アップル「AirPods Pro」といった人気モデルから、Jabra「Elite Active 75t」などのスポーツ特化型モデルまでピックアップ!
ランニングは、いつでもどこでもひとりで行える手軽さがあり、運動不足解消のためにも習慣にしたいスポーツだ。そんなランニングに付き物なのが音楽。集中力やモチベーションを上げられるうえに、そのリズムはランニングのちょっとしたペースメーカーの役割も担ってくれるからだ。
ランナー向けのイヤホンの中で昨今ブームなのが、完全ワイヤレスイヤホン。大前提として、ケーブルのわずらわしさから解放されることでランニングがより快適に行えることはさることながら、防水・防汗性能や装着性が優秀なモデルが増えてきたのが理由だ。また、ランニングでは屋外を走ることが多いため、クルマの走る音などの外部音を取り込む機能を搭載するモデルも登場してきている。
そんなスポーツ向け完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ際には、重低音再生能力もチェックしておきたい。走行中は周囲の環境音や自分の呼吸音により、重低音がクリアに聴き取れない場合がある。また、身体の振動によってイヤホンがズレたりすると、重低音が聴こえづらくなることも。これらを踏まえ、スポーツ時でも十分な重低音のパワーを確保しているかが重要なのだ。
そこで本稿では、ランニング向けモデルとして候補にあげられる5機種をピックアップ。実際に着用してランニングを実施し、装着性、重低音、操作性、携帯性を中心に採点レビューする。
下の写真は、左から、アップル「AirPods Pro」、Beats by Dr. Dre「Powerbeats Pro」、ソニー「WF-SP900」、JVC「XX HA-XC50T」、Jabra「Elite Active 75t」
2019年10月30日に発売されたアップル「AirPods Pro」
アップル「AirPods Pro」は、価格.comの売れ筋ランキングにおける「イヤホン・ヘッドホン」「カナル型イヤホン」「Bluetoothイヤホン」といった多くの部門で、1位を獲得している人気モデル(2020年4月7日時点)。従来の「AirPods」はオープン型だったが、カナル型(耳栓型)に変更され、フィット感が向上。また、新機能として、周囲のノイズを取り除く「アクティブノイズキャンセリング」や、逆に音楽を聴きながら周囲の音も聞ける「外部音取り込みモード」を搭載している。
スポーツ特化型の形状ではないが、耳のくぼみにフィット
実際に着用して走ってみると、イヤーフックなどの固定パーツが付属されていないにもかかわらず、想像以上に耳からズレにくい。「AirPods」シリーズ特有の、本体を耳のくぼみに引っかける構造が、筆者の耳にはうまくフィットするようだ。ただし、ウォーミングアップで腕を大きく回すような動きをする際は、引っかけて落とさないように注意が必要だ。
操作性も悪くない。下に延びるステム部をつまむことで再生/停止などが行えるため、ランニング中に身体が上下に揺れる中でも、問題なく操作できた。
操作は指で軽くつまむだけなので、その際に本体が耳からズレてしまうことも少なかった
サウンドは、スポーツに最適なチューニングが施されているわけでなく、中域に厚みを持たせたているのが特徴。低音は、曲本来の重低音より高めの部分が強く鳴って低音として聴こえており、それが包み込むようなサウンドの一部として聴こえてくる。新機能の「アクティブノイズキャンセリング」の効果はすばらしく、静か過ぎるほどではあるが、やはりランニング中は、周囲の音も拾ってくれる「外部音取り込みモード」を選んだほうが安心して走ることができた。
連続再生時間は、4.5時間と比較的短い。しかし、充電ケース「Wireless Charging Case」が軽量コンパクトで、走行中にウェアのポケットに入れておいても気にならないうえ、充電ケースでの5分間の充電で約1時間再生できるため、電池切れの不安はあまりない。
本体の連続再生時間は最大4.5時間ではあるが、「Wireless Charging Case」で複数回充電することで、合計24時間以上の再生が可能
4項目の各採点は10点満点で、NCは「ノイズキャンセリング」機能の有無(以下同)。「操作性」は、押しやすいが音量操作が不可なので「8」。「携帯性」は、小型ケースはプラスのいっぽう、スタミナを考慮して「9」にした。なお、「スタミナ」の「アクティブノイズキャンセリング」オン時で4.5時間、「アクティブノイズキャンセリング」と「外部音取り込みモード」オフ時で5時間
