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Fenderギターになぞらえて音質チェック

Fenderイヤホン「Pro IEM」徹底レビュー! 全7機種をFenderゆかりの名曲で聴く

問答無用の世界的ギター&ベースブランド「Fender」(フェンダー)は、近年オーディオ分野にも積極的。イヤホンやBluetoothスピーカーなど多くの製品を展開していて、ギタリスト&ベーシストもそうでないFenderファンも、気になっている方が多いのでは? しかしそのイヤホンラインアップに目を向けてみると……モデル数ありすぎてどれ選んだらいいのかわからないよ!? 展開積極的すぎ! と思いますよね。

……というわけでここでは、Fenderイヤホンの中でもプロユースにまで対応する本格派「Pro IEM シリーズ」をご紹介。最新モデルも加えた、現行の全7機種を一気にレビューします!

ちなみに筆者は、Fenderの代表的ギター「Stratocaster(ストラトキャスター)」を愛用するFenderユーザーでもあります。そこで今回は、各イヤホンのスペックやサウンドキャラクターを、往年のFenderギター&ベースになぞらえてチェックしてみました。さらに、モデル別に聴いてほしい「Fenderゆかりの名曲」もセレクトしています。ぜひご参考ください!

新登場の「TEN 2」「NINE 2」もさっそく聴いてみましたよ! そのサウンドはどんなキャラ?

新登場の「TEN 2」「NINE 2」もさっそく聴いてみましたよ! そのサウンドはどんなキャラ?

スペックや仕様の違いをザザッと確認!

まずはラインアップの概要を確認しましょう。モデルごとの違いが1番わかりやすいのはドライバー構成ですので、そこをザザッと一覧表にまとめました。

表の左から右へと価格帯が上がるほどにダイナミック型ドライバーの口径が大きくなり、バランスドアーマチュア(BA)型ドライバーの基数が増えていきます。その原則から外れるイレギュラーなモデルはない、わかりやすいラインアップ構成です。製品名も、「ダイナミック型ドライバーの口径+BAドライバーの数」という明快な法則で名付けられています。

▼独自ドライバー搭載の音響設計

さて、表の中にいくつか独自の用語がありますので捕捉しましょう。

「HDBA」は、「HYBRID DYNAMIC BALANCED ARMATURE」の略称。ハウジングに合わせた最適化が施された、同社独自設計のBA型ドライバーです。ハイブリッド型ではない「NINE」は例外ですが、そのほかダイナミック+BAのハイブリッド型全モデルに搭載されています。

「HDD」は、「HIGH DENSITY DYNAMIC」の略。高密度マグネシウム-チタン合金振動板採用のダイナミック型ドライバーです。この技術は口径10mm以上のモデルに搭載。

そのほか技術面では、「TEN」以上のモデルのハウジングには、「3Dプリント・デジタルハイブリッドテクノロジー」「Atmospheric Pressure Equalization Port」を採用。おそらく、「より大口径かつ多数のドライバーを搭載しつつ、耳への収まりのよいハウジング形状の実現」「大口径ダイナミック型ドライバー周りの空気の動きを最適化して、低域再生の質を引き上げ」といった必要性から投入された技術でしょう。

▼リケーブル端子が何気にポイント

全モデル共通のポイントとしては、体温によってとてもソフトになる同社独自のイヤーピースのほか、既存端子との互換性を保ちつつ、ちょっとした工夫を盛り込んだリケーブル端子にも要注目です。

ケーブル側の端子にもFenderの「Fロゴ」。ちょっとうれしいですよね

ケーブル側の端子にもFenderの「Fロゴ」。ちょっとうれしいですよね

イヤホン側端子に凹、ケーブル側端子に凸が刻まれています

イヤホン側端子に凹、ケーブル側端子に凸が刻まれています

基本的には、イヤモニでよくある2pin端子です。しかし、細かい部分なので写真では少しわかりにくいかと思いますが、イヤホン側端子に凹、ケーブル側端子に凸が追加されています。Fenderの説明によると、「Talon 2pinコネクター:より強度の高い接続を可能にする独自デザインの2pinコネクター」とのことですが、この端子には強度のほかにもメリットが。

