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「X7 Mark II」「X5 3rd」「M9」「M7」の4機種を一斉テスト

機能性のM?それとも音質のX? 比べてわかったFiiOの最新ハイレゾDAP

機能性のM?それとも音質のX? 比べてわかったFiiOの最新ハイレゾDAP

ハイレゾ対応ポータブルDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を代表するモデルといえば、ウォークマン、Astell&Kernなどの名前が浮かぶが、近年はShanling(シャンリン)やLotoo、Questyle、iBassoなどの中国系ブランドにも注目が集まっている。そのひとつであり、代表格といえる存在となっているのがFiiOだ。

中国の広州に本社を置くFiiO Electronicsは、2007年に設立されたポータブルオーディオメーカー。会社設立時はポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)をメインとしたラインアップを取りそろえていて、日本国内でも小型モデルに人気が集まっていたが、2013年に初代「X3」を発売して以降はポータブルDAPも積極的に展開し、近年はカナル型イヤホンも登場。いまや、北米、欧州、アジアなど世界60か国以上にセールスネットワークをもつ、世界規模のポータブルオーディオ機器メーカーとなっている。

そんなFiiOブランドを代表する製品といえば、やはりポータブルDAPだろう。ということで、今回は現在ラインアップされているFiiO製ハイレゾ対応DAP全モデルについて、詳細を紹介&レビューしていこうと思う。

世代交代真っ最中。最新Mシリーズと従来のXシリーズを合わせて現行モデルは全部で4機種

現在、日本国内におけるFiiO製ハイレゾ対応DAPのラインアップは、フラッグシップ「X7 Mark II」とミドルクラス「X5 3rd」、エントリークラス「M7」、そして先日登場したばかりの新世代スタンダードクラス「M9」の4モデルとなっている。実は、先日まで「X3 Mark III」が販売されていたが、こちらはすでに製造終了で流通在庫のみとなっている。ちなみに、以前はさらなる下位モデル「X1 II」もラインアップされていたが、こちらは現在、日本国内での展開は行われていない。

さて、まずはFiiO製DAP全体の特徴から紹介していこう。FiiO製DAP全般にいえるポイントというと、それはユーザーのニーズに対応した製品開発と、その開発スピードの素早さだ。

FiiOでは、SNSや世界各国の輸入代理店などから、ユーザーが現在の製品に対してどういった点に満足しているか、不満を持っているかをリサーチして、次世代機へ反映させている。しかも、毎年のようにモデルチェンジを行っているため、製品のグレードアップに関してはかなりのスピード感がある。2013年に登場した初代「X3」と最新モデル「M9」を比較すると、機能も操作性もわずか5年でここまでの進化が推し進められたことに思わず感心させられる。このスピード感と的確な進化こそ、FiiOならではのアドバンテージとなっているのは間違いない。

もうひとつ、現在のラインアップで特徴となっているのは“世代交代”だ。

名前を見れば分かるとおり、これまでのFiiO製DAPは製品名に“X”の頭文字がつき、その後ろにグレードを表す数字が付けられていた。そのため、モデルチェンジが行われると「X7 Mark II」「X5 3rd」といったように世代を表す表記が付属するようになっていたが、2018年登場の新モデルは頭文字に“M”が付く「Mシリーズ」となったうえ、数字も単なる型番(開発順序に関連したナンバーと思われる)で、グレードを表すものではなくなった様子。デザインや操作性についても、既存モデルとは一線を画すまったく新しい作りとなっていて(「X7 MarkII」などの今後は分からないものの)「Mシリーズ」がメインストリームとなっていくのは確か。熟成を重ねた完成形の「X7 Mark II」「X5 3rd」と、新世代の魅力をいち早く楽しめる「M9」「M7」のどちらも選択が可能な、オイシイ時期といえるのかもしれない。

2018年10月発売の最新モデル!ハイスタンダードモデル「M9」

FiiO「M9」

2018年10月に国内販売が開始されたばかりの最新モデル。音質の要となるDACはAKM製「AK4490EN」を左右独立構成で搭載し、192kHz/24bitまでのリニアPCMと5.6MHzまでのDSDファイルのネイティブ再生に対応している。加えて、専用FPGA回路や2系統(44.1kHz系、48kHz系)の高精度水晶発振器、8層マルチステージHDI(高密度相互接続)基板を採用するなど、さらなる高音質が追求されている。

