluetoothペアリングボタンを使って簡単にペアリングできるようになっている。キャスト機能を使い、無線LANを経由してスマートフォンの中にある音楽ファイルをたのしめないこともないが、手軽さという点では、まだまだBluetooth接続のほうに分がある。こういった点についてしっかり配慮されているのは、さすがソニーといったところだ。

本体背面にNFCを搭載。NFCを搭載したウォークマンなどをかざすだけで、ワンタッチでBluetoothペアリングできる

このほか、本体がIPX3相当の生活防水をサポートしているのも見逃せない。ファブリック素材を使用したスピーカーカバーは、取り外して丸洗いすることもできるという。リビングやベッドルームだけでなく、水や油などが飛び散るキッチンなどでも積極的に使っていけるのはうれしいポイントといえるだろう。

生活防水に対応しているので、キッチンなどの水周りでも安心して使用できる

生活防水に対応しているので、キッチンなどの水周りでも安心して使用できる

いっぽう、LF-S50Gを実際に使用してみてもうちょっとがんばってほしいと感じたところがある。それは、マイクの感度だ。LF-S50Gは、音質に徹底的にこだわるにあたって、音質に影響を及ぼすセンサーやマイクといったインターフェイスは本体上部に集約されたのだが、この影響によるものなのか、Google Homeと比べて、「OK Google」の認識がいまひとつなのだ。

ボイスコントロール用マイクは、LF-S50G、Google Homeともに本体上面に配置されているが、LF-S50Gはマイク用の穴が真上を向いているのに対し、Google Homeは本体上面がフロントに向けて若干の傾斜がついているため、マイク用の穴もやや前方方向に向いた形となっている。このあたりの違いがマイクの音声読み取り精度に影響しているのかもしれない

BGMを流した部屋で、LF-S50GとGoogle Homeを並べて何度かテストしてみたのだが、Google Homeが8〜9割ほどの精度で認識するのに対し、LF-S50Gは5〜6割程度の認識精度だった。同じ人アカウントを紐付けてテストを実施したので、日本語の認識精度ということではないと思うので、おそらくマイクの向きや感度が影響しているのだろう。幸い、LF-S50Gはアップデートによる機能追加にも対応するということなので、ぜひこの部分は優先的に改善してほしいところだ。

音楽リスニングをメインで利用する人ならアリ

というわけで、実際にLF-S50G とGoogle Homeを比べながら、LF-S50Gの特徴を見てきたが、音に徹底的にこだわって開発したというのは伊達ではなく、LF-S50Gの音質はスマートスピーカーとしてはかなり優秀なものだった。同社は、スマートスピーカーを開発するにあたり、独自の調査を実施し、スマートスピーカーを利用する時間のうち、全体の約47%が音楽リスニングに使われていることを突き止めたというが、確かに、現状スマートスピーカーともっとも相性がいいのは、音楽やラジオのリスニングだ。とりあえずGoogleアシスタントの機能を試してみたいという人だったら、Google HomeやGoogle Home miniのほうが安上がりだが、音楽やラジオなどのリスニングをメインに考えている人なら、NFCもついていて、Bluetoothスピーカーのようにも使えるLF-S50Gは、かなり魅力的な選択肢といえる。25,000円という市場想定価格は、スマートスピーカーとしてはやや強気な価格設定だが、実際にその音質を体感すれば、その価格も決して高くないと感じるはずだ。

遠山俊介(編集部)
Writer / Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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