【より詳しいレビューはこちらをチェック!】
アップル「AirPods Pro」のノイズキャンセリング効果は想像以上! 遮音性も装着性もアップ
2019年5月に発売された「Powerbeats Pro」の「アイボリー」
Beats by Dr. Dreは、アップル傘下で「AirPods」シリーズとは異なるイヤホンを展開しているブランド。なかでも「Powerbeats Pro」は、イヤーフックが付いたスポーツ特化型の完全ワイヤレスイヤホンだ。耐汗・防沫仕様で、防滴レベルはIPX4に準拠する。
耳の上にイヤーフックを引っかけて固定
実際に装着してみると、耳周りのイヤーフックがガッチリとホールドしてくれた。そのいっぽうで、慣れないうちは耳にイヤーフックをかける装着方法に少しとまどい、片手で装着するのには慣れが必要そうだった。走ってみると、走行中はもちろん、走行中にボタンを操作してもズレる気配はまったくなし。
操作は、本体端に搭載された「b」ボタンと、本体上部に搭載された音量ボタンを使用。楽曲の再生/停止は「b」ボタンを使い、音量の上げ下げは別の独立したボタンを使うので、直感的に操作できるのがうれしかった。
本体上部の音量ボタンは、左右どちらにも搭載されている
サウンドは、耳奥でしっかりと再生された。低音はパワフルとは言えないが、中高域の音のクリアさは優秀だった。
問題は、77(幅)×40(高さ)×77(奥行)cmの大型充電ケースだ。ランニングウェアのポケットに入らなくもないが、大きくふくらむので携帯して走るのは非現実的。とはいえ、連続再生時間は約9時間を誇るので、充電ケースなしでも日々のトレーニングには十分対応できるだろう。
Beats by Dr. Dreブランドではおなじみの「Fast Fuel」機能を搭載しており、5分の充電で約1.5時間再生できる
音量調整ボタンが独立していて便利なことなどから「操作性」は満点に。スタミナは高評価だが、本体やケースのサイズ感から「携帯性」は「6」にした
2018年10月に発売された「WF-SP900」の「ブラック」
「WF-SP900」は、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンの中で特にスポーツ色の強いモデル。水泳にも対応する「IP65/IP68」の防水・防塵性能を備えるうえ、環境音や人の声などの外音を取り込む「アンビエントサウンドモード」も搭載する。
最大の特徴は、920曲の楽曲を保存できる4GBのメモリーと音楽プレーヤーを内蔵していること。今回のレビューではスマホと接続して使ったが、PCと接続して楽曲ファイル(MP3、AAC、WAV、FLAC)を本体に転送すれば、スマートフォンや別の音楽プレーヤーを携帯せずにランニングできる。
横長の本体が特徴的。イヤーピースは4サイズ、「アークサポーター」は3サイズ同梱される。なお、イヤーピースは装着位置を2か所から選択可能
実際に装着してみると、耳甲介(じこうかい)という耳の穴のすぐ外側にガッチリとフィットする「アークサポーター」のおかげで、走行中に身体が上下しても本体はまったくズレなかった。
操作は、本体下部の物理ボタンを押す回数によって「再生/一時停止」やモードの切り替えなどが可能。音量調整のみ、本体のブランドロゴの横に内蔵された「タップセンサー」を2回タップすることで行える。物理ボタンは、本体を指でつまむように押すため操作しやすいが、「タップセンサー」は指で特定の位置を触れなくてはならないので、特に走行中の操作は慣れが少し必要だった。
右耳側の物理ボタンは「再生/一時停止」「曲送り/曲戻し」「電話の受話/終話」が行え、左耳側の物理ボタンは「『アンビエントサウンドモード』のオン/オフ」や「プレーヤーモード/ヘッドホンモード切り替え」などが操作できる。覚えるのが少々大変そうだ
サウンドは、スカッと耳に届く音質だが、標準設定だと低音はパンチが弱め。その場合は、スマホアプリ「Headphones Connect」を使ってイコライザーを調整したい。「Bass Boost(バス ブースト)」モードであれば重低音の強さを調整できるので、走行中にちょうどよいレベルまで引き上げるのがオススメだ。ちなみに、「Bass Boost」を含む8種類のプリセットから好みのエフェクトが選べるうえ、別でカスタマイズも可能だ。
