名機「PMA-50」の後継モデルの実力は?

デノンのクラスDアンプ搭載小型プリメイン「PMA-60」「PMA-30」をじっくり聴き比べてみた

このエントリーをはてなブックマークに追加

デノンから、デスクトップオーディオやリビングオーディオにピッタリなコンパクトサイズ&デザインの「デザイン・シリーズ」のプリメインアンプ、「PMA-60」「PMA-30」が発売された。

こちら、ユーザビリティと音質の両面で好評を博した「PMA-50」の後継モデルで、正確にいえば、Qualcomm製Class Dパワーアンプ「DDFA」の最新バージョンを搭載する「PMA-60」が実質上の後継モデル、オーソドックスなClass D パワーアンプを搭載する「PMA-30」はスタンダード機として新規ラインアップされた派生モデルとなっている。そこで、今回は「PMA-60」の紹介をメインとしつつ、2台のそれぞれのサウンドについてレビューをお届けしよう。

「PMA-60」と「PMA-30」

コンパクトなボディにデノンのHiFi技術を凝縮

まず、今回のメインである「PMA-60」の概要から。冒頭でも述べたとおり、「PMA-60」は、2015年にQualcommのデジタルアンプソリューション「DDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)」を搭載した初のプリメインアンプとして発売され、大ヒットを記録した「PMA-50」の実質的な後継モデルに位置付けられるモデルだ。上下3mmのアルミ製パネルをレイアウトした幅206×奥行き258mmのコンパクトなボディサイズを持ちながら、「DDFA」最新バージョンやアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing Plus」、全行程フルデジタル処理などにより、上級アンプに迫る良質なサウンドを両立した魅力あるモデルにまとめ上げられている。

「PMA-60」と「PMA-30」を並べて設定したところ。本体サイズやデザインは共通で、中央に大型のボリュームノブを配置した非常にシンプルでスタイリッシュなデザインだ

付属リモコンは「PMA-60」と「PMA-30」で共通だ

付属リモコンは「PMA-60」と「PMA-30」で共通だ

外装素材はともにアルミニウムだが、「PMA-60」と「PMA-30」で色見が若干異なる。フット部分も、「PMA-60」は外装素材と同じアルミニウムが使われているが、「PMA-30」はモールド仕上げとなっている

また、コンパクトなボディサイズに加えて、縦置きができたり(しかも有機ELディスプレイの表示が90度回転して縦置にも対応!)と、デスクトップ環境などで便利に活用できるようになっている。また、入力もUSBや光/同軸デジタル、アナログ入力に加えて、高音質かつ低遅延なBluetoothコーデック「aptX Low Latency」やNFCにも対応するなど、さまざまな機器の接続や幅広い活用が可能となっている。

「PMA-60」の背面端子部 「PMA-30」の背面端子部

上が「PMA-60」、下が「PMA-30」の背面端子部だ。上位モデルの「PMA-60」は、USB-DAC機能用のUSB端子が用意されているほか、電源ケーブルも着脱式となっており、電源ケーブルのアップデートにも対応できるようになっている

いっぽうで、サウンドの機能面でもいくつかのグレードアップが推し進められている。なかでも、ハイレゾ音源の対応スペック向上は見逃せない。「PMA-60」では、新たに、USB接続時でDSD11.2MHz、リニアPCM384kHz/32bitまでのハイレゾ音源に対応。「PMA-50」ではDSD5.6MHzまで、PCM192kHz/24bitまでの対応だったため、なかなか嬉しいグレードアップとなってくれている。

とはいえ、「PMA-60」最大の音質トピックといえば、やはりデジタルプロセッシングとパワーアンプのアップグレードだろう。デノンが長年にわたって培ってきた、高級モデルにも数多くの搭載実績を誇るビット拡張&データ補完によるアナログ波形再現技術「ALPHA Processing」が、最新バージョンの「Advanced AL32 Processing Plus」へとグレードアップ。デジタル録音時に失われたデータを精巧に復元することで、正確かつ歪みのない再生を実現することができたという。