また、Bluetoothはapt X/apt X HD/LDAC/HWA(LHDC)コーデックに対応しつつ、レシーバー機能も搭載。スマートフォン内の音源を「M9」でも楽しむことができる。また、Wi-Fiも搭載されており、DLNA接続にも対応しているため、パソコンやNAS内の音楽ファイルを再生することも可能だ。さらに、USB TypeCコネクタを持ち、こちらを使ってUSBオーディオ出力(リニアPCMは384kHz/32bitまで、DSDは5.6MHzまで)を行うことができる。また、USB DAC機能も搭載されており、USB DAC内蔵ヘッドホンアンプとして活用することも可能だ。

いっぽう、ヘッドホン出力端子は、一般的な3.5mmステレオミニに加えて、2.5mmバランス出力端子も搭載。より上質なサウンドを追求することができる。ちなみにこの3.5mm端子は、ラインアウトも兼ねており、アナログ出力はもちろんのこと、付属ケーブルを使用して同軸デジタル出力を行うこともできる。

3.5mmステレオミニと2.5mmバランスの2系統のヘッドホン出力を搭載。3.5mm端子はラインアウトも兼用だ

3.5mmステレオミニと2.5mmバランスの2系統のヘッドホン出力を搭載。3.5mm端子はラインアウトも兼用だ

内蔵メモリーは2GBとシステム用に用意された最低限のもので、音楽ファイルは1基用意されたmicroSDメモリーカードスロットを活用することになる。こちらは、2TBまでの対応となっている。このほかにも、2350mAhのリチウムポリマーバッテリーを搭載することで、約10時間という連続再生を実現している。加えて、待機時間が最大45日間というロングライフ設計を行っているため、電源をオンにしたまま数日放置してもバッテリー上がりを起こすこともなく使い続けられる。ちょっとしたことかもしれないが、これは便利だ。付属品としては、(先の同軸デジタルケーブルのほか)TPU製ケースや強化ガラス製スクリーンプロテクターなども同梱されている。このあたりの心遣いは、嬉しいかぎりだ。

さて、実際の製品を手にしてみると、操作系がまったく新しい物に変わっていることに気がつく。「X7 MarkII」などと同じくOSはAndroid 7.0をベースとしているが、オリジナルのカスタムが施されているようで、Xシリーズ2台とは大分印象が異なっている。かなり独特な操作感だ。とはいえ、3.2インチサイズのLG製IPSタッチスクリーンは良好な反応を示してくれるし、ボタンが大きめだったり、メニュー画面の内容が直感的だったりと、比較的分かりやすい構成となっているのでこれといった不満は持たなかった。ただし、付属のTPU製ケースはハードキーやボリュームの操作がしづらくなる傾向があり、個人的にはケースなしで使いたいと思った。

AndroidベースのオリジナルOSを採用。これまでのXシリーズとは異なるUIに仕上がっている

AndroidベースのオリジナルOSを採用。これまでのXシリーズとは異なるUIに仕上がっている

さて、肝心のサウンドはというと、これがなかなかの良質さを持ち合わせていた。基本的にジェントルな、ナチュラル志向のサウンドで、女性ボーカルなどは爽やかで美しい歌声を聴かせてくれる。ピアノの音も弾みのよい、軽やかな音色だ。いっぽう、低域はフォーカス感よりも柔らかな広がりや確かな量感を求めたチューニングのようで、クラシック系は落ち着きのある心地よいサウンドを聴かせてくれる。逆に、ハードロックやJポップはやや刺激が抑えられた音色傾向となるため、好みが分かれるかもしれない。

ちなみに、今回の取材ではカナル型イヤホンFitEar「FitEar EST」に加えて、ヘッドホンFostex「T50RP MK3」も試してみたが、どちらもバランスのよいサウンドを聴かせてくれた。このサイズ、この価格帯でヘッドホンも充分に鳴らしてくれるのは嬉しいかぎり。また、価格を考えるとクオリティ面では充分以上の納得感が持てる。何よりも、自然で聴き心地のよいサウンドを気に入る人も多いはず。心地よい音楽を長時間楽したい人には、有力な候補となるだろう。

FiiO製DAPの新スタンダードモデル「M7」

FiiO「M7」

新世代Mシリーズのファーストモデルにして、スタンダードクラスに位置するモデル。とはいえ、機能面ではかなりの充実度を誇っていて、先日のファームウェアアップデートによりBluetoothレシーバー機能やUSB DAC機能なども利用できるようになった。

まずBluetoothに関しては、apt X/apt X HD/LDAC、さらには話題のHWA(LHDC)コーデックにも対応しつつ、レシーバー機能も搭載。スマートフォン内の音源やストリーミング系アプリのサウンドを楽しむことができる。いっぽう、USBオーディオ出力に関しては、リニアPCMは384kHz/32bitまで、DSDは5.6MHzまでを付属のUSB TypeC端子から出力することができる。また、USB DAC機能も追加され、USB DAC内蔵ヘッドホンアンプとして活用することも可能だ。メモリーは内蔵2GB。最大512GBまでサポートするmicroSDメモリーカードスロットも用意されている。