スタミナは、スマホと接続する「ヘッドホンモード」では3時間と短めだが、トレーニング用としては十分。マラソン大会などで長時間利用したい場合は、内蔵メモリーとプレーヤーを使用し、最大6時間の連続音楽再生が可能な「プレーヤーモード」を選びたい。
充電可能な専用ケースのサイズは、70(幅)×46(高さ)×70(奥行)mm。ランニングウェアのポケットには少々大きく、携帯するかは少々悩むサイズだ。
専用ケースでは、「プレーヤーモード」なら最大2.5回分、「ヘッドホンモード」なら最大3回分の充電が可能
「操作性」は、基本機能はほぼ揃うが物理ボタンとタップ併用の面倒さなどを考慮してマイナス1。本体やケースが大きいのにもかかわらず、スタミナも少なめなので「5」。なお、連続再生時間は、「ヘッドホンモード」で最大3時間で、「プレーヤーモード」で最大6時間
2020年3月に発売された「Elite Active 75t」の「ネイビー」
アメリカのオーディオ機器ブランド、Jabraの「Jabra Elite Active 75t」は、IP57の防塵・防滴仕様で、ランニングを始めとしたスポーツ用に作られた中型サイズの完全ワイヤレスイヤホン。
一見すると、装着性を高めるフックなどのないシンプルな形状だが、イヤーピース(イヤージェル)はシリコンを用いた独自仕様。実際に装着して走ってみると、すぐにズレることはなかったが、3サイズ同梱されるイヤーピースは自分に合ったサイズをしっかりと選びたい。
耳にフタをするようにフィット
操作は、本体外側のボタンを使用。触れる面が広く、軽くタッチしても反応するのでランニング中でも操作しやすく、本体も耳からズレにくい。外の音を取り込む機能「HearThrough(ヒアスルー)」のオン/オフは、左耳側のボタンを1回押すことで利用可能。オンの時は、ややクッキリと周囲の音を拾うようになる。
ボタン操作は、軽めの押し込みで反応
サウンドは、プリセット「低音ブースト」の設定にした場合、ランニング中でもズンズンと身体に響く重低音サウンドが気持ちいい。音質はスマホアプリ「Jabra Sound+」から調整可能で、「デフォルト」にすればフラット志向になり、「エネルギー」を選べば歌声もクッキリと聴ける、よりドンシャリのセッティングに調整できる。
スタミナは、フルマラソンでも通用する最大7.5時間。充電ケースは、62.4(幅)×27.0(高さ)×36.6(奥行)mmとコンパクト設計なので、スポーツウェアのポケットに入れたままランニングしても気にならないのもうれしい。
本体のみで最大 7.5 時間、充電ケース使用で最大 28 時間まで連続使用が可能。なお、充電に使用するケーブルはUSB-Cだ
左右のボタンを長押しで音量操作可能なので「8」
2019年11月に発売された「XX HA-XC50T」の「ターコイズブルー」
JVCの重低音シリーズ「XX」の「HA-XC50T」は、見た目にもスポーティーな小型の完全ワイヤレスイヤホン。全体的にシンプル設計に仕上げており、今回紹介する5機種の中では唯一1万円を切っているお手頃モデルだ(2020年4月8日時点の価格.com最安価格)。
本機は、イヤーピース以外に装着感を高める工夫はないが、IP55相当の防水・防塵に対応しており、スポーツでガツガツ使えそう。ただ、実際に装着して走ってみると、足の踏み込む衝撃から本体に若干のズレが発生。そのせいで、サウンドが安定しないことも多少あった。
今回紹介する5機種の中で最も小型
操作は、本体外側の物理ボタンを使用。ボタンは少し強めに押す必要があり、操作時に本体がちょっとズレることもあった。
「音量調整」「再生/一時停止」「曲送り/曲戻し」などの操作は、左右のボタンで行う
サウンドは、重低音と高域にメリハリを利かせたドンシャリ系。音の厚みこそないが、ランニング中でもボーカルと重低音のリズムは聴きやすい、狙いを絞ったサウンドに仕上がっている。
スタミナは、イヤホン本体のみで約4時間。充電ケースは、実測値で68(幅)×50(高さ)×44(奥行)mmと、ポケットに入れて携帯するには少し大き過ぎる。
充電ケースによるフル充電を合わせると、合計約14時間の再生が可能。15分の充電で約1時間の連続再生が可能な、クイック充電にも対応する
基本機能は揃っているが、ボタンが少々押しにくい。ケースサイズが大きく、スタミナも少なめなので「5」に
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。