いっぽうで、Qualcomm製のデジタルアンプソリューション「DDFA」の最新バージョンにも注目だ。もともと「DDFA」は、Class D動作のパワーアンプながら、精度の高いデジタル・フィードバック・ループを用いることで課題であった歪みの多さや(電源変動による)音質劣化を克服し、良質な特性を実現したもの。最新世代では、これまで2チップ構成だったPWMモジュレーターとフィードバックプロセッサーが1チップ化されたことで、周辺回路がよりシンプルになり、音質を優先した回路設計と部品の選定が可能になったというメリットを生み出している。結果、「PMA-60」ではパワーアンプ出力段やローパスフィルターなどにデノン独自のディスクリート回路を搭載することが可能となり、結果としてさらなる音質向上と高出力(50W+50W(4Ω))を両立することができたという。

「PMA-60」には、最新世代の「DDFA」が搭載された。「PMA-50」に搭載されていた前世代の「DDFA」では、PMWモジュレーターとフィードバックプロセッサーが2チップにまたがっていたが、最新世代の「DDFA」では1チップに収められた。これにより、周辺回路をシンプルにすることができたという

そのほかにも、「Advanced AL32 Processing Plus」などの処理を行うFPGAの直近に44.1kHz/48kHzの2系統切替式となる超低ジッタークロックを配置させた「マスタークロックデザイン」や、PCからのノイズをシャットアウトする「デジタルアイソレーター」、左右チャンネルの音量差を生じるギャングエラーやクロストークを完全に排除しつつ1dBステップの精密な調整が可能な「デジタルボリュームコントロール」、オーディオ用電解コンデンサーや抵抗器、フィルムコンデンサーなどの高音質カスタムパーツ採用など、「PMA-50」で培ったノウハウを活かしつつ、細部にわたって徹底的な音質向上が推し進められている。コンパクトな筐体からは想像できない、デノンのHiFiオーディオへのこだわりが詰まった1台となっているわけだ。

「PMA-60」と「PMA-30」をじっくり聴き比べ

ここからは、実際のサウンドを確認してみよう。今回の試聴は、事務所内にある“デスクトップオーディオ用”試聴システムを使用した。とはいっても、内容的にはシンプルなもので、入力4系統/出力4系統をダイヤルで簡単に切り替えられるORB製のアンプセレクター「MC-SW3i」を使いスピーカーを3ペア、エラック「BS72」とエラック「BS312」、PLATINUM「SOLO」を接続したもの。こちらの入力側に「PMA-60」「PMA-30」を接続と、随時切り替えてサウンドの特徴を確認した。

ちなみに、今回このスピーカーのチョイスとなったのは、以前同じ環境で「PMA-50」を試聴したことがあったためだ。直接比較できるわけではないが、ある程度参考にはなるだろうと思い、現行モデルでないスピーカーもあえてそのまま聴かせてもらうこととした。

試聴環境 デジタル入力のチェック

今回は、事務所の“デスクトップオーディオ用”試聴システムに「PMA-60」と「PMA-30」を接続して試聴を行った。デジタル入力のチェックには、IRIVER「Astell&Kern A&ultima SP1000」を使用している

まず、エラック「BS72」で聴いてみる。こちらのスピーカー、ペア6.5万円(生産終了)程の製品だが、バランスのよい、破綻のない鳴りっぷりが気に入って、いまでも使い続けている。この組み合わせの印象をひとことでいえば、十全な鳴りっぷり。それほどクリアで端正なサウンドを基調としつつも丁寧な階調表現も持ち合わせている「BS72」ならではのキャラクターを存分に引き出し、清々しいサウンドを聴かせてくれる。解像感に関しては、いつも聴いている組み合わせよりも高く感じられ、「BS72」の完成度の高さを改めて実感させられた次第だ。

エラック「BS72」で試聴

続いて、アンプセレクター「MC-SW3i」の出力側ダイヤルを回し、「BS312」で聴いてみる。こちらも、十分な鳴りっぷり。キレの良い、パワー感溢れたサウンドを聴かせてくれる。それでいて、細部の表現も丁寧。チェロの演奏では、ボーイングの付帯音までしっかりと伝わってくるし、空間への音の広がり感もとても正確な再現となっている。このあたりは、歪みを徹底排除した「Advanced AL32 Processing Plus」+「DDFA」の恩恵といえる。