それは、「表裏を間違えて接続できない」ことです。端子の表裏を間違えて接続してしまうと音の「位相」も裏返ってしまい、音を正しく再生できません。しかしこの端子は凹凸を合わせないと接続できないので、必ず正しい表裏、正しい位相を確保できるのです。

そしてイヤホン側の端子形状は凹なので、凸が刻まれていない汎用的なリケーブルとの互換性も維持されています。他社ケーブルの使用は保証外でしょうが、リケーブルという楽しみ方への配慮はしてくれているわけです。

全7機種のサウンドキャラクターをザザッと紹介!

続いて、各モデルの細かなポイントや音質についてですが、まずはザザッと一覧表でサウンドキャラクターの違いをご紹介しましょう。周波数帯域バランスの印象と音調の印象をグラフにして、ひと言コメントも添えてみました。

ラインアップはダイナミック型の口径で大きく「NINE」「TEN」「THIRTEEN」のグループに分けられるのですが、「同じグループの中では、上の価格帯でドライバー数が多いモデルの方が同タイプのサウンドで上位互換! ……なわけでもない」というのがおもしろいです。

Fender的な表現で言うと、各グループのモデルには大まかに以下のような共通点があります。

●NINE:Mustang Bass〜Precision Bass的に小気味よく快活な迫力。
●TEN:Jazz Bass的にフラットに伸びる迫力で対応力も幅広いオールラウンダー。
●THIRTEEN:Precision Bass的にあたたかく豊かな太さと広がりのあるオーディオ的ピラミッドバランス。

「ムスベっぽい」とか「ジャズベっぽい」とかは完全なる筆者主観ですが。しかし同グループ内でのモデルごとのキャラクターの違いも小さくはありません。単純に、「NINE 1よりNINE 2のほうが、価格が上だから音もよい」「TEN 3よりTEN 2のほうが、価格が下だから音も負ける」とは言えないサウンドなのです。

価格やスペックの上下よりも、「どちらのキャラクターが自分の好みに合うか」のほうが大切になります。特に新登場の「NINE 2」「TEN 2」は、それぞれのグループの中でこれまでにないキャラクターも備えているのでそれが顕著です。

ちなみにFenderイヤホンのフェイスプレートに刻まれた「Fロゴ」は、同社ギターのネックジョイントプレートや……

いわゆる「F-Key」ペグの意匠として有名なものです

いわゆる「F-Key」ペグの意匠として有名なものです

全7モデル個別レビュー&筆者イチオシの1曲をセレクト!

上述の概要を踏まえていただいたところで、いよいよここからはモデルごとのインプレッションをお届けしましょう。世界中のミュージシャンに愛されてきたFenderの往年の名機たちをベースにしながら、1機種につき1曲ずつゆかりの楽曲をセレクトしてレビューしてみました。

1.「NINE」のパキッと抜けるサウンドで、山下達郎「SPARKLE」が超はかどる!

型番:Pro IEM NINE
ドライバー:9.25mmダイナミック
カラバリ:BLACK METALIC、OLYMPIC PEARL

Fenderのイヤーモニターシリーズで最もお手頃価格のエントリーモデル。ドライバー構成もほどよい口径の「ダイナミック型一発」とシンプルです。ダイナミック型ドライバーを搭載するので、イヤモニ型イヤホンとして特に小型ではない普通のサイズ感ですが、しっかり調整された形状のおかげでフィット感もグッド! Fenderの代表的ギター「Stratocaster」のコンターボディのようにしっくりと耳に収まります。

カラバリでは「OLYMPIC PEARL」がこのモデルのみのカラーとなっています。Fender製品のカラーとしては1979年の「25th Anniversary Stratocaster」の初期製造分のみに採用された「Pearl White」からの引用でしょうか。当時のその色の塗料にトラブルがあったらしくすぐにSilverに切り替えられてしまったという不運のカラーです。

そしてサウンドもシンプル! ベースの太さを出してくれるミッドロー、ギターやボーカルにパキッと心地よい硬質さを出してくれるハイあたりの帯域に適度なアクセントがあり、迫力を演出しつつスッキリとした抜け感もあります。ワイドレンジを狙いすぎずに無理のないレンジ感の中でまとめた、気持ちよい音作りです。ローエンドの豊かさまでは出せないのはショートスケールベースの「Mustang Bass」を思い起こさせますが、そこがないからこそのリズムの軽やかな転がり具合も悪くないものです。

▼NINEで聴くならこの曲!

