巣ごもり需要もあってか、このところスピーカー製品の中でも高い注目度を集めているのが「サウンドバー」だ。しかも、テレビ向けやリビングシアター用途としてだけではなく、パソコンやゲーム機など、PCモニターと組み合わせるスピーカーとしても人気を集めていたりする。
ちなみに、PCモニターと組み合わせるサウンドバーは、テレビ用のそれとは求められる内容が微妙に異なっている。テレビ/リビングシアター向けがHDMI接続大前提で重低音も必須、さらにBluetoothや無線LANなどの多機能さも好まれているのに対して、PCモニターとの組み合わせでは、接続方式は環境によってケースバイケースで、システムによって求められる内容が異なっており、HDMI接続ならIN/OUTの2端子を持つことが前提だったりもする。サウンドバーの多くはARCやeARC対応を強調している製品が多いが、PCモニターとの組み合わせに限っていえばHDMI端子を活用できないのだ。いっぽうで、Wi-FiやBluetoothなどのワイヤレス機能に関しては(使い方次第だが)あまり重要視されることもない。PCモニターとの組み合わせでは、機能性のシンプルなハイコスパ製品であっても、使いこなし次第で大いに役立ってくれる可能性があるわけだ。
さらに、実は機能性よりもサイズのほうが重要だったりする。というのも、デスクの上が限られたスペースであることに加え、主流の画面サイズもテレビとは異なっているためだ。実際、40V型以上が主流のテレビに対して、(みなさんもご承知の通り)PCモニターは20〜26型あたりが主流。大きくても30型ぐらいが一般的だし、それ以上の大きさを求めるくらいだったらマルチモニター配置にするほうが便利だったりもする。こういった理由から、幅は60cm前後まで、できれば奥行き方面に薄型の製品が好ましい傾向となっている。
ということで、今回はこれまで紹介してきたポイントを押さえならが、PCモニターにパソコンやゲーム機を接続し、映画やゲームを楽しむのにぴったりなサウンドバーを紹介していこうと思う。
ハイセンス「HS214」は、「Movie」「Music」「News」の計3種類のモードを選べる独自のバーチャル5.1chサラウンド機能を備えたコンパクトなサウンドバーだ。入力はHDMI(ARC)のほか、AUXやBluetooth、光/同軸デジタルなど多彩な音声入力を用意し、付属リモコンによってサラウンドモードや入力ソースを手軽に切り替えることも可能だ。
ボディサイズは幅650mmとホームシアター向けサウンドバーとしては小柄なほうで、今回のようなPCモニターユースにもまずまず合致してくれる。スピーカーユニットは、左右それぞれに楕円形のフルレンジ(44×100mm)ユニットが配置され、加えて78mm口径のサブウーハーユニットも搭載されている。
今回紹介する製品の中では一番幅が大きかったり、HDMI端子が入力のみとなっているなど、あくまでホームシアターメインの製品だが、高さが61.5mmに抑えられていたり、アナログ入力が用意されていたりと、PCスピーカーとしての活用も十分に考えられる内容となっている。ベストとはいえないものの、実際の設置ではこれといって不満に思うことはないだろう。
サイズの余裕だけではないが、とてもまともな音に仕上がっている。変にアクション映画向けに傾いているわけでもなく、人の声も音楽もバランスよく再生してくれるので、さまざまなタイプのコンテンツを分け隔てなく楽しむことができる。なかでも音楽再生のバランスのよさ、抑揚表現の明瞭さは特筆もので、音楽ビデオもBluetooth接続による音楽再生も、存分に楽しむことができた。
また、近距離の再生でも、少し離れたリビングオーディオ的な位置でも、変わりなくサウンドを楽しむことができる(離れた位置の時は多少BASSをアップする必要はあるが)。これはなかなかに貴重。スペース的に設置が可能で、かつ、音楽コンテンツを楽しむことが多い人には、もってこいの製品といえるだろう。
スピーカーの名門、JBLが手がけるスマートタイプのサウンドバー。HDMI ARCに対応し、Chromecast built-inやBluetoothを搭載するなど、多彩な機能性を持ちつつも、“あえてボタン数を最小限に絞ったリモコン”を付属するなど、シンプルでわかりやすい操作系を両立させている。ユニットは、左右に楕円形ドライバーを配置し、80W出力のパワーアンプが組み合わされている。これに独自のバーチャルサラウンド技術を組み合わせることで、サブウーハーレスでありながら、豊かな低音の臨場感のあるサウンドを実現しているという。
オーディオ入力はHDMI(出力なし)、光デジタル端子x1、Bluetoothの3系統。本体サイズは614(幅)×58(高さ)×90(奥行)mmと、PCモニター用としては高さがかなり抑えめとなっているのが好印象だ。
