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ESS ES9038PROをデュアルDAC構成で搭載した初のポータブルDAP!Astell&Kern「KANN CUBE」

Astell&Kernの新製品「KANN CUBE(カン キューブ)」

Astell&Kernの新製品「KANN CUBE(カン キューブ)」

4月26日、アユートはHi-Fiオーディオブランド「Astell&Kern(アステルアンドケルン)」の新製品「KANN CUBE(カン キューブ)」を発表した。ハイレゾDAPのパフォーマンスシリーズ「KANN(カン)」の上位モデルという位置付けで、ポータブルDAPとして初めてESS社製の8ch DAC「ES9038PRO」をデュアルDAC構成で搭載するなど、かなり見どころの多いモデルとなっている。

発売は6月を予定しており、直販価格は199,980円(税込)だ。発売に先駆けて実際に触れる機会を得たので、実機の写真を交えながら新製品の特徴をレポートしよう。

2017年発売の「KANN」の上位モデルという位置付け。「KANN」は引き続き併売となる予定だ

2017年発売の「KANN」の上位モデルという位置付け。「KANN」は引き続き併売となる予定だ

「ES9038PRO」をデュアルDAC構成で搭載し、圧倒的な高出力再生と低ノイズ化を実現

パフォーマンスシリーズの初代モデルとして2017年に発売された「KANN」。大型のボディに超強力ヘッドホンアンプや大容量バッテリー、ライン出力などを搭載し、ほかのハイレゾDAPとは一線を画す唯一無二の存在として、発売から約2年経過する今なお高い人気を誇っている。

そんな「KANN」と同じパフォーマンスシリーズに新たに登場する「KANN CUBE」。初代「KANN」と同じ“ポータブルオーディオの楽しみ方の幅を広げてくれる新機軸のDAP”というコンセプトを共有しつつ、上位モデルとしてさまざまな部分をブラッシュアップしたという。

なかでももっとも大きな進化を遂げたのがDACだ。冒頭でも触れたが、「KANN CUBE」はESS社製の8ch DAC「ES9038PRO」をデュアルDAC構成で搭載している。これまでも、「ES9038PRO」を搭載するポータブルDAPはあったが、デュアル構成で搭載したのは「KANN CUBE」が世界初だという。

ESS社製の8ch DAC「ES9038PRO」をデュアルDAC構成で搭載。ポータブルDACでは世界だという

ESS社製の8ch DAC「ES9038PRO」をデュアルDAC構成で搭載。ポータブルDACでは世界だという

「KANN」が旭化成エレクトロニクス製DAC「VERITA AK4490」をシングル構成で搭載していたこともあり、上位モデルがデュアルDAC構成になるというは素直に理解できた。しかし、なぜ「KANN」と同じ旭化成エレクトロニクス製のDACではなく、ESS社に変更したのだろうか?

新製品を持って来日したマーケティングディレクターのテッド氏によれば、その答えは「パフォーマンスシリーズだから」だという。単にデュアルDAC構成にしたいのであれば、採用実績もあり、バッテリー的にも有利な旭化成エレクトロニクス製DACをチョイスするという選択肢もあるが、サイズ的な制約をあらかじめ設けず、性能・機能を追及して開発するパフォーマンスシリーズだからこそできることをしたかったため、ポータブルDAPとしては前例のない「ES9038PRO」のデュアルDAC構成にチャレンジしたということだ。

もちろん、デュアルDACにすることにより、DACの発熱やバッテリー消費の増大といったデメリットもあったという。こういったデメリットに対しては、重量約493gという「KANN」をも上回る大型筐体に7400mAhという大容量バッテリーを内蔵するという物量投入による力技で解決したという。

新製品を持って来日したマーケティングディレクターのテッド氏

新製品を持って来日したマーケティングディレクターのテッド氏

また、「KANN」といえば高インピーダンスのヘッドホンや平面駆動のヘッドホンといった鳴らしにくいヘッドホンも余裕にドライブできる高出力再生がウリだったが、上位モデルとして投入される「KANN CUBE」はこの部分もさらに強化。具体的には、もっとも高出力なゲイン出力High設定時の出力レベルで、アンバランス6Vrms、バランス12Vrmsとなっている。この値は、初代「KANN」はもちろん、据え置きのデスクトップ型アンプ「ACRO L1000」をも上回る数字で、ポータブルDAP単体としてはまさに驚異的といえる。しかも、これだけの高出力再生を実現しながら、ヘッドホン出力のS/N比にいたってはさらに向上しているというのだから驚きだ。このあたりは「ES9038PRO」のデュアルDAC構成を採用した「KANN CUBE」ならではの成果といえそうだ。

「KANN CUBE」と「KANN」、専用アンプを装着した「AK380」のヘッドホン出力部分の比較

「KANN CUBE」と「KANN」、専用アンプを装着した「AK380」のヘッドホン出力部分の比較

据え置き用途にも活用できるMini XLR(5ピン)出力端子を装備。SDカードスロットは残念ながら廃止に

先述したとおり、「KANN CUBE」は発熱や消費電力で課題のある「ES9038PRO」のデュアルDAC構成を採用するため、大容量のバッテリーなどを搭載した関係で、「KANN」をも上回る大型の筐体を採用している。その重量は約493g。専用アンプを装着した「AK380 SS」には届かないものの、AKシリーズの単体ポータブルDAPとしては間違いなく最重量モデルとなっている。

「KANN」と「KANN CUBE」の大きさを比較したところ

「KANN」と「KANN CUBE」の大きさを比較したところ

筐体デザインは“CUBE”という名前のとおり、立方体を組み合わせたような見た目に仕上がっている。正面から一見するとレンガブロックのような長方形に見えるが、手に持ったときのグリップ感を高めるため、左右で厚みに違いを持たせているのがユニーク。手の小さな人でも本体に指が引っかかるように、右側面に凹凸を設けているのもポイントだ。