内蔵メモリーは2GBと必要最低限。512GBまで対応したmicrSDメモリーカードスロットが用意されており、音楽ファイルはこちらで管理する形になりそうだ

さらに、「M7」にはユニークな機能が搭載されている。それは、FMラジオ再生機能だ。「M7」には専用のFMチューナーチップSi4705が搭載されており、これによってFM放送を楽しむことができるのだ。しかも、Si4705はDAC(「M7」に搭載されている「ES9018Q2C」)にデジタル出力する際、音質的な妨げにはならない仕様にもなっているというので、音質的にも期待が持てる。また、FM周波数は76MHz〜108MHzと広い範囲をサポートしており、世界中で使用される帯域すべてをカバーしているという。

また、エントリー〜スタンダードクラスに位置する価格帯の製品ながら、音質に関してもかなりのこだわりが投入されているのが「M7」の特徴だ。音質の要となるDAC部は、高性能DACとヘッドホンアンプを1つの小型パッケージにまとめたSoC、ESS Technology製「ES9018Q2C」を搭載することで、低ノイズと低歪、高出力(最大49mW)を両立するとともに、192kHz/24bitまでのリニアPCMと2.8MHzのDSDのネイティブ再生に対応している。

もうひとつ、嬉しいポイントがバッテリーの持続時間だ。1180mAhのバッテリーを搭載することで、20時間以上の連続再生時間と、最大40日間の待機時間を確保している。実は、バッテリー容量は「M9」に対して約半分となるが、それでも倍の長時間再生を実現したのは、徹底した小電力設計の効果だろう。このロングライフ設計は、ありがたい限りだ。ヘッドホン出力は、3.5mmステレオミニ端子のみ。デジタル出力は用意されていない。

ヘッドホン出力は3.5mmステレオミニの1系統のみ

ヘッドホン出力は3.5mmステレオミニの1系統のみ

さて、肝心のサウンドはというと、ひとことで表現するならばエッジのハッキリした、メリハリのよい音色傾向が特徴だ。おかげで、ロックやJポップなどはノリがよく、グルーヴ感あふれるサウンドが楽しめる。とはいえ、低域の量感とか響きの心地よさなど、FiiOらしいサウンドキャラクターもうかがえる。いっぽう、解像感など細かいニュアンスの表現については「M9」に対してやや劣るが、価格を考えると充分以上のクオリティを持ち合わせている。なによりも、ハイレゾ音源とFMラジオを同時に楽しめるのは魅力的。ハイレゾもCDも、FMラジオも楽しみたい人は、一度試して欲しい製品だ。

FiiO製ハイレゾDAPのフラッグシップモデル「X7 Mark II」

FiiO「X7 Mark II」

フラッグシップ「X7」の第2世代モデル。Android 5.1をベースとしたOSを採用し、音質優先の「Pure Musicモード」とさまざまなアプリが使用できる「Androidモード」を切り替えられるほか、ヘッドホンアンプ部を交換できるアンプモジュール方式はそのままに、DACを「ES9028PRO」に変更しさらなる音質向上を推し進めたほか、ボディの薄型化や3800mAhバッテリー内蔵による8時間の連続再生&急速充電(1.5時間で満充電)などを実現している。プレーヤーメニューも一新され、Mシリーズと近い操作感に変更されているのも特徴だ。このほか、外観上は本体左側にダイヤル式のボリュームコントロールを採用した点が大きな違いとなっている。

本体左側にダイヤル式のボリュームコントロールを装備したのが初代「X7」との大きな違い

本体左側にダイヤル式のボリュームコントロールを装備したのが初代「X7」との大きな違い

アンプモジュール方式のヘッドホン出力は、数タイプがオプションとして用意されていて、そのうち2.5mmバランス出力に対応した「AM3A」と4.4mmバランス出力に対応した「AM3B」が標準付属している「X7 Mark II with AM3A」「X7 Mark II with AM3B」の2バリエーションがラインアップされている。加えて、本体上部には光デジタル/同軸デジタル兼用出力端子も搭載されている。このほか、Wi-Fiを搭載しており、DLNAによってパソコンやNAS内の音楽ファイルを再生することもできる。いっぽう、BluetoothはaptXコーデックまでの対応となっている。