サイズ的にはまずまずで、高さが抑えられているのでそれほど圧迫感はない。ただし、HDMIが入力のみでかつアナログ入力もないため、(PCモニターとの組み合わせでは)やや接続機器を選ぶ傾向にはある。今回は光デジタルやBluetooth接続を利用してサウンドをチェックした。
デジタル接続しているアドバンテージがあるのかもしれないが、音質に関してはなかなかのもの。解像感が良好で、かつメリハリのしっかりした音を持ち合わせているため、音楽を明るく楽しい表現で存分に堪能できる。また、このサイズからは想像できない臨場感の高さから、映画にもぴったり。定位感も悪くないので、ゲームも良好と、コンテンツを選ばない懐の深さを持ち合わせている。
ただし、上方向のプレゼンスが狭いため、実際の設置時、特にデスク上で活用するためにはやや上向きの設置を推奨したい。それ以外、音場表現的に気になるところはなく、音量を上下しても迫力が抑えられることがなかったため、すぐ近くでも少し離れた場所でも変わらず生き生きとしたサウンドを楽しめるのもいい。なかなか完成度の高い製品だ。
サウンドバーを得意とし、幅広いラインアップを取り揃えるヤマハの中でも、最小サイズとなる幅60cmのコンパクトボディを実現した「SR-C20A」。テレビはもちろん、パソコンの前の設置もターゲットで、幅広い用途を想定したモデルとなっている。
その内部には、4.6cmフルレンジスピーカーを左右に1基ずつ配置。加えて、7.5cmサブウーハー1基とパッシブラジエーター2基を搭載している。また、音質調整として人の声を聴きやすくする「クリアボイス」や、低音を増強する「バスエクステンション」機能を搭載。さらに、AVアンプやスピーカー開発で培ったヤマハ独自のサラウンド技術を組み合わせることで、豊かな低音をもつ臨場感のあるサウンドを実現しているという。なお、「ステレオ」「スタンダード(テレビ番組用)」「映画」「ゲーム」という4種類のサウンドモードも用意されている。
入力は、ARC対応のHDMI端子1系統に加えて、光デジタルを2系統、3.5mmステレオミニ端子を1系統、Bluetoothを装備。なかでもBluetoothは、AACコーデック対応に加えて独自の音質改善技術「ミュージック・エンハンサー」により、良質なサウンドを楽しむことができる。本体サイズは600(幅)×64(高さ)×94(奥行)mmと、今回のテーマにも合致するコンパクトさだ。
大きさはPCにしっかりとマッチしてくれるコンパクトさを持つ。角が丸まったデザインとなっているため、見た目的なモニターとのマッチングも悪くない。また、高さも64mmと、モニター下部に被さることもない。付属リモコンもシンプルなボタン構成で扱いやすい。確かに、モニターとの組み合わせにも十分配慮された様子がうかがえる、絶妙な設置性を持つ製品だといえる。
音色傾向も音の広がり感も、とても自然なサウンドが特徴。情報量も多く、音楽も映画のセリフも細かいニュアンスまでしっかりと伝わってくれる。低域も十分にボリューム感が備わっていて、音楽も映画も繊細さだけでなく迫力も十分。また、ゲームも音場の確かさがしっかりと伝わってくるなど、コンテンツを選ばない優秀さを持ち合わせている。
万能な製品ながら、特にマッチするのが音楽コンテンツ。自然、かつ明瞭でサウンドキャラクターによって、サウンドバーとは思えないリアルさを堪能できる。音楽コンテンツメインという人には、最有力候補になるはずだ。
このごろはサウンドバー製品にも力を入れているBOSEのラインアップの中でも、比較的コンパクトなサイズを持つモデル。実際のサイズは594(幅)×56(高さ)×102mm(奥行)と、今回紹介する中でも平均以下のサイズ感にまとめ上げられている。
名前の通り、TV用のスピーカーをメインとした製品だが、HDMI(1系統)や光デジタル、Bluetoothに加えて3.5mmアナログ入力端子を用意するなど、幅広いシステムに対応しており、今回の企画にも合致してくれる汎用性の高さを持ち合わせている。専用リモコンの「BASS」ボタンを押すことで低音をさらに強めることができるほか、ダイアログモードをオンにすることで、人の声を強調することもできる。別売りで用意されているパワードウーハーを組み合わせることも可能だ。
今回テストしたほかの製品に比べて奥行きがややかさばる傾向にはあるが、実際に設置した際、特に時に不満を憶えることはなかった。高さが56mmと低いため、モニター前でも存在感を無駄に主張することない。テレビ前よりもモニター前を想定したサイズなのではと思ったほどだ。名前の印象とは異なり、PCモニターとのマッチングが良好な製品といえる。
BOSEらしい音というべきか、迫力のよい、メリハリのしっかりしたサウンド。中域にしっかりとした厚みがあり、低域もパワフル。音楽も映画のセリフも闊達でエネルギッシュな表現だ。それでいて、破綻のないバランスにまとめ上げられているのだからさすがというべきか。音楽にも映画にもマッチする、懐の深いサウンドチューニングといえる。ただ、定位感だけいまひとつで、ゲームなどで位置情報が把握しづらい点は注意が必要かもしれない。
