選び方・特集

《2021年》スマホの音楽を高音質で楽しめるインライン&小型ヘッドホンアンプ10選

《2021年》スマホの音楽を高音質で楽しめるインライン&小型ヘッドホンアンプ10選

スマートフォンで手軽にハイレゾ音源などの高音質サウンドが楽しめる、インラインタイプのDACヘッドホンアンプ(以下、今回の記事では略して“インラインDAC”と呼ばせていただこう)が注目を集めている。元々、iPhoneなどヘッドホン端子が廃止されたスマートフォン用に必要となったアクセサリー製品のひとつであったが、最近は、とりあえず音が出ればいい付属品レベルの製品だけでなく、音質を重視したモデルも次々と登場している。

インラインDACの特徴といえば、オーディオ製品とは思えないスマートなデザインだろう。一見するとただの変換ケーブル、もしくは短い延長ケーブルとしか見えないものもあり、それでいて音質的には付属品レベルと大きく異なってくれるのだから恐れ入る。もちろん、本体サイズが多少大きい製品もあるが、それでも(数年前まで人気を博していた)DAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプと比べれば格段に小さくなり、クリップが付属していたりスマートフォン(またはスマートフォン用ケース)と接着できるようになっていたりと、使用時に不便のないようさまざまな工夫が盛り込まれている。

また、大半の製品がハイレゾ音源に対応しているというのも、最新インラインDACの特徴だ。これは、ESSやシーラスロジック、AKMなどさまざまなチップメーカーが、スマートフォン向けを主目的とした、ハイレゾ対応+アンプ部なども内蔵した小サイズ&小消費電力のDACパッケージを展開していることがポイントになっていると思われる。それらを活用することで、小型で高性能なインラインDACという市販製品が作り上げられている。スマートフォンのヘッドホン出力が廃止され統合型DACチップの需要が減りつつあるいっぽうで、外付け市販製品の重要パーツとして重宝されているのは、やや皮肉な状況かもしれない。とはいえ、別個体、別製品になることで各メーカーが音質的な追求をしやすくなり、ユーザーに自分好みの製品を選ぶ恩恵をもたらしてくれている。歓迎すべき状況といえるだろう。

ということで、今回の記事ではハイレゾ音源に対応した製品の中から、使い勝手のよさはもとより、音質的にも大いに魅力的な製品を紹介していこう。

なお、テストの環境に関しては、AndroidスマートフォンはOPPO「Reno A」、iOSは「iPhone SE2」を使用。イヤホンはfinal「A8000」やacoustune「HS1657CU」、ヘッドホンはソニー「MDR-1AM2」やオーディオテクニカ「ATH-ADX5000」など、さまざまな製品を適宜組み合わせて試聴を行っている。

1.Radius「Ne RK-DA50CK」

最小限のコネクター部をもつ、変換ケーブル然とした小型インラインDAC。クアルコム「Aqstic DAC」を採用することで、製品筐体の小型化や小消費電力を実現しつつ、ハイレゾ音源にも対応している。また、コネクター部を接続するケーブルには高純度の単結晶銅と銀メッキ単結晶銅のツイストケーブルを採用することで、柔軟性を損なうことなくすぐれた電気的特性を確保しているという。

さらに、Android Open Accessoryプロトコル2.0に準拠することで、マイク&リモコン付イヤホンに対応(ハンズフリー通話や音声アシスタント、再生/停止、音量の上下などが可能)している点も、この製品の大きな魅力となっている。

レビュー

まず機能面で、イヤホンの通話用マイクに対応してくれているのはとても便利。今回の記事で紹介しているような、音質重視のインラインDACでは対応している製品が意外と少数派なので、「RK-DA50CK」ならではのちょっとしたアドバンテージといえる。また、製品自体がとてもスマートなデザインなので、まったくじゃまにならない点にも好感が持てる。「RK-DA50CK」からイヤホンの端子を抜くと音楽再生がストップしてくれるのは意外と重宝した。ただし、「Reno A」ではイヤホン端子を再び差し直しても再認識してくれず、スマートフォン内蔵スピーカーから音が出てしまうところはAndroidスマートフォンらしい茶目っ気あふれる部分だ。

音質に関しては、メリハリのしっかりした、勢いのあるサウンドが特徴。低音もかなりのボリュームが確保されていて、ノリのいいサウンドが楽しめる。どちらかというとイヤホン向けにチューニングされているようで、「MDR-1AM2」では音の荒々しさが気になった。
とはいえ、解像度感なども必要十分なレベルが確保されているし、価格を考えるとなかなかに優秀な製品といえる。

