完全ワイヤレスイヤホンに長らく新製品のなかったBoseが10月15日、ついに新モデルを投入する。今回発売されるのは、独自のノイズキャンセリング機能を搭載した「QuietComfort Earbuds」と、スポーツ向けモデル「Sport Earbuds」だ。発売に先駆けて両機種のサンプルを入手できたので、ノイズキャンセリング機能や音質チェックを中心とした実機レビューをお届けしよう。
新モデルの中でも特に注目のモデルは、Bose初のノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds」だろう。特許取得したアクティブ/パッシブ両方を組み合わせる独自のノイズキャンセリング技術を搭載。基本技術は騒音の逆位相の音声信号で騒音を打ち消す、Boseが世界で初めて世に送り出したもっとも歴史ある方式だ。
Bose初のノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds」
「QuietComfort Earbuds」のイヤホン本体は少々横長のデザインとなっており、イヤーピースとスタビライザーを一体化したシリコン製の「StayHear Maxチップ」で耳の内側をしっかりとホールドする構造だ。耳穴に挿入するイヤーノズル部分はやわらかく潰れるようになっていて、耳の形状にぴったりフィットし、しっかりと密閉してくれる。「StayHear Maxチップ」込みで片側の重量を計測すると約9.4gと若干重いのだが、重さをホールド感でカバーする方式はBoseがイヤホンで得意とする方式だ。ちなみに、スペック上はIPX4の防滴にも対応している。
耳をガッチリとホールドする「StayHear Maxチップ」。3サイズが付属する
「QuietComfort Earbuds」の装着イメージ
スマートフォンとの接続はBluetoothバージョン 5.1で、SBC/AACコーデックに対応。専用アプリ「BOSE MUSIC」を介してBluetoothペアリングをするとアクティベーションが行われ、アプリからノイズキャンセリング調整(レベル0〜10)の調整が行える。ノイズキャンセリング調整はタッチセンサーによるイヤホン左2回タップにも割り当てられているが、レベル0、レベル5、レベル10の3段階のみの調整になるようだ。ちなみに、再生/停止は右イヤホンに割り当てられているが、イヤホンで音量操作には対応しないようだ。
専用アプリ「BOSE MUSIC」を介してアクティベーションする形
専用アプリ「BOSE MUSIC」を使えば、ノイズキャンセルのレベルを0〜10の範囲で調整可能だ
左イヤホン2回タップで3段階のノイズキャンセル調整も可能
「QuietComfort Earbuds」のノイズキャンセリング機能を実際に試してみたが、耳に付けた瞬間に周囲の騒音がスッと消え、ノイズキャンセリング効果が極めて優秀であることがわかる。エアコンやPCなどの動作音はまったく聴こえないレベルになるし、隣の部屋で流しているテレビの音声も、人の声は若干残るものの、全体的に耳栓を付けているように強力に低減してくれる。特定の周波数帯域だけに特化するのではなく、全帯域にまんべんなくノイズキャンセリングを働かせているようだ。「QuietComfort Earbuds」を持ち出し、騒音が多い電車内や駅構内でもテストしてみたが、電車の走行時の低い騒音はほぼなく、レールの擦れる音がかすかに聴こえる程度。僕はアップルの「AirPods Pro」のユーザーで、手元で付け替えて比較してみたが、ノイズキャンセリングの性能だけで言えば「QuietComfort Earbuds」のほうがハッキリ上だ。
電車内や駅構内で「QuietComfort Earbuds」のノイズキャンセリング効果を試してみたが、ノイズ低減効果は極めて優秀だった
宇多田ヒカル『あなた』、Official髭男dism『Pretender』、ビリー・アイリッシュ『bad guy』の3曲を用いて音質チェックも行った。宇多田ヒカルは声もキッチリ立てつつ、オーケストラの演奏は空間の広がりをゆったり再現。重低音もズンと沈むパワーがある。ビリー・アイリッシュも深い重低音でリッチに鳴らし迫力もばっちり。Official髭男dismも歌声をしっかりと聴かせつつ、音数の多さをにぎやかな空間に展開する。ベースの音の聴こえ方は深く沈み心地よい。全体としては過去のBose製品のような洋楽に振り切ったバランスではなく、歌声重視のJ-POPも楽しく聴ける今どきのサウンドに上手くまとめられている。
iPhoneとペアリングして「QuietComfort Earbuds」の音質をチェック
