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約4年半の時を経て、今春ついにフルリニューアル!

音もデザインも飛躍的進化!オンキヨー最新カスタムIEMの魅力を徹底解説【前編】

今から約4年半前の2015年7月17日、オンキヨーブランド初のカスタムIEM「IE-C」シリーズが発売された。音響機器の老舗ブランドのオンキヨーが手がけた純国産のコンシューマー向けカスタムIEM、しかもシングルドライバー構成の「IE-C1」で59,800円(税別)からという当時国内で流通していたカスタムIEMの中でもかなりインパクトのある価格設定から、発表直後は大きな話題となった。発売開始に合わせて、期間限定で「IE-C」シリーズをさらにお買い得に買える発売記念キャンペーンが実施されていたこともあり、これを利用して「IE-C」シリーズを購入したユーザーも多いことだろう。かくいう筆者も、発表直後に銀座にあるシーメンス補聴器コンセプトストアでインプレッション(耳型)を採取し、3モデルを徹底的に聴き比べて迷った末に2ウェイ2ドライバー構成の「IE-C2」をオーダーした一人である。

2015年の発売当時に購入した筆者の「IE-C2」。アタック感の強いサウンドがお気に入りで、未だに現役で使い続けている

そんなオンキヨー初のカスタムIEMが、約4年半の時を経て、今春フルリニューアル。本日5月12日から一般販売がスタートすることがついに発表された。「IE-C」シリーズに代わり、オンキヨーの新たなカスタムIEMとしてラインアップされるのが、「IE-M」シリーズと「IE-J」シリーズだ。

オンキヨーの最新カスタムIEM「IE-M」シリーズと「IE-J」シリーズ

オンキヨーの最新カスタムIEM「IE-M」シリーズと「IE-J」シリーズ

「IE-M」シリーズは、「IE-C」シリーズからサウンドを強化したほか、デザインや信頼性といった部分のカスタマイズ性を大幅に引き上げたのが特徴。特にサウンドについては、新開発の自社製マグネシウム振動板を採用したバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを搭載し、「IE-C」シリーズから大きな進化を遂げているという。シリーズ名の“M”も、このマグネシウム振動板ドライバーからとったものだそうだ。ラインアップは、シングルドライバー構成の「IE-M1」、2ウェイ2ドライバー構成の「IE-M2」、2ウェイ3ドライバー構成の「IE-M3」という3つモデルだ。

オンキヨー「IE-M」シリーズ(写真はシングルドライバー構成の「IE-M1」の試聴用ユニバーサルモデル)

オンキヨー「IE-M」シリーズ(写真はシングルドライバー構成の「IE-M1」の試聴用ユニバーサルモデル)

もうひとつの新シリーズ「IE-J」は、「IE-C」シリーズの流れを汲むモデルで、「IE-C」シリーズと同じBAドライバーを搭載しつつ、「IE-M」にも採用された各種アップデートを取り入れたモデルという位置付けだ。「IE-C」と同じ“MADE IN JAPAN”ということで、JapanのJからシリーズ名を冠したという。ラインアップは、シングルドライバー構成の「IE-J1」、2ウェイ2ドライバー構成の「IE-J2」、3ウェイ3ドライバー構成の「IE-J3」で、「IE-C」シリーズと同じドライバー構成となっている。

価格は、「IE-M1」が79,800円、「IE-M2」が99,800円、「IE-M3」が139,800円、「IE-J1」が69,800円、「IE-J2」が89,800円、「IE-J3」が129,800円だ(いずれも税込)。なお、モデルごとに価格が異なるが、上位モデル・下位モデルといった概念はないという。

「IE-C2」を愛用する筆者としては、約4年半ぶりにフルリニューアルしたという新モデル、とりわけ新BAドライバーを採用した「IE-M」シリーズはとても気になる存在だ。今回、一般販売に先駆けて「IE-M」シリーズを中心に新モデルをいち早く触れる機会を得たので、前編となる本稿では、新モデルの進化点や特徴を詳しくレポートしていこう。