入力端子:USB Type-C
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ(マイク対応)
対応フォーマット:PCM 192kHz/24bit
主な付属品:USB Type-C(メス) to USB Type-A(オス)変換アダプター

2.iBasso Audio「DC03」「DC04」

小型、かつ、そのサイズからは想像できない高い駆動力が好評だった第1世代モデル「DC01」「DC02」の後継に当たる製品。搭載DACはAKM「AK4493」シングルからシーラスロジック「CS43131」デュアルへと変更され、アンプ出力も既存モデルの約3倍(「DC03」)まで高められている。

「DC03」には3.5mmステレオミニ端子、「DC04」には4.4mmバランス端子を搭載する。また、専用アプリを使用することで64段階のハードウェアボリューム調整が可能な点もありがたい。

レビュー

先代から変わらないコンパクトな本体サイズは、やわらかいシルバーメッキケーブルの採用も相まって、とても扱いやすい。また、アルミボディの表面処理に工夫が施されたおかげか、上質な印象にも変化している。

音質に関しては、文句のないレベル。ていねいできめ細やかな表現を持ち、(先代に対して)さらにSN感が上がったことでよりダイレクトな表現となった。なかでも驚きなのが「DC04」。「ATH-ADX5000」を低域の抜けやボケなくバランスよく駆動してくれ、生き生きとしたサウンドを聴かせてくれる。もちろん据え置き型の高級ヘッドホンアンプに比べれば立体感にそん色はあるが、そのサイズでこの駆動力を持ち合わせているのは驚嘆に値する。いっぽう、イヤホンはヌケのよい生き生きとしたサウンドを披露してくれる。スマートフォンでこのサウンドが楽しめるのは、大きな魅力だ。

入力端子:USB Type-C
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ(DC03)、4.4mmバランス(DC04)
対応フォーマット:PCM 384kHz/32bit、DSD11.2MHz
主な付属品:USB Type-C(メス) to USB Type-A(オス)変換アダプター

3.Shanling「SHANLING UA1」

幅広いバリエーションのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を展開するShanlingの最新インラインDAC。DACチップにESS「ES9218P」を採用し、384kHz/32bitまでのリニアPCM、11.2MHzまでのDSD音源に対応する(ただし対応スペックはアプリまたはスマートフォンやDAPによる)。筐体内部に導電性繊維で基盤を覆うなど、音質重視の製品作りがなされている。また、専用アプリを使用することで、デジタルフィルターやイコライザ−、ゲインコントロールなどのカスタマイズが行えるようにもなっている。

レビュー

インラインDACとしては一般的な、イヤホン端子側にメイン基板を詰め込んだレイアウトだが、本体サイズがかなりコンパクトにまとめ上げられていることもあって、なかなかに扱いやすい。また、イヤホン端子を抜くと音楽再生が停止してくれ、再び差すと(そのあとスマートフォンの再生ボタンを押す必要はあるが)ちゃんと音楽再生が再開してくれる点は「RK-DA50CK」と動作が異なる。このあたりは「UA1」がマイク非対応であることも関係しているのかもしれない。

サウンドキャラクターは、ひと言でいえばていねいな表現。高域がほどよく減衰されていて、嫌な尖りをいなしてくれているのでとても聴きやすい。駆動力は十分以上あり「ADX5000」も完璧ではないが“いい加減”で鳴らしてくれる。使い勝手でも音質でも、なかなかバランスのよい製品だ。

入力端子:USB Type-C
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ
対応フォーマット:PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHz
主な付属品:USB Type-C(メス) to USB Type-A(オス)変換アダプター

4.INFOMEDIA「Lotoo PAW S1」

独自OSを採用する高品位DAPが注目を集めているLotooのスティック型DAC搭載ヘッドホンアンプ。66(幅)×22(高さ)×13(奥行)mmというコンパクトサイズのボディに、液晶モニターや音量調整ボタンがレイアウトされ、ヘッドホン端子は3.5mmステレオミニと4.4mmバランス端子の2つが並ぶ。また、DAC機能としては最高384kHz/32bitまでのリニアPCM、5.6MHzまでのDSD音源に対応している。

ケーブルは着脱式で、USB Type-Cケーブルが付属するほか、追加でLightningケーブルがバンドル「PAW S1 + Lightning」も用意されている。