バッテリー駆動時間はイヤホン単体で最大6時間で、充電ケースから2回のフル充電も可能だ。充電ケースは大きめで無骨だが、Qiによるワイヤレス充電、USB type-C採用と今どき感あるスペック。ノイキャン性能含めて、トータルの完成度はかなり高く、ノイズキャンセリング機能付き完全ワイヤレスイヤホンの大本命になりそうな予感だ。
続いて、同時に発表されたスポーツ向けモデル「Sport Earbuds」をレビューしていこう。Boseがこれまで展開していた完全ワイヤレスイヤホンが「SoundSport Free wireless headphones」と、スポーツ用途を意識した製品名だったので、「Sport Earbuds」は後継モデルとも呼びたくなる機種だ。ちなみに、本機はノイズキャンセル機能を搭載しておらず、純粋なスポーツ向けモデルとなっている。
スポーツ向けモデルの「Sport Earbuds」
「Sport Earbuds」の実機を手にとってみるとわかるが、「QuietComfort Earbuds」よりもひと回りほど小さいサイズで、重量も約6.8gと軽い。装着性については「StayHear Maxチップ」を採用していて耳にガッチリとホールド。というか、「QuietComfort Earbuds」とまったく同一だ。ちなみに「Sport Earbuds」はIPX4の防滴だが、これは「QuietComfort Earbuds」も同じだったりする。
「QuietComfort Earbuds」同様、「Sport Earbuds」にも独自構造の「StayHear Maxチップ」が3サイズ付属する
「Sport Earbuds」の装着イメージ。イヤホン本体が小型で耳に収まりやすいが、若干高さがある
「Sport Earbuds」のセットアップも専用アプリ「BOSE MUSIC」を使って接続する形。ただ、接続後に使える機能は音量調整くらいでシンプルだ。ちなみに、再生操作は右イヤホンに割り当てられているが、イヤホンで音量操作には対応しないようだ。左イヤホンはショートカットを登録すればバッテリー残量の確認、トラック送りなどを利用できる。
ペアリングには専用アプリ「BOSE MUSIC」を利用する
ここまでくると隠しようもないが、「Sport Earbuds」は「QuietComfort Earbuds」からノイズキャンセリング機能を省き、イヤホン本体をひと回り小型化したモデルだ。スポーツ向けモデルとしてとらえると、外音取り込みがないところが少々残念。ちなみに、「QC Earbuds」のノイズキャンセルの調整は実質的に外音取り込みを兼ねている。
あとはサウンドまで「QuietComfort Earbuds」と同じだったらどうしよう……と心配していたのだが、実際に「Sport Earbuds」の音を聴いてみると、ほんの少しだけ味付けが異なるようだ。同じく宇多田ヒカル『あなた』、Official髭男dism『Pretender』、ビリー・アイリッシュ『bad guy』の3曲を聴いたが、J-POPの音源も歌歌がしっかりと再現されており、音数が多くにぎやかにしてくれる基本傾向はよく似ているが、「Bose Sport Earbuds」のほうがベースのズズンと響き、リズムの刻みもディープで量的にリッチ。同時に高域もほんの少し存在感が強め。ただ、これもノイズキャンセル有無による差と言われてしまうと、それまでかもしれない。
iPhoneとペアリングして「Sport Earbuds」の音質もチェック
最後に「Sport Earbuds」のバッテリー性能は、イヤホン単体で最大5時間駆動と「QuietComfort Earbuds」より若干短い。充電ケースは「QC Earbuds」よりも小型だが、現在の基準でほめられるほどに小さくはない。充電方法はUSB type-C端子のみだ。
以上、Boseの最新完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds」と「Sport Earbuds」を比べてみたが、「QuietComfort Earbuds」がノイキャン搭載の完全版、「Sport Earbuds」は「QuietComfort Earbuds」からノイキャンを外した廉価版ととらえるのがわかりやすそうだ。
両機種とも10月15日に向けた発売前の段階だが、10月12日時点の価格.com最安価格は「QuietComfort Earbuds」が33,000円、「Sport Earbuds」が23,500円。実売価格8千円差となると、コスパで考えると完全ワイヤレスイヤホンとして現時点で最強クラスのノイキャン機能が付いている「QuietComfort Earbuds」を選ぶべきでしょ、というのが比較した僕の結論だ。
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。