「IE-C2」と「IE-M3」の新旧カスタムIEMと2種類のDAPを使ったクロスレビューを行った後編はコチラ

最新DAPの音にマッチする自然なHi-Fiサウンドを目指した「IE-M」シリーズ

今回のカスタムIEMのリニューアルの中でも、もっとも大きなトピックスといえるのが、新開発の自社製マグネシウム振動板を採用したバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを搭載した「IE-M」シリーズの登場だろう。

スピーカーメーカーであるオンキヨーは、振動板に使える素材の研究開発を積極的に行っており、BAドライバーの振動板に使われたマグネシウムも、1983年に発売したHi-Fiスピーカー「Monitor 2000」のツイーター部分で初採用するなど、30年以上にわたって研究開発を行っている。

実用金属材料の中でも最も軽く、内部損失や比弾性率にすぐれた特性を持つマグネシウム。繊細な信号にも正しく振動できる薄さや軽さ、高い内部損失によって金属特有の付帯音を低減できる高吸振性、高い比弾性率による高レスポンスサウンドという、ハイレゾ対応に必要とされる理想的な振動板物性を実現できる素材ということで、今ではHi-Fiスピーカーはもちろんのこと、イヤホンに使われる小型のダイナミックドライバーにも採用されるようになっている。オンキヨーでもヘッドホンやイヤホン向けのマグネシウム振動板の開発・実用化を検討しており、その中から先行して開発されたのが、今回「IE-M」シリーズに搭載されたBAドライバーというわけだ。

オンキヨーが開発したBAドライバー向けのマグネシウム振動板。マグネシウムと似たような特性を持つ金属としてはベリリウムがあるが、「Monitor 2000」以来、長年マグネシウムを研究開発してきたこともあり、マグネシウムを採用することに決定したそうだ

「IE-M」シリーズに搭載されたマグネシウム振動板の特徴。ハイレゾ対応に必要とされる理想的な物性を兼ね備えていることがわかる

ご存じの通りの方もいるかと思うが、BAドライバーの開発を手がけている会社は世界に数えるほどしかない。今回のBAドライバーについても、そのうちの1社と協力して開発したそうだ。マグネシウム振動板を採用したBAドライバーはすでに他社でも実用化に成功しているが、今回のオンキヨーが開発に携わったBAドライバーの大きな特徴となっているのが振動板の薄さだ。

マグネシウムは結晶構造が複雑で、アルミやステンレスに比べると変形や反りが起こりやすく、振動板の成形には不向きと言われている。オンキヨーは、この課題を解決するために、長期間かけて成形率を高める条件を確立。新開発の特殊表面処理技術を用いて、マグネシウム素材内部までセラミック層を浸透させることで剛性を高め、BAドライバー用振動板として世界最薄(※)となるマグネシウム振動板の実用化に成功したというわけだ。
※オンキヨー調べ(2019年6月18日現在)

独自の特殊表面処理により、マグネシウム素材内部までセラミック層を浸透させて剛性を確保し、BAドライバー用振動板として世界最薄を実現した

アルミやステンレスを採用した一般的なBAドライバーは、金属特有の付帯音によって高域が伸びているように感じられる反面、耳に刺さるようなBAドライバー特有のクセが感じられるものが多い。いっぽう、オンキヨーが新開発したマグネシウムBAドライバーは、マグネシウムの高い内部損失と薄型化によるクイックレスポンスにより、アルミやステンレスドライバーのような“ゆがみ”を徹底的に排除し、S/N感が非常にクリアになったという。

また、薄型化によってより微細な信号にもしっかり反応できるようになったことで、一般的なBAドライバーに比べ、ロー・ハイともに出せる帯域が拡大。BAドライバーなのにダイナミック型ドライバー並みの広帯域再生を実現したのも大きなポイントとなっている。