Fenderにゆかりのある曲からこのイヤホンで聴くと特に楽しそうなものとして、山下達郎さん「SPARKLE」をあげておきます。冒頭ギターの「あのカッティング」は日本のロック・ポップス史に燦然と輝くカッティングですよね。

そのカッティングを含めて全て「Telecaster」で演奏されているそうですが、そのテレキャスらしいパキッと抜けてくるアタック感の表現がこのモデルは秀逸! またこの曲はスラップ奏法を中心に組み立てられているベースのアタック感の表現も大切で、そことの相性も良好です。

2.「NINE 1」のナチュラルサウンドで、The Police「Every Breath You Take」絶妙の演奏を見つめていたい

※本記事で使用したNINE 1の写真はサンプル機のものです

※注:本記事で使用したNINE 1の写真はサンプル機のものです。写真の通りサンプル機では「F」ロゴが彫り込みになっていますが、量産機ではプリントロゴに変更されています

型番:Pro IEM NINE 1
ドライバー:9.25mmD+1BA
カラバリ :BLACK METALIC、GUN METAL BLUE

「ダイナミック型+BA型を各1基」という、ハイブリッド型の最小構成モデルです。そういう意味ではこちらもシンプル。またこの次に紹介する新モデル「NINE 2」も含めて、ハウジングのサイズや形状はこのグループ全モデルほぼ共通。少なくとも見た感じでは違いがわかりません。なので、フィット感の良好さも共通です! カラバリでは「GUN METAL BLUE」がこのモデルのみのカラー。メタリック系のブルーというと、Fenderカラーでは「Lake Placid Blue」がありますね。

(※2019/7/5追記 注釈&修正のお知らせ:本記事で使用したNINE 1の写真はサンプル機です。記事初出時、NINE 1の「F」ロゴが彫り込みであると記載しておりましたが、その後メーカー側で仕様変更があり、現在市場で販売されている製品版ではプリントロゴになりましたので該当個所を修正しました)

サウンドは……まず「NINEにBAドライバーを追加して高域側を伸ばしたらどうなるかな?」というのを想像してみてください。はい、たぶんほぼその想像通りです!

NINEだと声やギターのチャリンシャリンという鈴鳴り感が高域側のてっぺんにある感じで目立つのですが、NINE 1ではその上の帯域の細やかな響き、音のほぐれやリバーブ感の存在感も増します。すると相対的に鈴鳴りが目立ちすぎないようになり、全体的によりナチュラルな感触です。低域側の感触はあまり変わらず、やはりムスベ的。

自然というのは、言い換えれば「やや地味」でもあるので、わかりやすい音のNINEのほうが好きという方もいるかもしれません。そこはお好み次第です。

▼NINE 1で聴くならこの曲!

こちらもFenderにゆかりのある曲からこのモデルに合う曲をピックアップするなら、The Police「Every Breath You Take」なんていかがでしょうか? ベーシストのスティングさん、ギタリストのアンディ・サマーズさん、ともに長らくFenderを愛用しています。サマーズさんのテレキャスはFender Custom Shopの限定品としてその再現モデルも発売されていました。

あえてほとんど動かない素朴なベースラインに、このイヤホンは素直な低音表現で対応します。絶妙の空間エフェクトで立体感を出すギターの、その空間エフェクトの細やかさと響きもこのモデルならしっかり届けてくれます。

3.「NINE 2」のウォームな音色で、荒井由実「ひこうき雲」のメロウさに浸る

型番:Pro IEM NINE 2
ドライバー:9.25mmダイナミック+2BA
カラバリ :Competition Orange

こちらは、発表されたばかりの新モデルです! ハイブリッド構成で高域側を担当するBAドライバーが2基に増えました。「低域ダイナミック+中域1BA+高域1BA」ではなく「低域ダイナミック+中高域2BA」とのことです。前述の通り、ハウジングのサイズや形状はグループ全モデルほぼ共通なのでこちらもフィット感良好!