また、女性ボーカルが朗々とした歌声を聴かせてくれるのも特徴だ。熱気や厚みはそれほどでもないが、芯のしっかりした抑揚に富んだしなやかな歌声を聴かせてくれる。声の質も、いつもよりやや綺麗で心地よい。実は、エラック「BS312」はアンプに相応の実力を求めるスピーカーで、セッティングもやや気難しいところがあるのだが、「PMA-60」のと組み合わせでは、充分に実力を発揮してくれている。左右スピーカーの間隔や角度などベストなセッティングを追求すれば、良好な組み合わせとなってくれそうだ。

ちなみに、以前聴いた「PMA-50」と「BS312」との組み合わせでは、スピーカーが動ききらず、抑揚に乏しい平坦な印象の音になってしまっていたのだが、「PMA-60」ではきちんと鳴りきってくれている。オススメできる組み合わせだ。ちなみに、PLATINUM「SOLO」をちらっと聴いてみたところ、こちらのスピーカーはさらにアンプを選ぶ製品のため「PMA-60」ではミスマッチな印象(やさしい響きで芯の感じられない音)だった。とはいえ、こういった気難しいスピーカーは世の中にそうそうないので、あまり気にしなくてもいいだろう。ミドルクラス(ペア10〜20万円)のスピーカーはもちろん、鳴りっぷりのよい製品であれば、上級モデル(ペア30万円以下)との組み合わせもよい結果が出てくれそうだ。

エラック「BS312」で試聴

続いて、「PMA-30」を聴いてみる。こちらは、「DDFA」を採用していないごく一般的なClass D動作のパワーアンプを搭載しており、さらにUSB DAC機能も省かれている。その分、「PMA-60」よりも2万円安い5万円というプライスタグが付けられている。製品のキャラクターとしては、デスクトップオーディオというよりもリビングオーディオ、テレビの脇に置いてオーディオだけでなく映像コンテンツのサウンドもアップグレードするのに活用する製品とイメージしてよいのかもしれない。まずは「BS72」に切り替えて聴いてみた。

そのサウンドは、「PMA-60」よりもニュートラルなサウンド表現といったイメージ。抑揚の幅広さ、階調表現のきめ細やかさはかなり減衰するが、解像感はしっかり確保されており、ひとつひとつの音を丁寧に再生してくれる。結果、女性ボーカルは端正で心地よい、やさしい音色を聴かせてくれる。とはいっても、パワー感に乏しいというわけではない。エレキギターの演奏は「PMA-60」に比べるとややラフな印象となるが、それでも同価格帯の一体型アナログアンプに比べると、キレのよさが目立つ。スネアの音も、軽やかながらもキレのよい、リズミカルなテンポを刻んでくれている。定位も音場も正確で、違和感のない音場が楽しめる。なかなか、完成度の高いサウンドといえるだろう。

残念ながら、「BS312」スピーカーとの組み合わせはミスマッチ。抑揚に乏しい、平坦な表現しか引き出せない。とはいえ、「BS312」が特殊な製品(コンパクトなボディサイズで良質なサウンドを実現するためパワーアンプに相応の実力を求める)であるため、製品のキャラクターからいって、ここまでのスピーカーをフォローする必要はないのかもしれない。一般的なミドルクラスのスピーカーであれば十分な鳴りっぷりを示してくれるので、こちらで充分、という人も多いかもしれない。

個人的に気に入ったのは、圧倒的に「PMA-60」のほう。端正で緻密な、それでいてエネルギー感のあるサウンドにかなりの好印象を持ったし、持ち合わせの駆動力の高さによって、さまざまなスピーカーが本来の実力を発揮できるはず。スピーカーのグレードアップなど、先々のことを考えると、こちらの方が推薦しやすい。何よりも、この金額でこのクオリティを手にすることができるのは、相当に良好なコストパフォーマンスといえる。実際、筆者もいままさに「PMA-60」の導入を本気で考えている。

とはいえ、環境やスピーカーによっては、「PMA-30」で充分という場合もあるので、何かの機会に聴き比べて、自分にとってはどちらがベストなのか、検討して欲しい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
新製品レポート最新記事
新製品レポート記事一覧
2017.11.22 更新
ページトップへ戻る