レビュー

ボディサイズに関して、今回の特集で取り上げる製品の中ではやや大きめといえるが、スティックタイプのため扱いやすく、加えて3.5mmと4.4mm、2つのヘッドホン端子が備わる点は大変ありがたい。さららに、「PAW S1 + Lightning」モデルをチョイスすればAndroid、iOSデバイスのどちらでも良音質なサウンドを楽しむことができる自由度の高さもうれしいところ。再生曲のスペックや音量などが表示されるモニターも便利だ。

音質に関しては、格別のクオリティを持ち合わせている。まるで大柄なポタアンを使用しているかのような、ていねいなディテール表現とダイナミックな抑揚表現を併せ持つ、良質なサウンドを楽しむことができる。イヤホンもヘッドホンもそん色なく再生してくれる懐の深さもありがたい。今回の特集では一番高価な製品となるが、その分音質的にもかなりのアドバンテージを持つ。音質を最優先したいが本体サイズのミニマムさも諦めたくない、欲張りな人に注目してほしい1台だ。

入力端子:USB Type-C(Lotoo PAW S1)、Lightning(PAW S1 + Lightning)
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ、4.4mmバランス
対応フォーマット:PCM384kHz/32bit、DSD5.6MHz
主な付属品:USB Type-C(オス) to USB Type-C(オス)ケーブル

5.ikko Audio「Zerda ITM03」

イヤホンやポータブルDACなどをメインに展開するikko Audioの小型インラインDACで、iOSデバイス向けのLightningモデルとAndroidデバイスなどで使えるUSB Type-Cモデルの2種類をラインアップ。いずれも、シーラスロジック製DAC「CS43198」を搭載し、384kHz/32bitのリニアPCM、11.2MHzまでのDSD音源に対応するほか、MonsterCable社監修の独自ケーブルを採用するなど、音質に対しての追求が随所に見られる。ヘッドホン出力は3.5oステレオミニ端子を用意。こちらの端子は、インラインDAC製品としては珍しく光出力(最大192kHz/32bitに対応)兼用となっている。

レビュー

メタリックブルーカラーに彩られた小柄な本体は、軽量かつ高強度の航空用アルミを採用している恩恵もあってかまずまず扱いやすい。今回はLightningモデルを使用したが、Lightningコネクター付属のiOSデバイス対応モデルはかなりの少数派なので、それだけでも重宝する。

音質に関しては、端的に表現するとジェントルという言葉がピッタリのイメージ。解像感やダイナミックレンジの幅広さはそれほどでもないが、細部がきめ細やかに、ていねいな表現をしてくれるので、ずっと聴き続けていられる心地よさがある。ボーカルもしっとりとした落ち着いた歌声が好ましい。

入力端子:USB Type-C(USB Type-Cモデル)、Lightning(Lightningモデル)
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ(兼光出力端子)
対応フォーマット:PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHz
主な付属品:なし

6. ikko Audio「Music Patch ITM05 DOCK SET」

「ITM03」の上位に位置するモデルで、USB Type-CモデルとLightningモデルの2種類がラインアップされている。インラインDAC然としたスタイルだった「ITM03」に対し、「ITM05」は50mm弱の正方形にウレタンパッドが付属するなど、ユニークなデザインを採用。また、USBケーブルは本体に収納可能なごく短いタイプが採用され、加えてボディ裏側には両面テープが用意されていることから、どんなスマートフォンでも純正オプションのような一体感を実現できる。ちなみに、「ITM05」本体には充電用の端子も用意されているため、音楽を聴きながらの充電することも可能だ。

さらに、オプションとして「ITM05」専用のDOCKユニットが用意されている。こちらはスマートフォン等よりも安定した電力を確保しているため、さらなる高音質サウンド楽しむことができるという。また、DCOKユニットにはマイクも内蔵されているため、チャットやテレワーク、オンラインゲームなどにも活用することができる。

DACにシーラスロジック「CS43198」をデュアル搭載していたり、ヘッドホン端子を3.5mmに加えて2.5mmバランスも用意するなど、音質に対してもしっかりと追求されている。

レビュー

実際のサウンドもなかなかの良質さ。「ITM03」とはキャラクターが異なり、キレのよいダイナミックな抑揚表現が特徴。また、センターはやや近いが左右に大きく広がる音場表現を持つ合わせているため、ライブ音源かなかなかに楽しい。女性ボーカルはサ行がちょっと強めで、ヌケのよい歌声。男性ボーカルは普段よりほんの少し若々しい印象だ。