ルックス的にはカラーに注目。マニア待望?の「Competition Orange」です。60年代後半からのFender「Mustang」や「Musutang Bass」に見られるカラーですよね。カラバリ展開なしでこの1色で出してきたあたり、Fenderもオレンジ推し? ちなみに、現時点のFenderイヤホンラインアップで、カラーの名称が「Fenderの伝統色・ビンテージに存在した色名称ドンズバ」というのはこの「Competition Orange」だけかと思います。

そしてそのサウンド。BAを2基にしたことで単基ごとの負担が減ってハイエンドも伸びていると思うのですが、それより明確にわかるのはミドルレンジの充実です。ボーカルやベースの厚みがぐっと増しています。するとさらに相対的に、高域のアクセント、それによる硬質さは目立ちにくくなり、全体にややウォームな感触。

なので、ガツンと聴きたいロックよりも、ボーカル中心に浸りたいポップスやソウルとの相性のよさが印象的です。たとえば、ひとつの曲の中にクラブ系のゴツいリズムとメロウでソウルフルなボーカルが混在していたりするときには、後者のメロウな一面のほうをより強く押し出してきてくれます。

▼NINE 2で聴くならこの曲!

Fenderにゆかりのある曲からメロウなポップスとなると、荒井(松任谷)由実さん「ひこうき雲」が思い浮かびます。ギターの鈴木茂さんは日本を代表するストラトマスターのおひとり。そして細野晴臣さんは、このレコーディングではフレットレスの「Precision Bass」をお使いとのことです。

全体の雰囲気が合うことはもちろん、やはりフレットレスベースによる少しモコっとした感触の音色との相性がばっちりです。まあ細野さんはフレットレスでなくても親指によるピッキングとミュートの効かせ方でモコっと系の音を出してくるのですが、とにかくこの曲のベースとこのモデルの中低域の豊かさは実にしっくりとマッチします。

4.「TEN 2」のグッドサウンドで、椎名林檎「丸の内サディスティック」を堪能

型番:Pro IEM TEN 2
ドライバー:10mmダイナミック+1BA+1BA
カラバリ :Metallic Blue、Metallic Red

ここから「TEN」グループですが、いきなり新モデルの登場です。従来は「NINE 1」と「TEN 3」の間が価格的にかなり跳んでいたのですが、そこに「NINE 2」とこの「TEN 2」が入ってきた形となります。

ドライバー構成は、低域+中域+高域の3wayの各帯域に「ダイナミック+1BA+1BA」の割り当て。ハイブリッド3wayの基本パターンです。NINEと同じくTENもグループ内ではハウジングのサイズや形状は共通に見えます。フィット感も基本的に一緒。大口径ドライバー搭載ですのでイヤホン全般としてみれば大柄な部類ですが、その割に悪くないフィット感です。

カラバリでは「RED METALIC」がこのモデル用に追加された新色です。Fenderでメタリックレッドといえば「Candy Apple Red」ですが、それとは全く別。マットで深いワインレッドといった印象を受けます。

加えてこのモデルに限り、既存のTENグループから変えてきているポイントもあります。「THIRTEEN 6っぽさを感じられるデザイン要素」と言えるかもしれません。

まずハウジングの耳に当たる側がクリア素材に。おかげで内部構造をのぞくことができるのですが、音導管が4本見えるのが気になりますね。出どころが見えるのはBA2基からの各1本ずつと、ダイナミックからの1本。もう1本の出所はフェイスプレート側に隠れていて見えないのですが、ダイナミック型の反対面からでしょうか?