本体の左右で厚みが異なるアシンメトリーデザインとなっており、グリップ感はなかなか良好だ

本体の左右で厚みが異なるアシンメトリーデザインとなっており、グリップ感はなかなか良好だ

ディスプレイサイズは5.0型で、解像度は1280×720ドット。ユーザーインターフェイスは、ゲイン切り替えなどの「KANN CUBE」独自の部分が盛り込まれているものの、ベースは、「A&ultima SP1000」や「A&futura SE100」、「A&norma SR15」といった第4世代AKシリーズと同じ。音楽ストリーミングサービスアプリ(Opne APK)をインストールして使用できる「Open APP Service」も、他の第4世代AKシリーズ同様に利用できる。

ヘッドホン出力のゲイン設定は本体UIから選択する形だ

ヘッドホン出力のゲイン設定は本体UIから選択する形だ

アナログ音声出力端子は、ポータブル3.5mmアンバランス出力と2.5mmバランス出力の2系統に加え、Mini XLR 5pin端子を本体左側面に搭載したのが特徴。XLR端子変換ケーブルを別途用意することで、据え置きオーディオ機器へのバランス出力も楽しめるという。なお、いずれの出力端子も、ヘッドホン出力/ライン出力兼用となっており、本体の設定画面から切り替えが可能だ。また、3.5mmアンバランス出力には、光デジタル出力機能も内包されている。AKシリーズとしては久々の光デジタル出力搭載で、光デジタル受けのヘッドホンアンプとの組み合わせも可能だ。

3.5mmアンバランス出力、2.5mm4極バランス出力は本体上部に用意されている

3.5mmアンバランス出力、2.5mm4極バランス出力は本体上部に用意されている

Mini XLR 5pin端子は本体左側面に用意

Mini XLR 5pin端子は本体左側面に用意

XLR端子変換ケーブルを別途用意することで、据え置きオーディオ機器へのバランス出力も楽しめる

XLR端子変換ケーブルを別途用意することで、据え置きオーディオ機器へのバランス出力も楽しめる

こちらは別売予定のXLR端子変換ケーブルの試作品。「KANN CUBE」と同時かちょっと後くらいに投入できるように準備中とのことだ

USB端子は最新のUSB Type-C形状を採用。USB 3.0仕様なので、ファイル転送はもちろん、本体の充電も高速に行える。もちろん、AKシリーズおなじみのUSB DAC機能もサポート。PCMは384kHz/32bit、DSDはDSD256(11.2MHz/1bit)までの入力に対応している。

内蔵ストレージは128GBで、本体右側面に拡張用のmicroSDメモリーカードスロットも用意されている。「KANN」は、フルサイズのSDメモリーカードスロットとmicroSDメモリーカードスロットの2つを備えていたわけだが、「KANN CUBE」は搭載SoCの関係でどちらか1系統のみの搭載しかできないことがわかり、他のAKシリーズとの互換性を優先してフルサイズのSDメモリーカードスロットの搭載を断念したのだという。

microSDメモリーカードスロットは本体左側面に用意されている

microSDメモリーカードスロットは本体左側面に用意されている

フルサイズのSDメモリーカードが挿入できるDAPは貴重で、便利に使っている人も多かったので廃止となったのは少々残念だが、Mini XLR 5pin端子に光デジタル出力と、多彩な出力端子は健在。オーディオトランスポーターとして大活躍してくれそうだ。

別売の専用レザーケースも準備中とのこと。カラーは2色展開になるそうだ

別売の専用レザーケースも準備中とのこと。カラーは2色展開になるそうだ

排熱に対応するため、ケース背面は「Astell&Kern」のロゴをモチーフにしたスリットが設けられている

排熱に対応するため、ケース背面は「Astell&Kern」のロゴをモチーフにしたスリットが設けられている

新旧パフォーマンスモデルを聴いてみた

今回、短い時間ではあるが、同じパフォーマンスシリーズの「KANN CUBE」と「KANN」の両方を聴き比べすることができた。試聴には、JH AUDIOのカスタムIEM「The Siren Series Roxanne」と、ヘッドホン「AK T5p 2nd Generation」を使用した。

発売前の「KANN CUBE」を一足お先に試聴

発売前の「KANN CUBE」を一足お先に試聴

DACが旭化成エレクトロニクス製からESS社製に変更なったこともあり、「KANN CUBE」と「KANN」で音色傾向はだいぶ異なる印象だった。「KANN」が心地よいサウンドで音楽を楽しく聴かせてくれるモデルとしたら、「KANN CUBE」は解像感の高さ、キレのよさで明瞭なサウンドを聴かせてくれるモデルだ。音の立ち上がり・立ち下がりの瞬発力がすごく、ドラムや弦楽器、ボーカルがいつもより鮮明に聴こえる。バランス接続にすると、聴感S/Nが向上し、音の情報量やキレもさらにパワーアップ。低域の沈み込みもよくなり、音の余韻についてもより自然なイメージになる。S/Nの高さや正確無比な表現力はさすがデュアルDACといったところ。JポップやRockなどとの相性はかなりよさそうだ。

なお、今回はライン出力については試すことができなかったが、ヘッドホン出力/ライン出力で出音の印象が違う「KANN」に比べ、「KANN CUBE」は音色傾向の違いがだいぶ抑えられているという。このあたりは後日詳細に確認してみたいと思う。

遠山俊介(編集部)

遠山俊介(編集部)

AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。

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