BASSモードはかなり低音を増強してくれるが、少なくとも木造家屋以外では不必要。そのままでも十分に迫力がある。映画や音楽が中心、かつBOSEさらいパワフルなサウンドが好き、という人にはベストマッチしてくれるはずだ。
幅430mm、高さ52mmというサイズは、今回取材した製品の中でも1、2を争う超コンパクトさが特徴。ツイーターとフルレンジを左右2基、そしてウーハーを上方のスリット部に配置した2.1chのスピーカー構成で、コンパクトな筐体ながら本格的なサウンドが追求されている。また、ドルビーアトモスやDTS:X/Virtual:Xといった最新サラウンド規格にもしっかりと対応している点もポイントが高い。
幅430mm、高さ52mmというサイズは大歓迎だが、その代わりに奥行きが130mmとやや長めで、設置時に配慮が必要だった。インシュレーターなどを活用して、やや高めに設置してモニタースタンドを下に潜り込ませるとよいかもしれない。また、上下のプレゼンスも決して広くはないため、可能であればやや上向きに設置したいところ。
とはいえ、設置が終われば“まるでPCモニター用のスピーカー”と思ってしまうくらい、見た目のマッチングは今回の6モデルの中でもナンバーワン。さらに、HDMIで接続できる点も大きなアドバンデージといえる。
テレビスピーカー的な、客観的な印象を持つウェルバランスなサウンド。迫力よりも、音質のよさを優先しているのか、繊細な表現を得意とするものの、その代わりに迫力はやや控えめといえる。特に低域は、パワフルさよりもフォーカス感を優先したイメージで、音楽には向いているもののアクション映画にはやや迫力が欠けているようにも感じる。
ちなみに、「スタンダード」モードはテレビ的な客観性のある音、「ミュージック」モードは左右方向に音場を広げたサラウンド感の強い印象、「3Dサラウンド」モードは奥行きの深い音場表現が味わえるなど、それぞれに特徴があって大いに活用できそう。とにもかくにも、サウンドや操作性のよさなど、HDMI接続による優位性は大いに魅力的。もし、PCモニターとHDMI接続したい場合はこの「SC-HTB01」一択といえる。
PCモニター向けであり、ゲーミング用途をメインとしてコーディネイトされた製品。幅42cm、高さ・奥行きが7cmほどとサウンドバーとしては小柄なボディサイズとなっているが、これは19〜27型のモニターと組み合わせることを想定したチョイスだという。
その内部には、52mm口径のスピーカーユニット2基と低音増強用のパッシブラジエーター2基を搭載。3.5mmステレオ端子によるアナログ入力に加えて、Bluetooth接続(SBCコーデックのみ)が用意されている。
フロントパネルには、接続状況や現在時刻などがひと目でわかるLCDディスプレイを搭載。また、本体下部にはLEDライトが配置され、音楽に合わせて色が変わる「リズムモード」やさまざまな色がランダムに変わっていく「ブリージングモード」など、ユニークなライティングパターンが用意されている点もユニークだ。
とてもコンパクトなサイズの製品だけあって、設置性は上々。HDMI端子はないが、見方を変えれば、アナログ端子で接続すればよいという割り切りのよいシンプルな構成の製品ともいえる。また、電源はACアダプターを採用しているため、ケーブルが後ろ側に大きく飛び出てじゃまになる、ということもない。
音質的には可もなく不可もなく。決して解像感は高くないが、メリハリのはっきりしたパワフルなサウンドが楽しめる。帯域バランスとしては、中域重視のイメージ(一部の高域にピークがあるがそれほど目立たない)。ボーカルなど、人の声がしっかりと届いてくれる。おかけで、映画などを見ても想像以上に楽しめた。LEDライトからド派手なイメージも持っていたが、意外と懐の深い、いい意味で“普通”のサウンドだ。
ちなみに、使用目的がはっきりしている製品のためか、リスニングポイントが比較的近距離似設定されていて、離れた場所では低域の量感不足が生じる。とはいえ、PCモニタースピーカーとしては問題にはならないだろう。
このように、取材前に想像していたよりもPCモニターとの組み合わせが良好な製品は多かった。特にパナソニック「SC-HTB01」は、サイズやHDMI接続できる点もあって、今回の中でもベストな製品といえる。
しかしながら、アナログ接続で視聴した機器も音質的に大きなそん色があるわけでなく、メーカーのサウンドチューニングが最も重要なポイントとなっていた。あとは音の好み次第で、音楽をよく聴く人はヤマハやハイセンスが、音楽も映画も楽しみたいという人にはJBLやBOSEも気になる存在だろう。
モニター前のスペースと好みのサウンドに配慮して、自分にとってベストな“モニター用サウンドバー”を選んで欲しい。
ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。