たしかに独特な音響構造が仕込まれているようです

たしかに独特な音響構造が仕込まれているようです

あと「Fロゴ」の彫り込みの下地もTEN 3やTEN 5とは違っていて、THIRTEEN 6と同じく金属っぽい感じです。またイヤーピースを装着する「ステム」部分の色合いもTENグループの既存モデルとは異なります。素材は同じアルミですが、仕上げの色を変えてあるとのこと。

既存のTEN 3、TEN 5はアルミの素材色を生かした仕上げ

既存のTEN 3、TEN 5はアルミの素材色を生かした仕上げ

そしてそのサウンドは、TENグループの中ではやや低重心でウォームといった印象。中低域側は「Jazz Bass」的にフラットに広くカバーしていますが、ネック側ピックアップのボリュームを上げめにして「Precision Bass」的なローミッドの太さも加えてある感じです。Fenderっぽさにこだわらず普通に表現すると「ディープなローエンドまで伸ばしつつ中域側には適度なふくらみを持たせてある」といったところです。

高域側では感触のなめらかさが印象的。ボーカルの手触り感などがざらつかずに聴き心地がよいです。中低域の充実で、ボーカルの胸に響くような低音がしっかりと感じられるのもポイント。

▼TEN 2で聴くならこの曲!

Fenderにゆかりのある曲からのセレクトとしては、椎名林檎さん「丸の内サディスティック」をプッシュ! 亀田誠治さん愛用の1966年製「Jazz Bass」のサウンドは90年代終盤以降のJ-Popにはかかせません! こちらは林檎さんご本人がライブで歌い続けているだけでなく、さまざまなミュージシャンにもカバーされている名曲です。

初期の椎名林檎さん楽曲は過激な音作りをしているものも多いですが、この曲はさほど過激ではありません。なので、このモデルのように「ワイドレンジかつ聴き心地もよい」という、いたって普通にグッドサウンドなイヤホンで聴くのもいい感じです。

それに、このモデルは音像の描き出し方が全体に少し大柄な印象もあるのですが、本曲は楽器の数が多くないので、1つひとつの楽器が少し大柄になっても窮屈ではありません。むしろ楽器の存在感がいい感じに強まります。もちろんベースも含めて!

5.「TEN 3」のフルレンジ再現で、Daft Punk「Get Lucky」のギターもベースも満喫

型番:Pro IEM TEN 3
ドライバー:10mmダイナミック+1BA+1BA+1BA
カラバリ :FLAT BLACK、PEWTER

ここからTENグループ既存モデル。こちらは低域+中域+高域+超高域の4wayに「ダイナミック+1BA+1BA+1BA」を割り当てたドライバー構成のモデルです。そしてこれも前述のように、ハウジングのサイズや形状はおそらくTENグループ共通なのでフィット感も共通。大柄ではあるけれど抱え心地は悪くない「Jazzmaster」的な装着感は、「3Dプリント・デジタルハイブリッドテクノロジー」の威力でしょうか。

このモデル独自のポイントはカラバリの「PEWTER」です。元々はそういう名前の合金があるようなのですが、Fenderカラーとしては近年の「Eric Clapton Stratocaster」のカラバリのひとつとしておなじみ。基本的にはMetalic Grayをイメージしてもらえればそんな感じです。

TENグループの中でというかラインアップ全体を見ても、特にフラットな特性を備えるのがこのTEN 3、そしてTEN 5です。低域側の充実に対して中高域側の充実も拮抗し、全帯域により一層のスピード感やキレが加わっています。特にベースやドラムはぐっと低く沈み込んだ低重心のままでキレを増しているので、リズムの正確性と迫力、どちらも大満足!

ボーカルやシンバルのシャープな成分は、場面ごとに異なる鋭さや硬さも、ほぐれたやわらかさも、どちらもうまく表現してくれます。音源に収められている音色を素直に再現してくれるわけです。

▼TEN 3で聴くならこの曲!