アンプモジュール方式のヘッドホン出力を採用。写真は2.5mmバランス出力に対応した「AM3A」だ

アンプモジュール方式のヘッドホン出力を採用。写真は2.5mmバランス出力に対応した「AM3A」だ

このほか、内蔵メモリーを64GB搭載しているほか、1TBまで対応するmicroSDメモリーカードスロットを2基搭載するなど、フラッグシップモデルらしく、充実した内容を誇っているのも特徴だ。 付属品は、TPU製ケースと同軸デジタルケーブルに加え、専用レザーケースが付属している。クリアケースとレザーケース、好きな方を選べるのは嬉しいかぎりだ。

さて、初代「X7」に対して内部の設計を見直し、EMI(電磁干渉)を受けにくくする手法を多数投入したという「X7 Mark II」のサウンドはというと、圧倒的なノイズレベルの低さ、SN感のよさが際立った超絶クリアサウンドだ。女性ボーカルはナチュラルかつ伸びやかな歌声を聴かせてくれるし、ピアノの音も広がり感のよい、煌びやかな音色を聴かせてくれる。低域のボトムエンドまで解像度が高く、フォーカスもよいため、ベースやバスドラムの音がとても印象的に聴こえるのもいい。ハードロックはグルーヴ感の高いサウンドが楽しめるし、クラシックもふだんより上質なレコーディング、巧みな演奏に感じられる。FiiO製DAPの集大成といえる、完成度の高い製品だ。

音質を追求したミドルレンジモデル「X5 3rd」

FiiO「X5 3rd」

ミドルクラス「X5」の第3世代モデル。先代とはまったく異なるコンセプトで作られており、上位機種「X7 Mark II」の弟分といえる存在となった。タッチパネルによる直感的な操作系になったほか、「Pure Music mode」と「Android mode」が用意され、自由度の高い活用ができる。

また、apt-X対応のBluetooth接続機能も搭載しており、手軽なワイヤレス再生を楽しめるのもポイント。Wi-Fiを搭載しており、DLNAによってパソコンやNAS内の音楽ファイルを再生できるあたりも「X7 Mark II」と同じだ。

音質に関しては、先代から大きくリニューアルされている。音質の要となるDACは旭化成エレクトロニクス製の「AK4490」をLR独立で搭載し、最大384kHz/32bitのリニアPCMと5.6MHzまでのDSD再生に対応している。また、ヘッドホン出力は一般的な3.5mmに加えて、人気の高い2.5mmバランス出力端子も搭載。バランス出力ならではの良音質サウンドを楽しめるようになった。このほか、同軸デジタル出力やUSB DAC機能なども用意されている。

ヘッドホン出力は3.5mmステレオミニと2.5mmバランス出力の2系統用意。3.5mmステレオミニは同軸デジタル出力にも対応している

内蔵メモリーは32GBだが、最大1TBまで対応するmicroSDメモリーカードスロットを2基搭載しているため、かなりの大容量を確保することができる。バッテリーに関しても、約10時間の連続再生、1.5時間のクイック満充電が可能など、「X7 Mark II」同等のスペックが与えられている。

内蔵メモリーは32GBとなっており、ミドルレンジクラスのハイレゾDAPとしては少なめだが、代わりに、最大1TBまで対応するmicroSDメモリーカードスロットを2基搭載しているのはありがたい

カラーバリエーションとして、ブラック、チタンに加えてカラフルなレッドが用意されているのは「X5 3rd」ならではの展開といえる。付属品は、同軸デジタルケーブルやTPU製ケースに加え、こちらにも専用レザーケースが付属している。クリアケースとレザーケース、両方同梱してくれるのはありがたい。

肝心のサウンドはというと、抑揚表現が丁寧な印象だ。フロアノイズレベルがほどよく押さえられているおかげか、細やかなニュアンス表現までしっかりと伝わるし、高域もエッジが強すぎないため、全体的に穏やかな印象のサウンドに感じる。音色としては、「M9」に近いイメージだが、「X5 3rd」のほうが空間的な広がり感、詳細なニュアンス表現については有利な印象だ。女性ボーカルも、肉感のある歌声に感じられる。音質的なグレードは、「X7 Mark II」→「X5 3rd」→「M9」→「M7」という感じなのだろう。発売時期の問題で「X5 3rd」と「M9」の価格が近くなっているので、これ幸いに2つを比較試聴して自分好みの1台をチョイスするのも手だろう。音質では「X5 3rd」、機能性では「M9」にアドバンテージがあるので、どちらが自分にとって扱いやすいか、音が好みか、じっくり聞いて判断して欲しい。

このように、FiiO製のポータブルDAPは、それぞれに特徴のある製品となっている。特に機能性は、新モデルであるMシリーズの充実度が目立つ。どちらが自分にとってのベスト製品か、じっくり検討して、選び出して欲しい。

遠山俊介(編集部)

遠山俊介(編集部)

PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。

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