欠点らしい欠点がほぼなく、ハイレゾ対応イヤホンに求められる理想形とも言うべき特性を実現したマグネシウムBAドライバーを搭載する「IE-M」シリーズ。「IE-C」シリーズでは、明瞭なサウンドを追求するために不要振動と共振を低減する独自のフローティング機構を実装していたが、「IE-M」シリーズでは、新開発のマグネシウムBAドライバーのもつポテンシャルを最大限に生かすための独自の手法を採用し、帯域ハンドリングを徹底的に追求することで、ナチュラルで歪みのない音楽再生を目指したという。

具体的には、ネットワークに用いるコンデンサーや抵抗パーツなどにオーディオグレードのパーツを新たに投入するとともに、音導管に用いるチューブの材質などの部材選定、ドライバーユニットに合わせたダンパー形状の最適化、ドライバーユニットの配置位置や間隔、音導管の径や距離調整、スピーカー開発で培った制振材の採用といった独自の理論に基づくアコースティックなチューニングを徹底的に突き詰めたそうだ。

写真左が「IE-M3」、右が「IE-C2」。「IE-C」シリーズは、搭載BAドライバー数に関わらず、音導孔が1つのシングルボア設計だったが、「IE-M」シリーズはシングルドライバーの「IE-M1」以外はダブルボアとなっている。このあたりも独自の理論に基づく設計だそうだ

そんな「IE-M」シリーズが目指した音は、ズバリ“最近のDAPの音にマッチする自然なHi-Fiサウンド”だ。今から約4年半前に発売を開始した「IE-C」シリーズも、その当時流行ったDAPと組み合わせて音色を決めたそうだが、同社によれば、最近は傾向が若干変化しており、ソニーやCayin、iBasso Audioといったウォームだけどタイトで押し出し感のあるHi-Fiサウンドがトレンドになっているそう。「IE-M」シリーズでは、こういった最新DAPと組み合わせた際に、マグネシウムBAドライバーの世界観をしっかりと再現できることを主眼に置いてチューニングを行ったそうだ。時代によって「求められる音」や「相性のよいサウンド」が変化する、こういった着眼点はイヤホン・ヘッドホンだけでなく、DAPも手掛けてきた同社ならではといえるだろう。

ちなみに、「IE-M」シリーズにはシングルドライバー構成の「IE-M1」、2ウェイ2ドライバー構成の「IE-M2」、2ウェイ3ドライバー構成の「IE-M3」という3つモデルがラインアップされているが、それぞれ以下のようなサウンドコンセプトを持ってサウンドチューニングをしたそうだ。

IE-M1
フルレンジのBAドライバー1発によるやわらかくて伸びのある高域再生を生かしたサウンドチューニング
IE-M2
シングルユニットでは出しにくい低域を補強しつつ、ヘッドホンやスピーカーで聴いているような広がり感やゆるさを持たせた方向性にチューニング
IE-M3
マグネシウムBAドライバーならではの高域特性をしっかりと残しつつ、「IE-M2」よりもさらに深いところから低域が出るようにチューニング

「IE-M」シリーズ3モデルのBAドライバー構成図。組み合わせるドライバーのチョイスや帯域ハンドリングを行うことで、それぞれ狙ったサウンドに仕上げている

初代の「IE-C」シリーズでも、ドライバー構成の異なる3モデルをラインアップしていたが、これはユーザーごとに好みのジャンルや再生環境が異なる中で、カスタムIEMでも「好きな音を叶えたい」という開発者の思いから生まれたものだという。ステージなどで使うプロ向けのカスタムIEMは、好みの音色を突き詰めていくというよりも、聴覚をしっかりと保護しながら聴きたい音をしっかりと聴かせるということに重きが置かれることが多いが、このあたりはカスタムIEMをコンシューマー向けとして展開するというメーカースタンスの違いが色濃く表れている部分なのかもしれない。

ユーザーの「好きな音を叶えたい」という開発者の思いから、チューニングの異なる3モデルをラインアップした「IE-M」シリーズ。昨年12月から秋葉原の「ONKYO BASE」にて先行受注を実施していたが、実績は「IE-M1」「IE-M2」「IE-M3」のどれかが突出して売れるとかはなく、3モデルほぼ均等に注文が入ったという。このあたりは非常に面白いところだ

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