Fenderにゆかりのある曲からのピックアップとしては、Daft Punk feat. Pharrell Williams「Get Lucky」を推します。言わずもがな、カッティング神ナイル・ロジャースさんが参加している曲。愛用の1959年製でハードテイル仕様のストラト「The Hitmaker」は、Fender Custom Shopからトリビュート再現モデルも発売されました。

そのロジャースさんによるキレッキレのカッティングのキレッキレっぷりはもちろん、ネイザン・イーストさんによる腰のすわった貫禄のあるベース! その重みがありつつの踊らせてくるグルーヴもがっつり伝えてきてくれます。ギターのカッティングをメインに楽しむならNINE系のモデルでもいけるのですが、加えてベースも満喫したいとなると大口径ドライバー搭載なTEN系の出番です。

6.「TEN 5」の明瞭度で、星野源「アイデア」のバンド&エレクトリックの二面性サウンドを凝視

型番:Pro IEM TEN 5
ドライバー:10mmダイナミック+2BA+2BA+1BA
カラバリ :FLAT BLACK、SILVERBURST

TENグループのトップエンド。こちらは低域+中域+高域+超高域の4wayに「ダイナミック+2BA+2BA+1BA」を割り当てたドライバー構成です。この上の「THIRTEEN 6」との間にはかなりの価格差があるので「何とか買える限界価格がコレ」という方も少なくないのでは……。

ハウジングのサイズや形状、フィット感についてはTENグループ共通。イヤホン全般として見れば大柄な部類ですが、大口径ドライバー搭載のイヤモニタイプとしては可能な限りコンパクトにまとめられています。また手に持つと「見た目よりも軽い」という印象。その軽さも装着感に貢献しているかと思います。

カラバリに目を向けると、「SILVERBURST」がこのモデルのみのもの。遠目には「普通にシルバーでは?」と見えるかもしれませんが、外周部分はブラックで、そこからグラデーションでシルバーになっています。

サウンド面では、各グループの中で「NINEとNINE 1」「TEN 3とTEN 5」はそれぞれ比較的近いサウンドキャラクターを備えたモデルと感じます。逆に言うと、追加されたNINE 2とTEN 2は各グループに少し新しいニュアンスも導入したサウンドというわけですね。

そんなわけでこのTEN 5は、TEN 3と同じく「ワイドレンジかつおおよそフラットで、スピード感やキレにすぐれる」モデルです。その土台は共通したうえで、このモデルならではの個性としては、「中高域のドライバーに余裕があるおかげか、音がさらにすっと抜けていくので空間表現に余裕余白が生まれてより明瞭になっている」ところ。1つひとつの音や分離感もよりくっきりとし、音の配置のされ方や空間全体の見え方がより明瞭です。

総じて「ややナチュラル系なTEN 3に対して、ややクリア系なTEN 5」といった感じでしょうか。TEN 3を60年代のジャズベとすればTEN 5は70年代のジャズベみたいな印象、と表現すると一部ジャズベマニアには伝わりやすいかもしれません。

▼TEN 5で聴くならこの曲!

このモデルで聴きたいFenderにゆかりのある曲としては、星野源さん「アイデア」をあげておきます。バンドサウンドとエレクトリックサウンドが大胆に切り替わる曲展開。そのバンドサウンド側として活躍するギタリストの長岡亮介さんは、さまざまなギターをお使いですが、その核にあるのは「Telecaster」サウンド。ベーシストのハマ・オカモトさんは1968年製「Precision Bass」を愛用しており、Fenderからシグネーチャーモデル「Hama_Okamoto Precision Bass」も発売されています。どちらの音色もこのイヤホンはバッチリ再現。

またエレクトリックサウンドの再現においては、このモデルの空間表現の明瞭さが際立ちますし、MPCによるカチッと立ったやや硬質なアタックのリズムもまさにその「カチッとした硬質さ」を生かして描写してくれます。バンドサウンドもエレクトリックサウンド度も、みごとに描き切ってくれるモデルです。

7.「THIRTEEN 6」の真の力で、Led Zeppelin「When The Levee Breaks」の空気感をよみがえらせる

型番:Pro IEM THIRTEEN 6
ドライバー:13.6mmダイナミック+2BA+2BA+2BA
カラバリ :Flat Black

NINEとTENは3モデルずつでグループを構成していますが、こちらTHIRTEEN 6は孤高の1モデル! ダイナミック型ドライバーの口径もBA型ドライバーの搭載数もラインアップ中で最大! カラーバリエーションもFlat Blackのみと一点勝負!