ヘッドホンとイヤホンでは、ややイヤホンに注力したチューニングといえる。「ATH-ADX5000」をまずまずのバランスので鳴らしてくれる必要十分な駆動力も持ち合わせているが、ダイナミック型ドライバー搭載イヤホンとの組み合わせで聴かせてくれる生き生きとしたサウンドが大いに魅力的だった。音と機能性、扱いやすさと、トータルでの完成度が高い製品だ。

入力端子:USB Type-C(USB Type-Cモデル)、Lightning(Lightningモデル)
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ、2.5mmバランス
対応フォーマット:PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHz
付属品:Lightning to USB Aケーブル(Lightningモデル)

7.Hidizs「Hidizs」

DAPやポータブルアンプなどのポータブルオーディオ製品をメインに展開しているHidizsのスティック型DAC搭載ヘッドホンアンプ。AKM製「AK4493EQ」搭載し、22.4MHzまでのDSD、768kHz/32bitまでのリニアPCM音源に対応する。コンパクトなボディサイズながら、2.5mmバランスと3.5mmステレオミニ、2つのヘッドホン端子を搭載している。USBケーブル部は着脱式となっていて、10cmと65cm、2本のUSB Type-Cケーブルが同梱されている。また、別途ケーブルを用意することでiPhone等で活用することも可能となっている。

レビュー

本体サイズはインラインDACと呼べるサイズに収まっているため、扱いはとてもしやすい。なによりも、3.5mmと2.5mm、2つのヘッドホン端子が用意されているのはありがたいかぎりだ。別途USB Type-C to Lightningケーブルを用意する必要はあるが、iOSデバイスでも利用できるのもありがたい。

音質に関しては、なかなかのもの。メリハリのはっきりしたパワフルな表現で、ヘッドホン「ADX5000」もしっかり駆動してくれる。とはいえ、得意なのはどちらかというとイヤホンで、「HS1657CU」などはキレのよいクリアなサウンドを楽しませてくれた。

入力端子:USB Type-C
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ、2.5mmバランス
対応フォーマット:PCM768kHz/32bit、DSD22.4MHz
主な付属品:USB Type-C(オス) to USB Type-C(オス)ケーブル(10cmと65cmの2本が付属)、USB Type-C(メス) to USB Type-A(オス)変換アダプター、バッククリップなど

8.HiBy Music「HiBy FD1」

幅広いラインアップのDAPが好評の新進気鋭ブランド、HiByの小型ポータブルDAC。同時発売された小型DAP「R2」とほぼ同じサイズで、組み合わせてのグレードアップ活用も想定されている。

音質の要となるDACはESS社製「ES9118」をデュアルで搭載。3.5mm、2.5mmの2つのヘッドホン端子が採用されているほか、再生停止/音量調整ボタンも備わる。また、USB Audio 1.0規格と2.0規格の切り替えが行えるハードキーが用意されているのはなかなかユニークだ。

レビュー

本体サイズに関して、今回の取材では大きい部類だが、そのかわりに薄型であること、スマートフォン(またはケース)との接着に利用できるマジックステッカーも同梱されているので、工夫をすればスマートなレイアウトにまとめ上げること可能だ。L字型ケーブルが用意されているのもありがたい。

肝心のサウンドは、DAPとなんら変わらない音質レベル。いや、モニターやワイヤレス部品がない分DAPよりもSN的に有利か。同ブランド「R3」のバリエーションモデルといっていい音質的なクオリティを持ち合わせていて、スマートフォンからの再生であることを忘れてしまうほど。サイズさえ気にならなければ、お気に入りの1台となってくれるはずだ。

入力端子:USB Type-C
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ、2.5mmバランス
対応フォーマット:PCM192kHz/24bit、DSD5.6MHz
付属品:USB Type-C(オス) to USB Type-C(オス)ケーブル(ストレートとL字型端子の2本が付属)、USB Type-C(オス) to USB Type-A(オス)ケーブル、マジックステッカーなど

【番外編1】 FiiO「BTR5」

番外編として紹介させていただくのが、FiiOのBluetoothワイヤレス・ヘッドホンアンプ、「BTR5」だ。こちら、Bluetooth送受信機能を持つポータブルユニット、BTRシリーズのフラッグシップモデルで、メインは当然Bluetoothワイヤレス機能(aptX HDやLDACコーデックなどにも対応)だが、XMOS「XUF208」USBコントローラーとデュアル搭載されたESS「ES9218P」の組み合わせによるUSB DAC機能も備わっており、別途OTGケーブルを用意する必要はあるものの、スティック型のインラインDACとしても活用できるようになっている。ヘッドホン端子は3.5mmと2.5mmバランスの2系統を搭載。さらに、550mAh容量のバッテリーも搭載されているので、スマートフォンからの電源供給を停止させることが可能となっている。