最大級口径のダイナミック型ドライバーを搭載しているのでハウジングはかなり大柄です。ですが、ラインアップ中で唯一このモデルだけがカスタムイヤホンのように複雑なカーブで耳にフィットするフォルムを採用。そのぴったりフィット感で大柄さを補い、十分な装着感はしっかり確保してあります。

他のモデルも曲線的ですが、このモデルは特に複雑な形状で耳にフィット

他のモデルも曲線的ですが、このモデルは特に複雑な形状で耳にフィット

ハウジングの一部にスモーククリア素材。ステムは金メッキ仕上げのベリリウムカッパー

ハウジングの一部にスモーククリア素材。ステムは金メッキ仕上げのベリリウムカッパー

そのサウンドですが、まず注意点としてこのモデル、音楽プレーヤーが搭載するアンプの力次第で音が大きく変わります。もちろんどんなイヤホンだってよりよいアンプと組み合わせれば、よりよいサウンドになりますが、このモデルはそこが極端! 正直、パワー不足のアンプで鳴らすと低域を制御しきれずにボワンボワンした感じになりがちです。しかしそこを制御しきれる力のあるアンプで鳴らすと、低音の量感はたっぷりなまま、そのたっぷりの低音がグイッと的確に制御されて、実にゴージャスな感触になってくれるのです。

ではその「そこを制御しきれるだけの力のあるアンプ」とは具体的にはどんなクラスかというと、「ポータブルプレーヤーとしてはトップクラス」あるいは「据え置きヘッドホンアンプレベル」といった領域。……ハードル高い! このモデル自体がかなりの高価格ですが、本気で考える際はプレーヤーやアンプまで含めてチェックしてみてください。

しかし、そのハードルをクリアしたときに聴けるサウンドは、とにかく豊かなものです。イヤホンではめずらしい、古典大型オーディオのようにどっしりとしたピラミッドバランスでありつつ、現代的な明瞭度も十分に確保。低音はローミッドのボリューム感をプレベ的に盛大に出しつつ、イマドキのベースっぽい超重低音までの伸びも備えています。

とはいえ、ラインアップの中でも低音中心にキャラが特に強いモデルなので、ユーザーを選ぶタイプです。その意味でもこのモデルはまさに「孤高のハイエンド」と言えるでしょう。

▼THIRTEEN 6で聴くならこの曲!

そしてこの孤高のモデルで聴きたいFenderゆかりの曲は、Led Zeppelin「When The Levee Breaks」です! ベーシストのジョン・ポール・ジョーンズさんはさまざまなベースを使ってきていますが、メインベースとしてイメージされるのはやはり「Jazz Bass」ですね。

とか言いつつ、この曲とこのモデルが合う主なポイントは、実はドラム! 洋館の吹き抜けの場所にドラムを設置して階段の上にマイクを設置したとか、暖炉の前にドラムを設置して煙突の中にマイクを設置したとか諸説ありますが、とにかく独特すぎて豊かすぎる空気感、響きのあるドラムサウンドです。その響きをここまで存分に響かせまくってくれるイヤホンは滅多にありません!

各モデルに個性あり! 充実すぎるラインアップを実感

というわけで、Fenderイヤホン全モデルをしっかり聴いてみたら、各モデルにそれぞれ異なる個性が与えられていることを確認できました。将来的にはもう少し整理したほうがユーザーにもわかりやすいでしょうが、これはこれで自分に合うモデルの探しがいがあるかも。

Fenderユーザー目線であえて今後への希望を述べるなら、NINE 2のCompetition Orangeのようなポップ系のFender伝統カラーのラインアップも欲しい! そう思うのは僕だけではないはず。Fenderさん、Daphne Blueとかどうですか?

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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