レビュー

Bluetoothアンプとして便利な「BTR5」だが、ハイレゾ音源対応のインラインDACとしても大いに役立ってくれるのはうれしいところ。ちなみに、Bluetoothワイヤレスと有線、最大の違いはなんといっても音質。ハイレゾ音源のネイティブ再生が行えるだけでなく、解像感、抑揚表現のきめ細やかさ、ノイズ感の少なさなど、かなりの音質アップが見込める。

実際(市販のOTGケーブルを使用して)USB接続してサウンドを聴いてみると、ワイヤレスに対して格段にていねいな表現となってくれる。中高域にちょっとしたザラつき感があったり、センターのフォーカスを強調したFiiOの最新モデル共通の独創的な空間表現をもつなどの個性はあるが、ハイレゾ音源ならではの緻密な空間表現が味わえるのは圧倒的にこちら。低域以外は比較的客観性のある帯域バランスや、聴き心地重視のスムースな高域表現など、音色傾向としても良好なマッチングをみせる。

「BTR5」を購入するユーザーは当然のごとくBluetooth接続がメインだろうが、たまには有線接続も活用してみてはいかがだろうか。

入力端子:USB Type-C(スマホとの接続には別途OTGケーブルが必要)
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ、2.5mmバランス
対応フォーマット:PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHz
主な付属品:USB Type-C(オス) to USB Type-C(オス)ケーブル(非OTG)、バッククリップなど

【番外編2】Astell&Kern「PEE51 AK USB-C Dual DAC Amplifier Cable」

4月23日(金)の発売予定で、DAPの雄であるAstell&Kernからも同ブランド初となるインラインDAC「PEE51 AK USB-C Dual DAC Amplifier Cable」が発表された。今回、輸入代理店からサンプル機を借用することができたので、その詳細をお伝えしよう。

「PEE51 AK USB-C Dual DAC Amplifier Cable」は、本体にAstell&Kernらしいデザインを採用しつつもコンパクトサイズにまとめられたインラインDACだが、そこはAstell&Kernブランドというべきか、シーラスロジック「CS41398」をデュアルDAC構成で搭載し、独立したアナログアンプ回路を採用。さらに、専用のマイクロ抵抗やタンタルコンデンサーを使用していたりと、音質に関しては妥協のないものづくりが行われている。また、テクノラアラミド繊維製の中心芯に銀メッキ銅線と銅線をらせん状に巻き付けた構造を持つケーブル部は、外部ノイズを大きく遮断しつつ最大200Nの引張力に耐えるなど、耐久性と音質の両立が図られている。ヘッドホン端子は、3.5mmステレオミニを採用し、3極だけでなくマイク付の4極イヤホンにも対応する(マイクや操作部は使用できない)。

レビュー

シーラスロジック「CS41398」のデュアル搭載は、DAP「SR25」と同じ構成。そのほかにも音質面でのこだわりが多々見られるなど、ディスプレイのないDAP、“Astell&Kern製DAPの末弟”と呼びたくなる製品にまとめ上げられている。

デザインに関しては、Astell&Kernらしい個性を主張しつつ、扱いやすいサイズ感を両立している点は好ましい。唯一、USB Type-Cコネクターがやや大きく、「Reno A」ではスマートフォンケースと干渉してしまうことがある点が惜しいところ。

いっぽうで、サウンドに関してはなかなかのすばらしさ。クリア志向の音色傾向、ちょっとハスキーなボーカル、自然な広がりを持つ音場や揺るぎのない定位感など、まさにnear「SR25」といいたくなるサウンド表現。おかげで、クラシックもJポップも、距離感の近い臨場感あふれるサウンドを楽しむことができる。また、独立したヘッドホンアンプ回路のおかげもあってか、マッチングしてくれるイヤホン・ヘッドホンも幅広く、「HS1657CU」は圧倒的な音数の多さとダイナミックな抑揚表現が、「ATH-ADX5000」はバランスの整った演奏に浮かび上がる魅力的な歌声の女ボーカルが楽しめる。とても完成度の高い製品といえるだろう。

入力端子:USB Type-C
ヘッドホン端子:3.5mmステレオミニ
対応フォーマット:PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHz
主な付属品:なし

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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